2019.02.20

■情報2 デイヴィッド・リンチ監督 構想作品『ロニー・ロケット』関連 David Lynch "Ronnie Rocket"


Ronnie Rocket de David Lynch / générique de Pierre Albanèse, Hanne Son et Maud Zaba - YouTube
 デイヴィッド・リンチ監督の映画かされていない構想作品『ロニー・ロケット』に関して、以下の情報が日本語で出たので、ご紹介します。
 その前に、上のリンク先動画は、ファンメイドのOPフィルムです。なかなかいい感じです。

スター・ウォーズを断ってもデヴィッド・リンチが作りたかった映画:幻に終わった傑作映画たち - シネマトゥデイ

“ 脚本の出だしはこうだ——。
 「暗闇……巨大なステージがフェイドインし……とてつもなく大きな黒い幕が引かれている。と、やおら幕が開く。ステージ全体に60メートルの火柱が立ちのぼっている。炎の中で、何千もの魂が音もなく叫び……聞こえるのは炎の咆哮(ほうこう)のみ。(中略)

 映画の舞台は、暗く抑圧的な工業都市で、工場から煙がモクモクあがり、電気に満ちた空気に低音のハム音がブーンと鳴る。探偵が路線の終点であるこの町にやってくる。立ち入り禁止になっている町の中心部に関わるあいまいな事件に巻き込まれる探偵。彼は一本足で立つ能力を持ち、出会う人々から一種の天才扱いされる。町の深部へ旅するうち、探偵は美しく純粋なダイアナと恋に落ち、不吉な“ドーナッツ男”と悪い電気に殺されないためには苦痛を感じ続けなければいけないと学ぶ。(中略)

 一方、妄想に取りつかれた二人の科学者ダンとボブは、妻であり母でもある存在のデボラの後押しで、異形のロナルド・デ・アルテを実験にかけ、「標準的なハンサム」に作り替えようとする。だが、ハンサムにする代わり、彼らはロナルドに電流変換器を取りつけ、その結果、15分ごとにコンセントにプラグを差し込まなければ電力を失うようになる。(中略)

 ストーリーは『フランケンシュタイン』(1931)、ロックンロールの寓話(ぐうわ)、昔ながらの善対悪の物語が少しずつ混ざる。奇妙な出来事(靴ひもが悪人の破滅を証明する。女性たちが探偵に裸身をさらす。円に関する意味不明な仮説、閉回路、宇宙)と、リンチ的なモチーフ(ミステリー、官能、愛、暴力、抑圧的な産業、ポンパドゥール、シュールなミュージカル・パフォーマンス)の詰め合わせだ。探偵とテリーが交わす哲学的な掛け合いのような軽妙な瞬間と、発作で倒れたり、生き続けるために自分を刺して流血する人々といった、極端な暗さの間で、大きな振り幅を見せる。大衆受けするにはあまりに変わっていて、ファンにはリンチワールド全開の天国だが、それ以外の者には訳がわからない。(中略)

 脚本には、巨大な建築物と、クローンたちの音楽堂や、地獄に落ちた燃える魂のステージが織りなすサイケデリックなクライマックスが登場する。「あの世界に行って、しばらくの間暮らす時間が欲しいが、それには金がかかる。『ロニー・ロケット』では、通常のような11週間のスケジュールでの撮影はしたくない。少人数のクルーと一緒に、セットを建ててしばらくそこに住みたいんだ」とリンチは語っている。”

 デヴィッド・リンチの幻の映画『ロニー・ロケット』の紹介記事です。

 『ツイン・ピークス』の小人役 マイケル・J・アンダーソンが主役、イザベラ・ロッセリーニ、デニス・ホッパー、ディーン・ストックウェルが出演者リストに挙げらていたとか。こんなに観たい映画は他にはありません(^^)。

 他のリンチ作品を連想させる言葉が並んでいる。
 リンチの潜在意識の顕在化、って感じで、どの作品とも通底しているのでしょう。

 それにしてもたのリンチ作品に、この映画のそのままの具像的な要素は、まだ使われていないので、リンチは映画化を捨てていないのかもしれない。是非、実現してほしいものです。

◆関連リンク
Ronnie Rocket Screenplay
 ネットで公開されている『ロニー・ロケット』シナリオ。
Google 翻訳 そのシナリオの機械翻訳。

・当ブログ記事
 ■情報 デイヴィッド・リンチ監督 構想作品『ロニー・ロケット』関連 David Lynch "Ronnie Rocket"
 以前にも記事にしています。その他のネット関連情報は、リンク先記事をご覧ください。

| | コメント (0)

2019.02.18

■感想 イ・チャンドン監督『バーニング』NHK放映版

 イ・チャンドン監督『バーニング』NHK放映版、録画初見。
 実は初イ・チャンドンなのですが、抑えたトーンと不可思議なテーマが昏く、でも心地よく凄く良かった。

 特に素晴らしかったのは、リンク先の予告篇サムネイル画像の、北朝鮮国境近く、主人公の青年 ジョンスの生まれ育った農家の庭の夕暮れのシーン。なんでもない農家の庭がマジックアワーの光の中で、なんとも不思議で心地の良い実存を探る空間に変貌する奇跡的な映画の時間を創り出している。特にヘミ役のチョン・ジョンソの舞う姿が素晴らしい。

 村上春樹の原作「納屋を焼く」のアウトラインとディテイル(パントマイム、アフリカ旅行、ジョンスの家での三人の食事、スポーツカー、フォークナー、ギャッツビー等々)を使いながら、そこにさらに追加されるイ・チャンドン監督と脚本のオ・チョンミによるマジカルなディテイル。

 例えば、アフリカの実存を希求するダンス、ヘミのアパートの存在するかわからない猫、前述の農村の庭でのダンス、幼馴染としてのヘミとジョンスの井戸にまつわる記憶の齟齬、、。とりわけ主人公ジョンスの設定がヘミと同年代で、韓国の職のない若者としての設定が、原作に追加したこの映画の大きな雰囲気を作りだしていて、独特のイメージとなっている。深みのある魅力は、この村上春樹的な不可思議な物語に、映画スタッフが追加した多層的な構造によるものだろう。

 村上春樹原作映画としては、トラン・アン・ユン監督『ノルウェイの森』も傑作であったけれど、こちらは村上独特の不思議物語として、素晴らしい高みに達していると思う。(『ノルウェイの森』は元々そうしたイメージを目指したものではないので。)

 『バーニング 劇場版』は、NHK版より52分長いとか。これだけでもかなり過不足なく描ききっている印象なのだけれど、吹替え→原語版でのイメージの違い含めて、体験したいものです。

