2020.07.15

■情報 マルチメディア展開 劉慈欣『三体』『三体II:黒暗森林』舞台化、ファンメイド映像

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The Three-Body Problem II: Dark Forest
Beijing Poly Theatre

"Project Characteristics of The Three-Body Problem
Adapted from the First Hugo Award-Winning Work in Asia-The Three-Body Problem
A science fiction enlightenment in the history of Chinese drama
Naked Eye 3D Technology
A Multimedia Special Effect Feast"

 北京で2019年に開催されたPhilippe Decouflé演出、Lotus Lee Drama Studioによる『三体』『三体II:黒暗森林』のステージ化。
 マルチメディアによる裸眼3Dを実現しているとのこと。どんなものなのか観てみたい。

 ネット検索すると一部動画と舞台写真が見られるので、以下ご紹介。 
Lotus Lee Drama Studio(Facebook)
  ここにある予告編映像が素晴らしいです。劉慈欣『三体』ファン必見!!
 映像と舞台のプロップを見事に使った三体映像が現出している様です。

 日本でも観てみたいですね。中国で三体をステージ化しているLotus Lee Drama Studioによるマルチメディア舞台の予告篇映像。
 あの名場面、そして三体世界の恒星の動きを舞台上で展開(以下写真引用の右下。よく見ると気球とミニドローンを組み合わせて惑星の自由な動きを作り出している様です)。

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Lotus Lee Drama Studio
'Three Body Problem' novel hits the stage in play
'Three-Body' trilogy book gets drama treatment
China set to become the brightest sci-fi star
 『三体』の舞台化についての記事。上記画像の引用元です。

◆ファンメイドフィルム
 上記舞台ほどの完成度ではないですが、ファンメイドもなかなか微笑ましく頑張っています。

My Three Body "Dark Forest" Theme Song - Music Video (English Subtitles)
 『三体II:黒暗森林』のテーマソングMV(^^)。マインクラフト的映像で、『三体』と『三体II:黒暗森林』のあの名場面が映像化されていますww。ネタバレ、ご注意ください。世界での『三体』人気の一端。


My Three Body Season 3 - Episode 8
 20分にわたって、『三体II:黒暗森林』のあの戦闘シーンを映像化。ネタバレ注意!!

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2020.07.13

■感想 劉慈欣『三体II:黒暗森林』( 大森 望 , 立原 透耶 , 上原 かおり , 泊 功 訳 )

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 劉慈欣『三体II:黒暗森林』、読了。
 前作にも増して、骨太で壮大なストーリーと、大ネタ小ネタとつるべうちのSF奇想アイデアの数々を堪能。
 
 前作に続くストーリーは、四百数十年後の三体星人による地球侵略艦隊の到着へ向けて、迎え撃つ地球側のストーリーを中心に進む。
 とりわけ面白いのが、三体人の独特のコミュニケーション能力に対抗して、取られる地球側の前代未聞の面壁計画(ウォールフェイサー・プロジェクト)で選出される四人の面壁者と呼ばれる主人公らの対応策。ここのコンゲーム的な筆運びは本書のエンタテインメント性の多くの部分を負って、優れたリーダビリティをもたらしている。面白くてページを繰る手が止まらないといった状態。上下巻670ページ余りを一気に読ませる筆力である。

【発売中】劉慈欣『三体Ⅱ 黒暗森林』訳者・大森望氏あとがき

" インタビューなどで、往年の〝大きなSF〟に対する偏愛を隠さない劉慈欣だが、《三体》三部作には、クラークやアシモフに代表される黄金時代の英米SFや、小松左京に代表される草創期の日本SFのエッセンスがたっぷり詰め込まれている。こうした古めかしいタイプの本格SFは、とうの昔に時代遅れになり、二一世紀の読者には、もっと洗練された現代的なSFでなければ受け入れられない──と、ぼく個人は勝手に思い込んでいたのだが、『三体』の大ヒットがそんな固定観念を木っ端微塵に吹き飛ばしてくれた。黄金時代のSFが持つある意味で野蛮な力は、現代の読者にも強烈なインパクトを与えうる。それを証明したのが『三体』であり、『黒暗森林』『死神永生(ししんえいせい)』と続くこの三部作だろう。『三体』がSFの歴史を大きく動かしたことはまちがいない。"

 本書に感じるのは、まさにSFを読み始めた頃の、小松左京や光瀬龍、そしてクラークやスタニスワフ・レムといった往年のSFの巨匠たちの、宇宙を舞台にした巨視的な骨太の"大きなSF"の、堂々たるセンスオブワンダー溢れる物語への興奮である。

 特にネタバレになるので詳しくは書けないけれども、クライマックスのある面壁者の透徹した思考の果てに生まれた秘策を巡る、宇宙知的生命の活動を総括的に、そして俯瞰で眺める視点が素晴らしい。フェルミのパラドックスの一つの解の提示なのだけれど、それが恐ろしくペシミスティックで、宇宙の真空の広大な空間を感じさせるこの部分の筆致には震えました。

 前半の理想の仮想女性、後半の大宇宙戦闘シーン、そして『銀英伝』や『2001年宇宙の旅』と言ったアニメ系映像系SFファンを引き込む、というか劉慈欣友達だね的ネタとか、嬉しくなる様なまさに骨太なSFであり、SF映像である本作、日本の読者も大いに楽しめる傑作だと思う。前作にもましてお薦めです。
 
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◆関連リンク
・当ブログ関連記事
 ■感想 劉慈欣『三体』( 立原 透耶 翻訳監修, 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ訳 )
 ■感想 劉慈欣原作、郭帆監督『流転の地球(さまよえる地球) : The Wandering Earth』

