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2004年5月2日 - 2004年5月8日

2004.05.08

■矢作俊彦 『ららら科學の子』 (2003 文藝春秋)

 タイトル(言葉と本の活字体)に惹かれて、久しぶりに矢作俊彦を読んだ。『スズキさんの休息と遍歴―またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行』(1990)以来なので、もう13年ぶりになる。
 『スズキさん・・・』のドン・キホーテ的なファンキーさは、『ららら科學の子』にはなかった。現在と60年代の学生時代という扱っている内容はかなり似ているのだけれど、筆致は全く違う。『ららら科學の子』は非常に落ち着いたタッチで書かれている。同じ作者でも年齢的なものも影響しているかも。
 『ららら科學の子』というタイトルから期待されるSF的展開や溌剌としたイメージはない。学生運動で指名手配を受け/中国に夢を描いて密出国した19歳の主人公が、2000年32年ぶりに日本へ蛇頭の船で帰ってくる。主人公は中国の山村で32年間貧農の生活を過ごしてきた。そして現在の東京を探索。前半は未来にタイムスリップした主人公のみる世界のワンダーさが興味深い。中国の山村との対比で、自分たちの住む現代の異質さ、いかにクレージーなものかというのが読ませる。
 縦糸としては、主人公が妹と別れた日の回想が描かれているが、ここでカート・ヴォネガットの『猫のゆりかご』とエーリヒ・ケストナーの『点子ちゃんとアントン』が重要なキーとして出てくる。ドレスデン繋がりのこの2人の作家の作品のエピソードがとにかく泣かせる。(『猫のゆりかご』、ひさびさに読み返したくなった。)それと加えて、『博士の異常な愛情』やウルトラマンや東宝特撮、そして60年代の各種映画、学生運動、アトム、、、これら描かれているものが、懐かしいのと加えて今を逆照射する装置として機能している。
 最後に、ここだけ抜粋しても何かよく分からないかもしれないけれど、気に入った一節を引用。この描写を読んだ時、少しゾクリとした。

 「そんなものは、ありゃあしないんだ」と、彼は小さくつぶやいた。(略)
 今判った。俺はあのキャメロットの円卓にひとつだけ空いていた命取りの椅子に腰を下ろしたんだ。そのとき、俺たちはみんな科学の子だった。(略)
 彼は自分の音楽を聴いていた。

 空を超えて、ららら星の彼方、
 ゆくぞアトム、ジェットの限り、

 失った場所を、その歌がゆっくり満たすのを感じた。

punktchen_und_anton.jpg
◆関連リンク
 ・矢作俊彦自著を語る(五十歳の少年が見たニッポン)
――『ららら科學の子』というタイトルはどんな思いでつけたのでしょう。
矢作 タイトルは初めから決まっていました。「科學の子」という言葉を使おうと思っていていくつかアイディアを考えていたら、映画監督の川島透さんが「ららら」をつけた方が絶対にいいと言ったんですよ。ああ、なるほどと思ってその案を採用しました。
 ・『ららら科學の子』(Amazon)
 ・『スズキさんの休息と遍歴―またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行』(Amazon)
 ・『猫のゆりかご』(Amazon)
 ・『点子ちゃんとアントン』 映画DVD(Amazon)

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■ゴッド・ディーバ GOD DIVA (IMMORTAL AD VITAM)
              エンキ・ビラル監督(2004)

 予告編のビジュアルに惹かれて観てきたので感想です。(at 名古屋 ピカデリー4)