◆関連リンク
イ・チャンドン「バーニング 劇場版」出演者が語るメイキング映像を入手 : 映画ニュース - 映画.com
古川耕『バーニング 劇場版』イ・チャンドン監督インタビュー書き起こし(アフタ−6ジャンクションより)
イ・チャンドン作品DVD (Amazon)

・当ブログ記事 ■感想 トラン・アン・ユン監督 村上春樹原作『ノルウェイの森』

| | コメント (0)

2019.02.13

■予告篇 アレクセイ・シドロフ 監督『T-34』


Battle Of Tank T-34 Movie Best Scene Slow Motion - YouTube.
 これは凄い!T-34戦車の戦闘シーンで、砲弾がスローモーションになるとともに、バレットタイム撮影で人物/風景を含む大胆な回り込みの映像を見せてくれる。リンク先のYoutube動画は、そのシーンをつるべ打ちに見せてくれる、たぶんダイジェスト編集したもの。

 戦車戦の迫力ではブラピの『フューリー』がリアルな迫力が凄かったけれど、こちらも砲弾が戦車の装甲にはじかれたり、めり込んでいく映像で、相当な迫力になっている。

 CGを多用していると思われますが、人物シーンが本当にバレットタイム撮影なのか、CG化したものか不明。メイキングもぜひ知りたいものです。

 映画は、Aleksey Sidorov 監督『T-34』というロシアの2018年のもののようです。全篇観てみたいですね。調べてみても日本公開の予定は不明です。

 こちらが正式予告篇。


T-34 | Official HD Trailer (2018) | WORLD WAR II DRAMA | Film Threat Trailers - YouTube

◆関連リンク
T-34 - Wikipedia

| | コメント (0)

2019.02.11

■PV 郭帆 : Frant Gwo監督『流浪地球 : The Wandering Earth』 主题曲《带着地球去流浪》


电影《流浪地球》主题曲《带着地球去流浪》|The Wandering Earth Theme Song - YouTube
中国初のSF大作映画『流浪地球(さまよえる地球)』が公開! 国外メディアからの意外な反応=中国メディア | ニコニコニュース.

 5日の公開以降、7日までのわずか3日間で、同作の興行収入は5億人民元(約81億円)に達した。現在、中国は春節(旧正月)休暇のさなかであり、10日まで続く連休期間中に興行収入はさらに伸びると予想される。2019年は、中国SF映画史の元年として人々に記憶されるかもしれない。  『流浪地球』は8日以降、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでも公開予定となっている。残念ながら現在のところ、日本での公開予定は未定である

劉慈欣原作『流浪地球』、中国での公開、既に2/5公開から3日間で興収81億円とのことで、大ヒットになりそうです。
この勢いで劉慈欣のヒューゴー賞受賞の『三体』も映画化されるのでしょうか?

ヒットを伝える記事

アメリカでも2/8公開が既にスタート。
シャマラン『ミスター・ガラス』が3週トップのところにどう喰い込むか。にしてもシャマランのあの映画がトップを続けるあの国で、今、
これだけストレートなこの話がどこまで受け入れられるか興味深いです。

| | コメント (0)

2019.02.06

■岐阜ゴジラ 柳ケ瀬商店街でゴジラ映画の撮影

Bloggozilla2

第一回目テーマ:「ゴジラ」 | GEMSTONE

"東宝株式会社とAlphaBoat合同会社は、多様なジャンルの有能なクリエイターの発掘を目的として、世界に誇る日本の大怪獣「ゴジラ」をテーマに次の要項でGEMSTONEクリエイターズオーディションを実施いたします。

GEMSTONEクリエイターズオーディション募集要項 募集作品 「ゴジラ」の世界観にインスパイアされた以下のジャンルのオリジナル作品 ・映像(アニメ・実写・CG) ・音楽 ・イラスト ※詳細につきましては、応募規約、FAQ(よくあるご質問)などをご参照ください。"

20190203_202805checkerchecker

柳ケ瀬商店街でゴジラ映画の撮影|NHK 東海のニュース
  (リンク先にロケの動画あり)

"岐阜市の繁華街、柳ケ瀬商店街で、ゴジラがまちを襲う短編映画の撮影が行われ、エキストラとしておよそ300人が参加しました。

撮影が行われたのは、岐阜市の柳ケ瀬商店街にある高島屋南地区で、一帯が再開発のため、今年3月から取り壊されます。
映画は、ゴジラが襲来した町の足跡などを生かしてビジネスチャンスにつなげるストーリーで、岐阜県各務原市に住む映像クリエイターの柴田晃宏さんが、映画配給会社の東宝などが行うオーディションへの応募作品として、5分間の短編映画を制作します。"

 『シン・ゴジラ』に続く国内実写版『岐阜ゴジラ』w、柳ヶ瀬で撮影が始まったようです。「東宝などが行うオーディションへの応募作品として5分間の短編映画」とのことで、3月以降にネット公開のようです。ゴジラ本体が出るかどうか、不明ですが、岐阜市柳ヶ瀬の高島屋近辺の商店街が舞台ということで、期待です。
◆関連リンク
「岐阜ゴジラ」エキストラ募集 26日に短編映画ロケ:岐阜:中日新聞(CHUNICHI Web).

" 羽島市出身の柴田さんはテレビ番組の制作会社で働いた後、二〇一五年にフリーとなった。その後、「東海制作」を設立。主に東海地方で活動している。三重県熊野市のまちおこしがテーマの映画を撮影したこともある。"

柴田晃宏 東海制作 | Eight プロフィール

| | コメント (0)

2019.02.04

■感想 ダニエル・L・エヴェレット『ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観』"DON’T SLEEP, THERE ARE SNAKES Life and Language in the Amazonian Jungle"

" 著者のピダハン研究を、認知科学者S・ピンカーは「パーティーに投げ込まれた爆弾」と評した。ピダハンはアマゾンの奥地に暮らす少数民族。400人を割るという彼らの文化が、チョムスキー以来の言語学のパラダイムである「言語本能」論を揺るがす論争を巻き起こしたという。(略)
 ピダハンの文化には「右と左」や、数の概念、色の名前さえも存在しない。神も、創世神話もない。この文化が何百年にもわたって文明の影響に抵抗できた理由、そしてピダハンの生活と言語の特徴すべての源でもある、彼らの堅固な哲学とは……?
 著者はもともと福音派の献身的な伝道師としてピダハンの村に赴いた。それがピダハンの世界観に衝撃を受け、逆に無神論へと導かれてしまう。ピダハンを知ってから言語学者としても主流のアプローチとは袂を分かち、本書でも普遍文法への批判を正面から展開している。"