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2020.07.01

■感想 若松節朗監督、伊藤和典,長谷川康夫脚本『空母いぶき』


『空母いぶき』第二弾予告映像【90秒】

 若松節朗監督、伊藤和典,長谷川康夫脚本『空母いぶき』WOWOW録画初見。

 これはSFX、アニメ界隈であまり評判になっていなかったけれど(僕が知らなかっただけか)、なかなか迫力の戦闘アクション映画になっていた。シナリオの伊藤和典氏の功績なのか、『パトレイバー』や『シン・ゴジラ』の成果を踏まえて、真面目に自衛隊初の「防衛出動」を丁寧に描いた佳作になっていると思う。

 そして現代の兵器による海上戦闘アクションが映える。ミサイルや魚雷の最先端の軍事技術については全く暗いので、どの程度、リアルなのかは分からないけれど、その戦闘シーンはなかなかの迫力だったと思う。

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 原作は時々喫茶店で掲載誌をパラパラと見た程度しか(ほとんど何も)知らないのだけれど、敵国が中国に設定されていて、きな臭い印象が強かった。それに対して、映画は、架空の国家「東亜連邦」を敵として描いているために、より純粋に自衛隊の戦闘問題を集中して描けていて、興味深い。

 もちろん現実に戦争は起きて欲しくないけれど、戦争映画にはワクワクしてしまう。いつまでも架空シミュレーションとしての戦争映画を楽しんでいたいのだけど、この映画は現代の自衛隊の戦争シミュレーションとして特上のものかもしれない。

 一部では評判の悪い、あまりストーリーに絡んでこないコンビニシーンも、伊藤和典脚本のコメディパートとしてみれば、緊迫したシーンが連続する本篇と対比して、平和で脳天気な日本を描いていて、なかなか愛着が湧くのである。

◆関連リンク
かわぐちかいじ原作、初の実写映画化!『空母いぶき』浅野秀二(VFXプロデューサー)インタビュー
 IMAGICAの浅野秀二氏のインタビュー。なかなか興味深いです。

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2020.06.29

■動画 湯浅政明監督『日本沈没2020』OP

 


『日本沈没2020』OP(歌詞入り特別ver. )|主題歌:「a life」大貫妙子&坂本龍一

「日本沈没2020」主題歌は大貫妙子&坂本龍一の名曲「a life」湯浅政明監督によるOPも公開(Anime! Anime!)

" 湯浅政明監督は「a life」について、「透明感、日常感がありながらも、地に足がついた素敵な曲でした」とその印象をコメント。
オープニング映像については、「殺伐とした天変地異後の暗い本編とは対照的な、明るい爽やかな朝のルーチンを毎回見ることで、失ったものの尊さを感じてもらえると良いと思いました。朝の光、柔らかい布団や温かい飲み物、自然の風景や小動物のクローズアップを、記憶の中にある様に柔らかいタッチで断片的にオーバーラップしながら、透明感ある白い光の中に描きます」との演出意図を明かした。"

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 湯浅政明監督『日本沈没2020』のOP曲。今までの日本沈没の、どちらかというと重厚な感じに対して、日常感を大切にしたとてもライトな楽曲。新しい『日本沈没』の予感に満ちています。

 20年7月9日より、Netflixにて全世界独占配信とのこと。湯浅監督の新しい感覚の日本沈没、世界でヒットすることを祈念します。

◆関連リンク
当ブログ 『日本沈没』関連記事 Google検索リンク

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2020.06.24

■感想 SpaceX クルードラゴン有人宇宙船 ミッション成功

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Elon Musk Fans (facebook)
SpaceXのCrew Dragon宇宙船がISSとのドッキングに成功

 つい先日、SpaceXの宇宙船がISS:国際宇宙ステーションにドッキングし、大成功をおさめました。
 それに伴い、各種の写真が公開されていますが、冒頭に引用した画像が、なかなかクール。

 打ち上げブースターが地球に帰還し、その傍らに立ついーロン・マスク。
 この着陸後のロケットノズルの焦げ感に萌えます(^^)! イーロン、未来をグイグイ創造してますね!
 そして右のブースター全景も良いですね〜〜(^^) このお焦げがたまりません。

Does anyone remember these moments ? (facebook動画)

 リンク先に動画があるけれど、ここのロケットブースターの垂直着陸の動画も素晴らしいです。

 テスラで電気自動車の世界的なブームを創り、さらにはこうして民間宇宙産業をグイグイと自らの現場でのリーダーシップで創り出していく、この情熱。フューチャリストとしての姿勢に痺れます。

 今後も目が離せません。

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2020.06.22

■感想 二足歩行ロボット PLEN .D 制作記

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 Facebookのロボット関係のグループで教えてもらったDMMの二足歩行ロボット(通販激安。定価18万円が約9千円で購入)を日曜の朝から組み立て開始。
 
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 この様に多くの部品から構成、18自由度で動き、ギア内蔵のサーボモータユニットと骨格、ボディを細かいネジで留めていく。M2のマイクロなネジ締めは結構、繊細な作業で神経を使う。マニュアルはUSBメモリで同梱されていて、PCの画面でみながら組み立てていく。よく見たいところは拡大して見られるので、この辺りはありがたい。

 そして組み立て始めて、約2時間、以下の様にほぼ全体が組み上がり、まずはここで組み立ての間違いがないかのチェックも兼ねて、テスト駆動を試すことにした。

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 コントローラの電源を入れて、モータへの通電をON。何とスムーズに動くはずが早速のトラブルに遭遇。

 電源を入れると添付3枚目の写真のように、凄いスピードで脚がえびぞった状態になって、痙攣状態。
 モーターに通電し続けるようなウィーンという音がして正常に動きません。モータにはロック電流が流れている気配で、すぐに温度上昇してしまいそうで、スイッチを即切るしかありません。

