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2004年5月16日 - 2004年5月22日

2004.05.22

■<奇想コレクション>E・ハミルトン『フェッセンデンの宇宙』
 Fessenden's Worlds 中村融編訳(河出書房新社)

fessendensworlds.jpg
 『キャプテン・フューチャー』と『スター・ウルフ』のスペースオペラの印象が強く、短編は「フェッセンデンの宇宙」を読んだきりだったエドモンド・ハミルトンの日本オリジナル短編集を読んだ。
 全体的にシンプルできっちりしたストーリーで、短編SFとして完成度がなかなか高い。アイディアストーリーというよりは、あるアイディアによって生み出されるシチュエーションによる物語をどちらかというと情感中心で描いてある、という印象。「フェッセンデンの宇宙」はアイディアストーリーなのだけど、全体を読んだ読後感は少し違っていた。すでに中身が違う別の短編集『フェッセンデンの宇宙』(早川SFシリーズ)が過去にあるので、ここはやはり別の書名になっていたほうが全体の雰囲気も伝えられて良かったのではないかと思う。自分の好みと全体の雰囲気からいくと短編集『翼を持った男』というタイトルがよかったかと。
 1930年代の作品が多いのだけど全く古い感じがしない(ストーリーがストレートなのは今の小説と違うかもしれないけどね)。これは翻訳の効用が随分あるのかもしれない。『翻訳夜話2サリンジャー戦記』で村上春樹が古い作品を現代に訳すことの意義みたいのを語っていたけれど、随分前の作品を現代の日本語に訳す作業というのは通常の翻訳に比べて、言葉を選んでいく作業が擬似創作というような側面も強いのかもしれない。そこらへんの話を<奇想コレクション>のどこかの時期に中村融氏と他の翻訳家とで「翻訳夜話」してほしいと切望。
 では、短編一個づつについて感想です。(☆10個満点) ネタばれ有! 注意!!

フェッセンデンの宇宙 」 ☆7個
 やはり名作ですね。これ、長編にも膨らませられそう。短編連作でいろんな星のエピソードを描くのもいいですね。そういうのも読みたかったな、と思わせる広がりのある話。科学的にどうこういうタイプの作品ではないのだけど、P14の重力が無くなると体が破裂するというのは余りにもアレかと。気圧と重力がごっちゃになってますね。
風の子供」 ☆6個
 なかなか詩的でいい話。荒野と男と少女、そして生命を持っているかのような風。編訳者中村融氏があとがきで、こういう話を偏愛している。特に『最後の惑星船の謎』が良い、と書いている。読んでみたくなったのでここにメモ。
向こうはどんなところだい?」(「何が火星に」改題)  ☆7個
 火星第二次探検隊から戻った男の苦悩。宇宙開発の犠牲と地上の人たちの星への幻想の狭間にある帰還宇宙飛行士の話。これは凄く情感にクールに振った作品です。小学一年生で観た『ウルトラマン』のジャミラの哀切な情感にはかなわないけど、高校生でこれを読んでたらあれと同じ衝撃を得たかも。P89の死んだ探検隊員ジムの部屋を訪れたシーン。恋人が語る「全部あの人が子供の頃に読んだ古いSF雑誌なんです。あの人は大事にとっておいたんです」。ここでジムの死んだ瞬間の気持ちを想像すると、宇宙の憧れと過酷な現実の極限状況がぶぁっーとイメージ喚起され秀逸な描写と思った。
帰ってきた男」  ☆5個
 ブラックユーモア。悲惨な状況なのだけど男の淡々とした描写がいい味。ラストの模式的な終焉もこの描写でしっくりくる。
凶運の彗星」 ☆4個
 これはストーリー中心で情感的なところが少なく辛い点。話と彗星人のキャプテン・フューチャーチックなところのアンマッチが残念。さすがに古さを禁じえません、これは。
追放者」  ☆6個
 ショートショート。SFの楽屋落ち的だけど、S・スタージョンの『不思議のひと触れ』もそうだったけど、今いる世界は本物でなく、ここではないどこかに自分のいる場所がある、という感覚の話がこの本でもいくつも出ていたけど、SF作家のコアの部分に潜んでいる感覚かもしれない。ディックは当然としてティプトリーとかラッカーとかこれは枚挙にかかない。ハミルトンについてはあとがきにある14歳でカレッジへ入ってしまったことによる周囲との年齢さが大きく影響している、ということか。
翼を持つ男 」  ☆8個
 ミュータントテーマで、天使のような翼の生えた奇形の若者の話。これも情感を丁寧に描いていて、翼を広げて自由に空を舞う絵的イメージとあいまって一番好きな一編となった。アイディアとしてはどっかで見た気がするのだけど、羽の描写とかリアルで、いいイメージでした。今のCG技術でこういう主人公でもう少しこの短編より映画的にクライマックスを構成しなおしたら、結構傑作な映画ができるのではないかと想像した。
太陽の炎」  ☆5個
 宇宙生物もので「凶運の彗星」と同じく点が低いのでした。
夢見る者の世界」 ☆7個
 これも自分のいる世界への違和感(?)ばりばり全開の話。こういう話好きです。二つの世界の対比がいいですね。欲を言えば、登場が鮮烈だった黄金の翼の活躍が後半でもっと読みたかったかな、と。
◆関連リンク
・復刊.com 星々の轟き』(エドモンド・ハミルトン著・安田均編) 復刊リクエスト投票
・【幻想と怪奇の環】さんのエドモンド・ハミルトン邦訳作品リスト
・既刊短編集2冊の詳細。フェッセンデンの宇宙』 『星々の轟き
・フランスのキャプテンフューチャーサイト Capitaine Flam - Historique すっげぇマニアック
・通販 <奇想コレクション>『フェッセンデンの宇宙』エドモンド・ハミルトン和書洋書(Amazon)

