2019.07.22

■感想 新海誠監督『天気の子』

映画『天気の子』予報
 新海誠監督『天気の子』@ミッドランドスクエアシネマ、観てきた。

 いきなりの『The Catcher in the Rye』の無邪気な登場に、新海誠健在と感じて、新宿の雑踏の緻密な美術世界にスムーズに入っていけましたw。

 今回も、初期新海作品が苦手な僕には、相変わらずだなあ〜ってちょい引くモノローグはあるけれど、RADWINPSの曲とエンタメストーリーは闊達に、微妙なところで、モノローグ的世界に行きっぱになるのを回避している。

 美術とアニメートのディテールの高精細解像度が、観客にその映像世界のリアリティーを把握させる手腕は見事で、その世界の奇想に登場人物とともに浸って行ける。

 場内は2〜30代の若者で満席だったけれど、そんな奇想は彼らにも自然に感じられたんじゃないだろうか。

 ポスターのメインビジュアルになっている空のシーン。アニメートの自由な空間描写で大空に描かれたアートが素晴らしい。雲の下、東京の陰鬱な空間に対しての開放感。言語で描けない大空をキャンバスにした、なにものかの描写が本作の白眉。

 詩的モノローグから言語空間として組み立てられていたような初期作品に対して、無意識的な言語化される前の映像的なイメージから構築された最近の新海作品らしい伸びやかな映画世界。

 主人公の選択と東京の街の変貌。水を中心に描いた今夏の『プロメア』『海獣の子供』『きみと、波にのれたら』に比べると(空に対して)水の映像は今ひとつだったけれど、そこは現出した街と主人公たちのこれからのイメージの広がりで、なかなかの傑作になってたと思う。

◆関連リンク
感想 新海誠監督『君の名は。』

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2019.07.17

■感想 「高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの」@東京国立近代美術館

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「高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの」@東京国立近代美術館

"会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
会期:2019年7月2日(火)~10月6日(日)
開館時間:10:00-17:00 ( 金曜・土曜は10:00-21:00 )
休館日:月曜(7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館)、7月16日(火)、 8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)"

 本業の出張ついでに一泊して、開催第1週の週末 7/6(土)に行ってきた。情報量が凄いと事前情報を聞いていたので、朝一番10:00に入って、昼飯挟んで約5時間みっちり観てきた。はじまったばかりだったが、館内はなかなかの人混み。まだ入場待ちは発生していない様だったけれど、今後、混雑が予想されるので、じっくりと観たい方は早めの見学をお薦め。

 圧倒的な資料に記憶の中のいろんな映像が刺激され脳内再生される。前半見たところで昼飯休憩しヒートアップした頭を休めた。
 前半、まず『ハイジ』まで観て、ほとんど僕は観たことのなかった直筆の宮﨑駿レイアウト、原画を舐めるように見て、その鉛筆の線に痺れ、頭の中がいい気持ちに(^^)。

◆総論
 僕はアニメーター、特に宮﨑駿とか大塚康生、小田部羊一氏の作画に興味があるため、とにかく彼らの肉筆の絵、その鉛筆の線に目がいってしょうがなかった。まさにその点でもこの展示会は、しっかりとアニメーターの作画をじっくりと観ることが出来て、とても堪能できる。観終わった後も、高畑勲の演出というよりも実はその印象が非常に強い。

 演出家を美術展で取り上げることの難しさ。それがこの観終わった後の印象にも影響しているのかもしれない。

 演出家は、コンセプトを言語化して伝えるのが仕事である。企画書も絵コンテもメモであったり、絵コンテの作画担当への口頭での依頼だったり、いずれも言語が介在する職種である(一部、高畑氏も絵を自身で描かれている展示もあったけれど)。

 それに対して、この美術展は企画メモ、構想ノート等が大量に展示され、加えて高畑氏のインタビュー映像による演出意図のビデオが飾られている。いずれも言葉での表現である。一方、大量のメモを読むのに、美術館の展覧形式は適していない。高畑氏のメモは、かなり読んだつもりであるが、読めたのはおそらく展示で示されている(メモのページがたくさんあって奥にあって見えない資料も数々あり)1/10位だったと思う。

 実は美術というのは、言語化できない領域の芸術表現である、と思っている僕は、美術館へ美術展として観に行っているので、どうしても絵に重点を置いた見方になってしまったのではないかと思う。それが観終わったあと、「東映動画初期作画展」「『カルピスこども名作劇場』作画展」といった印象を強く持ってしまった要因なのではないかと思う。

 言語で表現される演出家の「芸術」領域は、ご本人執筆の本や構想・企画メモ、絵コンテの文字部分を読むことで受け止めることができる。それは美術展というより個人的な読書での鑑賞の方がふさわしい形式のように思う。

 それに対して、演出家の言語化できない無意識の「芸術」領域とは一体なんなのだろう。もしかしたら、美術展で演出家を取り上げる際のポイントはそんなところかもしれない、とぼんやり考えていた。
 もちろん今回の展示が、その構成で描いているように、高畑勲氏が漫画映画界に残したコンセプトは、多大なものであり、その功績は膨大な展示物とその構成によって見事に表現されていたと思う。それはコンセプトとして、先に述べた言語で表現できるレベルの高畑氏の考えである。ここで触れたいと思ったのは、そこから先、演出家の無意識の表現をダイレクトに体感できるような美術展というのはどういうものなのだろうか、と夢想し考えているということです。

 絵コンテが描ける演出家はその絵の鑑賞がそのひとつとして挙げられる。加えてFOとかカット割りの演出を絵コンテで体感というのもあるかも?
 が、そう考えると、後者の場合はやはり出来上がった映像が展示されていれば良いことになる。それは美術展というより映画館もしくは劇場で開催すべき回顧上映といったイベントが適している。

 今回も館内でいくつかの映像シーンは展示されていたが、それはごく限られたシーンであり、全体の印象として演出家のイメージを十分に体感できるボリュームにはなっていない。(これは美術展なのである意味、当たり前なのだけれど、、、)

 同時期に博多で開催されている、富野由悠季展がどういうアプローチをされているか、興味深い。が、しかし静岡に来るまでは僕はいけないでしょう。(今回も冨野氏の『アルプスの少女 ハイジ』の絵コンテが飾られていたけれど、あの絵から映画監督の無意識のイメージが伝わったかというと、ちょっと違いますね。)

 高畑勲展では、そのためのアプローチの一つとして、『アルプスの少女 ハイジ』の第1話のハイジがおんじのアルムの小屋に向かっていくところで厚着の服を脱いでいくシーンの演出意図とその原画/映像展示とか、『かぐや姫の物語』のかぐや疾走シーンの演出意図と原画から映像までの多角的な展示が印象的だった。こうしたところに美術展での演出家の展示企画のポイントがあるのかもしれない。言語化されない無意識の表象としての美術、この定義自体がどちらかというと僕の個人的なものなので、より一般的な意見を聞いてみたいものです。
 皆さんはどう思われますか。コメントいただけると幸いです。

 と書きつつ、このブログでも取り上げているけれど、僕は今まで、映画監督のアート展を実はそこそこ鑑賞してレポートしている。ヤン・シュヴァンクマイエル、デイヴィッド・リンチ、ブラザーズ・クエイ、ユーリ・ノルシュテイン等々。
 彼らは、いずれもその造形だったり、絵画だったり、かなり映像作りにアート的表現が侵食している作家たちである。映画と独立してアートとしての表現も確立されているため、今回の高畑勲展とは一概に比較できないかな、と思った次第。

◆以下、各展示メモ
 いずれも会場で展示物を見て、忘れないように、iPhoneにメモを入力したものです。
 まだ図録がほとんど読めていないため、図録に書かれていたり、もしかしたら当たり前の話もあるかもしれないので、あくまでもこのブログなりの備忘録くらいとして、読み飛ばしてやってください。

◆ナウシカの映画音楽についてのメモ
「王蟲の聖なる役割につける音楽、苦悩を背負っている (しずかな) 根源的生命力
 ミュンベルクウェーベルン→バッハ
              ペンデレツキ」
 と書かれていた。ペンデレツキの陰鬱な曲が王蟲の姿にかぶっていたら、相当な迫力だったかも。

◆ドラえもん企画メモ
 「シリーズの構成は不要であり、いかにバラエティを考えるかだけが重要」。
 物語というよりショートショート的に一話ごと見せていくことの重要性を言われているのでしょうね。

◆ルパン23話 絵コンテ 一冊。ただし展示は表紙しか見えません。
 この中身が見たかった!! ハイジとかと同じく高畑氏が文字、宮崎氏が絵を話し合いながら書いていったのであろうか。
 今回の企画協力者に宮崎氏が挙がっていなかったが、その辺りの具体的な進め方が今後明らかになるといいですね。(NHK「なつぞら」で小田部羊一氏監修でそこらがドラマで再現されると一番良いのですが、、、)

◆やぶにらみの暴君
 後年、監督により再編集された『王と鳥』と高畑氏はどっちを好きだったか、知りたくなる。著作に当たれば両作への感想は書いてあるのだろうか。(『王と鳥―スタジオジブリの原点』『漫画映画(アニメーション)の志―『やぶにらみの暴君』と『王と鳥』』の2冊、読んでみないと)