 映像はなかなか凄い。CGを使ったことで今までのエンキ・ビラル作品よりコミックの雰囲気が出ていると思った。知らなかったけれど、人物は数人を除いてCGだった。『ファイナルファンタジー』よりリアリティでは人物のCGは劣ってたと思うけど、コミックのイメージを作り出すのには成功している。本物の人間との違和感も不思議とあまり感じなかった。
 ストーリーは、はっきり言ってたこ。以前観た『バンカー・パレス・ホテル』よりは良かったけれど、、、。侵入口とかピラミッドとか神が地上に現れるとか、アイテムはかなりワクワクするものが多い。なのに何故だか、ワクワクしない。
 たぶん、ドラマツルギーの問題だと思う。本で言えばリーダビリティというか、この物語の先を知りたい!という気持ちが、この映画を観ていても沸いてこないのだ。結局、物語に入り込むための段取りが良くないのだと思う。鷹の頭を持つホルスが何のためにニューヨークへ舞い降りたのか?とか、ニコポルってどういう人で何したいの?とか。そこらの物語の推進力が弱い。もしかしたらニコポル3部作とかコミックを読んでないとだめなのかなーー。
 描きたかったテーマも鮮烈ではない。よく分からないけど、ニコポルの革命みたいな話とホルスの神の子の話と侵入口をダイナミックにつなぐテーマ設定は出来なかったのかなーー。ヴィジュアルがきっちりしたレイアウトとデザイン、カメラワークも良くってなかなか素晴らしいだけにもったいない。もうエンキ・ビラルの映画は、劇場へは行かないぞっと、誓うのであった。

◆関連リンク
 ・ゴッド・ディーバ オフィシャルサイト : HERALD ONLINE

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■シュヴァンクマイエル映画祭 7月開催!!

 全国のシュヴァンクマイエルファンよ、立ち上がれ!!?
  ゆらゆら大陸さんで知った情報です。

会 期:2004年7月中旬から4週間の予定
劇 場:シアター・イメージフォーラム (告知ページ。 インパクト大( ^ ^; ))

 4週間!!とは凄いです。今まで日本公開されていない映像作品は当然でしょうが、できれば触覚芸術作品の展示とかもしてほしいです。4週間もあるのだから、きっとヤン・シュヴァンクマイエルと奥さんのエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの来日講演とかも企画されているんではないのかなーー。ファンとしては是非そうした企画もお願いしたいものです。

 レン コーポレーションとか、有名なファンサイト ヤン・シュヴァンクマイエルの食卓を覗いても、まだ詳細情報はないですね。うーーん、期待!! 今から東京出張を計画します!(ってセコイ、自腹で行かんかい>>自分)

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■NHK トップランナー「ヤノベケンジ」

 録画しておいたトップランナーを観た。

 名古屋港で数年前に開催されたヤノベケンジの作品展(「ルナ・プロジェクト−エマージェンシー・ショッパーズ」現代美術館1999年)に行った時、何故か あの作品たちのある空間にいると落ち着く 自分を発見した。ヤノベ氏が同世代であること、そして万博や観て育ったTV・映画の共通体験が背景になっていると思う。きっとヤノベ氏が作品をつくる時に、自分自身がそれといると現実がしっくりと自分に馴染む、というベクトルを持たせようとしているから、同じ背景を持った僕たちもそれを同時に感じられるのではないか、と思う。
 作品のテーマは(きっと)デッドテックな現代であったり、終末感、未来の夢の廃墟だったりするわけだけれど、僕にはそうした表面上のテーマ設定らしきものよりも、ヤノベ作品の魅力は上記の事なのである。こうしたテーマ設定自体が、60~90年代の時代の雰囲気であり上記背景のひとつであるのかもしれない。

 番組では、ヤノベ氏が21世紀の自分のテーマについて語るシーンがある。今までの「自分というものでなくして、もっと他のもの違う人への想いを付け加える」というようなことを言っている。「アトムスーツがリアルタイムに必要になった」現在、アーティストはそれを追従するようなアトムスーツを今さら描いていてはいけないと語る。「僕はアトムスーツをもう着れない」「ウルトラセブンになれなくなったモロボシダン」。コミカルに失踪する自分を語っていたが、芸術家個人として非常に切実な課題の表明なのであろう。いや、アトムスーツを着ないというのは、厳しい枷ですね。
 ひげを生やした腹話術人形が出てくる新作「森の映画館」(その中の映画「トラやんの世界」)(2004『六本木クロッシング』森美術館)の違和感、馴染めない感覚、ここから新しいヤノベケンジのゲージツがどこへいくのか。興味深い。頑張って新しい作品を描いてほしいと思います、是非。