 配線等の間違いがないことも何度も確認したのに原因不明…。

PLEN.Dのトリム調整で通信できないときに確認すること

 何かトラブルに遭遇している人はいないかと、Twitter検索してみると、上記サイトが見つかる。
 ここに書かれている様な対応、サーボモータの初期位置のトリム調整も、このサイトを参考に実施してみたが、調整はできている様なのに、症状は相変わらずのロック電流による痙攣動作。

 トリムを PLENUtilities から実施して“HOME”ボタンを押すと基板の電源ランプ横の緑のLEDが、“HOME”ボタンを押すたびに光っていて、問題なくトリム指示はできてるようなのに…。

 基板の故障を疑って、ショップにメールしたところです。苦労して組み立てたので、動かしてみたかったのに、今週末はお預け状態。
 来週こそはしっかりと動いている動画をアップしたいものです。

 それにしても投げ売り状態のこの製品、定価の18万円というのは、数量が出なくてこんな値段なのでしょうが、モータユニットやその他細部の作りもなかなかしっかりしていて、この値段はありがたいというほかありません。

 次週へ続く、、、。

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2020.06.17

■感想 デヴィッド・ロウリー監督『ア・ゴースト・ストーリー』


DARK ROOMS - I GET OVERWHELMED "A GHOST STORY" music video

 引用動画は、挿入曲のMVです。予告篇よりネタバレしてるので御注意を。

 デヴィッド・ロウリー監督『ア・ゴースト・ストーリー』、WOWOW録画見。
 全く前知識なしに観たけれど、タイトル通りの幽霊の物語で、この魅力的なシンプルさは貴重です。途中出てくる作家(?)の人類の滅亡と再生を語る言葉と、映像の時空を超える試みが一種哲学的な趣きを醸し出しています。

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 幽霊はほとんどのシーンで、ボーと意識を浮遊しているかの様に描写されています。時々ふと我に帰った時の映像を記録した様に語られる物語。この浮遊感は、観客に幽霊の一人称を体感させる様な構造をもたらして、独特な体験が得られる。

 リンク先は、この映画の中で重要なキーとなる楽曲。
 この揺蕩う様な音と、重層的な詩が映画を奥深いものにしている。

『ア・ゴースト・ストーリー』:デヴィッド・ロウリー監督インタビュー
 こちらは監督インタビュー。アスペント比1.33:1のほぼ正方形の画面のことも触れられている。これは僕にはまるで8mm自主映像の様な雰囲気を感じさせて、なかなかでした。

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2020.06.15

■短篇 ティム・イーガン監督『カーブ』 Tim Egan "CURVE"

CURVE from Lodestone Films on Vimeo.

 最近、SNSで話題になっていた2016年のオーストラリアの短篇です。
 リンク先のVimeoで全篇10分間の恐怖が体感できます。
 これはうじゃうじゃ感想や解説する必要もないので、是非、観てみてください。

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 こんな恐怖映画短篇が一生に一度で良いので、撮ってみたいものです(^^)。
 この短篇が素晴らしいので、蛇足と思いつつもティム・イーガン監督には是非とも長編を撮って欲しいものです。

 この暗闇の向こうには何があるのか、想像力を刺激して止みません。
 『ツイン・ピークス ザ・リターン』のリンチが描いたあの海の映像を想起したのは僕だけでしょうか。

Tim Egan "CURVE"(IMDb)
 主演はローラ・ジェーン・ターナーLaura Jane Turner(IMDb)。

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 こんな舞台裏の写真もIMDbには掲載されています。セットなんでしょうね。

◆関連リンク
Tim Egan (IMDb)
 もともとはテレビシリーズのエディターの方の様ですね。監督作はこれと2011年のテレビシリーズ"The Bazura Project"の6本だけの様です。映画の歴史を描いたコメディのシリーズの様です。

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2020.06.10

■比較 スパイク・リー監督『ドゥ・ザ・ライトシング』('89) と高城剛監督『バナナチップス・ラブ』('92)

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 ということで映画の感想を書き終わったので、補足として『バナナチップス・ラブ』との比較を覚書。

 先日の『ドゥ・ザ・ライトシング』の感想で書いた様に、スパイク・リーがブルックリンを切り取った映像手法は、とても斬新でポップ。特徴としてはヒップ・ホップとジャズのBGMにのせて、カメラを斜めにして手前に人物を配し、俯瞰で街や人物を捉えたカットが独特(上の引用画像)。

 そして早口のDJの幕仕立てるテンポの良いお喋りと、マルコムXとキング牧師のブロマイド売りの青年の吃音というセリフの音楽的なタッチ。NYの色鮮やかな雑踏と人物の対比の映像。
 これらが高城剛をインスパイアして、『バナナチップス・ラブ』を撮らせた源泉であるというのが、とてもよく分かる。

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 『バナナチップス・ラブ』の画像。左がおかまの双子。右がスパイクの弟 サンキ・リー。

 そして高城が追加したのは、オカマの双子に「サザエさん」の様なセリフを呟かせ、キンズバーグやティモシー・リアリー、ウィリアム・バロウズ(確かバロウズも出たよね?ちょっと記憶が定かでないw)といった当時のカウンターカルチャーの神々をドラマに登場させ、DJをヘリコプターからFM中継するスカイトップ:フライングパンサーレイディオ108FMという躍動感ある映像にパワーアップして描き出した、世紀末のサブカルシーンの数々である。

 さらに物語は当時の日本のトレンディドラマなストーリーも包含していて、それを時に切ない藤原ヒロシの音楽で包んだところが、スパイク・リーのポップでシリアスな映画に対して、高城がオリジナリティを発揮した部分だと思う。

 というわけで、それを確認するため、現代の眼でもう一度、録画してある『バナナチップス・ラブ』見なおして観ますね(^^)。

◆関連リンク
・当ブログ記事
 ■高城剛監督『バナナチップスラブ』BANANACHIPS LOVE

 

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2020.06.08

■感想 スパイク・リー監督『ドゥ・ザ・ライト・シング』

 スパイク・リー監督『ドゥ・ザ・ライト・シング』 Amazonプライム初見。
 実に恥ずかしいことにスパイク・リー作品は初めて。この映画のVHSソフトをパッケージのカッコ良さでレンタル落ちのものを買ってあったのに、何と積読になっていたという、、、。
 で、今回のアメリカの事件と運動に関連して、初めて観てみたという訳です。

 まず思ったのが、高城剛監督が深夜ドラマ『バナナチップス・ラブ』(1992)において全篇ニューヨークロケで描いたいろんなシーンが、『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)にインスパイアされた(パクリとも言うw)ものだったんだ ! ということ。
 当時、あのドラマの斬新さに凄く刺激を受けてしばらく高城剛をネットとかテレビで追いかけていたことがあるんですが、そのルーツが『ドゥ・ザ・ライト・シング』だったとは !

