2016.08.24

■感想3 (後半ネタバレ) D-BOX 庵野秀明 総監督/脚本, 樋口真嗣 監督/特技監督, 尾上克郎 准監督/特技総括『シン・ゴジラ』

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 『シン・ゴジラ』3回目@イオンシネマ大高、DBOXで8/16(火) 21:20回を観て来た。さすがにこの時間帯、客は2割の入りで、DBOXがその半分くらい。

D-BOX(ディー・ボックス)|イオンシネマ
 DBOXは初体験だったのだが、席が上下前後左右に動く仕組みで、4DXの様なにおいや水、スモークと言った演出はない。そして4DXの様に大きな音や、画面の中で何かが動くとめったやたらに振動する様な事はなく、演出が落ち着いている。

 感覚的には画面のすぐ手前に自分がいてその場所が振動する様なシーンでのみ椅子が動く。ほぼ振動するのはゴジラの破壊シーンと戦闘兵器の部分のみ。なのでかなり体感度は高いと言える。

 特にその振動効果により、最初のゴジラ上陸シーンの衝撃が、過去2回より相当インパクト大。
 ただし映像の臨場感はIMAXが圧倒的。DBOXはスクリーンから席が後へ離れているため、IMAX映像への巻き込まれ感に対して、今回は情景を景めてる感じ。両方の相乗効果を試してみたいので、DBOXのIMAX版をどこかでやってほしいものだ。

★★★以下、ネタばれ注意★★★








シン・ゴジラを楽しむための地図を作りました - QuZeeBlog@Hatena


 この図は、上記リンク先の、ゴジラ上陸後の経路を地図上に示されているHPからの引用。
 今回、観てチェックしたのは、タバ作戦の行われる武蔵小杉駅北。ここで自衛隊の攻撃によりゴジラは進行方向を一旦、西へ変える。しかしこのあとあきらかに進路を前のコースへ戻す様な動き方をしている。そしてそのコースの先には東京駅と皇居が存在する。

 今回も、やはり疑問は本当にゴジラは皇居を目指していたのかどうか、というところ。今のところ、この点について明確な解釈をしている感想は見当らないので気になってしかたない。

 『ゴジラ』(54年版)は太平洋の英霊が宿っているという解釈で理解できるのだけれど、何故、54年版と関係のない初代『シン・ゴジラ』が皇居を目指すのか?
(別に映画のテーマとしてはそこはどうでも良いところのような気がするのだけど、これだけ緻密に組立ててある構造の作品で、その行き先の謎が全く考えられてないと言うことはないはずで、この謎が読みとけてないのは、映画を体感するための重要なピースがひとつ欠けているような宙ぶらりん気持ちで、ひっかかってしようがないのだ。どなたかこの経路の解釈について、何か情報あれば教えて下さい)

 東京の都心へ向かうという意味だけか、東京駅を目指す意味があるのか、その先の福島を実は目指していたのか...とか考えるのだけれど、やはりどれもしっくりこない。

 牧元教授の奥さんの死と、目的地が何らか関係している、という謎の設定くらいしか思い付きません。少くともドラマの中では、そうしたことに触れている部分は皆無だと思うけど、、、。

 あと気になったのは、ラストの、ゴジラの皇居に対する向き。
 矢口蘭堂とカヨコ・パターソンの会話の背景には、東京駅と皇居とそしてシン・ゴジラの姿。このシーンの冒頭では、科学技術館に背を向けているように観えたシン・ゴジラだが、その後、カヨコが蘭堂に「あなたも好きにしたら」と言って去って行く背景のシン・ゴジラはこちらを向いているように見えた。これは僕の見間違いか??
(ちなみに、この「好きにしたら」は牧元教授の言葉に引っかけたセリフだが、そこにシン・ゴジラの姿が映像として映っているのは、明らかに、牧が巨大完全生物になった/もしくは融合したことを暗示しているのだろう。蘭堂が巨災対の室で、「どう好きにしたんだ?」とつぶやくシーンも同じことを暗示している描写かと)

 このシン・ゴジラの最後の向きの謎も含めて、まだまだ噛み足りない奥行きのある怪獣映画『シン・ゴジラ』です(^^)。

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2016.08.22

■情報 公式図録『クエイ兄弟 —ファントム・ミュージアム—』: The Quay Brothers Phantom Museums Catalog

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クエイ兄弟 —ファントム・ミュージアム—(求龍堂公式HP)

"アートアニメーション、映画、CM映像、舞台美術など、幅広いジャンルで独自の美を創り上げてきた双子・クエイ兄弟が発信するミステリアスな美の世界は、本拠地であるロンドンを始めとした欧米や日本でカルト的人気と影響力を誇る。 本書は、世界のクリエイターを魅了し続ける創作の源泉を含め、知られざるクリエイティブの全貌が明らかになる、世界初の公式データブック! アジア初の巡回個展の公式図録兼書籍。

【構成】
 各作品のビジュアルとともに、正確なデータを掲載。これまで未発表であった作品の情報も記録。
1. デコール(映像作品のボックス型模型再現)の部分アップで、独特な耽美的装飾が細部まで見て楽しめる。
2. ブラックドローイング(初期のタブロー作品一連)映像へ進む前の、クエイ兄弟のイメージの源泉が見える。
3. ポーランドポスター、ブックデザイン(空想装幀、実際の仕事作品など)
4. Student Films(学生時代の実験的映像作品)
5. Films(アニメーション、長篇実写映像作品)
6. CM Films(コマーシャル用作品 バドワ、コカコーラ、コムデギャルソンなど)
7. 舞台美術(演劇、バレエ、オペラなど)"

 クエイ兄弟の展覧会『ファントム・ミュージアム』、以前記事で紹介しましたが、図録が書店等に並びば締めています。うちの近所の田舎の本屋で遭遇しかなり吃驚。郊外量販店にも入っているということは相当の本屋さんに展開されているのでしょうか。

 上記出版社の公式HPに、本の各ページ写真が掲載されています(上の写真もそこからの引用です)。

 葉山の展覧会は行けなさそうなので、図録だけでも買おうかなと思っています。中身は値段相応に充実。欲を言えばもっと細かい字で読み物部分もがっつり充実させて欲しかったかなっと。で、即断できず、まだ入手していません(^^;)。

『クエイ兄弟 ファントム・ミュージアム』 (amazon)


Quay Brothers - Phantom Museum (Re-Score) - YouTube

"Important! I do not own the rights to this film but I do own the music.

This video was created to project a unique  interpretation with respect to the copyright holder.

My version of events.. My re-score of the film Phantom Museum by the Quay Brothers.

For More information email me at callumminton@hotmail.com
For more music visit www.soundcloud.com/callum-minton
Follow me on twitter @CallumMinton"

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2016.08.15

■映像 21世紀の『ブレードランナー』 リールビジョン "TEARS IN RAIN : HOMAGE TO BLADE RUNNER"

TEARS IN RAIN : HOMAGE TO BLADE RUNNER from REELVISION.jp on Vimeo

"Original short movie
“TEARS IN RAIN ” : HOMAGE TO BLADE RUNNER
Shoot in Tokyo and CG and VFX / REELVISION (reelvision.jp)
VFX support : Takashi Ishibashi
Music and sound effects / 日山豪echoes-breath)"

REELVISION Co.,Ltd.(Facebook)

" SF サイバーパンクの傑作「ブレードランナー」へのオマージュ映像ですw。昨年末あたりから東京の街の映像をサンプリングし、CGやVFXを足しながら、愛して止まない作品の世界観をどこまで再構築できるか実験を続けてきました。
 音楽にもこだわって制作しておりまして、オリジナルのサウンドトラックのヴァンゲリスの音に近付くよう研究し、MOOGやYAMAHA CS80 等のアナログシンセの音を使ってエコーズブレスのGo Hiyamaさんに壮大で素晴らしいサウンドをオリジナルで制作していただきました。" 

 神山健治監督の『東のエデン』OP映像等で活躍されている、映像クリエーター山口正憲氏のスタジオ 株式会社 リールビジョンによるリドリー・スコット監督『ブレードランナー』のオマージュ短篇。 

 東京の少し未来を切り取ったシャープな映像とCGとシンセの音楽の融合。ところどころ、ハッとする素晴らしい21世紀の『ブレードランナー』映像ができあがっていると思うのは僕だけでしょうか。

 未だにその映像DNAがいろんな作品に流れ続けているマスター・ピース『ブレードランナー』、そろそろこれを超える新たなインパクトのある未来映像が産まれてきてもいいのではないか、と思うのですが、こうした日本のスタジオの果敢なチャレンジが、とても頼もしくみえます。

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2016.08.10

■感想 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 『複製された男』Enemy


複製された男(日本語吹替版) - YouTube

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『複製された男』HD録画 初見。
 『ブレードランナー』続篇を撮る予定のヴィルヌーヴ監督の映画も初めて観たのだが、これはなかなか素晴らしい傑作。

 落ち着いた色調で撮られたトロントの街。時々挿入される蜘蛛のイメージを用いた幻想。そして謎の「複製」。
 淡々とした映像に、忍び込む狂気。ラストまで観ても僕にはこの物語が何を意味しているのか、実は理解できなかった。

 しかし映画のトーンが素晴らしく、いい映画を観たという感想が強く感じられる。このタッチで現代のサイバーパンクが撮られるのであれば、、、。『ブレードランナー2』にも大いに期待が膨らむ。

 さきほど調べてみたら、ネタバレになるので、リンク先を読むのは注意頂きたいのだけど、重要な蜘蛛のイメージに使われたのが、カナダにあるルイーズ・ブルジョアによる「ママン」という彫刻。
 映画の重要なキーイメージとして素晴らしい映像を提供している。

◆関連リンク
複製された男 シネマの世界<第453話> : 心の時空
複製された男 - Wikipedia
ルイーズ・ブルジョワ - Wikipedia

"カナダ国立美術館 ニューヨークのグッゲンハイム美術館、オタワのカナダ国立美術館、ビルバオのビルバオ・グッゲンハイム美術館、ロンドンのテート・モダンサンクトペテルブルクエルミタージュ美術館、ソウルのサムスン美術館 Leeum東京六本木ヒルズなど、9か所に展示"

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2016.08.08

■感想2 (後半ネタバレ) 庵野秀明 総監督/脚本, 樋口真嗣 監督/特技監督, 尾上克郎 准監督/特技総括『シン・ゴジラ』


All Shin Gojira/ Godzilla Resurgence Scenes In Order ( ために、すべてのシンゴジラシーン) - YouTube.