◆かぐや姫 メモ
 高畑氏が1959年東映動画入社まもなく、内田吐夢監督による『竹取物語』漫画映画化の企画があり、応募はしなかったということだが高畑氏が企画を練った際の資料メモ「ぼくらのかぐや姫」「『竹取物語』をいかに構成するか」の展示。
 「美のアルチザンとしての翁の目つきに対して、かぐや姫が翁を殺してしまう」という過激なストーリー、「特に好きでもなく作りたくなかった」という当初の『竹取物語』への考え方、「音楽劇 影絵」動画として作る考えとかが読め興味深かった。

◆狼少年ケン
 24話 象牙の湖 の彦根氏との一話が高畑氏のお気に入りだったとのこと。
 僕は展示されていた、(たぶん)月岡貞夫氏のコンテの、キリンとダチョウの絵がべらぼうにうまいと感じました。目福(^^)。

◆太陽の王子ホルスの大冒険
 ここのコーナーは、制作当時の資料が相当の量で展示されていて、充実しています。
 香盤表とか、キャラクタの担当表が、制作過程をうかがわせて興味深かった。
 キャラクタについては、「作者、(作画)責任者」がそれぞれ分けて書かれ、ひとりが両方担当する場合(「氷象」は「作者、責任者」とも宮﨑駿)と、「岩男」のように分かれている場合(「作者」 : 宮﨑駿、「責任者」: 大塚康生)があったとのこと。またカットごとの原画の担当表も展示されていた。こういうのがとても興味深いが、残念ながらこの資料は図録に掲載されてなかった。

 岩男と氷象の戦いの 宮﨑駿氏の原画 5枚が展示されていた、凄い筆致で思わず見とれてしまった。
 あと大塚氏の 高畑勲と一緒に描かれた絵コンテ。その生原稿(一部、青焼き)が観られたのも収穫でした。肉筆の迫力は何ものにもかないません。

 あと宮﨑駿氏の提案書 25枚ほど。
 「シータ(ヒルダ)は ホルス(パズーという名はどうでしょう)」という名前を変えてしまう提案とか大胆。
 「全体にリアルなものにしたい」「しかしシンドバット的リアルはエセリアルなり」「東映調反対」なーんてところが変革者としての気概を感じさせます。

 森康二氏による作画修正も、ヒルダの冷たさが 口元や目の線一本のわずかの位置の違いで表現されていて、素晴らしい。

 小田部氏によるホルスの船出シーン。ここも抜群にうまいです。波含めて凄い迫力。人の手によって映像が生み出される凄みを感じさせて、漫画映画の持つ力の一端が表現されています。

◆長くつ下のピッピ
 えんとつ掃除シーンについて、「ピッピ ここで超能力を見せる」というメモ。ピッピが超能力を持っているのは知りませんでした。

◆パンダコパンダ
 宮﨑駿氏の絵コンテ 6枚、雨ふりサーカス レイアウト22枚。
 脚本準備ノートとか含めて、柔らかい線が素晴らしい。メモの「ものすごーく大きな」という表現だとか目が点で表現されているがその表情の豊かさ、このころからハイジくらいまでの宮崎氏の絵の稚気が溢れてるところがとても和みます。波の表現も絶妙で感動。

◆アルプスの少女 ハイジ
 第1話のコンテ。ここでも宮﨑駿の絵が凄い。まさに画面の原型であり、この鉛筆のタッチは、出来上がった映像を超えているのでないかというくらい、味わい深い。
 富野由悠季氏のコンテも#18が展示。

 びっくりしたのはハイジのOP。TBSラジオ アトロク(以下関連リンク参照)で小田部氏が「OPの踊りの参考にするため、宮﨑氏と小田部氏ふたりで踊ったところを8mmフィルムで撮った」と語っていたところ。なんとそのシーンの原画は森康二氏でした。それを小田部氏が修正。自分たちの姿を大先輩に描かせるという二人の若手アニメーター、凄い(^^)!
 その森康二氏原画と作画監督 小田部氏の修正が並べて展示されている。前者の柔らかな描線が良いが、キャラデザが違うため、そこは小田部氏が直しているというのがよくわかる。
 OP映像もプロジェクタで上映され比較できるようになっていたが、ここは是非8mmフィルムも合わせて上映して欲しかったのです。凄まじい展示になったのにと残念ですw。

◆母をたずねて三千里
 ここでも宮﨑氏のレイアウトが多数、見られた。
 船のロープが水面に落ちているシーンに「今日の標語 レイアウトそのままやると失敗す。信ずるな、例え天下のレイアウトでも(字あまり)」と書いてあって、笑ってしまった。

 ペッピーノ一座と寂しそうなマルコの対比。

 アメデオの原画 9枚、宮﨑氏によるとものでこれが凄い。目とアメディオのポーズ。動物の持つ知性とかわいさの表象が素晴らしい。

 「原画参考」と描かれた人形を操るフィオリーナのおそらく宮﨑駿氏による絵も、映像のフィオリーナが持っていた寂しさが生の絵としてそこにあり、どれだけ見ていても飽きることがない味わい。

◆赤毛のアン
 レイアウトは1話〜15話が宮﨑駿氏のはずなのに、展示の絵にはクレジットがない。展示されていたものの中では、46話のみ別の方のはず。何故、ここだけクレジットがないのでしょうね。こちらのレイアウトの絵も味わい深いけれど、前述した稚気というようなものは物語の違いもあり、あまり感じられません。

◆じゃりんこチエ
 レイアウトと背景画が充実。ここでレイアウト図と背景が並んで展示されていたので、じっくりと見てみた。
 以前から思っていたレイアウトでのデッサンと質感の良さが、背景画では何故かドロップしてるような気がするのは、僕だけでしょうか。

 例えば冷蔵庫と家の質感。全体のバランスよりひとつづつの事物を写実として描こうとしているからなのか、レイアウトでのいい味が十分表現されていないと感じた。

 三千里やハイジも、そういう見せ方で宮﨑駿レイアウトがどう背景画で変わったか見たかった。

◆かぐや姫のものがたり
 高畑氏の制作意図から、橋本晋治氏の作画が多面的に表現されている。

◆ミュージアムショップ
 今回の展示原画を使った絵はがきやグッズ類がたくさん売っていたのですが、アニメーターの名前は残念ながら書かれてません。
 作画監督とか画面設計とか中心スタッフ名で代表してクレジットされているのですが、権利的にはどうなっているかわからないけれど、美術館での販売として、絵をこうして売るのであれば、その原画を描いた人の名前をクレジットしてしかるべきではないだろうかと思った。
 展示としては、アニメーターの名前がかなりのボリュウムで今回表記されていただけに、そうしたところは少し残念でした。

 以上、長文で好き勝手にいろいろとすみませんでした。堪能させていただきました。

◆関連リンク
伝説のアニメクリエイター・小田部羊一に聞く「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」秘話に震えろ
神アニメーター、小田部羊一さんへの超貴重なインタビュー【ハイジからポケモンまで】
 TBSラジオ、アフタ−6ジャンクション公式サイト、音声ファイルあり。小田部さんと「高畑勲展」企画アドバイザーで図録の執筆もされている、高畑勲・宮崎駿作品研究所代表 叶精二さんが登場されています。

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2019.07.15

■感想 劉慈欣『三体』( 立原 透耶 翻訳監修, 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ訳 )

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劉慈欣『三体』刊行記念! 短篇「円」特別公開(早川書房公式)
三連休は『三体』を読もう! 読書のおともにどうぞ! 登場人物表(早川書房公式)

 劉慈欣『三体』読了。いや〜面白かった ! このワクワク感はたまりません。3部作の続き『黒暗森林』は来年翻訳出版予定、第3部『死神永生』が出るのはさらにその先で待ち遠しくてなりません。Wikipediaを覗くと三部作の粗筋が書いてあるようですが、読みたくてしょうがないけれど、もったいなくて読めません(^^;)。

 冒頭の文化大革命の近衛兵の少女の鮮烈なシーンからはじまり、軍の巨大施設での謎のプロジェクトと某仮想世界の話が並行で進む。スリリングな施設のシーンと奇想の仮想世界。そしてそれらの交点に炙り出されるある存在とのファーストコンタクト。

 中国の理論物理学者の苦悩と、それを伏線としたある重大な決断。ここの悲劇性から描かれるのは壮大な人類の暗黒。ノワールなその後の描写とクライマックスで描かれる人類の絶望感の共鳴が絶妙。そして、、、、。

 僕はこの前半の文革の描写と中国の政治的側面からのいろんな科学者の生活上の制約のドラマ部分、そして短編「円」に代表される奇想映像(ある意味バカSFの系譜)としてのSFアイデアに痺れながら読み進めました。
 
 もうひとつ面白い縦糸は、作戦司令センターの警察官 史強の追う謎。ミステリ的に、史強の直感が壮大な宇宙の企みを予測し、そしてラストで史強が示す人類の持つべき姿勢が小気味良い。