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■The Shiny Aluminum Computer Case

metal_pc_case.jpg
 VAIO夏モデルと言いたいところですが(嘘)、さっきウェブをさまよってて偶然見つけたひかりものPC。この光沢をお楽しみください。(2002年のもののようで有名なのかも)
ここのページです。

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2004.05.21

■『イノセンス』カンヌ映画祭コンペで上映 日本アニメ初

NecoPunchさんが紹介されていますが、asahi.com : 文化芸能に、カンヌの『イノセンス』の記事。

 第57回カンヌ国際映画祭で20日夜(日本時間21日未明)、押井守監督の「イノセンス」が日本のアニメーションとしては初めてコンペティション部門で公式上映された。

 押井守氏のタキシード姿もこの記事で観えます。
 ぼくがTVニュースで観た時は、いつものラフな格好で、記者会見している姿だったので、てっきりタキシードは用意してないかと思ってしまいました。

中日スポーツホームページ
 中日新聞系は、万博で押井守を起用しているので、取材も力が入っています。

押井督監、パルムドール級の手応え
 日本アニメとして初のコンペ入り。近未来の電脳社会を描き、押井監督の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の続編。今回の製作費は、前作比4倍の約20億円だ。押井監督は「前作もできることは全部やったが、続編はそれ以上に日本のアニメで最高の表現をしたかった。ある種の総決算のつもりで作った」と、“ジャパニメーション”の手応え十分だった。

カンヌ公式ページ Press Conference: "Innocence"より
 (我々も英語で(本当はフランスだけど)読んで、現地の雰囲気に触れましょう。ろくに読めないけど(^^;))

For the official presentation of the competition animated feature Innocence, Japanese director/writer Mamoru Oshii, composer Kenji Kawai and producer Mitsuhisa Ishikawa answered questions from the press. Highlights.

Mamoru Oshii on the origins of the film: "When Production I.G first proposed the project to me, I thought about it for two weeks. I didn't make Innocence as a sequel to Ghost in the Shell. In fact I had a dozen ideas, linked to my views on life, my philosophy, that I wanted to include in this film. [...] I attacked Innocence as a technical challenge; I wanted to go beyond typical animation limits, answer personal questions and at the same time appeal to filmgoers."