 この番組を観ながら考えた僕の希望をちょこっとメモ。
 日本の次世代の目玉産業になるかも、と言われているロボット産業 ホンダ、ソニー、トヨタ等のロボットのデザインをヤノベケンジに是非やらせてほしいなって思う。新時代の先端製品と終わってしまった未来のデザインの合体がどんなイメージを現出させるのか、是非見てみたい。ロボットの民生への展開で「癒し」は重要なキーワードだと思うけど、僕はヤノベ氏デザインなら和んでしまうと思う。
 ヤノベ氏の巨大なロボットが立ち上がる作品「Standa、動かすメカ面で凄く苦労したと番組で語っていた。これは各メーカの技術を持ってすればクリアされる。という芸術家のニーズと、ロボットデザインで新機軸を出したいメーカの両方の思惑が合致すると思うけれど、、、。観たいなーー2005年万博でヤノベデザインのロボットが二足歩行するところ。ホンダさん、お願いします。出渕デザインを採用した産総研でもいいのでお願いします。(実はもう水面下でどこかとやってたら嬉しいけど)

◆小ねた
・発想がどこで出てくるか?と質問されて、車を運転している時、と答えていた。そのわけとしてレースのドライバが常に周囲の状況を俯瞰して把握していることを挙げていた。その俯瞰の視点に刺激されて良いアイディアが生まれるのではないかと言う。俯瞰による脳の刺激、脳内の活性化、というのは、究極映像のひとつのキーワードかな、と思った。俯瞰を意識した時、脳内の広い領域のネットワークが活性化されるのかも。
・5/9(日)の『トップランナー』は庵野秀明氏。2週続けてのオタクなアーティストの登場ということのよーです。

◆関連リンク
 ・ヤノベケンジインタビュー

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2004.05.07

■マイケル・ムーア監督『華氏911』をディズニーが配給中止!

 アポなし取材ドキュメンタリー『ボウリング・フォー・コロンバイン』で有名なマイケル・ムーア監督が9・11テロを題材にブッシュ政権批判に挑む新作『華氏911』(ブラッドベリ『華氏451』のパロディ)について、きな臭いニュースが流れています。まずは監督のホームページから。

 マイケル・ムーア監督のメッセージ
  「ディズニーが俺の新作の配給を邪魔した」 原文 日本語

CNNより

ブッシュ政権批判などで知られるマイケル・ムーア監督の新作「Fahrenheit 9/11」(配給・ミラマックス)をめぐり、ミラマックスの親会社で米娯楽大手ディズニーが同作品の配給中止を決めたことが5日、分かった。
 ムーア氏が自身の公式サイトで「ディズニーが作品の配給を取りやめるようミラマックスに働きかけていると、4日に知らされた」と明らかにした。ディズニーの決定については、ニューヨーク・タイムズ紙と業界紙デイリー・バラエティが確認した。
 バラエティ紙によると、「Fahrenheit 9/11」は米同時多発テロの背景を探るコメディタッチのドキュメンタリー映画で、国際組織アルカイダの最高指導者オサマ・ビンラディン氏およびビンラディン一族などサウジアラビアの有力者一族と、ブッシュ一族の関係に焦点を当てたもの。

goo映画ニュースより
ディズニー広報担当者は、ムーア監督の声明発表のタイミングが、月内に開かれるカンヌ映画祭への出品を目前に控えての「宣伝行為」であると述べた。

 それにしてもこの題材、そうとうの問題作になりそうですね。もしかしてブッシュにも直撃取材してるんだろうか。少なくとも親族にはインタビューしていそうだ。

滝本誠氏のマイケル・ムーアへのメッセージ (このニュースの前に書かれたようです。) これは傑作!!

