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2004.08.29

■『攻殻機動隊/S.A.C. 2nd GIG』 第1話-第10話

 DVDで、第1話-第10話を観た。今回は「個別の11人」(こんなマーク「仇∞士」を使用している)というテロ集団/個人との闘いが全体のストーリーの縦糸になるようだ。そして、内閣情報庁戦略影響調査会議代表補佐官(という長ったらしいタイトル)のゴーダという人物がもうひとつのキー。「個別の11人」はまだボンヤリとした実態しか見えていないけれど、ゴーダが不気味でいい味出している。『パト2』の陸幕調査部別室 荒川茂樹に匹敵する敵役になる予感。

神山健治監督の物語構築
 DVD『SAC 2nd Gig 1』に神山健治監督のインタビューが入っていて、この「個別の11人」と「ゴーダ」を中心にした今回のシリーズの骨格の説明が語られている。

 ネタばれになるので具体的には書けないが、自分でも困るようなストーリーにまずは持ち込む、それに対して今は答えを持っていないが、今後の展開の中で突破口を自分も苦しみながら作り上げていく、それくらいでないと物語に迫力が出ない、と言っている。この心意気にワクワクしてしまった。
 黒澤明が2人の脚本家の共同作業で、絶体絶命の状況をひとりが作って、次にバトンタッチして困難を知恵でのりきる物語を作っていったのは有名な話だが、今のアニメの監督で、ここまで言い切れる人ってそんなにいないよね。
 もしかしてSACの時も思ったけれど、ドラマツルギーに関しては、師匠押井守より凄いのではないでしょうか、この監督(というか『イノセンス』観てもわかるけど、押井守ってもはやストーリーの人ではないし、、、)。
 あとインタビューで、日本の政治状況を語る部分があるが、ここらの分析と物語設定への取り込み方も切れる感じ。謀略的描写とか、サリンジャーとか文学ネタ盛り込んだりしてるのは、この監督の興味でないか、と思えるようなインタビュー、いや、直接そう言ってるわけではないけど、きっと。
 いずれ師匠の映像ノウハウとスタッフをそっくりひきとった上で、映画も作ってもらいたい。(この神山健治って、元々は背景スタッフで、『人狼』演出と『ミニパト』監督で後は『SAC』のはず。早く映画の監督もやってほしい。)
※今回、押井守がストーリーコンセプトでクレジットされているが、それは大戦後の「招慰難民居住区」の難民問題にスポットをあててみたら、ということのよーである。

「個別の11人」についてのメモ ※第5話以降のネタばれ含む、注意!!
 「個別の十一人」という名前は、第5話「動機ある者たち INDUCTANCE」の中で語られるパトリック・シルベストル著『国家と革命への省察 初期革命評論集』から引用されたものだとのこと。このシルベストルなる人物と著書は架空のもののようである。(インターネットでこの名前を探すと、スイスだかのサッカー選手の名前がヒットするのみ。この選手名Patrick Sylvestreを引用か??きっとスタッフの中のサッカーファンが名づけたのでしょう。)
 この著書の中味が振るっている。下記の10篇からなる評論集という設定。そしてその事件が、「革命と見出せずお蔵入りにした幻の一編」が「個別の11人」。

第三身分の台頭  支配からの脱却  王朝の終焉
社会主義の希求  狂喜前夜      神との別離
カストロとゲバラ   虚無の12年    原理への回帰
5月革命

 当然、その幻の11篇目についても語られるのだけれど、こんな具合。論文「個別の11人」で触れられているのは、日本の五・一五事件なのである。(長文ごめん)
 あれが何故素晴らしいか。それは彼が五・一五事件を日本の能と照らし合わせ、その本質を論じたところにある。能とは、戦国の武士達があらゆる芸能をさげすむ中、唯一認めてきた芸事だ。それは幾多の芸能の本質が既に、決定された物事を繰り返しうるという虚像に過ぎないのに対し、能楽だけはその公演をただ一度きりのものと限定し、そこに込められる精神は現実の行動に限りなく近しいとされているからだ。一度きりの人生を革命の指導者として終えるなら、その人生は至高のものとして昇華する。英雄の最後は死によって締めくくられ、永遠を得る。それが、シルベストルによって記された『個別の十一人』の内容だ