Mamoru Oshii on his narrative intentions: "for Innocence, I had a bigger budget than for Ghost in the Shell. I also had more time to prepare it. Yet despite the economic leeway, abundant details and orientations, it was still important to tell an intimate story. [...] Personally, I adore the quotes in the film. It was a real pleasure for me. The budget and work that went into it contributed to the high quality of imagery. The images had to be up to par, as rich as the visuals.・/i>

Mamoru Oshii on Godard: "This desire to include quotes by other authors came from Godard. The text is very important for a film, that I learned from him. It gives a certain richness to cinema because the visual is not all there is. Thanks to Godard, the spectator can concoct his own interpretation. [...] The image associated to the text corresponds to a unifying act that aims at renewing cinema, that lets it take on new dimensions.・/i>

Mamoru Oshii on animation: "I think that Hollywood is relying more and more on 3D imaging like that of Shrek. The strength behind Japanese animation is based in the designers' pencil. Even if he mixes 2D, 3D, and computer graphics, the foundation is still 2D. Only doing 3D does not interest me."

究極映像研の関連記事

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2004.05.20

■MOVIE PLUS パルムドール予想投票と完全生中継!

 CSデジタルのムービープラスで、カンヌ映画祭スペシャル2004
 予想投票は誰でもここでできます。

みごとパルムドールを的中させた方から抽選で1名様に、SHARP 15インチ液晶テレビ LC-15S-1S をプレゼント! 投票の際のアンケートやご意見/ご感想を番組で紹介させていただいた方にはもれなく、第57回カンヌ映画祭オフィシャルTシャツ(予定)をプレゼント!
現在の投票結果 <2004年5年20日 22:36 >
 2046    30%
 イノセンス 23%
 華氏911  9%
 誰も知らない 7%
 レディ・キラーズ 6%
 LIFE IS A MIRACLE 5%
 モーターサイクル・ダイアリーズ(原題) 4%
 LOOK AT ME 3%
 シュレック2 2%  EXILS 2%
 LA FEMME EST L’AVENIR DE L’HOMME 2%
 OLD BOY 2%
 CLEAN 1%
 THE LIFE AND DEATH OF PETER SELLERS 1%
 LA NINA SANTA 1%
 LE CONSEGUENZE DELL’AMORE 1%
 MONDOVINO 1%
 TROPICAL MALADY 0%
 THE EDUKATORS 0%
 だいたいマスコミへの露出の順かと。われらが『イノセンス』は現在2位。
 受賞式の生放送は、ここのチャンネル独占で、5/22(土)深夜 1:30~。
 審査員や候補作はここで詳しく載っています。キャサリン・ターナーやツイ・ハークも審査員に名を連ねている。

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■地上デジタル録画 水冷PC VALUESTAR TZ

NECの新型  VALUESTAR TZが発表になってます。
valuestarTZ.jpg
 注目のハイビジョン録画については、下記の記述があるだけで、どんな解像度で録画できるか不明。

※ SmartVision DGによる地上デジタル放送の録画形式は、DVDビデオの形式とは異なるため、DVDプレーヤで再生可能な形式での保存はできません。また、録画した番組は録画を行ったパソコンのSmartVision DGでのみ再生可能です。

※ 地上デジタル放送のハイビジョン放送は、パソコン上で処理しやすい解像度に変換して表示しています。

TV録画機能 独自形式(デジタルハイビジョンテレビ放送(約15Mbps)、デジタル標準テレビ放送(約8Mbps)の録画可能

 「パソコン上で処理しやすい解像度」っていったいなんだ??擬似ハイビジョン??? ハイビジョンファンとしてはハイビジョン用のキャプチャーカードのみ市販してほしいのになーー。
 水冷のハードは昨年のVXといっしょみたいですね。概観は銀から黒に大きく変わってます。VXの特徴だった水冷の丸い地球のような前面アイコンは、今回は写真のようにぼんやりした横長。(水冷初代のTXのユーザなんで、気になったしだい、、、、。)