(略)しかし、ブッシュはいつも唖然とするほどすばらしい。ガッツ石松的な言語感覚の持ち主が世界支配の頂点にいるのである。(略)
 マイケル・ムーア支援として小生にできる「自己責任」は、生ゴミを回収に出さずせっせと庭に埋めることと『おい、ブッシュ、世界を返せ!』、を子供たちに読んできかせる、ぐらいのささやかなことだ。(略)

松尾スズキ氏の「ムーアとブッシュとフセインのある一日」 これも大傑作!!
(略)午前7時半。ブッシュ、ホワイトハウスにて起床。新聞とコーヒー。その後、パソコンのスイッチを入れ、2ちゃんねるの「ブッシュってどうよ?」というスレッドを覗きたい衝動にかられる。どうせ悪口しか書いてないと思いつつ「誰か一人でもほめてくれてれば」という希望に負け、つい覗く。激しく後悔する。(略)

◆関連リンク
 ・MichaelMooreJapan.com マイケル・ムーア 日本版公式ウェブサイト
 ・「町山智浩アメリカ日記」の記事
 ・本作は今年のカンヌコンペティション部門候補作
 ・日本公開は05年春予定
 ・マイケル・ムーア DVD書籍(Amazon)
  ・・・・・『アホでマヌケなアメリカ白人』(柏書房)もこの監督が書いてたのですね。知らなかった。

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2004.05.05

■Dr.Colin Mayhewのロボット続報

 ひさしぶりにDr.Colin Mayhewのロボットのニュースです。
 時々、どうなったかな、と思って検索してるのですが、あのロボットについて下記のような本が出版されたとか。
Men_of_Metal.jpg

Men of Metal Eyewitness Accounts of Humanoid Robots
By Rowland Samuel £12.99
Paperback 145 pages( 1 March 2004 )
Photos: 14 Illustrations: 1

 本の抜粋がここで(pdf)読めます。
 目撃のドキュメントのようです。町でこのロボットらしきものを目撃した人のスケッチとか記載されています。なんだかこの作りはうそ臭い。あとDr.Colin Mayhewと奥さんの若かりし日の写真も見えます。
 この出版社自体も怪しいらしい(他の出版物はUFOとかネッシーとか、、、)ので、全てがフェイクかも。
 まずは楽しみましょう。

◆関連リンクは下記。
 ・出版社のページ Men of Metal Eyewitness Accounts of Humanoid Robots
 ・ネタもとのblog2 Walls Webzine - anti-pop culture - Men of Metal: Horror or Hoax?
 ・もいっこblog(詳細分析有)mike.whybark.com
 究極映像研内既報
 ・Dr. Colin Mayhew のメール
 ・あのイギリスのロボットはCG合成なのか?
 ・夫婦の愛が作った!ガソリンエンジン駆動ロボット
 ・イギリス発のすごいロボット

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■黒沢清『アカルイミライ』(2002,UPLINK)

 黒沢清監督・脚本・編集の映画をDVDで観た。

 冒頭からの仁村雄二(オダギリジョー),有田守(浅野 忠信)と藤原(笹野高史)とのやりとり。そこに漂う空気の演出は実に見事なものである。特別な事件があるわけではないのに、仁村と有田の行為が必然的に見えてくる、このリアリティの持たせ方は凄い。
 クラゲのようなというと型どおりの書き方になってしまうが、この若者ふたりのたたずまいは、『ニンゲン合格』や『カリスマ』に顕著な黒沢清独特の描写であり、現実の転写の仕方として何故か凄くうなずいてしまう部分がある。このリアリティは他の映画監督が獲得できていない何者かだ、と思う。

 ラスト仁村雄二のいないリサイクルの工場から白い服の若者のグループに映像が切り替わる。そしてそれこそどこにでもありそうな所在無げなこのグループの歩くシーンにTHE BACK HORNの「未来」という歌がかぶる。何故だか、とても「アカルイミライ」を感じさせるかっこいいシーンである。これだけの物語でこのクライマックスのイメージを観客に提示できる映画作家の手腕にとにかく脱帽。物語の力ではなく、俳優のしぐさと脚本により与えられたセリフ、そして画面の切り取り方と編集と美術と音楽、これら映画的素材から紡がれたイメージは、芳醇な何者か、である。黒沢清、凄い。(俳優のしぐさでは浅野忠信の何気ないがニュアンスの残る演技はさすが。特にオダギリに対する前半での対比的な芝居とか、クラゲに関していらだっている発言とか。これらがラストのイメージに微妙にじわじわと効果を出していると思う。)