140914046

 僕たちSFファンにとっては言語と人類というと、かならず思い出すのが山田正紀『神狩り』。そこには関係代名詞が13重以上の言語が登場し神の言語を幻視させる。
 
 ここに出てくる現在は400人くらいしか残っていないピタハンの言語は、入れ子構造を取ることがない。
 関係代名詞ということではなく、リカージョン:再帰(入れ子構造)の語法自体がないということなのだけれど、思わずSFファンなら『神狩り』を思い出すだろう。
 しかしこの本では、キリスト教の伝道師としてアマゾンへ入った著者がそのピダハンの生活にふれるうちに、創世記、神といった概念も存在しないピダハンの平安な暮らしにふれるうち、神を信じられなくなり、家族をなくすことになっても、「脱信仰」宣言をすることになる。

 『神狩り』が関係代名詞の数で神の存在を描き出したのに対して、そうした再帰的な言語構造のないことから、神の不在を徹底して体感してしまう著者。神を殺すのに関係代名詞/再帰がないことが一つの証明になる、というところがなかなか興味深い。

4968770_large

 山田正紀の「神」が何だったかは本篇と第二部でも直接は語られていない。しかし物語から浮かび上がってくるのは、神が(言語によって)人の産み出した概念的な存在である、ということである。そんな理解をしつつ『神狩り』を読んでいた僕には、このピダハンが概念というものを持たない存在である、というところがダニエル・L・エヴェレットから「神を狩ってしまう」ことがとても印象深かった。

 ピダハンの言語には、右と左、数、色、過去/未来といった概念的なものがない。彼らが重んじるのは、言語で語られる事柄が、語る相手の経験したことか、直接経験した者から直接聞いたものかどうか。夢や精霊といったものも含み、現実に即した物事のみが語られる。

 この等距離で物事を語ることから、彼らは「心配」という概念も持たず、物事が複雑化したり、誤解が拡大したりといった事象から無縁。これにより筆者が書くようにこの世の中で最も幸福な民族として存在しているという。
 他の民族が西欧的な文明化をするか、現在の文明を維持するかで悩んでいるのに対して、ピダハンはそのような悩みも持たない。

61bcwiaovnl_sx342_

 僕はチョムスキーの普遍文法というのはあまり興味がなく、また著者が執拗にチョムスキーの対語として書いている文化が言語に影響されている、という考え方もあまりに当たり前すぎて、なぜあえてそんなところに議論の命題をおくのかな、と思ってしまうので、そこんところをあれこれ批評しようとは思わない。

 言語/意識が幻想を作り出す一つの装置であると思うので、ピダハンが直接体験することのみを言葉で語ることにしているところが、そうした人の持つ概念や幻想を生じさせることなく、人と人の軋轢や争いを生み出していないところが最も興味深いところだった。
 直接本書には書かれていないが、この体験したことのみを語るということと、リカージョン:再帰がないということは、おそらく密接に関係しているだろう。
 つまり再帰して入れ子構造になる程、事柄の関節性が高くなっていく。それがピダハンが直接体験したこと以外の概念的なこと、関節的なことを語らないのは、まさに文化が言語と密接に結びついていることの証左ではないだろうか。
◆関連リンク


Spoken Pirahã with subtitles - YouTube
 こちらにピダハンの言葉を捉えた動画があります。


The Amazon Code - 動画 Dailymotion

Eテレ「地球ドラマチック選 『ピダハン 謎の言語を操るアマゾンの民』」への反応 - Togetter

Eテレ「地球ドラマチック選 『ピダハン 謎の言語を操るアマゾンの民』」への反応 (3ページ目) - Togetter.

"ピダハンがチョムスキーの「普遍文法=再帰」の反証になるとすれば、それは「ピダハンのこどもは再帰を含む文法構造を持つ言語を獲得できない」ということが示された時です。そして現在ピダハンのこどもがポルトガル語を学んでいるという情報から考えて、そういうことが起こる可能性はとても低いです。"

 僕は上述したように特に強い興味はありませんが、エヴェレットのチョムスキー批判について冷静な分析を、アニ@gorotakuさんという方が、うまく纏められています。参考に。

ピダハン 謎の言語を操るアマゾンの民|地球ドラマチック – テレビのまとめ.

ノーム・チョムスキーは「リカージョンはあらゆる言語に存在する」としています。これはチョムスキーが唱え言語学界の定説となっている理論「普遍文法」の最も重要なルールなのです。
チョムスキーが唱える普遍文法とは、文法は生まれつき人間の遺伝子の中にそなわっているとする理論です。この理論によると人間の言語は表面的な違いに関わらず、全て同じ構造を持っていると言います。
 本書のポイントを簡潔にまとめられている。

| | コメント (0)

2019.01.30

■感想 谷口悟朗監督『revisions リヴィジョンズ』1-2話


TVアニメ「revisions リヴィジョンズ」本PV - YouTube.

 谷口悟朗監督×シリーズ構成 深見真×キャラクターデザイン原案 近岡直×アニメーション制作 白組×CG監督 平川孝充『revisions リヴィジョンズ』1-2話録画見。

 いつか街に破滅的な事象が起こって、その時に自分のSFファンとしての知見が活かせるんじゃないか、という妄想wが現実化した様を描く、白組の3D CGアニメによる本格ロボットアクション(^^;)。

 まずは楳図かずお『漂流教室』、押井守『ビューティフルドリーマー』を彷彿とさせる冒頭。そして直後に校舎屋上で繰り広げられるシビリアンと名付けられた奇想巨大ロボットによる殺戮シーン。この奇想ロボット作画が素晴らしい。蜘蛛と使徒を合体させたような?造形と、抜群のレイアウトとカメラアングルによる迫力のCG映像。

 細部を描き込めるCGモデリングの特性を最大限に活かして、細かなディテイルのメカを、とても手描きでは描ききれないような画角で存分に描き出した白組のCG映像に感嘆。

20190127_175923checker

 CGの持つポテンシャルを最大限に引き出したCGアニメーターのセンスが最高。第1話で力が入っているとは言え、ヱヴァンゲリヲン新劇場版の最高レベルの作画に近いものがテレビアニメの画面で観られるのも、CG技術の進化の賜物か。

 人物の作画は、モーションアクター/モーションキャプチャーで撮られているようだけれど、なんとなくまだこなれていない感がある。このあたりは『亜人』や『虚淵ゴジラ』で先行して手がけるポリゴン・ピクチュアズが一歩リードというところでしょうか。