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 画像は『バナナチップス・ラブ』より。

 『バナナチップス・ラブ』にはスパイク・リーの弟 サンキ・リーがレギュラーで出ていたので、まさにインスパイアということなのだろうけれど、今回、僕が観た印象は、高城剛の演出の方が、スパイク・リーよりもエッジが効いていたんじゃないか、ということ。
 ここは一度、録画してある『バナナチップス・ラブ』を再見して確認してみないと。

◆ 本篇感想
 というわけで、ここからまずこの映画の感想です。
 ブルックリンの黒人街の、街の人々の個性が素晴らしい。

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 「市長」と呼ばれるホームレスの老人とおばあちゃんとの掛け合い。街をたむろするラッパーたち。日がな一日ダベっている3人の中年。ラジカセを大ボリュームで流す若者。そして一日12時間話し続けるDJ。

 こうした魅力的な黒人たちの生活と、対比して描かれるピザ屋のイタリア系アメリカ人の親子。間を往還するスパイク・リー演じるピザ屋の不良アルバイト ムーキー。

 ラップとジャズの軽快な音楽とともに、コミカルにそして斬新な映像と独特のリズムある編集で描かれるブルックリン。所々に挟まれる白人との緊張感。そして迎えるクライマックスの悲劇。

 ここで描かれているのは、2020年の現実にミネアポリスで起きた警官による黒人殺人事件と比べると、明らかな差別による殺人というよりは、もう少し日々の小さなヘイトの積み重ねによる、ある意味偶発的な悲劇である。それは映画冒頭から描写されている異常なNYの暑さが人を狂わせた結果でもあるかの様に、この映画では描かれている。

 こうした描写は、もしかすると現実のシビアな迫害を映画というエンターテインメントの中に格納するためにスパイク・リーが選んだ手法なのかもしれない。

 この当時と今を比べた時の差別の度合いがどの程度、温度差があるのか、僕にはそうした知識はないが、当時ここまで描いたことは、相当な勇気を伴った行動だったのだと思う。

 以降、現在まで続けられている警官による殺害。
 スパイク・リーが今回の事件でどういうコメントを出しているのかも知りたいと思った。

◆関連リンク
スパイク・リー監督、白人警官の黒人殺害事件を受けてショートフィルムを発表「歴史は繰り返されている、今の出来事は新しいものではない」
 『ドゥ・ザ・ライトシング』の感想を書いたのだけれど、調べてみたら、今回のミネアポリスの事件に関して、スパイク・リーのコメントが以下のページにまとめられていました。
Spike Lee (twitter)
 そしてtwitterでスパイク・リーが編集したショートフィルムが、以下の言葉とともに公開されています。

"3 Brothers-Radio Raheem, Eric Garner And George Floyd."

 ラディオ・ラーヒムは『ドゥ・ザ・ライトシング』の登場人物です。

 

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2020.06.03

■感想 イ・チャンドン監督/村上春樹原作『バーニング 劇場版』


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 イ・チャンドン監督/村上春樹原作『バーニング 劇場版』WOWOW録画見。
 95分のNHK放映版は吹替で観たのだけれど、こちらは148分字幕版で初見。

 どちらが良かったかというと、観た順番の影響かもしれないけれど、圧倒的にNHK放映版が良かった。
 これも『パラサイト』とか『グエルム』にもつながる、韓国の貧困社会を描いている。作家志望の主人公と、対比して描かれる御曹司的人物の対比。

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 ポルシェで北朝鮮国境近くの農村を訪れる御曹司と農村出身の幼なじみ。
 この農家での夕闇のシーンは、何度観ても息を飲む様な美しいシーンになっている。ここの黄昏のアンニュイな魅力が、本作の幻の様な謎と共鳴する映画のコアと思われるのだけれど、『劇場版』はその昼と夜のあわいの様なマジックアワー的な物語に、ある種の決着を付けているために、想像力のみで構成されたNHK放映版の深みに迫れていない様な気がしてしまう。

 NHK放映版の後に残る圧倒的な余韻に僕は軍配を上げます。

 イ・チャンドン、まだこの一本しか見ていないため、後の作品を辿るのがとても楽しみです。

◆関連リンク ・当ブログ記事 感想 イ・チャンドン監督『バーニング』NHK放映版

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2020.06.01

■感想 園子温監督『自殺サークル』


園子温監督『自殺サークル』予告篇
 WOWOW録画見。観てなかった様な気がしていたのだけれど、2回目の鑑賞でしたw。
 
 最近、少し迷走している感のある園作品、2002年に制作された、この作品はそうした要素も過剰にはらみながら、でもインパクトのあるシークェンスが素晴らしく、全体的には見せる作品になっている。

 特に冒頭の新宿の54人と、大阪100人。そして学校の屋上シーン。
 強烈なインパクトを持つ、映画的シーンだと思う。この発想から始まった映画なのだと思うけれど、ここの強度は素晴らしい。まさに世界のどこにでもある、生と紙一重の死。