 金曜の夜、109シネマIMAX@名古屋で2回目。
 先週に比べると座席は8割くらいの入り。しかし3~40代男性がほとんどだった先週に比べ、女性客2割くらいと20代男性が増えていた。明らかに広い層へ浸透している感じ。

 2回目は、ストーリーわかってるので、落ちついて細部とそして画面レイアウト中心に堪能。カラー(khara.inc)スタッフ陣の絵コンテと庵野総監督自らの画面設計が、従来のゴジラ映画にない映像のワンダーを創り出している。

カラー(khara)スタッフ陣による画面設計(まずはネタバレなし)
 シン・ゴジラ - Wikipedia

"画像設計:庵野秀明
イメージボード:前田真宏林田裕至、丹治匠
画コンテ:轟木一騎摩砂雪鶴巻和哉前田真宏樋口真嗣庵野秀明"

 映像設計の中心的なスタッフと考えられるメンバーをwikipediaより抽出した。庵野総監督を筆頭に、まさに株式会社カラーの演出家がコアを成していることがわかる。

 ヱヴァンゲリヲン新劇場版に顕著なのだけど、彼らの手に成るあの映像空間設計は何であれだけ魅惑的なのだろう。その最も素晴らしい成果として想起するなら、僕はまず『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の冒頭、海上を歩行する第7使徒に、上空で輸送機から放たれた式波・アスカ・ラングレー操るエヴァンゲリオン2号機が挑む空中戦を挙げる。
 あのキレキレの、そしてそんな流行の軽い言葉だけでは表現できないハリウッド映画ほか世界のどこの映画でも観たことのない縦横無尽に流れる様に動くカメラ視点と2つの機体の融合レイアウトによる映像空間の革新。

 そしてその成果の延長上に位置する、今回の『シン・ゴジラ』映像は、そんなカラーによる日本アニメの先端と、特撮番組のDNAが進化し融合した「完全生物」的映像であると思う。それがシン・ゴジラの、(日本特撮というより)映画の革新である。

 テクニックとその魂は戦闘シーンは言うに及ばず、今回、会議シーンにも脈々と活きづいている。

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 まず戦闘シーンは、まさにセンス・オブ・ワンダーの宝庫。
 従来ゴジラ映画からの「シン」の革新のひとつは、自衛隊を徹底してリアルに描いたことに加えて、ヱヴァから受け継ぐ鮮烈な画面レイアウトのまさに賜物と感じられた。

 例えばネットから引用した自衛隊F2-A機のコクピットからのシーン。
 パイロットを俯瞰で捉え、その頭上を左から右にスライドしていく僚機。このパキッと決まったレイアウトは恐らく事前のプリヴィズ映像で作り込まれた画面設計の成果なのではないか。

 会議シーンでは、例えば、特に自衛隊の中央指揮所が最初に出てくるシーン。
 鶴見辰吾演じる統合幕僚副長と隣の陸幕長 面長の男(國本鍾建氏というオフィス北野の俳優さん)、このシーンの映像の切れの良さは特筆に値するでしょう。エヴァのネルフや軍関係シーンの直系なのだけれど、画面設計(と照明)で抜群にインパクトのある映像になっている。自衛隊の鍛え上げた人間の面構えが、これから始まる戦闘への期待感を高める。
(僕は特に好戦的な人間ではないけれど、これだけ素晴らしい日本人の顔は久しく映画で観たことがないのではないか、というくらいゾクゾクきた。精悍な顔の役者陣をこのシーンでは選んだのであろうが、画面設計と役者による見事な革新の日本映画のワンシーンであろう)

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 このカラースタッフ陣と樋口監督以下実写スタッフによる麻薬的映像。何度も観に行きたくなる秘密はここにもあるのかも。

 レイアウトを徹底したアニメ制作は(宮崎駿と)押井守の開拓した手法だが、それに実相寺他の映像DNAと組合せて、日本映像文化の結実として実写映像の革新を生んだスタッフに最大限の拍手を贈りたい。

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庵野秀明責任編集『シン・ゴジラ』公式記録集 ジ・アート・オブ シン・ゴジラ - :EVANGELION STORE

庵野秀明責任編集『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』

 画面設計の資料がこの本にどれくらい掲載されるか分からないけれど、本の広告チラシのコンテンツの中には絵コンテとかレイアウト画の表記は残念ながらありません。絵コンテ集は、別で出るのかな?

 あとブルーレイには、是非、プリヴィズ映像も入れてほしい。日本のアニメ映像の先端が実写のDNAに抽入された貴重な映像記録として(^^;)


★★★★ネタバレ注意(絶対読んじゃだめです)★★★






◆反映された現実の重み(ネタバレ)

 実は前回の感想で書かなかったのだけれど、一回目を観た後、映像としては初代ゴジラに勝っているのだけれど、そのテーマ性、背負っている監督以下スタッフがその時代から感じている何ものかの強度が、やはり初代にはかなわない部分となっているのではないか、と思ったのだった。

 だけれど二回目を観て、その思いは軽減された。前回、テーマ的には圧倒的に傑作なのは初代ゴジラなのではないか、と思っていたのだけれど、今回観て画面設計の再評価だけでなく映画に込められた想いの強度も、かなり初代のそれに近づいているのではないか、と思えたのだ。

 それは前回の感想で書いた福島東電原発と東日本大震災の象徴としてのゴジラ部分と、さらに重畳された原爆被爆国としての日本の描写。カヨコ・パターソンの祖母の被爆体験とその語りの後にインサートされる2つの広島の被爆写真。第三の核の洗礼を、いまだ属国としての扱いを続ける米国から受けることになる危険の高まる終盤の展開。

 一回目観た後、なぜシン・ゴジラも初代と同様に皇居を目指したのかが、最大の謎だと思っていた。明確には語られないが、そこには人類史上唯一の核攻撃を受けた国の被爆者たちの想いや、牧元教授の妻の受けた放射能被害、そうしたものの漂う霊気のようなものがシン・ゴジラの背後に纏われていたのかもしれない。(そのようにでも考えないと皇居を目指す意味は全く不明だ)

 熱核攻撃の危険性を描くことで、この国の過去の被爆体験を想起させ、それすらもゴジラに纏わせた今作の製作陣の想い。皇居と東京駅を一望できる科学技術館の屋上から俯瞰された最後の戦闘は、同じ場所でクライマックスを描いた被爆映画『太陽を盗んだ男』の長谷川・ゴジ・和彦監督がそこに込めた想いも召喚し、日本人の戦後を総括したひとつの怨念の形象としてのシン・ゴジラ像を東京のコアに創出した。

 凍結したシン・ゴジラの姿は、戦後の日本の姿のネガ画像のようでもある。

 そうした描写だとぼんやりと理解したところで、初代ゴジラの持っていたものを皇居(宮城の緑)の姿から再度召喚し、そしてさらにまさに現在の日本人に重くのしかかる震災と原発、そしてアメリカとの国家間関係を具体的に描き出して、結晶化したシン・ゴジラの佇まい。

 ニッポンの陰画がクライマックスで東京の中心に焼き付けられた。
 そしてそこに立ち向かった日本人のチームワークが、ひとつの救済のイメージを、映画全体にポジ画として相対。エンターテインメントとしてのカタルシスと、そして埋め込まれたテーマ。その映像としての形象があの凍結したゴジラの姿なのであろう。

◆伊福部音楽の融合 (ネタバレ)
シン・ゴジラ - Wikipedia もうひとつ庵野総監督による音響設定について。

"音響設計:庵野秀明
音楽 : 鷺巣詩郎伊福部昭"

鷺巣詩郎『シン・ゴジラ音楽集』
(リンク先でサントラの各曲を視聴できます。)

 冒頭、初代ゴジラからの伊福部サウンドであるゴジラの足音と咆哮音の引用以降、第一 〜 第三形態のシーンでは鷺巣詩郎音楽が奏でられている。
 そしてシン・ゴジラの鎌倉上陸シーンで、満を持したように初めての伊福部音楽「ゴジラ上陸」が勇壮に流れる。

 まるでシン・ゴジラの映像により、伊福部音楽のゴジライメージが上書きをされているようだと感じたのは僕だけではないはず。
 ここに顕著なように、僕らがよく知っている伊福部音楽がシン・ゴジラの映像によって次々とイメージの上書きをされていく。それは単なる上書きではなく、今まで持っている東宝ゴジラ映像のイメージをその都度想起する我々特撮ファンの脳内に、そのイメージとシン映像の相乗効果をもたらし、より豊醸な音楽として記憶に刻まれる。

 それはまるで(ここは意見の分かれるところでしょうが少なくとも僕にとっては)初代のあと、いつしか怪獣プロレス的になっていったゴジラの姿にどこかしら伊福部音楽の勇壮さがそぐわなくなっていった、ある意味、物足りなさを感じていたファンに、あらたに音楽イメージのリビルドを行なっている様にも聴こえた。

 特に素晴らしかったのがクライマックスの『怪獣大戦争』の『宇宙大戦争』テーマ。
 科学技術館の臨時指揮所の上空にはためくシン・ゴジラのビーム砲の光。そこにかぶる『怪獣大戦争』のテーマの勇壮さたるや素晴らしいシン映像とゴジラ音楽の融合である。ここはまさに相乗効果で、イメージの爆音がファンの脳内に鳴り響き、最高にテンションの上がるところである。
 