 それにしてもスピーディな動きは、CGを用いることで、リミテッドアニメというよりフルアニメっぽいコマ運びを実現しているようで、これも素晴らしい。今までテレビアニメはブルーレイの4倍速で録っていたけれど、これは4倍速ではもったいない出来で、DR録画が必要かもと思っています。というよりいよいよ4Kが必要なのかもw。

 今後の物語の展開と映像が楽しみです。

| | コメント (0)

2019.01.28

■感想 コーネル・ムンドルッツォ監督『ジュピターズ・ムーン』

20190127_93625

 ハンガリーのコーネル・ムンドルッツォ監督によるハンガリー・ドイツ製作の映画。ハンガリー国境からブタペストの都市部を舞台としたこの映画、僕はWOWOWの録画で、公開時のポスターイメージも予告篇も何も知らずに、タイトルのみの情報で、内容については真っ白な状態で観られたのですが、かなり意外な物語と映像で、是非、前情報なしで観られることをお薦めします。

 というわけで今回は冒頭の予告篇動画リンクも、記事の以下のネタバレ部分に置くこととします。

 とはいえ、これではどんな映画か全くご紹介できないので、ネタバレ回避しつつまずは全体のイメージ、感想をご紹介してみます。
 とにかく冒頭から急展開、あるとても印象的なシーンが開劇十数分のところで突然画面に開示されます。この映画的なインパクトは素晴らしい。僕が観たここ数年の映画の中でも1,2を争う印象的なシーン。
 この映像をメインアイデアに展開する映画の宣材はそのため必然的にネタバレになってしまうので、ポスターも予告篇もここで示すことができなくなるわけですね。

 シリア難民とヨーロッパの関係。それをある映像のマジックで、未来の姿/夢を見事に描き出した映画、というのが僕の感想。それにしても猥雑に進む構成のストーリーは、そんなゴールイメージを描き出すまでに、相当な迷宮に入っていく。その迷宮が難民とヨーロッパの関係そのものであるかのように。

 僕は学生時代に読んだ栗本慎一郎『ブタペスト物語』にて、ハンガリーのブタペストの魔術的で自由な空気に憧れたことがあったけれど、この映画のブタペストは移民に対して都市がその歪を受け止めきれず、昏い叫び声をあげているように見える。そんな陰鬱な雰囲気の街で描かれた微かな光の物語。

 極めてシリアスな現実問題を、映画だけが持ち得る表現で見事にスリリングにフィルムに定着させた傑作と思う。何も情報を事前に入れないで、観られることをお薦めします。






★★★★★★★★★★ネタバレ、注意★★★★★★★★★★★



 冒頭でのみ、タイトルになっている木星の衛星に関する文言がタイトルバックに映し出される。生命の可能性がある「エウロパ」についての説明である。
 この記述から、タイトル「木星の衛星」の意味は、本作のヨーロッパにおける主人公の奇跡を、エウロパに例えていると捉えられる。

 冒頭、狭い車室空間に満載された難民風の人々を見て、何故かシリアからの難民なのだろうと直感される。
 それに続く、船のシーン、まさにニュースで報道されたシリアの難民の様子の再現。そして銃撃と、血の浮遊を用いて印象的に描かれた主人公の突然の浮遊。


『ジュピターズ・ムーン』メイキング映像 - YouTube

 疾走する映像は、浮遊を神か天使の降臨のように見せて、神的なイメージを映像に焼き付けている。ここの説得力が映画全体を牽引していると言っても過言でない。

 上のリンクのメイキングのように作られた浮遊感は、この映画の見事なテーマの形象となっている。素晴らしい映画のマジックとなっている。
 僕がこの映画でよくわからなかった描写が1つある。
・浮遊の奇跡を見た訪問治療の患者二人が何故死ぬのか。
 このあたりをもっと丁寧に描いて、この神的な現象がヨーロッパの今後にどう影響をもたらすのか、そうしたところを具体的に描けていたら、もっと素晴らしいラストになっていたのでないだろうか。

| | コメント (0)

2019.01.23

■感想 M・ナイト・シャマラン監督『スプリット』『ミスター・ガラス』


Split Official Trailer 1 (2017) - M. Night Shyamalan Movie - YouTube

 M・ナイト・シャマラン監督『スプリット』Amazonプライム初見。なかなか素晴らしい映画でした。サスペンス部分もストーリーテリングも、そして最後に示されるヴィジョンも、絶好調のシャマランらしくていい映画になっています。

 この週末から公開されている『ミスター・ガラス』が観たくて、『アンブレイカブル』(初公開時と今回で2回目)とこの『スプリット』を連続で観たのも、『スプリット』で盛り上がった要素。

 まず主人公 ジェームズ・マカヴォイの演技がとてもいい。若干、誰が誰だか分からない部分もあったけれどw、複雑な役を見事に演じ分けている。

 そして予告篇のサムネイル画像にも出てくるケイシー役のアニャ・テイラー=ジョイのクールな演技も素晴らしい。多重人格から超現実的な事象へと浮き足立つシャマランの映画を、うまく地面に引き戻しているのは、この女優さんの演技とそのルックスの魅力によるのではないか、と思うほど。

 『ミスター・ガラス』と繋がる部分も粋な仕掛けで感動。

 ある意味、最近主流のMCU等スーパーヒーロー映画のアンチテーゼになりそうな期待感まで持たせてくれて、次作にさらにワクワク。

 本作、制作費 $9 millionに対して、世界興行収入 $278 millionという凄いヒットとなったとか。シャマラン最大のヒット作『シックスセンス』の制作費40 million、興行収入 $672 millionに比べても、興収/制作費=30倍は最大かと。


Glass - Official Trailer #2 [HD] - YouTube

 『ミスター・ガラス』@名古屋ミッドランドスクエアシネマ、期待が高かったので、観終わった後は、ちょいイマイチの感想。
 アンチスーパーヒーローであることは間違いなかったけれど、その言葉通りの事象がメタレベルでなく表現されていて、、、、エンタテインメントなので確かに致し方ないけれど、、、。

 スーパーヒーロー誕生のメカニズムを前作で自身の中心テーマと絡めて描き出したシャマランだったが、そのテーマの追求の形でのアンチスーパーヒーローものとしての昇華は不十分だったと思う。実はシャマラン独特のコメディではないか、という説も出そうだけれど、それにしてはいつも通りの重いテーマ音楽で、下手をすると悪趣味とも映ってしまう後半なのであった。一見さんには厳しい話運びだけれど、前2作を観ているシャマランファンには、前半までとてもいいだけに残念無念。