 あと最近エンジニアの本職仕事で分子原子スケールの物理学の話題が頻繁に出てきて、ロートルエンジニアは着いていけなくなっているのだけれどw、この人類の絶望感、そんなところからも共鳴して、ある部分実感として読み終わりました(^^)。

 テクノロジーのネクストレベルはミクロな粒子をマクロなレベルで操作する(原始時代の焚き火からナノテクまで)ものではなく、ミクロ次元の制御と操作なのではないか、本書のひとつの大きなテーマです(本書 P361丁儀のセリフ)。

 このテーマからいくと、本書のクライマックスで描かれた次元を操るテクノロジーのシーンは、さらに大きく拡大し、今回の奇想シーンを超える壮大な物理学絵巻が開陳するのではないかという期待が高まります。

 中国では3部作で2100万部、英語版とドイツ語版で110万部とか発行されているようだけれど、日本でも既に発売一週間で8刷とかのようなのでヒットも期待できそう(中国の約1/10の人口の日本だけれど、さすがに200万部とかは難しいでしょうかw)。

  中国ではITベンチャー系に受けたようだけれど、エンジニアの人数データだと2014で “日本:81.9万人、アメリカ:357.3万人、中国:327.3万人”ということなので(日本国内と海外のITエンジニア人口の推移 より )、日本の4倍で大きく見えますが、2100万部÷3冊/セット=700万人に対して、ITエンジニアで半分くらいですね。あとは学生たちかな。

 映画化は中国で撮影までトライしたが完成できず(以下、関連リンクに幾つかその断片情報を添付しました)、その後、Amazonでの映像化の噂があるようですが、確かにこんな本格SF作品が映像化されたら、本物のSFブームが到来するのかも。本作は20時間くらいの大長編としてじっくりと丁寧にこのワクワク感を映像化してもらいたいものです。

 最後に、映画化よりも、まずは素早い翻訳出版を、関係者の皆様、よろしく御願い致します。早く続きが読みたくてたまりません。

◆関連リンク
中国人SF作家・劉慈欣氏の小説「三体」がヒューゴー賞長編部門を受賞(15.8/24)

"中国人SF作家・劉慈欣氏の小説「三体」が第73回ヒューゴー賞長編小説部門を受賞した。
 ちなみに、劉慈欣氏がプロデューサーとして作った同名映画も撮影を終え、2016年7月に上映される予定だ。"

中国SF『三体』の映像化はいつ? 映画化とドラマ化はどうなった?

"実は撮影も完了していた

2015年には『三体』の実写映画化が進められ、撮影が完了したという報道もされていた。ポスターやトレイラーも公開され、中国のSFファンは映画版『三体』の公開を今か今かと心待ちにしていた。当時は『さまよえる地球』ではなく、『三体』の公開が中国のSF映画を取り巻く状況を一変させると大きな期待を受けていた。"


“The Three Body Problem” movie: sci-fi made in China? 
 上のリンク先にあったメイキングらしき映像。
 
オバマも絶賛! リュウ・ジキンの登場がSFを変える

"オバマ氏は、2017年12月に北京で開催された国際教育サミットでリュウ・ジキンとの面会を果たした。オバマは、この年の1月にニューヨークタイムズのインタビューで、『三体』を絶賛していた。今回、オバマはジキンの次回作について質問し、ジキンは自身の作品の映画化についてオバマへ話をしたという。"

世界が注目する中国人SF作家、リュウ・ジキンの肖像 (Wired)

"その作風は、荒涼とした現代的なテーマへと向かいがちな最近のSFの傾向とは異なっている。彼はこうした違いの原因を、近年の中国の科学技術の向上からくる高揚感によるものだと考えている。
「中国の新しい世代は、前の世代より広い視野をもっています。彼らは自分自身のことを、単に中国人であると考える代わりに、人類の一部として考えています」とリュウは言う。「彼らは地球全体に関する問題を、よく考えているのです」"


 《三体·起源》 the three body problem · origin 中国での映画化の断片映像が見られます(フェイクかも)。
Transcript: President Obama on What Books Mean to Him (NY Times)
 オバマ元大統領インタビュー。『三体』についての部分。

"It’s interesting, the stuff I read just to escape ends up being a mix of things — some science fiction. For a while, there was a three-volume science-fiction novel, the “Three-Body Problem” series —

— which was just wildly imaginative, really interesting. It wasn’t so much sort of character studies as it was just this sweeping —

Exactly. The scope of it was immense. So that was fun to read, partly because my day-to-day problems with Congress seem fairly petty — not something to worry about. Aliens are about to invade. [Laughter]"

【緊急開催!】陸秋槎×大森望「劉慈欣『三体』日本語訳版刊行記念イベント」【大森望のSF喫茶 #30】

"主催: ゲンロンカフェ 東京都品川区西五反田1-11-9 司ビル6F
2019/07/19 (金) 前売券 1ドリンク付 ¥2,600"

◆若干のネタバレ感想
 僕は本書を初めから最後までとても面白く読んだのですが、唯一ダメだった部分は以下。
 ネタバレなので、文字をホワイトアウトしますので、読後の方は、カーソルで文字反転させてみてください。

 後半クライマックスの三体星人の会話のくだりはダメでした。感想して干物のようなペラペラの存在になる生命体が、あのように地球人と同じメンタリティで会話していてはダメかと。あれじゃまるでガミラス星人です(^^)。(『宿借りの星』を読んだ直後なので、特に大きな違和感が…)

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2019.07.08

■感想 古川日出男『平家物語 犬王の巻』

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古川日出男『平家物語 犬王の巻』(河出書房新社 公式HP)

"時は室町。京で世阿弥と人気を二分しながらも、歴史から消された能役者がいた。その名は犬王――鳴り響く琵琶は呪いか祝福か。窮極の美を求めた異貌の男の一生が物語られる。平家物語異聞。"

 古川日出男『平家物語 犬王の巻』読了。

 湯浅政明監督による映画化の報に触れてから読んだという、古川奇想小説ファンとしては恥ずかしい状況ですがw、能と琵琶の物語世界を、古川独特のスピード感ある文体で堪能できる傑作でした。

 ここでも、古川日出男の朗読を聴くと顕著に分かる演劇的な文体と、いにしえの物語を語る物語の絶妙な適合が、他にない小説空間を作り出しているのですが、犬王という呪われて能の家庭に生まれた若者が、自ら兄たちを観て必死に舞を覚えることで霊を祓い浄化していく様が、この小気味好いリズムの文体で清々しく体感できることで、読者の何かも浄化されるような気持ちのいい小説になってます。

 先日観た湯浅監督最新作『きみと、波にのれたら』 が、やはり気持ちのいい空間を提示してたので、ますます楽しみなコラボになりました(^^)。

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古川日出男『平家物語 犬王の巻』映画化決定 2021年公開

"映画『犬王』
公開時期:2021年予定
原作:「平家物語 犬王の巻」古川日出男著/河出書房新社
監督:湯浅政明
脚本:野木亜紀子
キャラクター原案:松本大洋
アニメーション制作:サイエンスSARU

古川日出男コメント
私が書いたのは芸能についての小説だ。芸能とは歌であり演奏であり、感情、感動である。私は文字だけでその物語化を成し遂げようと試みた。今回、それらは一冊の本の内側から解き放たれる。すなわち音が、声が、色彩が。それから感情が、もちろん感動が。その監督やその脚本家やそのキャラクターの設計家や、音楽家や、その他その他によって、それらはついに放たれるのだ。

湯浅政明コメント
歴史にはわずかにしか書き記されていない、「犬王」という猿楽師を大胆に解釈された古川さんの物語。野木さんの脚本。松本さんのイメージ。・・・これは面白くなるしかないですね。楽しみにしててください!"

 そして映画情報は現在のところ以上です。
 松本大洋と湯浅政明のコラボレーションというのも興味深いですが、ミュージカルというのが最大の期待。
 『きみと、波にのれたら』の歌のシーンが素晴らしかっただけに、この能と琵琶を主題にした物語で、その音楽劇がどのようなものになるか、楽しみでなりません。2年先というのは首が長くなりますが、まずは湯浅監督の『映像研には気をつけろ!』を20.1月からテレビシリーズとして楽しみながら待ちたいと思います。あ、その前に早くNetflixに入って『DEVILMAN crybaby』を観なきゃ(^^;)。

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2019.07.03

■感想 湯浅政明監督『きみと、波にのれたら』


『きみと、波にのれたら』港&ひな子の歌シーン

 湯浅政明監督『きみと、波にのれたら』@ミッドランドスクェアシネマ で観てきた。
 これは、元気が出る物語で、さらにアニメーションの自由な表現で、活き活きとしたいい映画になっていました(^^)!