 こうした音響効果が庵野総監督によって設計されたのか、鷺巣詩郎氏によるものなのかわからないが、この音楽と音響が映画のイメージをビルドアップしていたことは確かな事実。

◆シン・ゴジラ シリーズ
 まだ先の話を書くのは早すぎるような気もするが、このシン・ゴジラの続篇について想いを馳せてしまう。

 今回描かれて基調としてもたらされたリアリティ描写と、ゴジラという存在の設定と造形。そして世界各国と日本の関係。
 これらのフォーマットを念頭に置いた時、続篇が作られるとすれば、過去のゴジラシリーズとは全く異なる、新たな広大なゴジラワールドがここから広がっていくように感じられる。

 ゴジラ細胞による世界へのシン・ゴジラ(属?)の拡散と対処。あるいは凍結された荒ぶる神の復活と3千5百数十秒後のアメリカ含む多国籍軍の熱核攻撃を受ける日本、もしくはラストに描かれた尻尾の先端のヒト型のものの出現。
 
 これだけハードな設定がなされていれば、ただ単なるVSシリーズへ移行することは考えにくいだろう。日本映画界の優秀な監督群による、庵野のDNA(コンセプトと映像スキル)を持った続篇の登場にも期待したい。
(庵野総監督以下、カラー主要スタッフには「シン・ヱヴァンゲリヲン」シリーズの完結と来るべき『風の谷のナウシカ 第7巻』映像化に期待していたい(^^;) )

◆関連リンク
2016年08月05日(金)「シン・ゴジラが大ヒット!原爆の日を前に語る、戦後日本で核はどう描かれてきたのか」(探究モード)

" 映画「シン・ゴジラ」が大ヒット。原爆の日を前に語る、戦後日本で核はどう描かれてきたのか
■出演者 恵泉女学園大学教授の武田 徹さん、神戸市外国語大学准教授の山本昭宏さん"

 Session 22における『シン・ゴジラ』議論(たぶんその一)。荻上チキほかの気鋭の評者による読み解きをお楽しみに。
Godzilla Resurgence 2016(Youtube)
 タバ作戦の爆撃シーン等。画面設計の冴えの一端。


シンゴジラ公開記念イベント、海ほたる、除幕式後のグッズサイン - YouTube
 海ほたるのイベントで樋口真嗣監督によって語られたシンゴジラの秘密。背びれは生頼範義氏のイラストを参考に造形されたとのこと!

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2016.08.03

■情報 クリスピン・グローヴァー「ビッグ・スライドショウ」奇跡の再登場 !! @カナザワ映画祭2016 : Big Slide Show

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クリスピン・グローヴァーが金沢に帰ってくる!! カナザワ映画祭2016で「ビッグ・スライドショウ」を開催 - カナザワ映画祭主宰者のメモ帳

"「クリスピン・グローヴァーのビッグ・スライドショウ」とは、 ハリウッド・メジャー大作で活躍する俳優クリスピン・グローヴァー。彼は、ライフワーク「ビッグ・スライドショウ」のため、自らフィルムを抱えて全米各地と欧州各国を興行。そして、2008年以来満を持して、今年ハリウッドから金沢まで帰って来る!
 これまで誰も見たことのないイメージの連続、片時も目が離せない! この機会を見逃すな!

9/24(土)
・ビッグ・スライドショウ
・『It Is Fine! Everything Is Fine.』上映
・Q&A ・サイン会

9/25(日)
・ビッグ・スライドショウ
・『What is it?』上映
・Q&A ・サイン会"

カナザワ映画祭2016タイムテーブル最新版 - 目標毎日更新 カナザワ映画祭主宰者のメモ帳

 来た〜〜〜〜 ! この幻のフィルムが、また日本で観られる !!!!
 下記のリンク先に詳細を書いている様に、特殊な上映形態ゆえ、この後、もう二度と日本で観られる機会はないかもしれない。9/24,25の土日。何としても金沢へ赴きたいものだが、、、果たして行けるのだろうか!!?

◆関連リンク 当Blog関連記事
・■デヴィッド・ブラザーズ,クリスピン・グローヴァー監督  スティーブン・C・スチュワート脚本主演『It is Fine. Everything is Fine!』

" 先週末に金沢で上映されたこの映画、素晴らしい傑作であったらしい。ネットでの評判がとにかく凄い。
 特殊な興行形態であるため、日本で観たことのある観客は、カナザワ映画祭2008の会場にいたわずか百数十名のみ。そして今後、DVD等の発売の可能性はなく、日本での公開が再びあるか、まったくわからない。まさに幻のカルト映画の誕生である。
 なんとか都合を付けて観に行くべきだったと悔やんでも後の祭り。そこでネットでの感想リンク集です。"

■動画 クリスピン・グローヴァー「ビッグ・スライドショウ」Crispin Hellion Glover "Big Slideshow"

" かつてカナザワ映画祭で一度だけ日本で実演された、クリスピン・グローヴァーのカルトパフォーマンス "ビッグ・スライドショウ"、この一部が動画として公開されていたので御紹介。"


Crispin Glover - What It Is, and How It is Done. - YouTube

 以上2つのリンクは、うちのBlogの関連記事です。前回のカナザワ映画祭の機会を見逃した人間の、羨望の記事です....(^^;)。殊能将之氏ほか、大絶賛の観客の声をご参考に。


Crispin Hellion Glover Audience Q&A - YouTube.

"My friend asks Crispin Glover a question. He answers. After a screening of his movie, "What is it?" at the IFC in NYC. Crispin Glover is awesome."

 Youtubeで公開されていた、"What is it?"上映後のクリスピン・グローヴァーとのQ&A。こうした雰囲気で上映会は進められるようです。

 本当にこの幻のフィルム、いったいどのようなものなのか!?
 秋の金沢が熱い!!!!!!

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2016.07.31

■感想(後半ネタバレ) 庵野秀明 総監督/脚本, 樋口真嗣 監督/特技監督, 尾上克郎 准監督/特技総括『シン・ゴジラ』


映画『シン・ゴジラ』新予告 - YouTube

◆まずは総論(ネタバレなし)
 名古屋109シネマ IMAX版 初日最終回を観てきた。最高に面白く刺激的。
 ネタバレ感想は後半に書きますが、是非、白紙で観に行かれるのをお薦め。前半はネタバレ避けますが、先入観なしでの視聴がお薦めなので、この原稿を読むのはやめて、是非劇場へ。(初代ゴジラを昭和29年に初めて観た観客のワンダーに近いものが感じられる作品なので、、、。そんな体験ができる超貴重な機会を自ら捨ててはいけませんw)

 会場は古い特撮ファンより、3, 40代のファンで満席。初日のこういう時間帯だからかもしれないが『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の客層と似てる感じだった。そしてラスト、会場から拍手が巻き起こったので、大ヒットになる予感(^^)。

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「ニッポン対ゴジラ」と冒頭の展開(少しネタバレ)
 映画はまさしく庵野秀明映画と言っていい、巨大生物と日本自衛組織との一大映像ページェント。僕らがずっと観たかったリアルで空想科学なゴジラがそこにいた。(ギャレス版もリアルだったけれど、「空想科学」ではこちらが圧倒的にセンス・オブ・ワンダー)

 「ニッポン対ゴジラ」、そのリアルのひとつの要素は、すでに関係者から公開前にいろんな場所で語られているように、政府と自衛隊の対応を徹底的に現実の法律の枠に即して描いているところ。

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 そのシーンの演出と編集がスピーディで冴えていて映画として大きな見所になっている。ここは『エヴァ』でも一部シーンで描かれてきたトーンだが、今回のは徹底的にそれを突き進めてあり、まさに庵野映画としての「進化」でもある。

 最近、どこかでこれだけの情報量を言語によって(話し言葉と字幕で)畳み掛ける映画を観たなぁと思い出したのが大林宣彦監督の『野のなななのか』
 庵野総監督にあの素晴らしい映画の結晶のような作品が影響を与えているかどうかはわからないが、政治描写のベースになっていると語られている岡本喜八監督『日本のいちばん長い日』を再見しても、そこにいる閣僚と官僚は『シン・ゴジラ』ほどスピーディな思考と言葉を操ってはいない。

 映画のタッチが、どちらが似ているかといったら、その言語のトーンとしても『野のなななのか』を挙げるしかない。(もちろん群像劇としての形態と政治家の精神とか若者の感覚は『日本のいちばん長い日』の影響が間違いなく色濃くあるのだけれど、、、)。

 ゴジラという怪獣を新しい巨大生物として、旧作にリスペクトしながらも新たな息吹を吹き込んで定義し直し、初代をリボーンした『シン・ゴジラ』。ギャレス版に勝るとも劣らない白組他のCG映像と、東宝特撮スタッフの映像、スタジオカラーのアニメ演出家とアニメーターの素晴らしいレイアウトとデザインで、その奇想を徹底的に描き出したシン怪獣映画。

 これは怪獣映画ファンだけでなく、SF映画好きアニメ好きほか、映画ファンも参戦するしかない、映像のまさしく祭りです。

★★★★ネタバレ注意(絶対読んじゃだめです)★★★






「現実対虚構」(ネタバレ) シン・ゴジラに埋め込まれたもの
 観終わった時はエンターテインメントな怪獣映画にワクワクしそれほど意識しなかったが、本作は日本の現在晒されている現実がリアルに表現されている。
 1日経って話の骨格を思い出してみると、身も蓋もない言い方になるけれど 「体内で核分裂をする動く "福島東電原発であり東日本大震災" が東京の街を蹂躙、それを日本人の集団の英知が救う」というのが作品の骨格。(加えてそこに日米安保と世界のパワーポリティクス、そして自衛隊と米軍による戦闘という、現実の日本の国際上の課題が強く反映されている。ラスト、将来の日米政治を担うだろう2人の主人公のセリフでパートナーシップでなく「傀儡だろ」というのが効いている)