★★★★★★★★★ネタバレ注意★★★★★★★★★★★



 特にあのラストはいただけない。特に昨日どっかのゆるキャラが軽自動車をひっくり返すネット動画がテレビにも大きく報道された日本では、ワゴン車をひっくり返す映像ではスーパーヒーローが存在する証明と言われましても…、ギャグにしか見えません。撮られていた動画がネットに、というオチはシャマランへの僕らの期待値とは大きくずれています。

 途中でヒーローは最初は飛べなかったみたいなセリフもあったので、もしかして飛ぶかも、と期待したクライマックス、もっと派手にする必要があったのではないかと思います。

 そしてビーストがライフルの狙撃で倒れるところも、もう一度ビーストに戻って弾が身体から弾き出される位の展開もあってよかったのではないか。

 イライジャの能力も分かりにくい。時間を遡るような描写があったけれど、唐突感はいなめない。

 また「照明」は心的な現象の例えのはずで、それがストロボで起きてしまうとか、いかにプラグマティズムのお国の話でも不味かろうと思うのだけれど。

 とにかくこの三部作、3部の前半まで期待させてくれた手腕で、次回作も大いにファンを楽しませてほしいものです。

| | コメント (0)

2019.01.21

■写真レポート 「特撮のDNA展」@東京蒲田

Top_1211

特撮のDNA | ゴジラ、モスラ、メカゴジラ……大怪獣が目の前に!
 日本が世界に誇る「特撮」。その技術と継承者たちにスポットをあて、特撮史を紐解く大展覧会!!

 本業の東京出張の帰りに、特撮のDNA展観てきました。
 Facebookに掲載した写真を掲載します。特にFacebookの新機能の3D写真、マウスでグリグリしてお楽しみいただければ幸いです。

 シン・ゴジラ三態。 本当は3Dハンディカムで立体映像に記録したかったのですが、何と動画撮影禁止。悔しいですがFacebook 3D用の写真で諦めました。
 シン・ゴジラの絶妙の造形が、どなたかの手で3D映像として残されているのを期待するばかりです。


(8) Akira Kiei - 禍々しくも、第五形態が飛び出してくる様 @ 特撮のDNA展

 シン・ゴジラ3D。肉感的な上腕と太腿の立体感をお楽しみくださいw。

 最後にこの展示会に対する苦言。
 残念だったのは、着ぐるみ、ミニチュア等がどの映画に使用されたものか、表示がほとんどなかったところ。以前アニメの展示会の際にも記したことだけれど、こうした展示会、美術展と考えると、映画の表記だけでなく、作成したスタッフの表記をできる限りしてほしいもの。こうしたところのフォローが特撮の価値の向上につながると思うので、できる限り今後は対応頂きたいものです。

| | コメント (0)

2019.01.16

■写真レポート ルーブル彫刻美術館 : Louvre Sculpture Museum

50013054_2175317362797846_743861207

ルーブル彫刻美術館 - Wikipedia

" ルーブル美術館の世界唯一の姉妹館である。「姉妹館」であって「分館」ではないため、ルーブル美術館の公式サイトには掲載されていない。
 建物は黒川紀章が設計したもので、1987年(昭和62年)に開館した。開館時にはルーブル美術館館長が訪れ、年間10万人の来館者があった。

 館内の作品はルーブル美術館にある、彫刻作品約1300点を本物から直接型をとり作成したレプリカを展示している。サモトラケのニケやミロのヴィーナスはじめとして、日本に居ながらにして彫刻作品を楽しむことができる。
 常設展示作品はルーブル美術館のほか大英博物館やメトロポリタン美術館など欧米の有名美術館のものもある。"

 三重県津市 ルーブル彫刻美術館へ行ってきた。
 本家の正式姉妹館とのことで、彫像はいずれも本物から型を取ったレプリカ。ミロのヴィーナス、サモトラケのニケ、自由の女神と千手観音、阿修羅像が同時に並ぶ異界。B級感覚に痺れます(^^)。

50001268_2175318432797739_869536701

 ローマの彫像の後ろに千手観音の背面。そのさらに奥(美術館入り口)にはツタンカーメンの像、天使たちとサモトラケのニケが、本家ルーブルと同じガラスのピラミッドの空間に展示されている。

49831860_2175322502797332_184439270

 これらの像を一度に全て見られるのは、なかなか貴重です。
 写真も自由ということでたくさん撮ってきましたが、彫刻作品は以前からここに書いているように3D写真、3D動画で記録するのが最適なので、3Dハンディカムでしっかり撮ってきました。

3D Photo Fun
 3D動画はなかなかネットでの公開は難しいので(Youtubeでやればすぐか、、、w)、Facebookの新機能の疑似3Dフォトとして、リンク先に掲載してみました。ご確認いただければ幸いです。

49896476_2175318272797755_366926491

49736817_2175318789464370_892150140

 外壁にはナポレオン像とモナリザ。美術館前には全高7-8mのミロのヴィーナス、サモトラケのニケ、そして何故か自由の女神が建てられています。

 すぐとなり、同じ宗教法人の施設として大観音寺という寺社(?)があり、そこには高さ33mの大観音像、七福神等々が置かれている。西欧の至宝から仏教芸術まで、巨大な彫像含め堪能できるB級空間です(^^)。

| | コメント (0)

2019.01.14

■感想 マイケル・ベイ監督『トランスフォーマー/最後の騎士王』"Transformers: The Last Knight"


Transformers: The Last Knight Official Trailer 1 (2017) - Michael Bay Movie - YouTube
 マイケル・ベイ監督『トランスフォーマー/最後の騎士王』WOWOW録画初見。

 評判がよくなかったので、劇場へは行かなかったのだけれど、期待していなかったせいか、なかなか楽しめました。大味ではあるけれど、マイケル・ベイの創る地球規模の壮大な絵が良い。

 特にストーンヘンジ上空に広がる異星からの侵略絵図が素晴らしい。宇宙から地上に巨大な侵略構造物が降りている絵には(何が何だかわからないが)興奮してしまう。3Dで観ておくべきだったと後悔。

 次作『バンブルビー』は、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』のトラヴィス・ナイト監督によるということで、大味ではなくライカ仕込みの奇想に凝った物語と、トランスフォーマーの壮大さの混じった絵作りに期待したい。

◆関連リンク
『バンブルビー』日本版予告 - YouTube
・当ブログ記事
 トランスフォーマー 当ブログ関連記事
 ■感想 トラヴィス・ナイト監督『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』

| | コメント (0)