 湯浅監督らしい、伸びやかな描写、幻惑的シーンが鮮やか。海のシーンはもちろん、コーヒーを淹れたり、オムレツを作るシーンさえ気持ちがいい。
 残念ながら大ヒットという感じではないようだけれど、幅広い層の観客が気持ちよくなれる映画だと思う。

 僕が観たのは週末金曜の夜の回だったけれど、客の入りは小さな劇場で半分ほど。若い人が多かったけれど、『君の名は。』の様な大きなうねりにはなっていない様だった。この原因のひとつに、宣伝がうまくこの映画の良さを表現する様に機能していなかったと思う。

 セリフを多用し物語を言葉で語り、ちょっと痛い感じの悲劇の映画のように見せている予告篇とCM。
 ああじゃなく、このリンク先の映像のような、あの2人の歌をバックに躍動感とユーモアの溢れる映像の力で、この映画の気持ち良さを存分に表現した予告だったら、もっと幅広く受け入れられたんじゃないかと、ちと残念。

 この後の口コミでの広がりも期待できるけれど、現在の予告篇を観た人にはなかなかあの印象を覆して劇場へ足を向けてもらうのは難しい気がする。

 ということで、湯浅ファンはもちろん、『君の名は。』のヒットにあやかった恋愛アニメなんて、と思ってる方にも、この映画の映像と音楽の奏でる気持ち良さを、是非伝えたいものです(^^)。

 Youtubeのこの動画、本篇と少し音楽に乗せた映像の運びが異なると思うけれど、このシーンだけでも、この映画を観る意味があるくらい、僕は好きになりました。この主役二人の歌は以下のリンク先の対談によると、偶発的にできたもののようですが、この録音ができた時に、本作の成功を湯浅監督は確信されたんじゃないかな、と思えるほどの良いイメージと感じました。

◆関連リンク
・湯浅政明×片寄涼太 対談
 この歌の出来上がった経緯とか分かる、なかなか良いインタビューです。
 主役の2人、『3年A組 』のあの2人だったんですね。

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2019.07.01

■情報 100分de名著『小松左京スペシャル』 2019年7月

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100分de名著『小松左京スペシャル』 2019年7月 (NHK 公式HP)

"「宇宙にとって人間存在の意味とは何なのか?」「未曽有の災害に直面したとき人はどう行動したらよいのか?」「本当の意味で豊かな文明とはどんなものなのか?」……人間にとって根源的な問題をSFという手法による思考実験を通して、大胆に問い続けてきた作家・小松左京(1931-2011)。卓越した日本人論,、文明論としても読み解ける小松左京作品を通して、「人間存在の意味」や「真の豊かさとは何か」といった普遍的な問題をあらためて見つめなおします。

番組では宮崎哲弥さん(評論家)を指南役として招き、小松左京が追い求めた世界観・人間観を分り易く解説。「地には平和を」「日本沈没」「ゴルディアスの結び目」「虚無回廊」等の作品に現代の視点から光を当てなおし、そこにこめられた【日本人論】や【未来論】【文明論】など、現代の私達にも通じるメッセージを読み解いていきます。

第1回 原点は「戦争」にあり ~「地には平和を」~
【放送時間】2019年7月1日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

第2回 滅びとアイデンティティ  ~「日本沈没」~
【放送時間】2019年7月8日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

第3回 深層意識と宇宙をつなぐ ~「ゴルディアスの結び目」~
【放送時間】2019年7月15日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

第4回 宇宙にとって知性とは何か ~「虚無回廊」~
【放送時間】2019年7月22日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ"

 小松左京の作品のうち、「地には平和を」『日本沈没』『ゴルディアスの結び目』『虚無回廊』という大好きな4作が取り上げられるので、これは必見です!
 今回は紹介記事として、以上ですが、このあと、放映後の感想も載せていきたいと思っています。 

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2019.06.26

■感想 山田太一『男たちの旅路』最終話「戦場は遥かになりて」他

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 山田太一『男たちの旅路』、ちょっと前にNHKで1-3話が再放送された際に観はじめて、録画してあったDVDで全話を十数年ぶりに見直した。
写真は最終話「戦場は遥かになりて」(BS2での再放送録画版)のOPと冒頭部分。このドラマが放映された1982年の4年前にヒットした『さらば宇宙戦艦ヤマト』が10カットほど動画で流される。(しかもノンクレジットなのである。気骨があったNHKということだろうか?)

 鶴田浩二演じる特攻隊生き残りのガードマン会社の吉岡司令補が、第一作「非常階段」で若いガードマンに戦争体験を美化して語るのに対して、最終話「戦場は遥かになりて」では戦友に美化してはいかん、あの頃俺たちは…と戦争に突入して行った日本の実情を生々しく語らないといけない、と話すようになり変節している。これは第4部の1話「流氷」で水谷豊演じる杉本陽平が吉岡を北海道から連れ帰る際に、あんたらには戦争がどんな風に起こったのかを語る責任がある、と訴えたシーンの、山田太一の結論と見ることができる。

 ヤマトの映像はOPで流されるだけで、当時の世相についてもドラマ中で何も語られないが、この吉岡の発言から、ヤマトの特攻シーン、当時ブームになり好戦的な雰囲気が(特に制作側に)あったこと等から、批判的に引用されてるのは明らか。

 よく引用が許されたものだと思う。DVDでは戦争映画のポスターか何かに差し替えられてるらしい。ネットにもこのOPの画像は存在しないようなので、1つの記録として掲載します。

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 この物語が上記のような吉岡の戦争感の変節を描いたものなのに、なぜかドラマのクライマックスは自衛隊協力のUS-1を使った、このドラマシリーズらしからぬスペクタクルな雰囲気で終わっていく。もちろん自衛隊が救命隊として日本の生活に軍事的でなく有益に働いている、という非戦的な描写と考えることもできるけれど、なんだかこの勇壮な雰囲気でドラマの本筋が鑑賞後に余韻としてあまり残らない感じになっていたのは何故なのだろう、とか考えてしまった。

 最後に個人的なこのドラマの影響について蛇足的に書くと、学生時代に熱中して見ていた『男たちの旅路』を今回全篇観直して、本業の会議の時に時々自分の中に沈殿した司令補が熱い発言(もちろん戦争についてではないですw)をしてしまうのを感じたりするのでした(^^;;)。

◆関連リンク
「男たちの旅路スペシャル・戦場は遥かになりて」(ブログ「フルタルフ文化堂」さん)
 上記感想は、リンク先のブログ記事を参考にさせて頂きました。

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2019.06.24

■感想 酉島伝法『宿借りの星』

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『宿借りの星』(東京創元社 公式サイト)
 酉島伝法『宿借りの星』読了。『皆勤の徒』に続き、まさに文字(主に漢字の造語)で異世界にトリップできるVR-SF。
 電車の中で読んでいて駅で降りると、コンコースの看板の文字が不思議な感覚にゲシュタルト崩壊する。あれ、ここはどこの異世界だっけ、すっかり『宿借りの星』住人視点で日本のヒトの町が異質に見えてしまうという破壊力。

FORBIDDEN PLANET Soundtrack - a) Main Titles - Overture - b) Giant Footprints In The Sand
 今回読んでいる最中にずっとBGMに聴いていたのが 50年代の異星の文明を描いたSF映画『禁断の惑星』サントラの電子音楽。これが妙に甲殻類なSFに合うんですねw、なぜだか。

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 ムーミン+次郎長三国史というのが酉島氏自身が本書のイメージを伝えるためにつぶやかれた言葉だというが、そのようなありもののワードで簡単に表現出来るような小説世界ではない。作者も入り口として敷居の低いイメージを提示したかっただけだろうから、あたりまえだけど、、、。
 じゃあ、どういう小説か? と問われると、これは表現が超難しい。かといって敷居が高い作品かというとそうではなく、割とすんなり読み進められるが、その際に読者が脳内で連れ去られる世界の芳醇さ/奇想さ/ぶっとんだユーモア感覚はかなりの複雑さを呈している。

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 物語は卑徒(ひと)と呼ばれる種が滅んだ後の異星で、甲殻系の(地球感覚からは)異様な生態系を持った蘇具(ぞく)たちの倶土(くに)を舞台に、主人公マガンダラと弟分のマナーゾ(上図 左)の道中が描かれる。異質生態系の奇妙な世界、食と行動と習俗を段々と自分の身体が甲殻化するような体感をしながら、そしてあるものが体内に寄生し宿っていく過程は精神的な侵食も進んでいく。

 描かれるクライマックスの情景は、正直まだ自分の貧困なイマジネーションではイメージがぼんやりとしているけれど、その星の世界が神話的に大変動するダイナミックさ。

 他の映画や小説で何か例えてこの読書体験を伝えたいと思ったのだけれど、なかなかこの世界は他に例が思い浮かばない。ので、興味を持たれたら、上記東京創元社の公式リンクで冒頭を立ち読み/または池澤春菜さんによる本書朗読を聴かれる(以下リンク参照)ことをお薦めします。(あえて言うとヤン・シュヴァンクマイエルとブラザーズ・クエイとヴァーツラフ・シュヴァンクマイエルのシュルレアリスム作品をAIでミックスして、自動書記自主映画を生成したような、、、w)

◆関連リンク
池澤春菜さんによる本書紹介@TBSラジオ アフター6ジャンクション(アトロク)は以下。本作の貴重な朗読は、4:38から聴けます。
酉島伝法 初長篇『宿借りの星』進捗(Togetter)
 今回の記事の添付画像は、twitterでつぶやかれた作者自身の本書収録イラストを使わせて頂きました。そのtwitterのまとめは上記リンク。
酉島伝法初長篇『宿借りの星』感想集(Togetter)

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2019.06.19

■情報 デイヴィッド・リンチ、アカデミー名誉賞受賞!!

