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2004年7月4日 - 2004年7月10日

2004.07.10

■ウィリアム・ギブスン『パターン・レコグニション』
                   浅倉久志訳 (角川書店刊)

Pattern_Recognition.jpg
 海外も含めて、表紙の写真を集めてみました。日本のより右から二つ目が中味のイメージに近いです。左のCD?ディスクも捨てがたいけれど。

 『パターン・レコグニション』 web KADOKAWA公式ページより

 webにあらわれる異常なまでの完成度の高さを誇る断片映像<フッテージ>とは?
 <フッテージ>はネット上にランダムに流されている断片的な映像で、ストーリーもないが、抜群の完成度を誇る。主人公ケイスの最終的なタスクは<フッテージ>の正体を探ること。タキという日本人が<フッテージ>の正体の一部を解読したという情報を仕入れ、日本へと旅立った・・・・・・。
 サイバーバンクの王者ギブスンが、現実世界を舞台に描いた、スピード感あふれる極上のハイブリット・エンタテインメント!

 そう、これは「フッテージ」という究極映像を扱った小説なのである! 僕はギブスンより士郎正宗の方がサイバーパンク的には凄いと思ってしまうOTAKU野郎なので、実は相性が良くない。で、最近の3作くらいは読んでなかったのだけれど、このコピーを読んで手にとらないわけにはいかない!
 この本は、はじめから終わりまで、紛れもなく究極映像の探索の物語だ。そして今まで未来社会を描いていたギブスンがその文体で現代を描いた小説。SFではなくこれは現実小説である。

 結論として、フッテージの物語はそれなりにワクワクするのだけれど、タイトルにある人間の認識領域に迫るような高みには、残念ながら達していない。究極映像の探求はかように奥が深いのである、なんつって。
 小説としては911テロ後の雰囲気も醸し出しつつ、現代的で刺激的な完成度。とりわけ現在のネット環境の描き方が秀逸で、われわれのリアルがここにあるって感じ。頻繁に出てくるスターバックスも、ラテ好きにはたまりません(^^;)。
 ギブスン嫌いの人も、今作では三つの制約(「現実世界における2002年の夏を舞台にすること」「多視点描写をやめ、終始ひとりの人物の視点から語ること」「なるべく場面の省略を含まないこと」)を己に課したということで、他よりとっつきやすいです。

文体について
 文体は本作でも詩的で未来的。

 空はまぶしい灰色のボウルで、ほつれた飛行機雲がからまっている。
 ジッポーの墓石が、実存主義的エレジーで彼女をひきつける。

 ともするとギャグじゃないかと、疑ってしまう現実のねじれた切りとり方。だけれど、そのリズムで独特のギブスン世界がわれわれの脳内に展開され、現代を描いているが常に未来的な感覚がつきまとう。ここで未来的な感覚を覚えるのは、ギブスンの視点のペシミスティックさがそう感じさせているのかもしれない。フッテージを分析するように、一文一文を吟味して、そうしたペシミスティックな視点の頻度をみていけば、この雰囲気の原因は解析できそうだ(そんな面倒なことはできまへんが)。下記はフッテージを描写した文章であるが、この小説そのものの評価に近いものを感じる。
 たいていの人はその孤独が深まるのを感じる(略)。しばらくフッテージとつきあうと、それが心にまとわりつきはじめる。短い映写時間にしては、けたはずれに強烈な効果。既成の映像作家でそれがやれる人がいるとは、私には信じられない。(P108)

フッテージと東京のオタク集団
 ギブスンの文体については、ともかく、このフッテージの説明、映像ファンとしては是が非でも観てみたいと思いませんか。この作品、映画化の予定ということなので、その監督がフッテージに挑戦するのが楽しみでなりません。作家が「既成の映像作家でそれがやれる人がいるとは、私には信じられない」と書いた映像にチャレンジする勇気ある監督は、以前の情報ではピーター・ウィアーということですが、この人では、、、、。たぶんアートフィルムの短編作家あたりにそこだけ撮らせるというような手法になるのではないでしょうか。
 そして「六本木の赤提灯」。ここに現れる「東京のオタク集団に顔がきくと主張する」フッテージの秘密を握るタキという男の描写は典型的アキバ系である。汗のかき方の描写が特に。

そして、未来
 解説(巽孝之氏)でも触れられている次の「未来」に関する一文だけど、どうもここが僕にはギブスンの欠点のように思えてならない。

 すみずみまで想像された文化的な未来は、別の時代、"いま"という言葉がもっと長い期間を意味した時代に許されたぜいたくだ。(略)あらゆるものが急激に、強烈に、かつ深刻に変化する可能性があるため、祖父母の考えていたような未来には、その立脚点を築きあげるだけの"いま"がたりない。われわれに未来がないのは、われわれの現在があまりにも流動的であるからだ。(P60)