2019.01.09

■感想 マーク・ウェブ監督『gifted/ギフテッド』


『gifted/ギフテッド』予告編 - YouTube

 マーク・ウェブ監督『gifted/ギフテッド』、WOWOW録画初見。

 数学の天才少女を描いた佳作。なかなか気持ちの良い物語になっている。猫がうまく使われているのも花丸w。(ちなみにWOWOWのW座、小山薫堂の解説によると、猫は脚本家トム・フリンの飼い猫であるらしい)

 クリス・キャプテン・エヴァンス、いい役演ってますね。

 7歳の少女役のマッケナ・グレイスもとても良い。wiki見るとこの時に既に11歳みたいだけれど、見事にキュートな「ギフテッド」な天才を演じています。

 題材になっているミレニアム懸賞問題のナビエ–ストークス方程式については、流体解析に用いられる方程式というくらいは知っていたのだけれど、数学的には証明されていないのですね。実践的なCFDではバンバン使われているわけで、工学分野ではある意味、当たり前の式なだけに、違和感も、、、、w。

 3次元CGでも爆発の煙や、水中の描写で欠かせない方程式のはずだけれど、実践的な式としては、人間の眼に流体の動きを自然に見せるのには、数学的/物理学的理論が不明のままでも、全く問題ない、ということですかね。詳細を詳しい方に解説していただきたいものですw。

◆関連リンク
CG-ARTS教育リポート 日本と世界のCG教育のいまが見える

"ナビエ・ストークスの方程式を極力単純化し、許容範囲内の数値的エラーは容認することで、できる限り高速にこの方程式を解くことが目標とされる。逆に流体の“境界部分”(水であれば“水面”)を美しく表現するといったような要素は、CFDにはなかったCG流体シミュレーションならではの重要な要求だといえる。"

| | コメント (0)

2019.01.07

■感想 黒沢清監督『セブンスコード』


Maeda Atsuko - Seventh Chord (前田敦子 - セブンスコード) - YouTube

 黒沢清監督『セブンスコード』WOWOW録画初見。
 前田敦子の曲「セブンスコード」のミュージックビデオとして作られた60分の黒沢清作品ということで実はあまり期待していなかった。
 しかしウラジオストックを舞台にした本作、なかなか見ごたえのある黒沢清作品として、高い完成度を持ったサスペンス映画となっています。傑作。

 まずロシアの街並みの切り取り方が素晴らしい。
 荒廃した街の雰囲気、アンダーグラウンドな廃墟感が見事に物語を盛り上げる的確な映像として定着されている。
 そしてクライマックス。ネタバレはしないですが、この展開は鮮烈。ラストの余韻含めて、どこか岩井俊二の傑作「Fried Dragon Fish」を思い起こす。
 残念なのは、「Fried Dragon Fish」のラストで流れるチャラの楽曲に対して、前田敦子の「セブンスコード」が弱いw。

 劇中で唱される与謝野晶子の詩「旅に立つ」、この苛烈な言葉を歌詞として、チャラの曲として流れてたらな、、、。

以下与謝野晶子「旅に立つ」引用
"いざ、天の日は我がために
金の車をきしらせよ、
颶風の羽は東より
いざ、こころよく我を追へ。"

◆関連リンク
『セブンスコード』がすごくおもしろい。あと、すごく両義的。 – 新・批評家育成サイト
黒沢清についての評論を執筆せよ – 新・批評家育成サイト

"毎回、ゲスト講師を対象とした批評文の執筆が課題となります。 したがって今回受講生の皆さまには、映画回の実作者講師である黒沢清さんについての評論を書いていただきます。"

 批評家を目指す皆さんの黒沢清作品の評論各種が読めます。

| | コメント (0)

2018.12.26

■感想 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『静かなる叫び』『灼熱の魂』


静かなる叫び PV - YouTube

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『静かなる叫び』WOWOW録画初見。モントリオールで起こった銃乱射事件を描いた09年のヴィルヌーヴ長篇3作目の作品。

 モノクロで描かれた乱射事件、過度のドラマ性は避けられ淡々とドキュメントのようにカメラが被害者と犯人に寄り添って記録され、まるでその現場に立ち会っているかのような感覚になる77分。

 そしてエンディングのクレジットでは現実に亡くなった14人の女性の名前が一人一人挙げられ追悼の言葉が捧げられている。

 ヴィルヌーヴ監督のベースにこうした社会派の作品があるのに何だか納得する一本。丁寧にそしてどこかクールに人間を描くヴィルヌーヴ演出はこうして作られた、という感じ。

 途中、凄いと思ったのは、犯人の学生が車で現場へ向かうシーンで、画面が天地を逆さまにして、凍りついたケベックの川を映し出す。この心象風景の描写が素晴らしい。
 天地が逆になるのは、他にも一シーン。惨劇後の学校のロッカーが並んだ通路を描いているところ。これは日常が裏返って生活空間が異様な光景を見せているシーンだけれど、こうした描写が素晴らしい。


映画『灼熱の魂』予告編 - YouTube.

 続けてWOWOWで録りためていたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の長篇第4作『灼熱の魂』初見。

 内乱となったレバノン(とは本篇では述べられていない)の焦土に描かれる、ある家族の血の物語。

 母親と双子の探索の旅がパラレルに描かれ、そしてだんだんと明らかになる真相。戦乱の地ゆえに起こった苛烈な現実の姿。しかしここでも前作に続いてその悲劇を過度な演出ではなく、事実の提示として描き、主人公たちの感情的なシーンはかなり抑えて描き出されている。

 ところどころにインサートされる焦土と荒野のレバノンの土地が登場人物の心象風景として雄弁に観客に悲劇を想像させる手腕が見事。のちに『ボーダーライン』でそのドラマを最大限に盛り上げるその演出力はこちらでも既に本格的に結実している。

| | コメント (0)

2018.12.24

■感想 高山羽根子『オブジェクタム』

高山羽根子『オブジェクタム』

"小学生の頃、祖父はいつも秘密基地で壁新聞を作っていた。 手品、図書館、ホレスリコード、移動遊園地――大人になった今、記憶の断片をたどると、ある事件といくつもの謎が浮かんでは消える。 読み終えた後、もう一度読み返したくなる不思議な感覚の小説集。

すばらしかった。
ふと気づいてもそのまま忘れてしまうことや、
自分では気づくことすらできずにいたあれこれを、
ひとつずつ丁寧に目の前にかざされているような読み心地だった。
酉島伝法(作家)