 見終わった後の第一印象、エンタメの枠でいいものを観た〜という感想に引っかかるのが、クライマックスの戦いで要になるポンプ車シーンのカタルシスが低トーンであっけない出来であったこと。
 もっと消防師とか自衛隊員の誰かをクローズアップして決死の行動を詳細に描いた方が良かったのではないだろうか。感情移入できる登場人物を1名中心に置いて。

 でも考えると、そんな描写をするのはこの映画を作れる力量のあるスタッフなのだから別に難しいことではない。意図的にこのように薄味で描かれているのだ。
 観終わった後、このように引っかかったので考えると、このシーンは観客の現実の311の記憶が映画を補完するような、そうした構造に組み立てているのではないか。
 そこから福島原発を想起して前述の話の骨格(まさにゴジラが福島原発のメルトダウンした原子炉を体現しているのだと)気づかせる仕掛けがあるのだ。

 今回の巨大生物は、海底へ投機された放射性廃棄物が原因になってるし、核兵器がその契機になっていた初代に対して、まさに「東京に原発」が本作の構造である。

 今作は初代ゴジラに迫れたろうか。
 あのシンプルな水爆と科学の暴走への恐怖は、本多猪四郎監督他スタッフが映画製作直前に体験した戦争と日本に投下された二発の原爆、そして繰り返される水爆実験の影が色濃く滲み出ている(公開の9年前が敗戦の年、二発の原爆が人類史上初めて投下された年)。

 それに対して本作は、311による巨大な災害と原子炉メルトダウンによる核の洗礼を受けたスタッフ(と我々観客)。5年前の311の体験がスタッフに生々しく残っている中での、核廃棄物に起源を持つゴジラ。ここが初代をターゲットに本作を企画した庵野総監督の意識に強くあっただろうことは間違いない。そして原発批判をどこまで入れるか、スタッフは多分葛藤しただろう。

 本作は表面上はエンターテインメントに徹して仕上げている。もしかしたら、311直後で強烈に震災の影響を受けてねじくれた『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』に対して、その影響は整理され『序、破』のエンタメ性が復活してきているのが本作ではないだろうか。(ここから、次のヱヴァンゲリヲン新劇場版は、再びエンタメ回帰で一大カタルシスが期待できるかも。)

 ゴジラは今回も皇居を目指して進行。で、都心に原子炉が現出。そして最後はオブジェのようになって、東京駅の隣の皇居と都民と国民を睥睨する。続篇ではあの凍結したオブジェのようなゴジラが再度、、、といった展開で未だ収まらない原発問題をさらに鋭くえぐるような映画も可能性があるのではないだろうか。

 戦争という巨大な体験に対して、規模は比較すると小さいがそれでも未曾有の物理的傷と神的な傷を現代に残した「東日本大震災」。これによって初めてリアルに初代に拮抗しうる負のエネルギーを持ち得た「シン・」ゴジラ。

 これからのシリーズ化があるかどうかは分からないが、未だ終わっていない福島原発と国際的なパワーポリティクスの日々増していく不安の堆積。これらは初代と違い、「現実」が今後も持ち続ける負のエネルギーである。
 ここに正面から向かい合うことが、シンシリーズの宿命としてゴジラ細胞のDNAに刻み込まれたものである。少なくとも僕は倒壊し放射能汚染された東京が、現実の日本と並走しながら、あの若い政治家と官僚たちの手で蘇る姿を今後も観てみたい。その時、「現実と虚構」の対決はどちらに軍配が上がるのだろうか。

◆蛇足のアラカルト ここからは箇条書きでw

・「巨神兵、東京に現わる」に続き青い光で焼かれる東京。庵野監督は本当に『風の谷のナウシカ』第七巻をやりたいんでしょうね。今回の「巨神兵」は、東京に現わるよりもシャープな演出だったと思う。レイアウトと編集の冴えがさらにピシッと決まっている。庵野総監督がDNAは埋め込んだので、シン・シリーズからは離れて、是非(ヱヴァンゲリヲン新劇場版と)『ナウシカ第7巻』を早く撮ってほしい。

・第2→3形態への変貌シーン。あの覚醒シーンも白眉。こんなゴジラ観たことない。幼体からの急激進化/巨大化の過程には個性が現れるだろう。今後のVSものの可能性もここに埋め込まれている。

・ヤシマ作戦ならぬ、ヤシオリ作戦のネーミングの由来がわからなかったのでググってみたら、このお酒の名が起源のよう。同名のバーが名古屋にあるみたい。ゴジラファンで混むかもしれませんね。
 以下はそのバーについて書かれたブログ記事からヤシオリについて。まさに粗ぶる神を眠らせる酒。Facebookの石田達也さんによる『シン・ゴジラ』ネタバレ談話室で教えて頂いたのですが、「八塩折之酒」という漢字になるそうです。
「むぎコメぶどう ヤシオリ」(名古屋市中村区)にて~~|吹き抜ける風と太陽を浴びて・・・心の行くまま流れるまま・・・

"「ヤシオリ」は「ヤマタノオロチ」伝説に出てくるお酒の名前から採ったとか。
ヤマタノオロチは、甘くて飲みやすい日本酒の古式製法・「しおり法」で造られた「ヤシオリの酒」をがぶ飲みし、酔っ払った寝込みを襲われた・・・・と言う話。ヤシオリの酒の「ヤ」は日本の古語で「何度も繰り返す」と言う意味。"

・前回の初代ゴジラの記事で述べたゴジラの足音について。
 本作では、初代ゴジラをなぞるように、冒頭東宝マークが現れるととも、あのゴジラ音が。その後は、後半で一箇所だけ主人公がビルの谷間に見るゴジラシーンにあの伊福部昭によると言われている音が使われていた。まさに初代へのリスペクトである。

・若い理想を持つ政治家の言葉は、その将来を想像すると『ナウシカ第七巻』の理想を持っていたはずの為政者の腐敗を思い起こさずにはおれない。膿のように溜まっていく現実との軋轢で磨耗する理想。そうしたところもシン・シリーズで描かれるテーマのひとつでしょうね。

・自衛隊攻撃、その政治的手続きと絞り込まれた作戦、そしてギリギリと積まれた緊迫感がとても良かったですが、ひとつ特筆すべきは攻撃精度。普通のゴジラ映画では火機の攻撃は当たらない玉が周囲に散らばりまくる。しかし今回は的確に攻撃対象にほぼ全弾が当たっている(予告篇で何回か見てみると一発外れているようにも見えるけどw)。あれだけの巨大なターゲットなので全弾当たるのは当たり前。その描写のリアルさもとても良かった。

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2016.07.27

■感想 本多猪四郎監督『ゴジラ』(1954年)


ゴジラ - YouTube

 本多猪四郎監督『ゴジラ』(1954年) デジタルリマスター WOWOW版録画見。
 ちまたでは庵野秀明総監督&樋口真嗣監督『シン・ゴジラ』試写の感想がつぶやかれているようですが、(ネタバレが怖くて情報シャットアウト中w) 、『シン・ゴジラ』の前に第一作を観直した。真面目に丁寧にそして大胆に作られていることを再度実感。

 特に昨年観た時に気になっていたゴジラの足音に着目して今回の感想をまとめてみた。

 ゴジラの足音は、タイトルバックと海からの登場シーン、大戸島シーンのみに、太鼓の音で付けられている。日本本上へ上陸してからは.地上シーンも海上シーンも足音は無音。
 建物が踏み潰されるシーンのみに、その破壊音が当てらえているので錯覚するが、今回注意して観るとまさにそのように演出されている。特に無音のシーンは、どこかゴジラの幽玄な雰囲気を創り出している。

 冒頭でゴジラの脅威を足音(太鼓)で表現しているので、普通に考えればリアリティーを出すために、巨大な存在のおそろしげな地響きをともなう足音を使うのが常道であろう。
 しかし本多監督(と円谷特技監督?)は、そこを無音で処理した。明らかに強い何らかの意図があったものと考えられる。

 この無音の意図は何だろうか。
 やはりよく言われる様に、太平洋に散った英霊の象徴化を意図されていたのか。それとも水爆という脅威を映像化するのに、現実的な音を廃して幻をイメージさせようとしたのか。

 科学志向が強かったという本多監督がこの抽象的描写で何を狙ったか、機会があれば御本人に確認したかったと思わざるを得なかった。ネットで検索すると、いくつかこの描き方に対する解釈を読むことができるのだけど…。今回探した限りでは直接関係者に確認した情報はネットにないようだった。
 54年版ゴジラのドキュメンタリー的な映像描写、テーマである科学批判と、そして幻の様なゴジラ描写。これらが、後年のエンタメ作、リアル志向作と圧倒的に異なり、本作に鋭いギリギリするような緊迫感をもたらしているのだと思う。

 そして、芹沢博士の発明したオキシジェンデストロイヤーという仕掛けを用いることで、ゴジラという存在で水爆の脅威を描くとともに、科学の暴走の悲劇を二重に描き出している。ここは何度でも書き綴られるべき本作の素晴らしい描写であろう。
 さてこれを復習した上で、原発事故後の日本と『シン・ゴジラ』の闘いがどのように描かれているか。オキシジェンデストロイヤーに変わる仕掛けは何か用意されているか。そしてゴジラの足音の処理は?

 興味は尽きないがこうした空想をして時間を潰すのもあとわずか3日程。週末の公開が楽しみでならない。

◆関連リンク
ゴジラデジタルリマスター版三大放送ビットレート比較 - 録画人間の末路 -

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2016.07.25

■情報 ヤノベケンジ展「シネマタイズ」&「ULTRA×ANTEROOM exhibition 2016」 開催!