 永井豪「ススムちゃん 大ショック」を思い出す、母親が大根と一緒に指を切っていくシーン。
 そして子供の声で語られる「あなたとあなたの関係は?」という園の詩的言語。
 「あなたと、あなたの奥さんの関係 、わかります。あなたと、あなたのお子さんの関係、わかります。では、あなたと、あなたの関係は?」「いま、あなたが死んで、あなたと、あなたの奥さんの関係、残ります。いま、あなたが死んで、あなたと、あなたのお子さんの関係、残ります。いま、あなたが死んで、あなたと、あなたの関係はどうなりますか?あなたは、あなたの関係者ですか?」

 このあたり、川又千秋の言語SF『幻詩狩り』を思い出す様な、詩による死が描かれている。映像的表現と言語のセッションは園独特の映画空間を作り出している。

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 人の皮を巻いた、機械な束。
 ボーリング場のイカれた「鈴木宗男」は何を描きたかったのか。
 DESERTってアイドルグループは何?
 この辺りの暴走度合いは首を傾げる部分があるけれど、先に書いた印象的なシーンたちの前で、それらもある種の効果/独特の園映画の要因として機能している。

 予算も少なそうで、画面構築は映画として甘いシーンも多いのだけれど、わい雑さが魅力的な一本。

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2020.05.27

■感想 ポン・ジュノ監督『母なる証明』『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』「シェイキング東京」


ポン・ジュノ監督『母なる証明』 BSジャパン録画初見。
 
 何だかスチルとかで出てくる母親の顔が怖くて、なかなか観られなかった作品。想像したのとは違ったけれど、これはジワジワ恐怖(?)が染み込んでくる話でした。凄い。

 凄いのは記憶に関わる物語であるところ。
 主人公の青年 トジュンとその母親の記憶の深淵を覗き込む様な映画である。コメディとも思える映画のタッチの中にこうした深淵が描き込まれるところ、まさにポン・ジュノの真骨頂である。
 
 冒頭とエンディングのダンスが凄い。映画の映像でしか表現できない表現が、その物語の深淵を象徴的に体現している様が素晴らしいです。怖いけど、、、。

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 『母なる証明』のあと、ポン・ジュノ作品を3作続けて観たので、まとめて感想です。


『殺人の追憶』 WOWOW録画初見。

 ポン・ジュノにしてはストレートなサスペンス。
 現実に未解決だった事件を扱っているだけに、犯人追及と捏造捜査のリアリティがなかなか。

 韓国の一つの闇を描いている。湿度の高い、息苦しい田舎の社会描写が迫真。ただ僕はストレートすぎて、ポン・ジュノ作品としては少し物足りなかったかなと。

『グエムル-漢江の怪物-』 BSフジ録画見。劇場で観て以来2回目。

 ウィルスシーンは、SaaSの影響下だけど、これが原題のホストに効いている。実際、これだけ異形の存在が街に現れたら、そこにウィルス的な恐怖を持つことは間違い無いはずで、その点を怪獣映画として突いたところは斬新かもしれない。

 映画館で観た時に、韓国映画に慣れていなかったので、あのギャグセンスに着いていけなかったけれど、今回、それほどそこが違和感なく観れた。韓国家族社会の絆を見事に描いている作品で、そこが率直に良い映画にしていますね。初見時より良い印象でした。

『TOKYO!』 WOWOW録画初見。3本の短編からなるオムニバス。いずれもなかなかの傑作で、これは拾いものでした。

ポン・ジュノ「シェイキング東京」
 引きこもりテーマ。誰もが引きこもりになってしまった都市 東京が現出する。まるで新型コロナウィルスの時代の様。『グエムル-漢江の怪物-』と合わせて、新型コロナ社会の予見の様にも観られる、なんていうのは後付けの感想でしかない訳ですが、、w。
 
 設定と香川照之の家のディテイル、蒼井優の演技が素晴らしいです。いつかジュノ監督の長篇にも出て欲しいものです。

ミシェル・ゴンドリー 「インテリア・デザイン」
 東京の町がゴンドリーのキッチュで切り取られる。藤谷文子、加瀬亮と伊藤歩の奇妙な同居。加瀬亮が作る不思議な自主映画、タイトルバックがゴンドリー印でいいです。

レオス・カラックス 「メルド」(フランス語で「糞」)
 3本の中で一番良かった。さすがカラックス。
 『ホーリー・モーターズ 』に出てきたメルドが東京の街でここでもゴジラのテーマ音楽のもと、大暴れ。こちらが先で、この後、『ホーリー・モーターズ 』で同じキャラクターを使ったとのこと。
 
 この異形のキャラクターにカラックス、余程愛着があったんでしょうね。そして気持ち悪いくらいにこのキャラクター、現代の東京を突いてきます。

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2020.05.25

■感想 ハズラフ・ドゥルール監督『ファースト・コンタクト』"The Beyond"


 ハズラフ・ドゥルール監督『ファースト・コンタクト』"The Beyond" WOWOW録画見。

 「未体験ゾーンの映画たち2019」の一本、イギリス映画で"ファウンド・フッテージ手法を取り入れたモキュメンタリー映画"。

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 手法がテーマにもマッチしていて、低予算と思われるが時々NASA映像等も使われていて、なかなかリアルないい仕上がりになっている。

 一部、安っぽいCGがあるのもご愛嬌で、かなり真正面からのSF映画として、楽しめました。タイトルのみから少し不安を持ちつつ観たのですが、拾い物でした。
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 物語も不可思議な存在がISS軌道上に現れ、その探査にヒューマン2.0と呼ばれる、まるで攻殻なサイボーグが送り込まれ、さらに、、、とありそうで観たことのないSFものになっている。落としどころも、このポジティブさは好きです。