 この作品はハイビジョン撮影らしい。公開時はハイビジョンで上映された劇場もあったようなので、TV放映があるなら、DVD版でなくHD版も観てみたい。ところどころ、手持ちのDVになる部分があって、しっかり粗い画面で、それとわかってしまう。これも意識的にやっているのだろうけれど、画面の肌触りの粗さもいい味になって感じられる(あばたもえくぼ、なんだろうけど)。

◆関連リンク
THE BACK HORNのHP。(「OUR LAST DAY CASSHERN OFFICIAL ALBUM」というアルバムに映画にインスパイアされた歌を提供しているとのこと)
・この映画のメイキング『曖昧な未来、黒沢清』について。
アカルイミライ 特別版(メイキング『曖昧な未来、黒沢清』添付)(Amazon) レビュウが何本も掲載されています
黒沢清インタビュー(TALKIN' TIGER)

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2004.05.04

■テリー・ビッスン『ふたりジャネット』
   The Two Janets 中村融編訳 (河出書房新社)

 日本オリジナルで編まれたテリー・ビッスンのベスト短編集のレビュウ。最近、注目の海外短編小説を出している河出書房新社の奇想コレクションの一冊。

 僕の気に入った順は、「穴の中の穴」「時間どおりに教会へ」「宇宙のはずれ」「未来からきたふたり組」「ふたりジャネット」「熊が火を発見する」「冥界飛行士」「アンを押してください」「英国航行中」
 つまり、はじめに挙げた3作の《万能中国人ウィルスン・ウー》シリーズがバカSFで語り口が特にユーモラスで気に入ったというわけ。
 このシリーズ、ルディ・ラッカーのハリイ・ガーバー&ジョー・フレッチャーコンビの活躍するシリーズを髣髴とさせる(『時空の支配者』、「遠い目」、「自分を食べた男」、「慣性」)。科学的にはラッカーの方がひねりがあって傑作だと思うけれど、こちらは3本が語り手アーヴィンのひとつながりの物語になっていて、そこも楽しめる。

 「奇想」という点では、いずれも期待したのよりは奇抜なイメージを描き出しているわけでないのが少し残念だったけれど、それよりもユーモラスな語り口で楽しむ小説だと思った。下記リンクにあるテリー・ビッスン本人のページを見ると、《万能中国人ウィルスン・ウー》シリーズは今のところ、この三本だけのようであるが、是非、長編でも活躍させてほしいものである。

 最後に本の作りについて、、、、電車で本を読む中年サラリーマンには、この表紙は辛かった(うちの娘二人から「お父さん、女の子みたいな本読んでるね」って、この表紙で冷やかされるし、、、。なんとかして)。 同叢書の『フェッセンデンの宇宙』もこの路線。なかなか数が出ない海外SF短編集をなんとか売ろうとしているのはわかるけれど、もう少しなんとかならないものか。「奇想」を売るなら、この表紙で買わない海外小説ファンもいるはずなので、「奇想」な表紙を望みたい。

◆関連リンク
 ・Terry Bisson 本人のHP
 ・本国の短編集 Bears Discover Fire and Other Stories(Amazon)の表紙絵
 ・奇想コレクション 『ふたりジャネット』(Amazon)
 ・その他 テリー・ビッスン作品Terry Bisson洋書(Amazon)

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2004.05.03

■クリストファー・プリースト『奇術師』
   THE PRESTIGE 古沢嘉通訳 ハヤカワ文庫FT

the_prestige.jpg
 『逆転世界』『ドリームマシン』「限りなき夏」「青ざめた逍遥」等から20年ぶりに(ごめんなさい『魔法』、まだ読んでません)プリーストの『奇術師』を読んだ。プリーストというと自分たちでやったファンジンの『逆転世界』の特集や、購入した「SFの本 4号」摩訶不思議的イギリスSF特集(1983/11/20)とか、20年前のイギリスSFブーム(超マイナー)を思い出して懐かしい。もう20年かーーー(しばし感慨)。