 ・価格.com VALUESTAR TZ VZ500/9Dについての情報掲示板

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2004.05.19

■三島賞受賞!!『ららら科學の子』矢作俊彦

新潮社発表

第十七回三島由紀夫賞決定・2004年5月19日
ららら科學の子』  矢作俊彦   ――平成十五年九月文藝春秋刊
 選考委員 筒井康隆 宮本輝 高樹のぶ子 福田和也 島田雅彦

 昨年の舞城王太郎『阿修羅ガール』に続き、『ららら科學の子』で矢作俊彦氏が受賞されたとのことです。ちょっと前に読んだ本が賞を取ると、なんか嬉しいですね。

 ちなみに矢作氏は第4回に候補になっていたようです。

第4回 〈受賞作〉佐伯一麦『ア・ルース・ボーイ』
〈候補作〉松村栄子『僕はかぐや姫』/矢作俊彦『スズキさんの休息と遍歴』/芦原すなお『青春デンデケデケデケ』/いとうせいこう『ワールズ・エンド・ガーデン』/奥泉光『葦と百合』
〈選考委員〉江藤淳/大江健三郎/筒井康隆/中上健次/宮本輝

 で、先日のレビュウに若干追加。
 『ららら科學の子』のすぐあとに『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を偶然読んだのだけど、共通点がいくつかあった。
 ・主人公の視点の純粋さ、無垢さ(『ららら科學の子』では中国に閉ざされていた主人公の中に凍結されていた60年代)
 ・妹に理想としてのイノセンスをみているところ
 ・どちらもキーとして『博士の異常な愛情』の核爆弾にまたがるイメージが出てくる
 矢作俊彦の『ライ麦畑』へのオマージュだと思う。特に小説としての雰囲気が似ているわけではないが、どことなく意識している感じがあった。

 で、ググッてみたら、こんな記事がありました。
 Whistle & Sigh or writer's notes 03/11/29 より

 雑誌「文學界」12月号(文藝春秋)に、なんと矢作俊彦と高橋源一郎の対談が掲載されているとの新聞広告を見て、早速雑誌を買ってきた。同時に広告が出ていた雑誌「すばる」(集英社)では、矢作俊彦と、こちらは久間十義との対談である。(略)
  『ららら科學の子』については、高橋が主人公「彼」は実は「フーテンの寅さん」だと指摘したり、それに対して、「寅さん」は映画と映画のあいだをつなぐ映画だと言ったり(略)、久間十義との対談でも話に出ていたサリンジャーの『ライ麦』を絡めて、「妹の力」というまとめ方をしてみたりと話は話を呼んで、つきることがない。

 読みたいですね、この対談。(でも「フーテンの寅さん」という指摘は余りに違うのでうなずけません)
 あと巽孝之氏の書評にも同様の指摘がありました。

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■大(Oh!)水木しげる展 なまけものになりなさい

 鳥取県立博物館 会期:4月29日~5月30日(休館日なし)
 週刊大極宮で、京極夏彦のレポートがありました。

水木伝説、関東水木会、げげげのしげる会なども総参加。「水木愛」で結ばれた水木一門の愛の結実です(笑)。特に企画・図録制作では村上(妖怪馬鹿)健司君と巨漢Uさんが大回転の大活躍でした。図録も傑作です、はい。

 観たいんですが、鳥取は遠いよーー。京極夏彦がプロデュースした「鬼太郎の家」というのが激しく観たい。

 mizukiroad.com(ここのオープニングムービーがいい味!)に、詳細ポスターがあります。

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2004.05.18

■第16回CGアニメコンテスト

PROJECT TEAM DoGA主催 第16回CGアニメコンテスト 審査結果

 ということで、少し情報としては遅いですが、こんなのを見つけたのでリンクです。
 上位入選のこの二つがいい感じ。tough guy!のカマキリのクールさが良かったです。

作品賞
 文使       栗栖 直也氏
             使用ソフト ShadeR5、Photoshop5.5、FinalCutPro3
             ※ここで30秒の予告が観えます。

エンターテイメント賞
 tough guy!     岸本 真太郎氏
             使用ソフト LightWave、AfterEffects、等
             ※ここで全編、観えます。