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 映像的に特に良かったのが、地球上空に現れる黒い球体。写真だと少々わかりにくいけれど、表面が蠢く様がなかなか。
 CG的には煙のエフェクトを球体に配置しただけかもしれないですが、この異様な光景は素晴らしい。

◆関連リンク
Hasraf Dulull(wiki)
Project Kornos Trailer
 『ファースト・コンタクト』の元となった短篇とのこと。
“The Beyond” — VFX Q&A (CINEFEX Blog)

 30分に渡るメイキング

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2020.05.20

■感想 ハイファ・アル=マンスール監督『メアリーの総て』


『メアリーの総て(すべて)』予告編
 ハイファ・アル=マンスール監督『メアリーの総て』WOWOW録画初見。
 エル・ファニングの(メアリー・シェリーというか) メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィンの悲しみを湛えた瞳が素晴らしい。

 『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』がバイロンらとの怪奇談義から生まれたものだ、ということは知っていたが、その実像がこの様な人と人の悲劇の中から生み出されたものであるのは知らなかったので、そうした部分も興味深かった(薄くってすみませんw)。

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 このバイロンとのディオダディ荘の怪奇談義については、ディテイルがもっと知りたいのだけれど、映画はかなり端折って描かれている。この辺りはケン・ラッセル『ゴシック』とかにもっと描かれているのだろうか。

 この映画は、サウジアラビアの女性監督ハイファ・アル=マンスールが撮っているのだけれど、この方独自の女性の描写、特にメアリーの凛とした知的な姿が素晴らしい佳作でした。

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2020.05.18

■感想 山田尚子監督『聲の形』、高坂希太郎監督『若おかみは小学生』

 ずっと在宅勤務とGW中、1日1本の映画鑑賞を続けていますが、しばらく感想をサボってしまって、メモが溜まっていますw。

 で、この二日で観た、巷で評判のアニメ映画(WOWOW初見)が、とにかく素晴らしかったので、まさに今更で恥ずかしいんですが、他を飛ばして感想です。どちらも年間ベスト級の傑作で、2日連続観賞というのは至福の時間でした。

 両作は脚本 吉田玲子つながりですが、どちらも機微を抑えた人物描写の脚本と、感情表現含めた作画の丁寧さが相まって、見事な映画になっています。

◆山田尚子監督『聲の形』

『聲の形』 ロングPV
 岐阜映画でもある、見知った光景の大垣市の風景で描かれるシビアな現代の学生生活の物語。胃が痛くなる様なこうした人間関係の映画をアニメでは観たことなかった様な。あと自分の経験にはこういうのは幸いに(?)ないけれど(時代も違う?)、自分の娘たちの学生時代を思い出すと、長期連休中とその後の新学期始まる前の表情とかが全然違っていて、この映画の様な学校生活のストレスを何らか感じていたのかもしれないですね。

 ラストシーン、友人たちの顔の明るい映像から、画面全体がブラックアウトして、中心にだけ二人の人物の小さな影が映るシーン。3回ほど繰り返し、この映像効果が最後に独特の効果/余韻を作っている。

 アニメートでは特に、足、靴の丁寧な描写が妙に印象的でした。いずれのシーンもなかなか見事なアニメートと演出で、素晴らしい完成度。

 人物描写も、西宮硝子は確かに異質な存在としてクラスに現れ、こういう書き方は誤解を招きそうだけれど、はっきり言って「気持ち悪く」描かれている。この演出で小学生たちのいじめる側の視点も観客に感情移入できるものになっている。

 硝子の母親と石田将也の母親の関係とか、こうした映画にありがちな描写でなく、鮮烈で独特。この辺も素晴らしくうまいですね。

 Wikipediaにこんな記述がある。
「劇中でも登場する養老天命反転地の「極限で似るものの家」があり、そこから、「イコールではないが、無限に同じものへ近づいて行くことを表す"極限値"」というものが一つのコンセプトとして制作された」

 劇中にも出てくる養老天命反転地は何度か行ったことがある好きな場所なのだけれど、ここの傾斜した不安な/危険を感じさせるアート施設をコンセプトとして使っているのも面白い。

◆高坂希太郎監督『若おかみは小学生』

劇場版『若おかみは小学生!』予告編
 こちらは『聲の形』と比較すると、陽性の魅力に溢れた傑作。
 主人公の眼に抵抗感があって、なかなか観られなかったのだけれど、地上波放送の前に観ておこうという、、、(^^;)。

 登場人物の多層的な描き方、うりぼうとみよちゃん、鈴鬼といった”異界”キャラクターによる想像力の自由さがとてもいい作品。物語も重いテーマを描いているのだけれど、いずれのエピソードも主人公の陽性に救われるところが素晴らしい。こういうのって、漫画映画の王道って考えたいですよね。

 エンドタイトルのイメージスケッチの絵もとてもいい。気持ちいい映画をありがとう、って感じですね。

 上記引用画像は、本田雄原画パートとのこと。(関連リンクに元映像)
 回想シーンなので他と少し違うタッチにしているが、おかみ 峰子の子供時代、素晴らしくスマートでかわいい。

 うりぼうのアクションもいいし、この作画は、宮崎駿がアニメーターとして嫉妬するレベルと思う。このままこの二人の子供時代を描いた映画も見てみたくなる出来ですね。

◆関連リンク
きゅうでれ (sakyuuga) さんツィート

 "劇場版 若おかみは小学生!の回想シーンは本田雄さんの素晴らしい原画です、小黒さんが本人から確認をもらいました。"

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2020.05.11

■感想 マーク・チャンギージー、柴田裕之訳『ヒトの目、驚異の進化 視覚革命が文化を生んだ』THE VISION rEVOLUTION:How the latest research overcomes everything we thought we knew about human vision

Vision-revolution
『ヒトの目、驚異の進化』「視覚の進化革命」がここから始まった (文庫解説)
 進化神経生物学者のチャンギージーによる、人間の視覚の驚異についてのノン・フィクション。元の自身の学術論文から平易に図解含めて、分かりやすく不思議なヒトの視覚が述べられている。