 以前の奇想SFのイメージからすると、『奇術師』はしっとりと落ち着いたイギリス近代の少し幻想的な小説である。SFの小道具は一部チラッと出てくるけれど、話は現実に地に足の付いた奇術師2人の物語となっている。
 奇術の舞台裏の描写がじっくり丁寧に語られていて、この方面の話の好きな人には堪らないだろう。僕は特に奇術に興味があるわけではないけれど、当時のイギリスの興行の世界の雰囲気とか、2人のトリックへのアプローチとか非常に楽しんで読めた。またトリッキーなミステリ好きにも好まれる趣向の話である。(このミスベストに入りそうな予感)
 SFとしても、イギリスの貴族の館に立ち現れるイメージはなかなか秀逸。
 舞台はこーんな感じかな??(イギリス出張で車窓から撮った写真。だいぶ違うか、、、)。
england_the_prestige.jpg

◆関連リンク
 ・CHRISTOPHER PRIESTのHP
 ・クリストファー・プリーストの作品データ
 ・〈プラチナファンタジイ〉『奇術師』ハヤカワ文庫 FT(Amazon)
(とーとつですが、『ハウルの動く城』の宮崎駿の絵をみて、『逆転世界』を思い出したのは僕だけでしょうか)

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■イジー・トゥルンカ展 見学

 5/2(日)に行ってきました。写真は、刈谷市美術館の風景と入り口のガラスに貼られた今回の展示会のマスコット(?)『バヤヤ』の宮廷道化師パンフレット。(写っている子どもはうちのトリックスター(?)ですので、肖像権はOKっと( ^ ^; ))
Jiri_Ttnka_at_kariya.jpg
 「チェコアニメの巨匠 イジー・トゥルンカ 子どもの本に向けたまなざし」と展示タイトルにあるように、今回は絵本の原画中心の展示。僕はどちらかというと人形を観たかったのだけれど、アニメの人物3点+情景2点(と思ったけど、、)の展示のみ。
 しかし宮廷道化師「皇帝のナイチンゲール」の時を刻む(銅鑼をたたく)人形「チェコの古代伝説」のリブシェの3点は、当たり前なのだけどトルンカの映像そのままで、じっくりと堪能しました。服の皺とか年月を経た表面の質感とか、そういうものも「何故だかトルンカ」でリアルでした(これらが僕の脳のトルンカ「クオリア」を刺激する??)。腕を動かしたりして製作の感触もリアルに体感したいところですが、当然触ってみるわけにはいきません(おぃおぃ)。(大丈夫です、ちゃんとガラスケースに入ってます。)
 絵は白黒のスケッチ等も多いのですが、絵本原画の色使いが一番気に入りました。刈谷市美術館の広報ページにチラシが載ってますが、そこに掲載されている『チェコの童話』『不思議の国のアリス』の挿絵の淡いまろやかな筆遣いがなんともいえず良いです。
 あと『悪魔の水車小屋』の絵コンテや、「チェコの古代伝説」の人形スケッチ等、アニメ製作の素材の鉛筆のタッチとかも楽しめました。アニメの上映は、下記予定を参照。僕は残念ながら『バヤヤ』の途中から参加、しかも子どもが「早く帰りたい!」とのたまうのでラストを観ずに席を立つという体たらく。(子ども曰く「なんであんなのが好きなの、アニメを好きになるなら、『ドラえもん』を好きになってよ」(ギャフン、、、です))
 会場では写真に載せた大部のパンフレット(159ページ、2200円)、絵葉書、トゥルンカストラップ・カードケース、DVD、絵本等も販売されてました。2004.4/24-5/30までの会期。刈谷の町はトルンカ一色です(、、、んなわけない)。