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ヤノベケンジ個展『シネマタイズ』@高松市美術館 - Togetterまとめ

"ヤノベケンジ個展@高松市美術館「CINEMATIZEシネマタイズ」
2016 年7 月16 日(土) ~ 9 月4 日(日) [会期中無休]
http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/museum/takamatsu/index.html
開館時間:月~土9:30~19:00 日曜日9:30~17:00
* 入館は閉館30分前
入場料:一般1,000円、大学生500円、高校生以下無料
http://www.yanobe.com/
ヤノベケンジHP
http://ultrafactory.jp/news/post_204.html
京都造形芸術大学ウルトラファクトリーHP"

 7/16から開催された大規模なヤノベ氏個展。僕はすぐは行けないため、twitterの皆さんのつぶやきから、開催の様子をまとめてみました。
 撮影自由とのことで、皆さんの撮られた素晴らしい写真が見られますので、リンク先をご覧ください。(冒頭の写真は、Google画像検索の結果です)

Uxa2016

「ULTRA×ANTEROOM exhibition 2016」開催! | 京都造形芸術大学ULTRA FACTORY

" 今回は同時期に高松市美術館で開催されるヤノベケンジ展「シネマタイズ」で映画出演とコラボレーション展示をする俳優の永瀬正敏も特別出品し、20年以上のキャリアを持つ写真家としての顔を披露致します。
加えて、新たに誕生するアーティストが客室をディレクションするアーティストフロアでは、本展出品のヤノベケンジと、名和晃平率いるSANDWICHが生み出すアート空間にご宿泊いただけます。まさにホテル全体が刷新され、日常を超えたアートを体験できる場となることでしょう。今まで以上に京都から世界への 文化発信基地となるホテルアンテルーム京都で、世界を変え続けるウルトラ・クリエイターの展覧会を是非ご高覧ください。
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
「ULTRA×ANTEROOM exhibition 2016」
会 期:2016年7月14日(木)-9月11日(日)
会 場:ホテル アンテルーム 京都 GALLERY9.5
会期中無休・入場無料/営業時間:12:00~19:00"

 こちらは二回目になる京都のホテル・アンテルームとウルトラファクトリーの企画。ホテルにウルトラな作品群が飾られ、部屋ごとにアーティストの作品が飾られているようです。
 京都一泊、高松ツアーが必要かもw。

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2016.07.20

■情報 磯光雄監督 新作『レユニオンの海賊とドードー鳥』"Les Pirates de la Réunion Le Réveil des dodos"

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磯光雄監督 最新作が発表! | インフォメーション | 月刊アニメージュ

" この作品は、インド洋にあるフランス領レユニオン島を舞台にした物語で、キャラクターの一部とイメージボード、島のイラストが紹介。磯光雄さんはフランスのアニメファンにも熱烈な支持を受けており、2007年の『電脳コイル』以来の作品発表に、会場のボルテージは上がり、期待の高さをうかがわせた。
 また、会場に磯光雄本人がサプライズで現れ、オーディエンスに紹介されると、会場は大きな拍手と歓声に包まれ、磯さんも手を振ってそれに応えた。"

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 磯光雄監督『電脳コイル』以来の待望の新作!どうやら映画企画として進行中のようです。
 『Les Pirates de la Réunion Le Réveil des dodos』、フランスのスタジオ"Yapiko"とのコラボレーション。イメージボードとキャラクタデザインが発表されています!

 タイトルの『Les Pirates de la Réunion Le Réveil des dodos』は、Google翻訳では「ドードー達の海賊会議 目覚め」という訳文を編み出してくれていますが、以下の磯監督自身のHPに記載された『レユニオンの海賊とドードー鳥』というのが正しい訳なのでしょう。

ima-ima's INFO

"なお、謎のフランス人プロデューサーと共に絶賛漂流中のこの企画ですが、 脱稿後にちょっとした動きがあり、ひょっとしたら近いうちに どこかに漂着(座礁?)したりするかも… 2016/07/06"

"「企画書サルガッソ」連載第二回 というわけで雑誌「アニメスタイル」で漂流企画書をチラ見させてみる連載 「企画書サルガッソ」、第二回は 「レユニオンの海賊とドードー鳥」 興味ある方は是非アニメスタイル009号をご予約ください。7月14日 発売予定です。 "

 すでに『アニメスタイル』008号から、「企画書サルガッソ」という連載で紹介され始めているようです。残念ながら僕は未見ですが、、、。

 傑作『電脳コイル』から9年、磯監督が予見したAR,VRの本格的な時代が到来しつつある現在、新たに監督が挑むのは海賊の物語のようです。イメージスケッチもワクワクする出来なので、期待して待ちましょう。

◆関連リンク
Les Pirates de la Reunion | Facebook
 作品のFacebookページ。
磯光雄監督 twitter

"アニメーター・演出家/「電脳コイル」原作・脚本・監督/最近戦ってる見えない敵:ポピュリズム、宇宙の谷(造語)、水平"

 今年の春からスタートした磯監督のtwitter、ご自身の近況と、最新のテクノロジー情報のRTが中心のようです。相変わらずトンがった未来技術を紹介されています。
Yapiko(フランスのアニメスタジオ 公式)
『アニメスタイル009』
『アニメスタイル008』

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2016.07.18

■情報 クエイ兄弟―ファントム・ミュージアム― @ 神奈川県立近代美術館<葉山館> "Quay Bros. Phantoem Museums "

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クエイ兄弟―ファントム・ミュージアム―:神奈川県立近代美術館<葉山館>

"会期 : 16年7/23-10/10。
休館日 月曜日(ただし、9月19日と10月10日は開館)
開館時間 午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)

 本展開催にあわせてクエイ兄弟が来日し、初日に公開制作を行います。制作された作品は、会期中ご覧いただけます。
日時:7月23日(土曜) 午前10時~11時30分(予定)
※申込不要、参加無料(ただし「クエイ兄弟」展の当日観覧券が必要です)

 アジア初の本格的な回顧展となる本展では、これまで日本では紹介される機会の少なかった映像作品や舞台デザインも交えて、クエイ兄弟の美の世界を総合的に紹介します。"

 ついに日本でクエイ兄弟の回顧展。映像の上映から造形作品の展示まで。
 以前こちらの美術館は、ノルシュテイン夫妻の展示会があり、とても充実していただけに楽しみでなりません。

 いよいよ今週末、クエイ兄弟が日本のファンの眼前に現れるのです!
 初日に行くのは無理だけれど、また東京出張のついでに葉山訪問を目指します。

◆関連リンク
・当Blog関連記事
 「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」展@神奈川県立近代美術館<葉山館>

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2016.07.13

■感想 ローランド・エメリッヒ監督『インデペンデンスデイ リサージェンス』IMAX 3D


Independence Day: Resurgence | Official Trailer 2 [HD] | 20th Century FOX - YouTube

 先週に続いて週末IMAX第2回は、ローランド・エメリッヒ監督『インデペンデンスデイ リサージェンス』IMAX 3D 字幕@名古屋大高。

 いやー、前作を凌駕する超巨大宇宙機による大侵略SF。とにかくその凄まじい超弩級の巨大戦闘艦が月と地球に現れた際に起こる飛んでもないカタストロフの描写には痺れる。たぶん冒頭40分ほどだと思うが、その映像のセンスオブワンダーを観るだけでももう一度IMAXへ行きたい(^^)。宇宙機の大気圏突入映像としては屈指の出来(何が何だか分らないが勢いで観せられている感は強いのだが...w)。月からの連続的な描写で大気圏突入を一気に見せて唐突に破滅の淵にたたされる地球の姿が描かれ、迫力は満点である。

 魅力的な若者たちと前作の登場人物をうまく絡らませて(ep.7には少し負けるけどw)、各戦闘シーンも1つ1つ臨場感をうまく演出している。そしてそれをさらに迫力一杯に観せているのが、ステレオDとレジェンダリ3Dという両雄3Dスタジオによるステレオ映像変換技術。

 巨大宇宙戦艦舐めの、地球戦闘機の立体視ドックファイト。月表面上の戦闘砲舐めの某もうひとつの宇宙機描写。地球着陸時の超弩級艦のそそりたつ巨大感。
 そしてその後に展開する大怪獣映像。
 断言します、この映画はその迫力を真に体感するためには、是非とも3Dで観て下さい。

 物語はSFとしてはどこか映画で観たような、斬新ということはあまりないが、エンタテインメントとしてはなかなか好感が持てる出来。

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 写真引用したのは、地球軍のエース女性パイロット、上海出身の女優 アンジェラベイビー(何て名前だ!)と地球軍の主力戦闘機の姿。戦闘服姿の全身写真が見っからなかったのだけれど、冒頭の戦闘服の立ち姿の素晴しさは、近頃のSF映画ヒロインの中でも屈指。この姿を観るだけでももう一度IMAXへ....(以下略)。

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 右は『インデペンデンスデイ リサージェンス』のキャンペーンでの戦闘機の横に立つアンジェラベイビーの姿。今後、このようなSF映画で活躍されるのを望みたい(^^;)。

 そして脇を固めるのが、シャーロット・ゲンズブール。『二ンフォマニアックス』の印象が強く、どこか妙にエロティックに感じたのは、僕だけだろうか。異星人研究者として、理知的な雰囲気(少しトンデモだけれど、、、)を画面に付与している。

 あと印象的だったのは、前作でアフリカに堕ちた巨大宇宙船を探索しているディケンベ・ウンブトゥ(デオビア・オパレイ)という人物。宇宙人の技術と精神を探るうち、その潜在意識にアクセスしている、という様な設定と、アフリカの呪術的な雰囲気での異星人文明探索というのがSF的な想像力を刺激する。(といってもそのエピソードが描かれてはいないのだけれど、映画の厚みを持ち上げているのは確か。