 二十歳になったばかりの青年士官11人の参加したこの事件は、事件後民衆運動として減刑運動により35万の嘆願書を集めた。そして彼らを英雄視することでナショナリズムが広がりを見せた、、、、。こんなことも語られている。このセンスがなんかワクワクさせるのである。監督がインタビューで語っていた現在の政治状況と、このナショナリズムが根底で繋がっているように読めるのだけれど、さて物語はどこへむかうのか?? 乞ご期待!!

◆関連リンク
・Production I.G  S.A.C. 2nd GIG公式ページ
攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 01 DVD(Amazon)
攻殻機動隊PKI - B-Wiki - S.A.C. 2nd GIG 各話のセリフを書き起こしてあるページ。自分でも引用を起こしてたのですが、後で知って一部使用させていただきました(多謝)。
・gotanda6さんの犬にかぶらせろ!の記事 [攻殻][昭和史]阿部和重と攻殻SACを比較してみる 大変興味深いです。阿部和重、読んでみよっかな。
・カオスモーズ(Chaosmose)さんに「個別の十一人」と5.15事件についての記事
・当BlogのSAC記事
 ■STAND ALONE COMPLEX 1-26
 ■J・D・サリンジャー「笑い男」と神山健治『攻殻機動隊 S.A.C.』
・テロ関連で、笠井潔『テロルの現象学』ちくま学芸文庫(Amazon)

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コメント

BPさんコメントありがとうございます。
すくなくとも士郎正宗さんのcheakはあったんじゃないでしょうか?
この内容なら問題ないと了承があったストーリーの筈ですよ。
現在と繋がっていて尚かつ勇気をもてる内容。
いつの時代も弱者を助け強者に屈しない心が必要なんです。
映画「七人の侍」を思い出しますね。

投稿: whirl-eddy | 2004.10.12 03:58

 whirl-eddyさん、はじめまして。

 2ndGIG、DVDレンタル待ちなのでまだ1-10話しか観てません。今後「笑い男」篇(?)クラス以上の盛り上がりを期待しています。「笑い男」も「個別の11人」も原作にはなく、SACで出てきたものですが、アイディア・ストーリーについて士郎正宗の関与はあるんでしょうかね?ここらもどっかで知りたいものです。

投稿: BP | 2004.10.03 04:48

前回の『笑い男』で初めてサリンジャーを知り『ライ麦畑でつかまえて』を読んだ。
結果共感を覚え真実を楽しめた。

2ndGIGにも期待している。それは数年後現在にも勇気と智慧が芽を出し成長していくこと事。

投稿: whirl-eddy | 2004.09.28 23:36

 gotanda6さん、コメント、ありがとうございます。
 gotanda6さんの『S.A.C. 2nd GIG』についてのコメント、とても興味深く拝見してます。パトリック・シルベストルは架空だと思います、、、んが私はテロマニアではないので、保証の限りではありません。ただウェブ検索して得ただけの意見ですので(^^;)。
『テロルの現象学』を書いた笠井潔あたりなら詳しいのでしょうね。笠井潔による『S.A.C.』『S.A.C. 2nd GIG』論、是非読んでみたいものです。

投稿: BP | 2004.09.02 05:07

リンクどーもです。パトリック・シルベストルはやはり架空ですかね? SAC最終回でジガ・ヴェルドフという旧ソビエトの左翼映画作家の言葉を引用したりしてるので、脚本の佐藤大あたりが左翼マニアなのではないかと思ってます。2ndGIGでは昭和維新(右翼)をモチーフにしてるのでテロマニアかもしれませんが。

投稿: gotanda6 | 2004.08.31 17:54

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