『バヤヤ』を観たい人は、急げ!!(絶版?(会場で聞きました)になってたDVDイジィ・トルンカ作品集 VOL.3は再度5/24に発売されるようですね)
会場での上映会予定(土日祝日用チラシより。平日は不明)
・プログラムA 4/24(土),25(日),29(木・祝), 5/29(土),30(日)
 『真夏の夜の夢』 
・プログラムB 5/1(土),2(日),3(月・祝),4(火・祝),5(水・祝)
 『手』,『バヤヤ』
・プログラムC 5/8(土),9(日),15(土),16(日),22(土),23(日)
 『皇帝のナイチンゲール』
※各プログラム共、①10:30- ②13:00- ③15:00- の3回上映。
  DVDとVTR?の上映。スクリーンは約150inch。会場は結構入り口から明かりが入って、あまり良い上映環境ではありません。(椅子は座り心地良いけど)

◆関連リンク
刈谷市美術館の広報ページ
・詳細なレポートがあります。チェコアニメならこのBlog ゆらゆら大陸さん
from compartment「#鈍行でイジー・トゥルンカ展まで」
◆以前の記事リンク
刈谷市美術館 イジー・トゥルンカ展
「チェコ・アニメの巨匠 イジー・トゥルンカ展」―子どもの本に向けたまなざし―

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2004.05.02

■辻直之氏 カンヌ映画祭 招待上映

MSN-Mainichi INTERACTIVE 映画 「カンヌ国際映画祭」の「監督週間」短編部門での上映とのことです。

 フランスで来月12日に開幕する第57回カンヌ国際映画祭に、日本でも無名の映像作家、辻直之さん(32)=横浜市港南区=のアニメ作品が招待上映されることになった。  上映されるのは、自主製作アニメ「闇を見つめる羽根」(35ミリ、17分)。「天地創造」をテーマにした物語で、夢や生・死などのイメージを表現したという。「木炭画アニメ」と呼ばれる独自の手法を用いている。

 下記リンクに木炭画の絵が載ってますが、素朴な手作りアニメの雰囲気で観てみたい作品です。砂絵のアニメとか、こーいうの好きです。

 辻直之さんの作品詳細。

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■CASSHERN 血みどろの戦士

 ネットの評判で観にいくのを止めようかと一瞬思っていたのだけど、行ってきました、紀里谷和明監督・撮影・編集・脚本の『CASSHERN』(2004)。
 映像としてイメージを訴えようとする気迫と(ネタばれなので後半で述べようと思っている)テーマ設定の両面で、劇場で観てよかったと思った、、、ということでレビュウというか感想です。僕は"お勧め"です。

◆総評と映像評
 映像としては、ゲームチックで洗練されていないCG部分が一部気にはなったけれど、画面のトーン、レイアウト(特にCASSHERNのポーズ)、戦闘のスピード感等、世界の最先端映像の水準になっていると思う。とにかくかっこいい。予告編の雰囲気は、予告だけでなく全編に溢れている。心配した人物の違和感もあまりなかった。普段見慣れた俳優もこの映画独特のキャラクターに構築できていたのだと思う。

 戦場の描写は、『プライベートライアン』のスピルバーグの臨場感(コマをディジタルで制御?して白黒のイメージでリアリティを出したあのトラウマ映像)が思い浮かんだ。あそこまではいってないけどね。
 亜細亜的な街の描写は『ブレードランナー』、ロボットデザインはタツノコへの敬意?? といったように、どこかで観た映像の引用になっている部分もある。(小技だけれど、アクボーンの心象風景として描かれていた映像がコマ撮りアニメで、少しチェコテイスト入っていたのも嬉しかった。以前観た紀里谷監督の宇多田ヒカル「Traveling」のPVで、枯葉のキャラクターが出ていたのが、やはりシュヴァンクマイエルっぽかったのだけれど、今回もちょこっと楽しめます。)

 そんな中、最もオリジナリティの溢れる映像は、樋口真嗣コンテによる戦闘シーン。特に最初にCASSHERNが空中を飛翔しつつロボットを倒すところの映像のスピード感は凄い。これは当然コンテだけでなく、監督の映像センス(特にスピード)、編集の効果が相乗したものでしょう。も一回、観たい!!
 あと全編各シーンごとに映像の色合いと肌合いのトーンを大胆に場面ごとに切り替えていたのも、従来のドラマを追う映画から、映像でイメージを観客に転写する、というか、新しい息吹の感じられる気迫の映像だったと思う
 この延長上で今後、紀里谷監督が数年後、数十年後、劇場作品でどんな地平を見せてくれるか、期待である。
 