 もともと視覚に強い関心があるので、4つの章立てで述べられる認知科学的な視覚の分析を、とても興味深く読みました。
 本書の興味深い観点は、以下の4章のタイトルに現れています。「感情を読むテレパシーの力」「透視する力」「未来を予見する力」「霊読する力」、ヒトの視覚が既に、テレパシー、透視、未来予知、霊視能力を持っていると書かれている、とだけ書くとトンデモ臭も感じられるでしょうが、本書はこの章タイトルで読者の興味をまず惹きつつ、丁寧にデータを挙げて、一つづつ視覚の不思議を説明していく。

◆ テレパシー
 視覚の色のスペクトル分析から始まり、ヒトの顔がその皮膚内部の血液量と酸素濃度によってフルカラーディスプレイとして感情等をコミュニケートする機能があり、それを繊細にとらえるために眼の3種の錯状体が進化して、黒白/青黄/赤緑の色彩を感知できる様になったと説明する。

 白人から黄色人種、黒人の色スペクトルが実はほとんど同一で、その微細な差を捉えるために、ヒトの眼はその周波数帯で繊細な感度を持っているとか、顔がディスプレイであるとか、刺激的。

◆ 透視
 眼が顔の前方に2つあるのは何故か。
 立体視のためと当然の様に思っていたが、そこに疑義を唱えながら(片眼でも風景の分析から脳が立体視は形作れる(つまり2D映画でも人は立体感を得られる))から真の2眼の目的(進化の淘汰圧)があるのでは?と問いかけて説明が始まる。

 森の中で行動するために、私欲仏の葉の間から前方を知覚するために、片眼の前にある障害物に対して、複数の葉の間隔からずれた位置でもう片方の眼が障害物の向こうの映像を捉え、脳内で2眼の複合された視覚を構成し、擬似的な透視能力を得ているのではないか、という論。

 この透視能力は今すぐ貴方も確かめられます。
 片方の眼の前に手の平を置いて、両眼で前方を観てください。手の平を「透視」して向こうの景色が見られますね(^^)。

 これもなかなかのコペルニクス的転換。
 頭の両側1mの位置にカメラを左右付けて、その映像を眼に映し出せば、車や街中の人々の姿も透視して、安全に前方の視野が得られるのではないかというアイデアも書かれていて、大変興味深い。

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 以前にヒトの目に上下を逆にした映像を映しても、人の視覚認識は少しの時間で慣れて、普通に行動できる様になる、という実験を観たことがある。この両側1mの、ペガッサ星人(上図左)かメタリノーム星人(右)という両眼が横に配置された様な新たなヒトの視覚形態も、すぐに慣れて、新たな「透視能力」がヒトに簡単に備わるのではないだろうか。(本書に従うと、ペガッサ星人とメタリノーム星人は、大きな葉の植物が群生している惑星の出身と推定できるw。)

 ARやVRデバイスの持つ、新たなポテンシャルがこうしたところからも拡大するかもしれない。

◆ 予知
 ここで述べられるのは、錯視の数々とそれらを統合して説明できる統一理論。

 簡単に述べると、視覚の認知が持つ0.1秒という遅れを補正して行動するため、「知覚の神経的遅れを先取りして埋め合わせ、前方への動きにおい て現在時を先取りするメカニズムを備えている」ことにより、その能力の副作用として、数々の錯視が説明できる、としている。

 錯視というのは、視覚認識系の研究で数々古来から研究されている分野とのことだが、ヒトが自身の視覚認識能力の不備を補うために、長い期間でそれを補う脳内の情報処理メカニズムを創り上げてきた(淘汰圧で)、というのが錯視で証明できるというのが、なかなかの眼から鱗の知見でした。

◆ 霊読
 ヒトは何故これほど素早く文字情報を読み解けるのか、という謎に挑んだのが、本章。

 多様な言語ごとの文字の画数とその形態の特徴分析から、チョムスキーの普遍文法ならぬ、文字の生成原理分析(視覚言語学と名付けている)を試みているのが、とても面白い。

 自然にある事物の形から、普遍的な文字の形を導き出して、それによりヒトの文字読解が「霊的」な速度で実行される原理を解き明かす手並み(下条信輔氏との世界93言語の文字の平均画数と文字総数分析)が素晴らしい。

◆ 付記
 映画や文学による人間の脳内イメージの形成の観点で、おそらく今後この視点は、アニメや実写映画評、はては小説の分析に援用されるのではないだろうか。

 個人的にはヒトの視覚の立体視(両眼の視差効果だけでなく多様な認知による)と、言語と意識の関係とか、VR/ARへの援用とか、いろいろと考え続けている究極映像研究テーマがあるので、そことつなげてこの研究者の知見は今後も注視していきたいと思っています(^^)。

◆関連リンク
ヒューマンファクトリーラボ human factory lab
Mark Changizi HP

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2020.04.29

■感想 神山健治 × 荒牧伸志 監督『攻殻機動隊 SAC_2045』


『攻殻機動隊 SAC_2045』| クリップ | タチコマが大活躍!カーチェイスバトル
 4/24に世界配信が始まった『攻殻機動隊SAC2045』@Netflix にて、1-12話、いっき観しました(2日間に分けて)。

 神山健治攻殻に久々浸れて幸せ(^^)。明日も仕事なので、グッと我慢で半分までで泣く泣く止めました。

 『009』『ULTRAMAN』に続くセルルックとフォトリアルの間くらいのCGで描かれる“公安9課”。この独特な映画感覚は何なんでしょう。さすがに人物のアップ(特に荒巻)の違和感には眼をつぶりつつ観ていると何とも言えない独自のリアリティが立ち上がってくる。まさにSAC世界がグニュッとリアル世界に首を突っ込んできたような異質な感覚。

 そして描かれる「アレ」。このCGルックだからこそ異様さが引き立つ奇怪な存在がこの後どう描かれていくのか、これはもう明日の晩に12話までいっきに観ることになるでしょう(^^)。

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 そして、第7〜12話、金曜にいっき観。
 ええぇ〜〜ここで終わる!?こりゃあシーズン2を即配信しないと駄目でしょう!