何度でも味わいたい、小説の魔法。
高山羽根子、文学の最前線に立つ。
大森望(文芸評論家)"

 名だたるレビュアー、そしてあの奇想の極北『皆勤の徒』を書いたSF作家 酉島伝法氏までもが絶賛する高山羽根子『オブジェクタム』を期待して読みました。噂にたがわぬ深い味わいの奇想小説3篇でした。

 まず「オブジェクタム」、過去と現在の日常から、少しずれた世界の断層を描いた佳作。子供の頃遊んだ草むらの秘密基地、学校で書いた壁新聞等々、久々に懐かしい記憶を思い起こしつつ、少し不思議な世界へ連れ去られて、街の裏に展開する幻のような世界を垣間見ることができる生活感のある幻想世界。

 「太陽の側の島」、僕はこの短篇集の中で本作が一番感銘を受けた。
 戦争に出た夫と残された妻との書簡。最初、現実的に描かれていた世界が、戦地の不思議な風習が描かれて、まるで想像していなかった世界へ連れて行かれる。この幻想の切れ味が素晴らしい。もっと他の作品も読んでみたいと思わせる傑作。

 「L.H.Q.Q.Q」、いなくなった犬を巡る不思議なユーモアに溢れた掌編。
 この雰囲気、癖になります。

 短篇「居た場所」が芥川賞候補になっているということで、今後の活躍が楽しみです。

◆関連リンク
旅書簡集 ゆきあってしあさって

"三人のものかきが旅の記憶を送りあう、幻想旅情リレー書簡集です。 (酉島伝法、高山羽根子、倉田タカシ)"

 幻想の旅先から、酉島伝法、倉田タカシ両氏とリレー書簡された「旅書簡集 ゆきあってしあさって」を以前に掲載。作風を彷彿とさせる素晴らしい奇想の旅情をお楽しみください。

いま〈SFを書く〉とは? – ゲンロンカフェ.

"今年、第2回ハヤカワSFコンテストにおいて、『ニルヤの島』で大賞を受賞した柴田勝家さんと、最終候補に選出され、12月19日に『鴉龍天晴』でデビュー予定の神々廻楽市さん、そして第1回創元SF短編賞佳作を受賞し、11月28日に『うどん、キツネつきの』でデビューしたばかりの高山羽根子さんをお招きし、いま「SFを書く」ということの意味、「SF作家としてデビューする」ということへの思いについてうかがいます。"

高山羽根子 - Wikipedia
オブジェクタム 書評|高山 羽根子(朝日新聞出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」  評者:町口 哲生(評論家)

"題名の「オブジェクタム」とは、前に投げる、前に置くから派生した「目的・対象」という意味のラテン語である。この語は中世以降、たとえばデカルトやスピノザの哲学においては、realitas obiectivaという風に使われたが、これは「表象された最低限の事象内容」という意味である。高山がこの用語を念頭において本作を執筆したと仮定するなら、その「最低限の事象内容」とは「主人公の主観において把握できた客観的事実」という意味合いになる。"


創元Genesisラジオ 第2回 ゲスト:高山羽根子さん - YouTube.

 こちらで高山羽根子さんの初長篇の話題が語られています(終わり部分)!
 何と「映画を使って人と人とが戦ってる話」でタイトルが『暗闇にレンズ』。映像SF小説に眼がないので来春の発刊が楽しみ!

 創元ラジオ、高山羽根子さんと東京創元社の編集者 小浜徹也さんの興味深いお話が聴けます。(第1回もありますがどちらから聴いても大丈夫です)

| | コメント (0)

2018.12.19

■感想 トラヴィス・ナイト監督『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』Kubo and the Two Strings


Kubo and the Two Strings 'Creatures of Darkness' Featurette (2016) - YouTube

 トラヴィス・ナイト監督『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』WOWOW録画初見。
 素晴らしいパペットアニメーションでした。

Kuniyoshi_11660x350

 特にメイキング動画にある骸骨のパペット。4m超えの巨大なパペットを使ったそうだけれど、この迫力は凄い。劇中にも、歌川国芳「相馬の古内裏」が出てくるように、まさに浮世絵を立体的に再現しようとしたような描写。そしてさらにはヱヴァンゲリヲンや宮崎駿 巨神兵へのリスペクト。髑髏が赤いのは、巨神兵もしくは暴走2号機オマージュでしょうかw。

 単なる日本趣味の美術だけでなく、神社の森に顕著なように、そこに生える草木まで日本の自然を活かそうとした画面が素晴らしい。
 3Dで劇場へ観に行かなかったことを悔やむ素晴らしい立体感を2Dでも感じる映像。3Dブルーレイ、絶対買わないとね。

◆関連リンク
『 KUBO/クボ 二本の弦の秘密 3D&2D Blu-rayプレミアム・エディション(2枚組)』

| | コメント (0)

2018.12.17

■感想 バンダイナムコ VR ZONE「シン・ゴジラVR」


VR ZONE SHINJUKU/『ゴジラ VR』 - YouTube
ゴジラVR - VR ZONE SHINJUKU(公式HP)

ASCII.jp:デカイ! 怖い! リアル! シン・ゴジラの世界が目の前に「ゴジラVR」.

" 「ゴジラVR」が、11月3日から全国のVR ZONEで楽しめる。
 稼働店舗は、VR ZONE SHINJUKU (東京都) 、VR ZONE OSAKA(大阪府) 、namcoイオンモール各務原店(岐阜県)、namcoイオンモールKYOTO店(京都府)、namcoイオンモール大日店(大阪府)。"

 各務原イオンで『シン・ゴジラ VR』を体感してきた。

20181216_164052

 以前試したPS VRの「『シン・ゴジラ』スペシャルデモコンテンツ for PlayStation®VR」(右引用画像)と比べると、画像の解像度が高くなっていて、より映画のCGに近づいている。ただしとは言っても、映画のフォトリアルと比べると一昔前のCG、ゲーム画面のCGに近い(特に街並みとか)ため、さすがに映画の世界に入り込んだような臨場感までは持たせられていない。

20181216_164306

 全体の構成は、PS VRが東京駅近く丸の内からゴジラの進撃を眺めているだけだったのに対し、今回は自衛隊の戦闘ヘリの操縦席に自分が乗って、シンゴジラの近くまで寄っていくので、ずっとこちらの方が迫力あって見ものになっている。加えて戦闘ヘリの動きに合わせてシートも動くため臨場感もそこそこ出ている。ヘリでゴジラの近くまで寄って、特にその足元から上を見上げるシーンは、その巨大感はなかなかのもの。