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『ツイン・ピークス』デヴィッド・リンチらにアカデミー名誉賞が贈られることに!(excite ニュース)

"アカデミー名誉賞はアカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミー(AMPAS)の理事会がガバナーズ賞として芸術のために人生を捧げ、卓越した業績を残した世界の映画人に授与する賞で、毎年開催されるアカデミー賞授賞式で授与されていた名誉賞を独立させたもの。"

THE ACADEMY TO HONOR GEENA DAVIS, DAVID LYNCH,
 WES STUDI AND LINA WERTMÜLLER 
AT 2019 GOVERNORS AWARDS
 (アカデミー協会 公式)

"  4つのオスカー®像は、10月27日日曜日にアカデミーの第11回年次総督賞、ハリウッド&ハイランドセンター®のレイドルビーボールルームで発表されます。"

 デイヴィッド・リンチ監督がアカデミー名誉賞(カバナーズ賞)を受賞!
 リンチは今まで、『エレファント・マン』『ブルーベルベット』『マルホランド・ドライブ』で監督賞、作品賞等ノミネートされていますが、残念ながら受賞は逸しています。
 本当は新作を撮って、作品で賞を取って欲しかったけど、まずはおめでとうございます。名誉賞撮った後、作品で再び受賞というのもクールなので、リンチには是非頑張ってほしいものです(^^)。

“No Input, No Output”: Jim Jarmusch on Strummer’s Law, Favorite Horror Directors, and Twin Peaks

“But I think the masterpiece that took the last few years in American cinema is really Twin Peaks: The Return. Eighteen hours of incomprehensible T.V. It wasn’t easy for him, and, by the way, no one will finance David Lynch’s feature films — so, what the fuck, I don’t get it. That is a real work of incredible beauty because it is so incomprehensible. I just found it to be a masterwork.“

 映画監督 ジム・ジャームシュが『ツインピークス ザ・リターン』をここ数年のアメリカンシネマの傑作である、と言ってます。これはファンとして凄く嬉しい。
 WOWOWとブルーレイだけという、日本の限定的公開と、とりわけSFシーンからの反応の薄さが残念でならない、真にSF映画と言えるこの傑作について、もっともっと語られていいと思うので…。
 上記引用は、リンク先の最後のパラグラフです。
 ジャームッシュの『ツインピークス ザ・リターン』評が読んでみたいものです。

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2019.06.17

■感想 ラース・フォン・トリアー『ハウス・ジャック・ビルト』


『ハウス・ジャック・ビルト』予告編
 ラース・フォン・トリアー『ハウス・ジャック・ビルト』@ ミッドランドスクェアシネマ2、観ました。
 いや〜、トリアー史上でも一二を争う鬼畜ぶり。

 残虐なシーンに弱い僕は、ところどころ指の間から画面を覗きつつ、ジャックの“アート”とやらをウェッとか心で呟きつつ、脅迫性障害のシリアルキラーという場面で思わず吹き出したり…。

 ネタバレどうこういう作品ではないですが、予備知識なく観たい方は以下ご注意下さい。










 トリアーらしい衒学的なダイアローグや絵画の引用、自作や戦時のドキュメントを中心とした映像シーン、そしてデイヴィッド・ボウイの“FAME”、グレン・グールドの演奏。ジャックが見るネガな光の世界。これらが伏線になって(?)、観客が誘われるクライマックスの煉獄の映像が素晴らしい。

 実在のサイコパスがどんなものだったか、殺人後の”アート“シーンもその実物がモデルなのか、トリアーの創作との関係に興味は尽きない。

◆関連リンク
【イベント】映画公開記念 アートから読み解く『ハウス・ジャック・ビルト』 ラース・フォン・トリアー監督の頭のなか 滝本誠×小谷元彦トークショー

"2019年 06月15日(土) 蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース
劇中に幾度も唱えられる“芸術”という言葉、不穏に鳴り響くデヴィッド・ボウイの名曲『FAME』。
シリアルキラーの内なる葛藤と欲望はアーティストのそれと同じ、それ以上なのか。
視聴覚に強烈に訴えかけてくる"破格の問題作"をアートの視点から読み解きます。"

 すでに先週末に開催されたイベントですが、滝本誠さんの語る『ハウス・ジャック・ビルト』、異常に聴きたかった。
ラース・フォン・トリアー「ハウス・ジャック・ビルト」に登場する絵画について
『ハウス・ジャック・ビルト』公式知恵袋
 たとえば、僕の知りたかった「テッド・バンディ」についても書かれています。ネタバレありなので、リンク先ご注意です。

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2019.06.12

■感想 Oculus Quest

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 待望の Oculus Quest を公式サイトで購入。Amazonで予約してたのが一向に送付されず、5/29にキャンセルして、公式で香港からほぼ2日間で届きました。

 4日ほど試した感覚、6DoFのトラッキングが見事で、身体の動き頭の動きに対する追従性はほとんど違和感のないレベル。またモニタ解像度も、PS VR、Oculus Goに比べて高精細でじっくり見ないと画素の粗さは目立たないレベル。流石に4Kテレビを見てるのより粗いけれど、全天周映像になってるので迫力は満点。

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 家の狭いリビングが大画面映画館になったり、アラスカのオーロラの原野になったり、ダリの幻想的な広大な3Dアート空間になったり、素晴らしい出来です。

 今後、モニタ解像度の高精細化はまだまだ進み続けるはずで、5年もあればヒトの視覚にかなり迫るはず。3D映像オタクとしては3Dテレビは廃れて残念だけど、ヘッドセットで立体映像の未来は明るいと思う。個人的には3Dプロジェクターの4K化は不要かなと思います。

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 VRとしてOculus Questはスタンドアロンの自律型なので、ゲーム機やPCにつなぐケーブルレスで、ボクシング(クリードになれますw)、テニス等のスポーツでも身体の自由度がありがたく、思わず狭いリビングを忘れて汗かいてます(^^)。

 チュートリアルソフトとか、標準で付属しているスポーツアプリでまずはかなり遊べます。

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 ただし欠点は、ソフトがまだ少ない事。
 Oculus Goで楽しめた Samsung VRとかAmaze VR とかがまだ未対応で遊べない事。Google Earthなんかもまだないのが残念。
 Youtube VRは楽しめるけれど、360° や180° 3D動画は、カメラ移動と身体移動のギャップでちょっと酔う。やはり前半述べた6DoF ソフトの方が酔いの面でもかなり有利ですね。

 ネットで見るとかなり評判良く、数は出そうなので、今後のソフト数拡大が楽しみ。

 これはVRを初めて導入しようとしてる方に、初めて薦められるVRデバイスですね(^^)。僕もこれが初購入になります(PS-VRは買ったけど試してすぐ売り払いました)。
 ちなみに猫にVR体験させるチャレンジはまだしてませんので御安心をw。

◆関連リンク
Oculus Quest 公式
MoguraVR Oculus Quest関連記事
 VRの記事がもっとも充実しているサイトです。

・当ブログ関連記事
 ■感想 Oculus Go の VR世界(1) ハードウェア中心に
 ■感想 Oculus Go の VR世界(2) アプリ、コンテンツ

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2019.06.10

■感想 渡辺歩 監督『海獣の子供』"Children of the Sea"

 
『海獣の子供』 予告2(『Children of the Sea』 Official trailer 2 )
 渡辺歩 監督『海獣の子供』@小牧コロナ、観てきました。

 ファンタジーアニメーションとして最高峰に到達した素晴らしい映画でした。手描きアニメーションと背景美術をCGにより幻想的な映像として昇華させた傑作。

 五十嵐大介 原作、渡辺歩 監督、小西賢一 キャラクターデザイン・総作画監督・演出、木村真二 美術監督ほかスタッフ陣が構築した新しい作品世界に111分間、劇場で浸ることができます。
 
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 まず冒頭の港町の中学生の溌剌とした夏休みの描写に惹きつけられます。特に部活動のハンドボールでトラブって学校から帰宅する主人公 琉花の背景描写の美しさ。手描きの背景を3D-CGモデルの中で縦横に動かすシーンの画面全体の躍動感に打たれます。

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 そして水族館はじめ、海の生物たちの鮮やかで幻想的な息をのむ描写。クジラや夜光虫の描写は、アン・リー監督『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の海のファンタジックなシーンを想起させますが、フォトリアルなそれと比べ、手描きゆえの独特の味わいはそうした世界一級の幻想シーンに勝るとも劣らないものに仕上がっています。