★★★★★★★以下、少しネタバレ★★★★★★★★




 敵異星人への組織的反逆を狙っている"宇宙生命体連合"(?)について描写されているが、続篇への意欲満々。宇宙の先進テクノロジー同士の壮大なスペースオペラとそこに不屈の戦闘意志を買われて参戦するアメリカ人。

 この規模で大宇宙戦が見られるなら、次回作にも期待。宇宙戦艦の大インフレーションがどこまで進んでいくか、『スターウォーズ』とは異なる、壮大な宇宙の知的生命の運命を賭けたテクノロジーの粋を極めた宇宙戦を観せてほしいものです。

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2016.07.11

■情報 古都プラハの若手作家展 Mladí umělci ze staré Prahy @パペットハウスギャラリー

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Mladí_umělci_ze_staré_Prahy / パペットハウスギャラリー
(マリオネット・腹話術人形・指人形-Puppet House / パペットハウス)

"古都プラハの若手作家展 「Mladí umělci ze staré Prahy : ムラディー ウムニェルツィ ゼ スタレー プラヒ」
JR飯田橋駅東口改札から徒歩2分

7/9(土)- 7/16(土)
※会期中無休
11:00 AM ~ 7:00 PM

佐久間奏多
バーラ・フベナ
テレザ・コマールコヴァー
アルジュビェタ・スカーロヴァー
フランチシェック・アントニーン・スカーラ"

 チェコの若手作家のパペット展示会。Facebookのチェコ蔵さんのページで知りました。僕は不勉強でこれらの作家さんたちを知らなかったのですが、このHPや下に紹介したBlogのページに紹介されている作品写真がとても良いので、機会さえあれば(会期が1週間とは行ける機会は難しいのですが)、是非会場へ足を運びたいものです。

◆各作家のGoogle検索 作品等 画像リンク
 Sota Sakuma
 Bára Hubená
 Tereza Komárková
 Alžběta Skálová
 František Antonín Skála
 各作家の作品をネットで検索してみました。参考にしていただければ幸いです。

Ph100424

まもなく初日。古都プラハの若手作家展 | Puppet House Keeper's Blog Ⅱ

"日本ではじめてのパペット専門店"パペットハウス"を、店主と二人で営んでいます。ハウスキーパーとして、新作の紹介や作家さん情報など、ここから発信していきたいと思います。"

 実はパペットハウスさんのことも知らなかったので、この会期中に行けなかったとしても、一度、東京出張の折にでも寄らせて頂きたいと思っています。

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2016.07.06

■動画 ジェシー・カンダ監督 ビョークPV「マウス・マントラ」björk "mouth mantra"


björk: mouth mantra - YouTube

"björk: mouth mantra taken from the album vulnicura

director, editor, post production: jesse kanda

music: björk
produced by: prettybird
exec producer/producer: juliette larthe
head of production: margo mars
producer: hannah may"

 ビョークのPVが凄い。強烈なので僕は全篇をまだ正視できませんw。視聴は御注意を。自己責任でお願いします。
 今回はこのPVを作ったジェシー・カンダ監督作品について簡単にご紹介します。
 まずは日本語での情報はほとんど出てないですが、以下のサイトで紹介記事がありましたので、引用させていただきます。

これが世界のエグさの最先端!ジェシー・カンダの閲覧注意なMV – 音楽WEBメディア M-ON! MUSIC(エムオンミュージック)

" 最後はアイスランドが世界に誇る歌姫、ビョークの最新アルバム『ヴァルニキュラ』に収録されている「mouth mantra」。なんか、キ、キモいんですけどー!!
 同曲は3年前の声帯ポリープの除去手術で、一時的に声を失ったビョークの心境がテーマ。ジェシー・カンダは特製カメラで、大胆にも「歌っている最中のビョークの口の中」を撮影しているのだ。 ズームが多用された口内は、とにかくグロテスク!
 そこにジェシー・カンダが加えた色の反転や回転の編集により、この世のものとは思えないほど恐ろしい映像に仕上がっている。一度は観ておくべき、世にも奇妙な「口内ミュージックビデオ」である。"

ビョーク『ヴァルニキュラ』

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 左はそのビョーク『ヴァルニキュラ』のジャケットイメージ。
 なんとも壮絶な身を切るようなビョークの姿勢が感じられる。

 このアルバムの最後を飾る曲が「mouth mantra」である。
 そのPVの刺激的な内容には、まさにこのビョークの強い想いが反映されているのではないかと想像できる。

 

ビョークの新譜『VULNICURA(ヴァルニキュラ)』に思うこと | 編集部ブログ | mi-mollet(ミモレ) | 講談社.

"このアルバムは、長年連れ添った最愛のパートナー、現代美術家のマシュー・バーニーとの離別、絶望、家族崩壊からの傷の癒えがテーマになっています。"

 マシュー・バーニーとのいきさつ、僕はよく知らないのだけれど、この経験が『ヴァルニキュラ』に強く影響しているのは間違いないだろう。われわれはこの音楽と映像から、そのビョークの経験を想像するしかない。

音楽の発明家、Björkインタビュー:「VRはライブすら超えるかもしれない」 : ギズモード・ジャパン
 こちらのヴァーチャルリアリティについての、ビョークのインタビューがとても興味深い。VRと身体のリアル、この関係について、とても強い関心を持っているアーティストであることがよくわかる。冒頭のPVはその志向が強く反映されたもののようだ。

 そしてそのPVを監督したジェシー・カンダについて、前述のM-ON! MUSICで紹介されている。

これが世界のエグさの最先端!ジェシー・カンダの閲覧注意なMV – 音楽WEBメディア M-ON! MUSIC(エムオンミュージック)

" ジェシー・カンダは、カナダ・バンクーバーのビジュアルアートデザイナー。3Dデザインやアニメーションを専門とし、超現実的でユニークな映像作品を作ることで有名だ。 彼の知名度を世界的なものにしたのは、1990年生まれの若き天才トラックメイカー/プロデューサー・アルカと制作した数々の作品である。"

Jesse Kanda(公式HP)
 ジェシー・カンダ(もしかして日系の方でしょうか?神田?)監督の公式HPに、動画やCGイラストの各種作品が掲載されています。その中から僕が興味深かったものをいくつか引用掲載します。


Arca x Jesse Kanda — Fluid Silhouettes - YouTube.
 こちらも異様な人体の変容です。この動画のサムネイルは、このブログでも時々紹介する日本のアーティスト加藤泉氏の作品をどこか思い出させるプリミティブな雰囲気があります。この色彩のタッチがどこか共通項を感じます。


FKA twigs - How's That - YouTube.
 こちらは日本アニメ(金田伊功)の影響もありそうなシャープな人体変容。金田伊功の人がヒカリのようなものに変容する動画を、3D-CGで再現したものの様に見えます。


HBA GALVANIZE BY WENCH - YouTube.
 こちらは爆発を美しく表現しています。この橋の爆発は実写なのかCGなのか。
 なかなか多彩な監督ですね。今後も新しい作品、楽しみにしたいと思います。

◆関連リンク
・Arca & Jesse Kanda、東京・大阪にて来日公演 » UNCANNY.

"「TAICOCLUB’16」出演で来日するArcaとJesse Kandaが、東京・大阪にて来日公演を行う。大阪公演は、6月10日、CIRCUS OSAKAにて、また、東京公演は、「TAICOCLUB’16」のオフィシャルアフターパーティとして、6月11日にWOMBにて開催される。詳細は、 各会場のホームページにて。"

 盟友Arcaとこの6月に来日されていたようです。これは覗いてみたかった。
Jesse Kanda (Facebook)

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2016.07.04

■感想 ジェームズ・ボビン監督『アリス・イン・ワンダーランド〜時間の旅〜』Alice Through The Looking Glass


Alice Through The Looking Glass - In Theaters May 27! - YouTube

 ジェームズ・ボビン監督『アリス・イン・ワンダーランド〜時間の旅〜』を7/7にオープンした名古屋イオンシネマ大高のIMAXシアターにて、3D字幕版で観て来た。素晴らしい傑作、ワイドスクリーンバロックなアート映画であり、そして時間SFな幻想映画。

 実は、ティム・バートンが監督した前作にガッカリして続篇は全く観に行くつもりではなかったのだけれど、巨大スクリーン3D好きの血が騒いで、そのこけら落しの7/7、どうしてもIMAXを観たくなって、作品としては今イチと思いながらも、会社帰りに本作を観賞。

 そしたら何と前作の不調(物語も映像も)をはるか後方に抜きさる鮮烈な映像体験が待っていた! 予告篇をチラリとしか観てなかったのだけれど、前作に近いヴィジュアルに見え、全く期待してなかった。ところがあにはからんや、至るところに眼を見晴るヴィジュアルが横溢し、一大アート世界がIMAXの巨大スクリーンに乱舞したのだ!