 ただしヘリの操縦は、シートに操縦桿はあっても自分では操縦できなくてただ動画のように自分の視点が動いていくだけなので、そこは残念。操縦桿で貫通弾と血液凝固弾は打てるが、それも擬似的なのが惜しい。

 ヘリを自分で操縦し、自分の機だけ、自分の攻撃だけで倒すところまでやれたらもっと臨場感があってすごいかもしれない。

 7-8分 1000円は映画と比べると、ちょっと高いので、15分くらいで自由に動けてそこまでやれたらいいのかも。

 PS VRに比べると、ゴジラを追撃していくため、巨大な尻尾の下をくぐったり、眼の前に巨大な口が開いたり、背びれからの光線が眼の前を切り裂いたり、そうした迫力も相当のレベルなので、操作性が加わるとさらに凄いはずで残念なところ。(とは言え、そうすると全シーンリアルタイム計算が必要なのでここまでの画像クオリティは確保できないだろうから、どちらを取るかですね)

 今回のシステムは、HTCのVIVEを使用したシステム。

 ゴジラの紫の光線の迫力がとにかく素晴らしかったということで、『シン・ゴジラ』ファンにはお薦めです。

 それにしても各務原イオンのVR ZONEは、空いていた。
 週末で広大な駐車場の空きがないような店内の混雑状況にもかかわらず、VR ZONEにはまるで人がいなくて、貸切状態。やはりVRはまだまだ一般的なものではないようだ。こうした施設の存続がいつまで続くか不安になる。いずれ家庭に高解像度のものが入って行って、テレビに置き換わるような存在にならないとポピュラルなものにはなっていかないのかもしれない。立体映像ファンとしては、3Dテレビに続き、VRもそれと同じような末路を辿り、家電店からもゲームセンターからもなくなることがないように祈るばかりである。

◆関連リンク
・内閣総辞職ビームに震える、VR ZONE OSAKA「ゴジラVR」体験レポ | Mogura VR - 国内外のVR/AR/MR最新情報.

"「ゴジラVR」は発射許可まで待機する演出のため、「自分から何か行動する」よりも「眺めている」時間が長い印象はあります。体験時間は心なしか短く感じるかもしれません。ただ、「ゴジラVR」はたくさん体験者に操作させるぞ! というアクティビティを作るなら当然考えるであろう選択をせず、「シン・ゴジラの世界はこうでなくては!」とあえて操作をさせない大胆な演出を選んでいるんですよ。私はこの選択を評価したい! ゴジラという脅威に、一兵卒として立ち向かう。まさしく思い描いた夢そのままの体験が待っています。"

 たしかに演出意図としてはそうした映画での効果を狙ったものかもしれないが、アトラクションの短い時間の中では、上述したように、シートの動きと客のアクションを最大に活かす、インタラクティブなものを狙ったほうがよかったと思うのである。

| | コメント (0)

2018.12.12

■動画 空山基 クリスチャン・ディオール 11mの巨大ロボット


Interview de Hajime Sorayama pour Dior – Numero magazine - YouTube
 僕らはかつて、このロボットをいかに多くのSF的な雑誌で見たことか。
 20世紀の日本のロボットデザインをある意味、象徴していた空山基氏の女性ロボットがファッションショーのランナウェイに立った。しかも11mという巨大な姿で。

 表面はアルミニウムのミラー処理を施されて、まさにあの空山のロボットが見事に現出している。

 1日だけのショーのためのロボットのようだが、この造形は恒久的にどこかに残して欲しかった。本物をこの眼で見たくて仕方がない。

◆Dior 公式動画
 いずれも素晴らしい動画ですので、是非リンク先でご覧ください。
Dior Official Instagram 「For the #DiorPreFall 2019 show from @MrKimJones, the Japanese artist @HajimeSorayama_Official devised an idealized female metallic robot」
 ロボット建造中の動画。
・Dior Official Instagram 「The excitement of the unveiling of the #DiorPreFall 2019 men's collection by @MrKimJones in Tokyo didn't end with the show! 」
・Dior Official Instagram 「Discover the towering centerpiece of the #DiorPreFall 2019 men’s show from @MrKimJones, conceived by Japanese contemporary artist Hajime」
 上記2本は、ファッションショーの動画。ミラーペイントのロボットにショーの照明が当たり、流麗なロボットが見事に映えています。

◆関連リンク
・キム・ジョーンズ率いる「ディオール」の東京ショーに高さ11mの女性型ロボット像 空山基とコラボ│WWD JAPAN

" ランウエイセットの要となる高さ11mもの女性型ロボット像を手掛けるのは、日本人アーティストの空山基(そらやまはじめ)だ。

 空山は「本当に信じられない速さで全てが進んだ。時間がなかったからもっと小さなプロジェクトになると思っていた。こんな大きなプロジェクトになると知ってたら、もっと時間をかけたのに」と、コラボの実現の速さに驚きを見せる。

 キムが選んだのは、空山が1980年代に手掛けたイラストで、のちに彫刻作品になったもの。今回のショーではこれを高さ11mの巨大な像に仕立てる。「『ディオール』は35年かけてやっと僕に追いついたみたい」と空山は冗談を飛ばすが、富山の工場からアルミ部品が届いたのはショー開催のわずか2週間前のことだった。これをシルバーのミラーペイントで仕上げるという。"

| | コメント (0)

2018.12.10

■情報 ステファン・フォン・ブーレン監督『土星の輪の中で』Stephen van Vuuren "In Saturn's Rings 8K"


In Saturn's Rings 8K (Narrated by LeVar Burton) 2018 Trailer - YouTube

 Stephen van Vuuren監督のIMAX映画 “In Saturn's Rings” の8K予告篇。
 NASAの実写映像だけで作られた42分のドキュメント。息を飲む美しさです。IMAXの大画面で見てみたいものです。

 Youtubeでは、4K版で公開されていますので、4K環境のある方は是非、4Kで観てみてください。

 調べてみましたが、いまのところ、日本での公開予定は見つかりません。残念。

IMAXのHP
In Saturn's Rings | Film for Giant Screen, IMAX, Fulldome Planetariums

 これは、2014年に4Kで制作された同タイトルの作品の8K版(2018年)ということのようです。以下に詳細データがあります。

【魂が震える】CG無し。実際の100万枚に及ぶ画像から作られた「4K映像の土星」:DDN JAPAN.

"2014年にIMAXで公開予定の作品「In Saturn's Rings」より"

| | コメント (0)

«■感想 体感! NHK BS 8K『完全版2001年宇宙の旅』