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 物語は、海と宇宙と生命の交点である浜辺を舞台として、哲学的詩的空間を構築しクライマックスを迎えます。この宇宙的な広がりもファンタジー映画としての達成のひとつのキーポイントと言えます。畳み掛けるように描かれた宇宙と海の生命の交感は、原作を読んでない私にはとても一回の視聴では噛み下せない詩的な内容だったので、次に観る時に言語的なセリフと映像描写の相関を少しでも読み解けるように、鑑賞したいものです。

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 映画はアウタースペースとインナースペースをつなぐようなビジョンを展開するわけですが、アニメーションという表現形式が特にインナースペースを描き出すことが得意な映像手法なので、人の手から脳内イメージを直接描き出されることでこのファンタジーをより一層魅力的に見せているのだと思う。

 おそらくこの映画がひとつの手本としたものに同じくアウタースペースとインナースペースの融合というクライマックスをSFXという手法で描いた『2001年 宇宙の旅』があると思うけれど、アニメーションというイマジネーションを直接画面に描写できる手法を活かしきったところで、ある部分においては、それを超える現代的な表現を獲得できているのではないだろうか。と書いたらさすがに褒めすぎだろうか。しかし『2001年』もスターゲートシークエンスは眠くなりますからね(^^;)。

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2019.06.05

■情報 ARグラス nreal light

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公式サイト

 サングラスのような軽快なタイプのARグラス、nreal light、かなり輝度の高い映像のようです!
 登場は、2020年初頭とのことで、Magicleapより早く市場投入かと思われます?しかもこの軽快なデザインがそのまま商品化されれば、なかなかの市場インパクトでしょうね。そして同じくARに力を入れている Apple も黙ってないでしょうね。

 Andoroidとつなぐことで、システムを軽くして $499との事なので、これ出たら、僕もメガネからコンタクトレンズに変更して、いよいよ電脳コイルな世界へ第一歩、踏み切るかな(^^)。

CES2019での展示品の動画 (twitter kajiken0630 さん)

 こちらのリンク先に動画がありますが、展示会場という周りが結構な照度の照明の中、なかなかの鮮明度を持った画像を、メガネのシースルーの外の光景に対して重畳していて、CG映像がしっかり見えて、期待が高まります。

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 コンシューマー $499、デベロッパーズキット $1199とのこと。
 リリースは、前者が2020年初頭、後者が2019年9月とのこと。本当にすぐですね。

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nreal light | First look from inside
こっちのデモはCESのものではないですが、6Dofの追従性も素晴らしく見えます。

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 スペックは以上のようになっています。

メガネ型MRデバイス「nreal light」499ドルで2020年一般発売 開発者版は今年9月から提供 (Mogura VR)
 nreal社、元MagicLeapのエンジニアが起こした会社なんですね。
 あれ、こっちには3DoFと書いてあるけれど、上の映像は6Dofですよね。どちらがただしいのでしょうか。

◆関連リンク
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CES 2019: Trying Out NREAL AR Glasses
 こちらの映像の11分からのメガネの映像を撮ったものでは、6DoFには見えないですね。電脳コイルをやろうとすると、6DoFは必須ですが、、、。

・twitter AR_OjisanCES2019動画 (twitter)
 こちらは3DoFっぽい。

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2019.06.03

■感想 マイケル・ドハティ監督『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』


『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』日本版予告編
 マイケル・ドハティ監督『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』レーザーIMAX 3D@109名古屋で観てきました。
ネタバレの感想は一番下でします。まずは以下、ネタバレなしの感想からですが、先入観なしで観たい方はご注意ください。
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◆ネタバレなし 感想

 いや〜、凄い音響とデザスターな映像シャワーで満腹でした。マイケル監督、名に恥じずド派手w。と下らないダジャレが出てしまうくらいの好き放題で、これは賛否両論でしょうね〜〜。現実にSNSを(Facebook中心に)眺めていると賛否の幅がかなり広い。

 この映画、僕は怪作と呼ぶことにしました。ゴジラ愛に溢れる超弩級の怪作。会場は真面目な方が多かったのか笑いはなかったですが、僕は何シーンか吹き出してました。豪勢な怪作にw。

 デザスター映画としての怪獣映画の可能性をこれでもかと見せつけるんですが、なぜか悲壮感はそれほど高まらないところ、ド派手監督のマニアックな人徳でしょうか(^^)。

 キングギドラの描写に期待していたのだけれど、僕はアニメ版の方が好きだった。でも今回のハリウッドは、あの顔の造形もまさに東宝版へのリスペクトなのですね。まさに龍の顔。もっとリアリティを追求した方向に振る事も出来たはずなのいこうしたのは正にリスペクトかと(モスラは東宝リスペクトだけれど、どこかリアルを追求した感じだったけど…)。

 賛否両論の非の方は、好きなゴジラ映画をいい加減に引用されたように見えるのかもしれないですね。監督はそんなつもりでなくても、物語の無理とか山盛りに東宝リスペクトを出しすぎて、消化不良になっていることから、リスペクトが悪ふざけに見えたのかもしれない。豪華にモリモリにしすぎて、そこが真面目に作っているか、疑われたのでしょうね。僕は物語への不満は、後半のネタバレのところで書きますが、怪獣愛は感じたので、そこまで否定的でなく、贅沢なリスペクト作で、愛が溢れすぎてそれが怪作へつながったのかな、という感想になったわけです。

 正直、これだけの資金を庵野総監督に渡して、カラーと日本特撮陣で、ハリウッドシナリオ批評システムに乗っけた上で、ファイナルカットは庵野監督という形で作ったら…と夢想しないわけにはいきません。モンスターユニバースとして、ハリウッド『シン・ゴジラ2』はありえないですかね。


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◆ネタバレあり 感想 ★★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 未見の方、ご注意下さい  ★ ★

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 怪獣はアメコミヒーローにない規模の、巨大なものが都市を蹂躙する黙字録のような巨大なディザスターを描ける強みがある、というのが今作でハリウッドの巨額予算でアメコミと同等のSFXで描かれ比較できたことで画面から強く感じられたことだった。

 そしてその映像を本篇は描ききれず、予告の方が悲壮感が漂っていたように思う。

 ドビッシー「月の光」の静かな雰囲気に対して、伊福部昭のマーチ的な重層音楽が街を破壊し蹂躙していくような使い方がされていたら、面白い画面効果になっていたのではないかと思う。

 怪獣によりボストンの街が見渡す限り破壊されたシーンにラドンとキングギドラが舞う破壊の美しさを極めたようなシーン、あれをあの家族の母親の冷徹な思弁によって娘が見捨てられることを重ねて描き、怪獣のディザスターと合わせて最高の悲壮感をもたせて、そしてその悲壮なシーンで地球環境が人類文明のない"自然"の状態に戻っていく様として描けていたら、凄い映画になったのではないかと夢想してしまう。

 そこで、キングギドラは宇宙怪獣(それにモナーク側環境テロリスト側が安易に過去の文献をちょっと調べてほぼ同時にわかるような安易な描写も排除して欲しい)で、その"自然"は実は偽りで、金星の"自然"に一部なりかけている、このままでは、、、という描写もしっかり欲しい。

 母親の狂信、それは自分もそして娘すらその犠牲になっても地球環境の延命のためなら犠牲すら問わないものでなくてはならなかったはず。そこまで冷徹に徹底しないで、家族のお涙頂戴描写にした本篇の物語が最悪だったところだろう。

 芹沢が死んでいくのも、潜水艦の核弾頭発射装置が故障したからという安易な設定(その前に軍用輸送機の格納扉が故障してオスプレイが収納できないという安易な設定があり、またかと観客に思わせるのが残念すぎる)。渡辺謙の力のこもった演技がもったいない。

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 劇場で、となりの席の中年男子は、エンディングのモスラの歌で泣いていました。伊福部昭の音楽とゴジラって、本来切っても切り離せないもののはずで、そうしたところをわかっているな、という好意的な気持ちとじゃあ何故本篇でもっとそのまま使わないのか、という不満が並行で自分の中に湧きおこるわけです。同じようにオキシジェンデストロイヤー、古代都市が海底に没した姿。等々が、、、。リスペクトと捉えるか、使い方が残念と思うかは、コインの裏表で、自分の脳内には両方並列で思い浮かぶのだけれど、どちらにころぶかは微妙なものがあると思うのです。

 先に、悲壮感で徹底したリアルを描く映画が見たかったと書いたのだけれど、もう一方でここまでリスペクトしたのなら、物語のハリウッド的なリアルを捨てて、モスラの小美人双子とか、金星人とか、ムー大陸(アトランティス?)出すなら海底軍艦も出すとか、徹底してやってもっと怪作路線にはちけても良かったのかとも思うw。

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 最後に飯塚定雄氏の描くキングギドラの素晴らしい引力光線について。
 上の引用画は、上の二つが『地球最大の決戦』のギドラ。下の一枚がKOMのギドラ光線。
 光線だけを見ると、それなりに飯塚光線の奔放さをうまくSFXに活かしてるようにみえるのだけれど、本篇ではその破壊力があまり感じられなかった。