【入選作品上映会】
東京会場 2004年5月9日(日) 日本青年館大ホール (既に終了、、、) 
大阪会場 2004年5月23日(日) 大阪市中央公会堂

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■モーガン・スパーロック監督『スーパー・サイズ・ミー』

はてなダイアリー - 町山智浩アメリカ日記2004-05-13 「30日間朝昼晩三食すべてマクドナルドで食べる」より

一人の男が30日間朝昼晩の三食をすべてマクドナルドで食べ、「スーパーサイズにしますか?」と聞かれたら必ず「YES!」と答える人体実験ドキュメンタリー映画『スーパー・サイズ・ミー』を観た。タイトルは「オレをスーパー・サイズにしてくれ」という意味。

 これはアメリカの「電波少年」か? はちゃめちゃな映画ですね。町山智浩氏の紹介が抜群に面白い。
 日本公開の予定はないようだけど、是非公開してほしい。もし日本マクドナルドがスポンサーで公開されたら、僕は5日間(ちょっと弱気)マクドを食べ続けることを誓います! 原田元アップル社長! 頼むでぇ。

SUPER SIZE MEの予告編
・監督モーガン・スパーロックのBLOG

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2004.05.17

■The Incredibles 新予告編

 PIXERの新作 The Incredibles のトレーラーが新しくなってます。

 他の登場人物も出てきているけれど、ちょっと期待と違うかな?スピード感のある飛行シーンは見えますが、人物のCGがいまひとつ。上質なパロディ&スラプスティックを期待しますが、これ如何に? 公開は年末ですね。

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■村上春樹 柴田元幸 『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』
                   (文春新書)

 村上春樹が柴田元幸(東大助教授・翻訳家)と、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)を中心にサリンジャーと翻訳について語り合った本。
 『キャッチャー』についてと小説の翻訳については言わずもがな、特筆すべきは、小説をどう感じるのかというところについて、とても興味深い面白い意見が載っている。以下、村上春樹の言葉より抜粋。

 より大事なのは、意味性と意味性がどのように有機的に呼応し合うかだと思うんです。P33

 すぐれた物語というのは、人の心に入り込んできて、そこにしっかり残るんだけど、それがすぐれていない物語と機能的に、構造的にどう違うのかというのは、言葉では簡単にわかりやすく説明できない。それをすらっと説明するための語彙とかレトリックとかを、僕らはほとんど持ち合わせていない。P34

 翻訳家だからこそ見える小説の正体がここにあるのかもしれない。
 翻訳する小説の実態というものは、物語でもなければ、文体でもなければ、作者の思想でもない。その実態である何ものかとの格闘が翻訳作業そのものという具合に読める。その何ものかを村上はここで「意味性と意味性が有機的に呼応し合う」という言葉で表現している。翻訳家ふたりのこの対談を読んで、ここのところが一番面白かった。(本の主題の『キャッチャー』分析も鋭いけど)

 僕は翻訳もできないし小説も書いてないけど、学生時代から映画とか小説のレビュウをグダグダと趣味で書いてきて、自分の中に映画や小説が喚起する何ものかについてずっと興味がある。自分なりに表現すると、自分の中に喚起される質感みたいなものと、作者が創作した時の心の中の感覚(と思われるもの)の中間くらいにある何ものか、のような気がする。
 小説や映画がそうしたものを獲得する瞬間は、言葉の積み重ねや何気ない俳優のしぐさ、風景の動き、画像と音楽の呼応によって発生しているように思う。作者の描いたイメージが観客の頭の中に紙面や画面を通して解凍する瞬間。それがたまらなくて小説や映画を観ているのは僕だけかなー。(単なる印象批評じゃないの、という声も聞こえてきたり、、、。)
 先日読んだ『意識とは何か』P181にこんな記述がある。

 私自身は、1994年2月に電車に乗っていて「ガタンゴトン」という音の質感自体に注意が行き、周波数で分析してもその「ガタンゴトン」という音の質感自体には決して到達できないことを悟って以来、ずっとその問題を考えてきた。(略)それまでの私が、クオリアという問題を隠蔽するような世界観の中で、あたかもクオリアなど存在しないかのような心的態度(ふり)をとっていたからだと思う。
 つまり、私は、二〇世紀的な科学主義の目を通して世界を見ていたのである。