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 アートの一端を示すとまずあのマニエリスムの代表的画家 ジュゼッペ・アルチンボルドへの素敵なオマージュ、そして「狂えるマーティン」の異名を持つという崩壊の画家ジョン・マーティンの様な破滅する世界の美(上の引用画参照)。
 そしてティム・バートン独特のキャラクタと衣装の、パンクでゴスな美の集大成的な赤の女王イラスベスの魔城。

 そこにクライマックスとして用意された映像、時間テーマSFが描いてきたパラドックスの先のあの崩壊シーンが、今までたぶん一度も映像化されたことのないレベルで眼前に展開する。大海原のイメージを使った時間旅行のシーンと相まって、それは見事な破滅が描かれる。

 前半、前作をなぞるくらいのヴィジュアルなのかと鷹をくくってた私が未熟でした。ティム・バートン監督、ごめんなさいと心の中で謝っていたのだ。これはティム・バートンアート映画のまさに到達点かと思っていた...のだが…。

 さらにエンドロールで驚いたのは、何と監督はティム・バートンではなかった! そうなのです、ほとんど興味のなかったこの映画、僕はバ―トンが監督だと思い込んでいたのです。恥の上塗り(^^)。それにしてもイギリスの新鋭監督のジェームズ・ボビン、今後にも大いに期待です。

 観終った直後の盛り上りの勢いでちょっと持ち上げ過ぎの感はありますが(^^)、全く期待してなかったための眼の狂いもありますので、話半分くらいで聞いて下さいww。

 というわけでIMAXの出来を観に行ったはずがそんなものはどうでもよくて、作品そのものに惚れて帰ってきたのでした。スクリーンは巾19m×高さ10m程で、109シネマズ名古屋より(感覚的には)縦方向が短い。加えて最前列とスクリーンの距離が、大高の方が3座席ほど離れているため、臨場感では109シネマズの勝ちかな、と思ったのでした。

PS.ヴィジュアルばかりの感想になりましたが、マッドハッターの衰弱した姿に見る初期ティム・バートン的キャラクタ造形、そしてサシャ・バロン・コーエンのブラックコメディアンな演技の素晴しさ、物語の骨格、どれも前作を遥かに凌駕してると思うのは僕だけか…。

◆関連リンク
IMAXシアターでの映画体験を自宅で楽しめる「IMAXプライベートシアター」 - GIGAZINE

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2016.06.29

■イラスト iPad Pro Apple Pencil による「シン・ゴジラ」

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   初iPad、iPad Pro9.7inchを買った。
   液晶タブレットとして、Apple Pencilに期待したのが購入理由なので、噂どおりなかなかの描き/書き心地(^^)。で、今回は御目汚しですが、試し描きした私のイラストです。
   まず添付したのは、Procreateというペイントソフトで描いた「シン・ゴジラ」。 写真を下絵に読み込んで鉛筆画風に輪郭をスケッチ、そして色を着色、これらをiPadにApple Pencilで描いてみました。
 ペンの追従性も良く描き心地はなかなかなものです。液晶タブレットとしての性能もかなりいい感じです。

 閑話休題。シン・ゴジラの絵を描いてみて感じたのは、シン・ゴジラの特徴である、表皮の下の赤い血のような色が、やはり独特の雰囲気を醸し出していること。そして手の向きと丸く小さい眼。これらにより幽鬼な雰囲気が横溢しているのが描いてみてよくわかりました。この雰囲気が映画の中で、どう活かされているか、あと一ヶ月後の公開が楽しみでなりません。

 そしてiPad Pro もうひとつの期待の、Apple Pencilによる手書き文字認識によるメモ機能。以下のリンクにプロのレビューがありますが、実は反心反義だったのだけど、聞きしに勝る書き心地。キーボードを買うつもりだったのだけど、これならペンだけで文字入力も大丈夫でしょう。
 会社の会議でも使えるくらいのメモ能力。明日から僕の紙のシステム手帳は、廃業です(^^)。

 もちろん、この雑文も手書き文字認識で描きました。ペンの応答も快適で、階書的に少しAIに気を使って書けば、認識率は95%くらいかと。

”「手書きiPad Pro」はビジネスに最高だった 文字入力もWordも断然快適に” (日経)

 iPadでのApple Pencilお絵描き、こちらはうちの猫ちゃんのチップちゃんです。
 同じくProcreateを使って描きました。

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2016.06.27

■感想 ロバート・フラハティ監督『アラン : Man Of Aran』

Man Of Aran - YouTube
 ロバート・フラハティ監督によるアイルランドアラン島のドキュメンタリー、DVD初見。
 押井守『ガルム・ウォーズ』は、宮崎駿がこの映画を観た記憶から、ふたりが訪れることになったアラン島の印象にその映像のルーツを持つという。荒廃したアンヌーンの光景のルーツがヨーロッパの極北アラン島だということが押井守の言葉で語られている。
 映画で映し出されたアラン島はまさに荒れ地、岩ばかりの土地と荒れ狂う波と急峻な岩壁の島。そこで活きている主人公親子を追うカメラは過酷な地の生活を丹念に捨っていく。
 荒野はアンヌーンであり、宮崎『未来少年コナン』の残され島。
 荒波の中の鮫獲りは、スピルバーグ『ジョーズ』も想い出すが、『コナン』第1話の鮫にも通じる。
 島民をスタッフにこの映画を撮りきったフラハティ監督の欧州北端の文明を描く筆致はどこか異星の開拓物語の様にも観える。人類のたくましさを通感させる来晴しい一本でした。

◆関連リンク
ロバート・フラハティ - Wikipedia
ロバート・J・フラハティ『アラン [DVD] 』
ロバート・J・フラハティ『極北の怪異-極北のナヌーク- [DVD] 』

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2016.06.22

■情報 NASA木星探査機 ジュノー、2016年7/4に木星軌道到達 ! : NASA Juno Jupiter Mission


Jupiter: Into the Unknown (NASA Juno Mission Trailer) - YouTube

"Secrets lie deep within Jupiter, shrouded in the solar system's strongest magnetic field and most lethal radiation belts. On July 4, 2016, NASA's Juno spacecraft will plunge into uncharted territory, entering orbit around the gas giant and passing closer than any spacecraft before. Juno will see Jupiter for what it really is, but first it must pass the trial of orbit insertion. "

NASA Junoミッション公式サイト 
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2016.06.10:木星に探査機ジュノー到着まで25日!! | NASAの木星探査機ジュノーの最新画像と情報を翻訳

"ASAの木星探査機ジュノーは、我々の太陽系で最大の惑星である木星に、25日間と1,110万マイル(1,780万キロ)の距離の地点に到達しています。7月4日の夕方には、ジュノーはメインエンジンを35分間噴射し、巨大なガス惑星である木星の軌道に入ります。"

 NASAの木星探査機JUNOが、いよいよ7/4に木星軌道に到達。
 ジュノー(ユーノー)はローマ神話のジュピターの妻とのこと、七夕ならぬ米国独立記念日に巨大惑星の軌道で二つの神が見事に邂逅する。

 7/4が楽しみでなりません。
 ジュノーに積まれたカメラ「ジュノーカム」による高精細な巨大惑星の映像が観られます! あと半月ほど、巨大惑星の重力に囚われることなく、木星の衛星軌道から数々の映像とデータを長期間に渡って送ってくることを願ってやみません。

 そして木星に愛着を持たれていた小松左京氏ほか亡くなられたSF作家たちにも、ジュノーから冥界へもデータを是非ダウンリンクしてあげてほしいものです。

◆関連リンク
・ジュノー (探査機) - Wikipedia
・ローマ神話の神ジュピター、その妻ジュノー Wikipedia
NASA Juno - YouTube
NASA JPL Live, Ustream.TV
 7/4にはここでライブ映像(とは言っても木星軌道との時差は、6-7億5000万kmの距離により40分ほどあるとのことで、40分前の過去映像であるわけですが、、、)

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2016.06.20

■感想 「みんな、うちのコレクションです」展 @ 原美術館 と 加藤泉作品集“Soft Vinyl Sculptures”

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「みんな、うちのコレクションです」展 [原美術館]

"加藤泉「無題」 2008年/木、アクリル、オイル、石/185×167×110cm/撮影 渡辺郁弘

奈良美智「My Drawing Room」 2004年/ミクストメディア/撮影 木奥惠三"

 東京出張の帰りに、久々に加藤泉作品を鑑賞。
 原美術展の収蔵品展示会、今回の展示では加藤泉作品はポスターのメインビジュアルになっているこの2008年の「無題」作品のみだけれど、木彫りの巨大作品は今回も尽きぬ魅力を放射していました。
 何故僕はこの造形にこんなに魅かれるのか…。まだまだ謎は尽きません(^^;)。

 その他作品では、特に奈良美智作品がとてもよかった。
 部屋ひとつが奈良画伯のアトリエのように構成されたもので、雑然としているが、とても落ち着く雰囲気の空間でした。作品が順路に並んでいるのでなく、隠し部屋のように扉の向こうに展示されているので、実は最初通り過ぎて見逃しましたw。
 そんな方は少ないでしょうけど、観覧時はご注意ください(^^)。

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Izumi Kato “Soft Vinyl Sculptures” - IZUMI KATO - 加藤泉

"作品集: Izumi Kato “Soft Vinyl Sculptures”』 定価: ¥4,000.- (消費税別途) A4版/ ソフトカバー/ 96p 発行: Izumi Kato Studio デザイン:重実生哉 ※Nadiff、国立国際美術館ミュージアムショップ、 原美術館&ハラミュージアムアーク ミュージアムショップにて販売中"

 加藤泉作品展示は一点だけだったけど、この作品集をショップで買えたのは大きな収穫(^^)。昨年の個展の作品集ということだけれど、展示自体を知らなかったのは不明の限り。
 タイトルの通り、ソフトビニールによるフィギュア作品で、作品集の加藤氏序文によると、ビニールの造形に着色していくことで、彫刻作品と絵画作品の中間的な位置づけになっている。
 ある部分、加藤氏の彫刻作品と絵画作品の間には、もちろん通底するがイメージ的には作風の乖離部分を形作っているところがあるが、まさにそのミッシングリンクを埋める形の作品が掲載されている。

 ビニールの表面に塗られたペイントは、その絵画作品の流れるような色のグラデーションが再現されている。
 そして新しいのが、ビニールを熱で変形させた新たな形状の造形。

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 特に上の上段作品に顕著なようにめくれ上がった顔の表面が裏へねじ曲がった奇妙な造形が新たに解体再構成された加藤作品として、興味深く楽しめる。
 下段の木造作品と比べると一目瞭然であるが、その着色のテクスチャーの違いによる発色の差は絵画作品からの3D作品への作風の流入と、さらにその造形の熱により曲げられた変容が異様な迫力を生んでいる。

 この作品展の存在を見逃し、そして実物との邂逅を逸したことを反省することしきり。やはり作品展情報をきめ細かくウォッチする方法を探さないといけないですね。

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 こちらは作品集"Soft Vinyl Sculptures"を眺めるうちの猫。猫の目にこの造形はどう映っているのか。