 その理由はおそらく上の2枚にある、光線による街の破壊、一撃で建造物がバラバラになるあの迫力が描写されていなかったからではないだろうか。このあたりも物語の詰めの甘さに加えて、金があるがゆえにリスペクトはしているが、見せ方の工夫で破壊力を上げるような円谷特撮の知恵みたいなものが活かされていない残念なところである。否定派はそうしたところも馬鹿にされていると感じられるのかも。

◆関連リンク
もしも超絶ゴジラオタクがハリウッドで「ゴジラ」を撮ったら… M・ドハティ監督が愛を叫ぶ

“ 何にだって、どんな映画にだって、ゴジラを加えればより良くなると僕は思っている。想像してごらんよ、「スター・ウォーズ」にゴジラを足したら、やばいだろ? 「七人の侍」だってさらに良くなる。”

 マイケル・ドハティ監督、やばいっす(^^)。
 これ以外の本文は、今回の映画のちょっとネタバレがあるので、読むのは自己責任でw。
襲来! ゴジラジオ (NHKラジオ第一)
 『シン・ゴジラ』の続篇について聞かれ、樋口監督、続篇の話ということではなく、日本でのゴジラ映画の今後は、まずアメリカのゴジラが終わらないと、レジェンダリーと東宝の契約からは日本では制作できない。アメリカのもいいけれど、日本でやったらもっといろいろできるのにとモヤモヤしてしまう、と語られていた。

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2019.05.29

■感想 「チェコデザイン100年の旅」@岡崎市美術博物館

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「チェコデザイン100年の旅」(岡崎市美術博物館(マインドスケープ・ミュージアム))

"2019. 4月6日(土曜日)から5月19日(日曜日)
ヨーロッパの中心に位置するチェコ。その首都プラハは19世紀に世界の富が集中し、チェコ・キュビスムなどの芸術運動が花開きました。本展では、チェコ国立プラハ工芸美術館の収蔵品を中心に、19世紀末のアルフォンス・ミュシャから現代のアニメーションまで、幅広い魅力を持つチェコの文化をデザインの視点からたどります。チェコのデザインを、日本で初めて総合的に紹介します。"

 「チェコデザイン100年の旅」@岡崎マインドスケープ美術館 に行ってきました。

 ミュシャ、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、キュビスムからチェコセルアニメまで。写真撮影禁なので展示風景は会場外のビデオ紹介から引用させてもらいました。
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 チェコは「人形アニメが有名」とビデオでも謳われていたけれど、残念ながらトルンカもシュヴァンクマイエルもありませんでした。これは残念。でも違う側面からチェコのアートの文脈を知れたのは良かったです。


 あとチャッペック『RUR』の初版とかも見られてなかなかでした。この端正なデザインの美しさ!
 リンク先はチェコのオークションサイト。5500CZK(チェコクローネ) =約2.6万円位で落札。ロボットがここから生まれたことを考えると、来るべきシンギュラリティの時代にAI達のオークションで破格の値段がつくかも(^^)

 岡崎はすでに閉幕しましたが、今後、富山と東京へ巡回されるとのことなので、お近くの方は是非。

全国巡回展

"2019年4月6日(土)~5月19日(日)岡崎市美術博物館 終了
2019年6月1日(土)~7月28日(日)富山県美術館
2019年9月14日(土)~11月10日(日)世田谷美術館"

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2019.05.27

■感想 今石洋之監督『プロメア』


映画『プロメア』第二弾PV 制作:TRIGGER

 今石洋之監督、中島かずき原作,脚本、TRIGGER 原作,アニメーション制作、舛本和也 アニメーションプロデューサー 『プロメア』@イオンシネマワンダー で観てきた。

 『グレンラガン』『キルラキル』ファンはもちろん、『スパーダーバース』に痺れた先端アニメ好きは必見。かつ何故かどこか東映動画初期長篇の薫りを感じたのは僕だけでしょうか(^^)。冒頭からのいきなりアクションと物語の立ち上げ方の映画的なところからかな?

 完全オリジナルで冒頭からここまで熱く惹き込まれる作品はなかなかありません。『グレンラガン』『キルラキル』ファンはあのシーンやこのシーンを想起して目頭が熱くなるわけですが、それだけでないパワーを感じる。むしろそれらを観たことのない映像ファンが劇場で椅子から落っこちそうになるくらい驚く所が観てみたい。

 シナリオと声優陣のセリフの熱さとそれを超える作画レイアウト、奇怪な動きと3D CGの快感。とにかくとめどない映像シャワーの圧を感じに劇場へ是非!

 僕は金田伊功ファンとして、今石監督の昇華(消火?w)進化したアクション作画、特に火炎龍と幾何学デザインチックな圧倒的なアニメートを観れただけでも大満足なのでした(^^)。以下に金田伊功氏の『幻魔大戦』の火竜と『プロメア』の予告篇で流されている火竜を比較。本篇には発火描写の中心イメージとしてドラゴンは出まくっているので、本篇ブルーレイが出た後に再度ここは検証してみたいですが、この二つを比較するだけだと、金田作画のタメの感覚が、やはり今でも火龍描写の最高峰と感じさせます。

 とは言え、それだけでなく特に幾何学模様を多用したグラフィカルなアクション描写は、金田伊功を起点にして(後述関連リンク参照)、そうとう先鋭的に進化発展させたものになっている、というのが僕の感想です。
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◆関連リンク

『プロメア』のドラゴンのシーン。0'50"あたり。

金田伊功のドラゴン集成。0'10"あたりに『幻魔大戦』の火龍シーン。

 映画本篇の冒頭映像。

当ブログ関連記事
感想 静野孔文・瀬下寛之監督、ストーリー原案・脚本/虚淵玄『GODZILLA 星を喰う者』『GODZILLA:The Planet Eater』
 金田伊功の龍のアニメートとキングギドラについて、少し書いています。
ガイキングオープニング 金田伊功の作画の進化
 『プロメア』にも影響していると考えられる金田伊功後期のグラフィカル表現の進化について述べています。幾何学模様の作画利用としては当時の先端を切り開いていたと思います。今回の今石監督のグラフィカルな作画演出はそれをさらに先鋭化した感じです。

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2019.05.22

■予告篇 ポーランド映画 Bartosz Konopka監督 "KREW BOGA : 神の血" オリヴィエ・デ・サガザン出演


KREW BOGA - oficjalny zwiastun 長文ですが、以下Youtubeの紹介文(Google翻訳)

"「神の血」は、オスカーにノミネートされた「ベルリンのうさぎ」と受賞歴のある「高みの恐怖」の作者であるBartosz Konopkaの最新作です。演出家の前作からのこの独特で逸脱した美学は中世に設定されていますが、ニコラス・ワインディング・レフナの妥協のない作品や連載「ゲーム・オブ・スローンズ」を彷彿とさせる形で。

 映画の主なキャスティングは次のとおりです。KrzysztofPieczyński( "Belfer"、 "Grain of Truth"、 "Jack Strong")、Karol Bernacki( "Amok")、Jacek Koman( "Moulin Rouge!"、 "Son of a Gun"、 "ヨーロッパでよく知られているワルシャワの国立劇場の女優、ヴィクトリアの俳優Jan Bijvoet( "Peaky Blinders"、 "In Darkness")、Jeroen Perceval( "The Bull's Head"、 "The Day")、そして最も現代的な出演者 - フランス人オリヴィエ・デ・サガザン

 ゴールデンライオンズにノミネートされた「神の血」は、JacekPodgórskiの写真でグディニアで開催された43.ポーランド長編映画祭で高く評価されました。絵画はまた、第41回モスクワ国際映画祭のプログラムに含まれていました。

中世初期。最後の異教徒の島では、騎士のWillibrord(KrzysztofPieczyński)が奇跡的に死を免れました。猛烈な運命を経験したが、戦闘中の戦士で、彼は、名のない者(カロル・ベルナッキ)の助けを借りずに亡くなったでしょう。世界観や宗教への取り組みに違いがあるにもかかわらず、男性は旅行の仲間となります。彼らは彼らの共通の目標によって結合された彼らの旅行を続けます - 彼らは山に隠された異邦人居留地を見つけて洗礼を受けたいです。住人のキリスト教化は切迫した運命からそれらを救うための唯一の方法ですが、英雄の使命は異邦人の司祭と彼らの指導者、Geowoldを保つことを試みるでしょう。彼らの行動は異星人の見解をすばらしい試練にさらします。

 しかし、「古い信仰」の最後の砦では、WillibrordとThe Unknownは予想外の味方を頼りにすることができます。それはPrahwe - Geowoldのカリスマ的娘です。すぐに、愛は憎しみ、暴力との対話、規則との狂気に直面し、そして多くの人が死ななければならなくなるでしょう..."

 当ブログでたびたび紹介しているフランスの人体変容 生パフォーマンス アーティストのオリビエ・デ・サガザンが出演しているポーランド映画の予告篇。

 作品は、サガザンがドルイドの魔術師を演じ、その変容パフォーマンスを劇中で観せるようである。予告篇にも一部映っているが、日本でも公開されその全貌が見られるといいのだけれど、、、。

◆関連リンク
・ヴァルトスツ・コノプカ監督の過去作ドキュメンタリー『ベルリンの野うさぎ』について

"今年のアカデミー短編ドキュメンタリーにノミネートされた作品が、昨年NHKのBSドキュメンタリーで放映されていました。先日再放送があったのでようやく視聴!

