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2004.08.04

■『アインシュタインをトランクに乗せて』Driving Mr. Albert
   マイケル パタニティ著, 藤井 留美訳

einsteins_brain.jpg
 アインシュタインの脳をめぐるノンフィクション。画像は左から原書、ペーパーバック、文庫、関連映画チラシ。
 もともとアインシュタインの脳については、いろんな伝説的な話を今まで聞いたことがあったけれど、この本がノンフィクションとのことなので、事実がわかるのかな、と思って文庫化されたのを期に手にとった。
 プリンストン大学の病理医トマス・ハーヴェイ博士が、同僚の代わりにたまたま居合わせたために、アインシュタインの遺体を解剖することからこの物語は始まっている。で、この博士が脳を(どうやら親族に勝手に)取り出して行方をくらませてしまう。
 そして数十年後、偶然、ハーヴェイ老人と知り合った本書の筆者が、この博士とアインシュタインの孫娘に会いに行くロードムービー風の物語が本書である。
 ノンフィクションだけれど、筆者のタッチは、現代アメリカ文学風。ところどころ自分の家族の話も交えて、デラシネな雰囲気の小説として仕上げている。なかなかの文才だと思う。(と僕が書くまでもなく、筆者は雑誌ライターとしてかなり有名な人らしい。)
 で、肝心の脳については、なんでこんな(特に家族にとって)貴重なものがこんなにいいかげんな扱いにされているのか、と思うほど、ぞんざいな取り扱いにみえる。なにしろタッパーウェアに入れて、車のトランクに載せられているのである。アインシュタインが全くもってかわいそうである。
 文中で文化的イコンであったアインシュタインのアメリカでのヒーローぶりがいろいろと描かれているけれど、アインシュタインの脳を持っているだけで、このハーヴェイ老人に対して初めて会った人間がグルーピーになってしまう、というのが、端的にそれを描いているシーン。日本での位置づけより随分高いところにいそうである。
 で、ラスト。ハーヴェイ老が脳を最後にどうするかは、未読の人のためにここには書けないけれど、なかなかに哀愁のあるラストになっている。事実は小説より奇なり、とはよく言ったもので、へたな小説よりフィクション的に見事にまとまった話になっている。軽く読める訳者があとがきで言う「理想的ホリデーブック」に仕上がっている。
◆関連リンク
・文庫の解説より。歌手Lynn Harrisonがこの作品に触発されて作った"Einstein's Brain"という歌が聞けます。Lynn Harrison's Lynoleum
・文庫 『アインシュタインをトランクに乗せて』(Amazon)
・原書 Driving Mr. Albert: A Trip Across America With Einstein's Brain
・この本の映画化ではなく、こんなノンフィクション映画があるらしい。 アインシュタインの脳 Einstein's Brain 監督 ケヴィン・ハル 撮影 アラン・パーマー 録音 ジェームス・ハイ 音楽 林英哲 製作 BBCテレヴィジョン  1994年 65分
 なんと主役は日本人。アインシュタインの脳

世界的に有名なアインシュタインの研究家でもある近畿大学助教授の杉元賢治は、今もどこかで保管されているはずの「アインシュタインの脳」を探すためにアメリカに旅立つ。この映画は、その奇妙な旅を記録したドキュメンタリーだ。

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