 プリミティブな潜在意識を探索しているような気配に溢れた加藤泉作品は、ある意味、芸術という体系に汚染された我々人間の意識的な作品鑑賞を離れ、より原初的な姿を猫の脳内に映し出しているのかもしれない。
 とはいえ、もし目の前にその作品があれば、猫はビニールのめくれ上がった端部に首を擦り付け、自分の痒みの解消に走るだけなのだろうけど、、、。猫の無意識と加藤泉作品の潜在意識とにリンクを見てしまうのも、ヒトの意識のなせる技なのである(^^;)。

◆関連リンク
・原美術館展示作品のプレス向け展示で撮られたこちらのリンク先の写真が素晴らしいです。雰囲気を知るために興味ある方は是非覗いてみてください。僕も唯のブロガーとしては僭越なのだけれど、プレス公開に呼んでもらえるようになりたいものですw。

加藤泉氏作品 当Blog関連記事 Google 検索

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2016.06.15

■感想 スティーブン・スピルバーグ監督「VR技術は伝統的な映画作りを脅かす」


Airbus VR Experience - Mars 360 Release - YouTube
 冒頭の動画は、以下の本題とは少しズレますが、火星のVR体験を狙った360度動画。今日はこのVRについてです。スピルバーグ監督が以下のような映画とVRの関係について述べているのを読んで、そこから思ったことを徒然なるままに。

スティーブン・スピルバーグ監督が「VR技術は伝統的な映画作りを脅かす」と警告 - Engadget Japanese

"スピルバーグ氏は、VRという新たなフォーマットが、映画監督の作品に対するコントロールを脅かすのではないかと指摘。この技術がもたらす視野の自由により「作り手が見せたいもの」より「観客が見たいもの」が優先されること。そして「全方位を見渡せて、どちらを見るか決められる世界に没入したとき、ストーリーが忘れられなければよいが」と懸念を述べています。

映画界とVR技術とはもっか距離を縮めつつあり、『ブレードランナー』などのリドリー・スコット監督もGear VR向けコンテンツ『The Martian VR Experience』にプロデューサーとして参加。『マダガスカル』などのエリック・ダーネル監督も、今年のカンヌ映画祭でVR映像の『1/8Invasion!』を上映しています。

当のスピルバーグ氏も、VRを題材にしたSF小説『Read Player One(邦訳:ゲームウォーズ)』劇場版の監督に決定しているほか、VRコンテンツを制作する会社The Virtual Reality Companyにアドバイザーとして迎えられています。そうした経験を踏まえた上での、重みのある発言なのでしょう。"

 確かにVRは映画に変革をもたらしそうですね。スピルバーグが気にしているのは観客に対して決まった視点を提示することでストーリーを描く今までの映画がVR技術導入でどうなってしまうのだろうか、と映画界からの不安を表明しています。
 果たして本当にそうなのでしょうか。僕は映画と演劇の差をここで想起しました。

 映画は一定の画角で映像を提示し、観客にある一定の体験を感じさせます。それに対して演劇はある場面を提示しますが、観客の視点は絞るわけではなく、観客のある程度の自由な視点を許容しています。
 それによって演劇の物語が発散するかというとそんなことはない。ただし演劇は映画よりも観客の視点の差で、微妙に体験としての差異があるような気がしています。たとえばある俳優のみに着目して演劇を観ると、観客には必ずしも主人公の体験をトレースするのではなく、その役者の物語を体感していたり、といった違いが出てくるのではないかと。

 次にPOV:Point of View Shot映画というものがある。
 これは観客の視点を主人公の視点に固定するものである。

 VR映画というのは、このPOVと演劇的な視点の自由が融合されたようなものになるのではないか。つまりカメラの位置(観客の位置)はPOVのように主人公の位置に固定される。しかしその視線は360度の自由が許容される。
 物語とともに観客は、主人公としてその映画のストーリーをなぞっていくのであるが、その視線は映画の360度空間の中で自由に自分の好きな画角を、演劇のように切り取れる。そうした時にひとつのストーリーなのだけれど、観客は圧倒的なリアリティとともに映画の中である程度の主体的な映像体験を記憶に残すのである。

 スピルバーグには、VR版『ジョーズ』『プライベート・ライアン』を撮って欲しい。その際にどのような新しい映画体験がもたらされるか、そこに凄く興味がある。

 そろそろアメリカではVR映画の制作が始まっているのではないかと思うのだけれど、このあたりから新しい映像体験を想像することができるのではないか、と思っているのでまずは雑記。
 
 次にそんなVR映画でキーになる超臨場感についてもメモ。

◆VRによる超臨場体験のメカニズムについて
 最近、テレビでVR体験をしている人を映し、その臨場感の凄さをアピールする番組が幾つか出てきているけれど、バラエティではある程度大袈裟に演じているにしても、NHKのクローズアップ現代でも、相当のインパクトを体験者が受けているところを放映していた。

あなたの脳を改造する!? 超・映像体験(バーチャルリアリティー) | NHK クローズアップ現代.

"ソニー・インタラクティブエンタテインメント 吉田修平さん
「いろいろ研究した結果、(頭の動きと映像のずれが)0.02秒より短くなると、ほとんどの人がふだんの生活で見ている感覚と変わらなく感じるという結果が出ています。」(略)

クロスモーダル現象、とても不思議に感じるが?

クロスモーダル現象とは、五感が刺激された時、そこにはない音やにおいなどを感じてしまう錯覚現象です。 宮本さんの場合、女子高生との距離が縮まったことで、実際には聞こえないはずの吐息を感じたのです。

暦本さん:人間って怖いですね、視覚とか聴覚と一緒に来ると、いろいろとないものが聞こえちゃったりするというのが、クロスモーダルで、記憶にも依存するんですよね。(略)

暦本さん:例えば、トロってありますよね。
VRで、お寿司のトロを出すんです。
実は、アボカドだったりするんですけど、食べると本当にトロの味がしたりする。感覚が変わっちゃったりするんですね。"

 僕はまだ電気店店頭で、SamsungのGear VRを体感したことしかないけれど、それでもその臨場感はなかなかのものであった。その臨場感の秘密はどこにあるのだろうか。そこらにすごく興味がある。

 以前書いた記事でこのあたりについて、説明できる脳の仕組みについて記述された本がある。

■池谷裕二著『進化しすぎた脳』 感想 3 脳のトップダウン構造と視覚

" 視覚野のシナプス活動のうち、視床から入ってくる視覚情報は15%に過ぎない。さらに視床そのものも眼からの情報を中継する部分(外側膝状体)は視床全シナプスの20%。
 つまり視覚野が処理する外の視覚世界の情報は、わずか15%×20%=3%。我々の観ている画像は、そのわずか3%が外の視覚世界でそれ以外は脳が処理した別の視覚情報なのである(例えば上述の止まっているものを動いていると知覚する脳内の活動情報等)。(P351)"

 人間の視覚認識についての興味深い記述がこの本になされていた。
 ここからVRを考えると、クローズアップ現代等のテレビで用いられるジェットコースターのVRであるが、その臨場感の秘密は、視覚が外界情報として処理している情報はわずか3%で、実は脳内で生成された映像がその3%を補完して100%の視覚認識になる、ということがVRのリアリティ生成に大いに役立っているのではないだろうか。

 つまりCGとして決して緻密でもないコースターの映像が、人間の頭の動きに連動した視覚情報として入力されると、頭の動きやそれに同期して動く3%の3D-CG世界の映像情報から、脳内でリアルな映像が残り97%の情報として追加され、両眼から入ったCG情報は見事にリアリティを持った外界として認識されるのではないか。

 これを現時点体験できる視覚認識で試すことができる。
 それはどこにでもある何かのハイビジョン等の動画を再生して、その映像に生々しい存在感を持ったとする。次にその映像を途中で止めて、あるコマだけを観てみてほしい。するとその1コマの画像だけ観ると、さきほどの生々しさは大きく劣化しているのがわかると思う。
 この生々しさの劣化は、おそらく動画再生している時に、3%の画像入力のコマとコマの間を補完する脳内の97%の視覚認識が、生々しさを生み出しているまさにその正体だからではないだろうか。

 VRにおいては、頭の動きに連動する両眼の立体映像から、さらに強いリアルな(現実で我々が外界を見ている視覚認識と同等に)脳内補完映像を生成し、凄く臨場感のあるまさに生の現実感が生成されている、と思うわけである。

 そしてさらに上で述べられているようなクロスモーダル現象で、視覚以外の感覚も脳内でその現実感を補完しているのだと考える。

 まだ自分でしっかりVRを試していないので、あくまでも机上の空論だけれども、このあたりから今後もVRの臨場感について、究極映像としての分析をしていきたいと思っている。

◆関連リンク
ソニー、上位版PS4「Neo」を認める。現行プレイステーション4と併売するハイエンド版 - Engadget Japanese
 PS VRに向けて、PS4導入しようと思ってたんですが、これは待ちですね。VRの場合、マシン性能に依存する部分が多いので、マシンパワーと5Kの性能は確保しておいたほうがよさそうな気がします。
リドリー・スコットのVR映像の予告編がGear VRで配信(北米のみ)。本編は2016年公開 | 国内外のVR最新情報 - Mogura VR
これら8つのVR作品が、トライベッカ映画祭で注目を集めた|WIRED.jp.
【随時更新】POV方式で撮影された映画まとめ【60本】

"「POV方式」とは「Point of View Shot」の略で、 日本では「視点ショット」「主観ショット」などと訳されます。"

"1/8Invasion!|Baobab Studioによる短編アニメーション。イーサン・ホークのナレーションによる、エイリアンの侵略から世界を救う1匹のウサギのストーリー (いや2匹かもしれない…観てからのお楽しみ)だ。キュートな作品で、家族みんなで大きい耳になって没入体験を楽しめる。"

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