 この一節を読んだ時、ここでいうクオリアが小説や映画が我々の脳に「解凍」するもののことを言ってるのかな、と思った。どうも言葉の意味が曖昧で、便利すぎる言葉になってしまうので、あまりクオリアとは呼びたくないけれど、、、。
 あと蛇足だけど、この文章を読んだ時、言いたいことはわかるのだけど、「ガタンゴトン」をキーワードとした心の表現が、実は余りに拙いように思った。脳の中の動きを観察できる唯一の対象が自分であるから、脳科学者は自分の心の機微を語ることになる。作家的/翻訳家的/評論家的な訓練をつんでいない(と思われる)ことが、この文章を非常に情緒的で拙いものに感じさせているのではないか。脳科学者はこの本にあるような小説の何ものかをいかに丁寧に翻訳の言葉に置き換えるのか、ということも重要なスキルになるのかもしれない、、、と素人が生意気なことを思ったりした。自分の書く感想文も、おおげさに言えば、そのスキルが重要なのだけれど、、、。(とグダグダとすいません。)
◆関連記事
★究極映像研究所★: ■J・D・サリンジャー「笑い男」と神山健治『攻殻機動隊 S.A.C.』
◆関連リンク
『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』村上春樹, 柴田元幸(文春新書)(Amazon)
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』村上春樹訳(白水社)(Amazon)
『ライ麦畑でつかまえて』野崎孝訳(白水uブックス)(Amazon)
・検索したらこんなのがありました。三浦雅士インタビュー『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』(新書館)について

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2004.05.16

■NHKスペシャル 疾走!ロボットカー

 疾走 ロボットカー
 米国国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)が主催した完全に人工知能だけで運転させるロボットカーレースの特番が放映された。

 このレースの参加者は、人工知能が状況を判断して運転する「ロボット自動車」。ロボットが、ロスアンゼルス郊外を出発点に、ラスベカス近くのゴールを目指して突っ走る、史上初のロボット自動車レースであった。

 主にセンサの紹介が中心で、認識の方法とか、自動操縦のメカ・制御については触れていなかった。まわりの認識のためのセンサより、本当はどう道路状況を認知し、走行の制御をやっているのかが技術的には重要かと。アクセルとブレーキを踏んで、ハンドル切るだけ、と言っても、人間はその時に周りの状況を見て判断するだけでなく、ハンドルからの反力や車両にかかる各方向のGとモーメント等を感じて、複雑な処理をやっているわけだから。(実際に番組ではトップを走っていた車がまわりの山道の認識は出来ていたが、ハンドルを切り損ねてリタイアしていた。)
 あと番組では無人の戦争行為が不気味であるというトーンで紹介されていたが、本当に怖いのは自動で走っていく車ではない。戦場の輸送で車を走らせる時に当然必要なのは周りの敵との戦闘である。無人走行車は必然的に無人で人を攻撃しなくてはいけないはず。このための認知/戦闘行動の人工知能開発も平行して軍で行われているはずで、本当に怖いのはこの部分であると思う。敵と味方の識別、軍属と民間人の識別、、、ここらを精度よくできる技術はまだまだ至難の業のはず。オモチャのような自動走行技術より、本当に怖いのは人を殺す人工知能の開発である。不気味だなー。で、たぶんその一番重要な部分は軍の研究所で研究されているのだろう、敵を認知し殺傷するロボット技術は。、、、なので車の自動走行部分は民間にこんなレースをさせてお遊びのように開発しているのだと思う。学生とかがロボコンの乗りでトライしているけれど、軍事目的の開発に嬉々とできるセンスを疑います。やめれ!と言いたい。しかし、アメリカは戦場に本気で投入するのだろうな。2015年に1/3の軍用車を自動化すると言っているそうな。あーあ、ばっかじゃないの。
◆関連リンク
・DARPAのGrand Challenge HPVTRアーカイブ写真
・WIRED NEWS 5/17 DARPAの新たな目標は「学習する自律走行車」

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