原題: Rabbit a la Berlin
制作: MS Films / ma.ja.de Filmproduktion (ポーランド/ドイツ 2009年)"

The Mute / Krew Boga(公式Facebook)
・以下、おまけ

 


Teaser performance Hybridation
オリビエ・デ・サガザンとステファニー・サントによる融合パフォーマンス。
Olivier de Sagazan "Hybridation with Stephanie Sant"
かなりショッキングな映像ですので、ご注意ください。
人間の融合のリアルタイムパフォーマンス !

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2019.05.20

■感想 「櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展」@東京ドームシティGallery AaMo

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「櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展」 @ 後楽園

" 日本唯一のアウトサイダー・キュレーター 櫛野展正さんによる「アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート」の刊行を記念した初の大規模展覧会『櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展』を、2019年4月12日(金)~5月19日(日)の期間開催します。

 本展では、櫛野展正さんによる、障がいの有無にかかわらず、70名を超える、表現せずには生きられない、表現者と呼ぶにふさわしい隠れた芸術家たちの作品2,000点以上が一堂に会します。書籍「アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート」に登場する注目のアーティストによる作品を中心に、「ヤンキー文化」や「シルバーアート(老人アート)」などの芸術作品「アウトサイダー・アート」の驚きの作品の数々が並ぶ展覧会です。"

 ゴールデンウィークの4/29()に、バラエティに富んだプリミティブアートを堪能しました。
 タイミングがあって、櫛野氏のギャラリートークも聴けて、各作家のエピソードと個性に圧倒されつつ、人の精神のワンダーに潜入していくダイナミズムに、爆笑したり感応し過ぎてちょっとグッタリ感も(^^;)

 ここでのアウトサイダーは、「障害のあるなしにかかわらず、表現せずには生きられない、表現者と呼ぶにふさわしい隠れた芸術家たち」の探索を目指してるとか。

 例えるなら、「探偵ナイトスクープ」の人の深奥を覗いたような濃いエピソードとパラダイスエピソードを10本続けて観たような疲労感(^^)。
 以下、そのほんの一角の写真と簡単な感想レポートです。

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 栃木県の「創作仮面館」ストレンジナイト氏の作品。新聞配達をしてひとりでマスクを作り続けていたアーティスト。亡くなった後に実は家族もあり、作家像そのものがフィクションだとわかったとか。密集した仮面の迫力が圧倒的。是非リンク先の「創作仮面館」の写真も見てください。素晴らしい奇想の迫力。

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 左は戦隊モノに憧れてコスチュームと動画を作り続ける兵庫県の伊勢田勝行氏の作品。動画は戦隊アニメーションで声もご本人。好きであるということのパワーを体感できます。
 まん中は広島県のスギノイチヲ氏の顔模倣写真。
 右は「蝋プロ」松崎覚氏の、三島由紀夫とマイケル・ジャクソン、高精細の蝋人形。髭の一本一本まで植えられてました。確認のため顔を3cmほどの距離に接近。何故か赤面するほどのリアル(^^)。リンク先 「蝋プロ」のHPには芥川龍之介、ダリ、ピカソ、ジョン・レノンの素晴らしい造形があります。

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 左 広島県「ホラー喫茶 伴天連」藤田喜代男氏の動物の骨を加工したオブジェ。この奇怪な造形は一度見たら呪われそうな迫力です。(関連リンク 喫茶 伴天連インスタグラム)
 中央 群馬県 稲村米治氏の「昆虫新田義貞像」本物の昆虫約5千匹をピン留し作成。2万匹以上を使った「昆虫千手観音像」もあるらしい。
 右 史上最年長で東京造形大の学生となった 東京都 一つ桺 恋路氏の「落ち武者」、こちらも蝉の抜け殻、手羽先の骨等の「亡骸」で作られた「死者」のアート。

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 左 久留米市の「カラフルおじさん」こと富松義孝氏の衣装と自転車。過剰な色もアウトサイダーの注目ポイントです。
 中央 広島の山の中で奇妙なスナック「ジルバ」を経営している城田貞夫氏のカラクリ人形作品。まさに「探偵ナイトスクープ」のパラダイスのごとしw。
 
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 まん中 杉作J太郎氏のカジュアル書道。ひとつづつがわらけます。
 左と右 愛知県 村上千洋子 茂樹夫妻のシルクスクリーンのブローチ。ナムジュン・パイクとヨーゼフ・ボイス。フランシス・ベーコンとウィリアム・バロウズという取り合わせがいい感じ。

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 広島で清掃員をしながら芸術しているガタロ氏の作品。右が毎日、掃除後の雑巾をスケッチした1年分の作品群。圧巻です。

◆関連リンク
クシノテラス
櫛野展正『アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート』(Amazon)
 こちらが櫛野展正 さんの著作。ここでも紹介したアーティストほか、とても興味深い人々が登場しています。是非。

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2019.05.15

■感想 アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ監督、ケヴィン・ファイギ製作『アベンジャーズ/エンドゲーム』

Marvel Studios' Avengers: Endgame - Official Trailer

 アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ監督、ケヴィン・ファイギ製作『アベンジャーズ/エンドゲーム』@109シネマズ名古屋 IMAXレーザー3Dにて、公開初日 4/26(金)の夕方の回に観てきました。観客席は熱いファンにより満席。涙や笑いや拍手にあふれた良い環境での鑑賞となりました。

 4/26で仕事終わって明日からGWというタイミング。今回、GWが来るのより、この映画の公開の方が楽しみだったというくらい、大団円への期待は盛り上がっていたという状態ですw。

 『インフィニティウォー』が最高だったのと、勿論今までの全シリ一ズのレベルの高さから、ここまで期待してる映画が今まであっただろうか、というくらい。ケヴィン・ファイギとMCU監督陣、恐るべし。


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 ネタばれはしないで感想を書きますが、先入観なしで観られたい方は、ここから先は読まないで下さい(^^)。












 前作に引き続き冒頭の寂寥感は凄いレベル。いったいここからどうクライマックスへ持っていくのか、エンタテインメントとして観客を不安のどん底へ落し込む勢い。
 その不安も何その、逆にそこからの高度差で、期待に違わずクライマックスの盛り上がりは素晴らしいものがあります。『アイアンマン』にはじまったストーリーの集大成として、今作、見事に大団円を観せてくれました。

 各キャラクターの見せ方もなかなかのレベル。全作品のいろんなキャラクターたちの多種多様なシーンが走馬灯の様に脳裏を駆け巡ります。そして世界の民族的な課題とかも見せてきたシリーズは見事にアメリカの映画としての結末を見せています。公開初日、熱心なシリーズのファンで満席の場内そこかしこからのすすり泣きとエンドロールへの大きな拍手。熱気の中であっという間の3時間の結末を迎えることが出来ました。


 と凄くホメた後の総論としては、どちらが好きかと言うと僕は『インフィニティウォー』。この結果は今作のメインアイデアとストーリー展開のある一点に不満が残ったからです。冒頭の寂寥感が、物凄いアイデアとたるみのないストーリー展開でこのクライマックスを迎えられていたらな、と思わざるを得なかったのでした。

 にしても今後の心機一転の新生MCUにも期待です(^^)。

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2019.05.13

■感想 「シド・ミード展 未来のリハーサル」@アーツ千代田3331

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 シド・ミード展 未来のリハーサル

"  2019.4/27(sat)▶5/19(sun) アーツ千代田3331 "

 ゴールデンウィークの東京で、4/27(土) シド・ミード展に行ってきました。この日は全く待ち時間なく入れて、まあゆったり見られたのですが(それでもリンチ展の数十倍の観客w)、次の日からは数時間待ちとか大変だったようです。

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 展示作品リストにあるように、150点の作品が展示され、なかなかの圧巻の鑑賞体験でした。
 かつてスターログで初めてシド・ミードの絵を眼にしてから、すでに数十年、彼が幻視した未来に我々は住んでいるわけですが、今見ても古びていない未来描写にため息ばかりの鑑賞でした。

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 アーツ千代田3331は、視野しんのように学校をリノベーションした美術館で、小さく写っていますが、シド・ミード展の隣では「神田祭の元年」展が開催されており、御輿とミードの未来透視力の対比がまたいい味を出していました(^^)。

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OBLAGON AR
 スマホにアプリを入れて、ARでCG化されたミード造形物に近づいて、いろんな角度から観られるのも面白かった。
 写真のようなイラストにアプリOBLAGON AR を入れて、 スマホを絵に向けると、その絵に上書きされてミードの制作過程の下絵であるとか、絵を3D-CG化して、観客が回り込んで絵の中の構造物やメカをいろんな角度から見られるような映像が現れる。
 この趣向は美術の展示会では初めてだったけれど、なかなか素晴らしい、いろんな可能性のある展示形態かと思う。今後の進化が楽しみです。

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