 この話数では、舞台を日本に移し、アレを追う9課。
 空挺部隊とか1984とか魅力的なテーマが散りばめられています。

 そして何と言っても、スリムだけれど武装を強化したタチコマが今回も最高。やはりタチコマあってのSACです。可愛くて手元に置きたいこと必至。フィギュアを検索すると…。

◆関連リンク
『攻殻機動隊 SAC_2045』ROBOT魂
 もうフィギュアも出てるんですね。これは欲しい!

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2020.04.27

■感想 関根光才監督 ドキュメンタリー映画『太陽の塔』


『太陽の塔』予告編

 関根光才監督 ドキュメンタリー『太陽の塔』Bluray初見。

 テレビでやる様な、万博の企画から制作までのドキュメンタリーかと思って見始めたら、何とこれは関係者への取材というより(そうした部分も前半に一部あるけれど)、学者からアーティストといった『太陽の塔』に関心を持つ人たちの、太陽の塔の分析をインタビューで追いかけたもの。

 太郎が留学先のパリ大学でマルセル・モースから民族学を学び、バタイユと知り合ってバタイユの作った秘密結社に参加したり、といったところから、帰国後の沖縄の習俗、東北の縄文に触れていく過程。特に縄文の火焔土器と獣との共生といった概念に日本人の本質を見ようとするところが、丁寧に描かれている。

 特に岩手の「地域の平安と悪霊の退散を祈願する鹿踊」の映像とアイヌの習俗を映像で示したところが、岡本太郎の思想を映像的に表現できているのではないだろうか。

 映画は、この後、太陽の塔とほぼ同時期に構想されていた「明日の神話」/Chim↑Pom事件経由で、311の原子力と日本人の関わりについて綴っていく。ここはある意味、太郎から飛躍して描かれている部分にも思えたが、監督と製作陣の受け止めた太郎の思想を受けとめた想いが結集しているのだろう。

 最後のパートも圧巻で、南方熊楠の粘菌と太陽の塔の地下の単細胞生物に込められた太郎の思いをつなぎ、曼陀羅とチベットへと世界を広げていく。

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 そして太陽の塔とチベットのトルマ:Torma(上画像 右)という太陽への供物の形の相似から、太郎の人の原意識みたいなものに触れていた感覚を描き出している。ここはチベットの僧の言葉と中沢新一の分析であるが、こうした解析は読んだことがなかったので、とても興味深かった。

 そして映画のイマジネーションは、冒頭と節々で描かれている未来と思われる日本の風景の中で、荒野となった千里の地に残された太陽の塔が未来人に与える畏怖を映し出す。

 思想的/哲学的分析と、さらにそうした空想の映像、そして「明日の神話」の前で、ダンサーの菅原小雪が絵から受けたイメージで身体を自然に動かしていくダンスで示された、そうした多面的な岡本太郎のイマジネーションが映像として焼き付けられていて、とても密度の高い太陽の塔映画となっていました。

 太郎のあの像に関心持つ方には興味深い映画になっていると思います。

◆関連リンク
「太陽の塔」誕生秘話 (風の旅行社)

"時は1960年代、大阪万博開催の数年前。
岡本太郎が、東京の池袋で、日本滞在中のチベット人の僧と出会った。
そのとき、彼が僧から写真を見せられながら、教示を受けたのが、チベットの供物であるトルマであった。

トルマは、チベットに仏教が入ってくる前にあった人身供養の習慣の名残りだという。
たしかに、その膨らみ具合(上部と下部の二箇所あるものが多い)には、何かしら女体を彷彿とさせるし、赤色に染めるのは、血の跡、だとも言われている。

我らが岡本太郎は、このトルマの写真を見て驚愕し、「原初と未来が同時に見られる不思議なもん」(*)と語ったという。

(*)部分は、岡本太郎の上のエピソードを筆者に初めてご教示くださった、友人であるS氏(共同通信社)の配信記事からの孫引きである。"

 トルマについてはネットにこうした説明がされていました。映画での説明とは矛盾しています。真偽は確認できませんが、岡本太郎にインスピレーションを与える何かがあったのかもしれないですね。

映画『太陽の塔』とは? 監督・関根光才に訊く6つのこと。

"事前にシナリオは作りましたが、ナレーションでこちらに都合のいいように導いてしまったら話が小さくなると思ったんです。自分のイメージから外に出ていって欲しかった。バックグラウンドとしてのシナリオはあるけど、みなさんがそれぞれに話していることが、あたかも人間の大きな意識のように繋がっている。まるで曼荼羅のように。そうなればもっとスケールが大きなものになると。"

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2020.04.22

■感想 マイク・フラナガン監督、スティーヴン・キング原作『ジェラルドのゲーム』


Gerald's Game | Official Trailer [HD] | Netflix

 在宅勤務になり、毎日4時間の通勤時間がなくなり、一日一本の映画を日課にしようと誓って3日目。マイク・フラナガン監督、スティーヴン・キング原作『ジェラルドのゲーム』@Netflixで観ました。

 良作の多いキング原作映画としても上位と考えていいのではないでしょうか。ちょっとネタはありがちなんですが、細部で見せます。

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 特に恐怖を盛り上げる手腕と日蝕の映像、そして『ツイン・ピークス』ファンは見逃せないあの人が、幻想の存在として登場するシーンがとても深くて良いです。

 原作は物凄く昔に読んだ記憶ですが、全く忘却していましたw。

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