--------------------以下、ネタばれ注意!!!!!!!-------------------
◆テーマ
 映画はCASSHERNの白い装甲服が血にまみれていく過程をこれでもか、と描いている。テーマは、まさに血みどろの戦士。CASSHERNはまず東哲也軍曹として戦場で、民間人を殺す。ロボットの破壊はそこそこに、善悪の混沌とした戦場のジレンマを描いて、そして最後は父親殺し。ドラマとして無理があるけど、テーマ優先で、つい描いてしまったのだろう、、、ドラマ的には置いてけぼりをくわせられる部分もあるけれど、気迫で僕は○でした。(ノベライズ『キャシャーン ザ・ラスト・デイ・オン・アース』の解説で監督が「クールに映画を描いている場合でなく正面から戦争に挑まざる得なかった」というような趣旨を書いてます)
 憎しみの連鎖によって拡大する戦争の実態を極めて過酷に描いている。どこかで戦争モノのパターンという意見も読んだけれど、少なくとも主要登場人物の全員について家族との平和を望むシーンを挿入し、各々に正義があることを示す監督の描写は、まだそれほど映画では一般的な戦争描写ではないと思う。(ここは漫画『ナウシカ』で宮崎駿が描いた戦争と近い、というか、あそこから出発している映画と思う。その先へ行けたわけではないのは残念だけど、、、。)
 そのことにより、映画は非常に苦い後味である。エンターテインメントとしてのカタルシスを持てていない。映画デビューでこうした描き方をするということは、結構な覚悟を持って、まさに確信犯的に戦争の醜い実態をさらけ出して、それに対して、今現在、解決策が抜本的にうてない、ということをテーマとしているのだろう。
 特に映画的にこの描写として、ゾクッとしたのは、クライマックスでのCASSHERNの修羅場にかぶさる戦場の兵士たちのうめき声。画面と関係のないどこか遠くで起こっている兵士の苦痛をサラウンドのリアスピーカから流していた。リアスピーカからの音は劇場で聴くとドキッとする。フロントの画面から現実の劇場に何かが現れたように感じる瞬間があるが、あの音響設計が映画の画面を越えて、現実の戦争の実態が観客側の世界にあるのだよ、というメッセージになっていたと思う。
 第七管区で民衆をテロリストと呼んで掃討する様、殺される子供たちとこれにかぶる大亜細亜連邦の軍部の理屈。ここは対イラクにおけるアメリカの論理のコピー。ハリウッドでのリメイクの話(ZAKZAK)が既に出ているらしいが、変なプロデューサにテーマ改変されずに、アメリカの戦争批判バリバリの作品に仕上げてほしいものである。ついでにちょっとへぼかったCGをハリウッド先端技術でお色直しして下さい。(考えたらよほど政治的なプロデューサでなければ、この監督にエンターティンメントを撮らせることはしないかも。ハリウッドの出方が楽しみです)

◆あと小ネタメモ。
・パンフレットの版型が小さく3分冊になっていて、写真集2冊と解説というのが、なかなかいいです。
・何故、今『キャシャーン』の映画化だったかが、パンフレットに監督の言葉として書かれている。

 とにかく衝撃的だったのが、(TV『キャシャーン』のブライキングボスのセリフで)自分が生まれて初めて悪者の論理に賛同したということでした。(略)「やられたから、やり返す」という「憎しみの連鎖」の象徴として、その存在を初めて僕に教えてくれた出来事だったのです。

・TVキャシャーンのデザインで実写にすると様にならないヘルメットの処置(最初に壊される)が秀逸(笑ったけど)。

◆おまけリンク
・紀里谷和明PV DVDUTADA HIKARU SINGLE CLIP COLLECTION Vol.2(Amazon)

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