 うーん、たぶんITやディジタル技術の観点でみれば、そうかもしれない。だけど前世紀に電気や車といったテクノロジーがものすごい勢いで進んでいった時も、人々(祖父母)は同様に感じていたのではないのかな。人の身体機能は電気と車と飛行機によって、前世紀飛躍的な向上を得た。この時の身体的な変革は凄まじいものがあったと思うのだけれど。ギブスンが人間の認識領域へのディジタルの影響を形而上的にもっと描いていたらこの未来についての描写は迫力を持つかもしれないが、、、。
 前世紀の「身体」的拡張に対して「脳」とか「意識」の拡張についてサイバーパンクは描いてきたかもしれないけれど、実はその前世紀の「身体」的拡張がもはや「脳」や「意識」の拡張だった、という気がしていて、祖父母世代が未来を感じていたという書き方がひどく安直な認識に感じられてしまうのだ。わざと変な例えをしますが、この感覚って「年寄りは時代劇が好き」という全く根拠のない認識と実はいっしょなんじゃないの?(だってじいちゃん達は江戸時代を経験してるわけじゃないんだぜ、当たり前だけど(^^;))。なんだかここがギブスンの物足りなさなんだよね。詩的文体の文学としての面白さはわかります。しかし、ギブスンには基本的に架空の人間の未来は描けても、根本のところでなんか違うんじゃないっすか??と疑問符を付けたくなってしまうのである。

関連リンク
・当Blog関連記事 ピーター・ウィアーがウィリアム・ギブスン『パターン・レコグニション』映画化
William Gibson - Official Website ギブスン本人のBLOG  ありゃりゃ、03年9月で終結。言い訳は下記(って機械翻訳で出鱈目)。
 「私が私の日雇い職に戻る時間。(日雇い職は私がbloggingするのをもう止めるべきである時間であることを意味します)。(略)最も容易に思い浮かぶイメージはふたがやめられたので沸騰しないやかんのものです。」
'PR'-otaku: Logging and annotating William Gibson's 'Pattern Recognition' (Joe Clark: fawny.org)
No Maps for these Territories - William Gibson
・購入は 『パターン・レコグニション』(Amazon)

おまけ P35に出てくるリヒテンシュタインの機械式計算機に興味がわいたので、ググってみました。
Pattern_Recognition_caliculater.jpg
 自分の持ってる手回し計算機(写真最右)のイメージで読んでいたのですが、なんか描写が違うと思ったら、こんな形なんですね。かっこいい!!
 これ、オーストリアのクルト・ヘルツシュタークって人がナチの強制収容所にいる間に開発したらしい。ナチは彼を「知的奴隷」と呼んでいたとの描写が『パターン・レコグニション』にありました。ひどい。
会計博物館 CURTA携帯型計算機に詳しいです。

リヒテンシュタインで製造された手動式の携帯型計算機 使い方は、側面に値数をセットし、例えばその数を23倍するのであれば、十の位で2回、一の位で3回時計廻りに頭部にあるハンドルを回転させると、上部の周囲にある表示盤に答えが表示される。

・永瀬唯さんのBlog 錯合回廊--CisMatrix Corridor より海外の詳細なサイトを知りました。大きさは手の中にすっぽり納まるサイズで、とてもクール! うちのタイガー君の無骨さとは対照的か。
 クルタ計算機についての総合的なサイトはここ
 クルタ専門のメンテ屋さんのページだが、フラッシュによるクルタ作動シミュレーターや3次元CGのページなどともリンクしてる。http://www.vcalc.net/cu.htm
      (錯合回廊「書きそこなった日記から(2004.06.09-06.12)」より)

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■松尾スズキ 『同姓同名小説』 (ロッキング・オン刊)

 ウィリアム・ギブスンで疲れたので次の本は、おバカな松尾スズキで攻めたのですが、これがバカすぎ(誉め言葉)で、脳がまたぶっ飛びました。まずは各短編のタイトルを見てバカさを感じてください。(タイトルどおりタレントと同姓同名の主人公を描いた小説集)

「みのが、みのであるために」―みのもんた
「ピンクレディー復活の日」―ピンクレディー
「蚕谷村奇譚・なお美の夢」―川島なお美
「間違えたいの!」―中村江里子
「上祐の夏」―上祐史浩
「乱の乱」―乱一世
「力の魂」―竹内力
「田代の一番長い日」―田代まさし
「女優・荻野目」―荻野目慶子
「広末の秘密」―広末涼子
「総理の息子と呼ばないで」―小泉孝太郎
「モニと私」―モーニング娘。
「上161下105の男」―松尾スズキ

 もう異様な雰囲気を醸し出しているっしょ?
 松尾スズキって、大人計画の芝居はまだ残念ながら観たことがないのですか、昨年の宮藤官九郎のドラマ『マンハッタンラブストーリー』で(超傑作!レンタル屋へ走れ! Amazon DVDはここ)怪演を観て以来、ちょこちょことエッセイを読んでいたのだけど、小説は初めて読みました。
 まず何はともあれ、書店で見かけたら、「みのが、みのであるために」を立ち読みで一読を。このシュールさは凄いです。あとの12本が霞みます(竹内力のはなんか好きだけど。)
『同姓同名小説』(Amazon)

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2004.07.09

■ヤン・ハーラン監督
     『STANLEY KUBRICK:A LIFE INPICTURES』

 まーやさん、コメントありがとうございます。まーやさんのBLOG 0 1/2で、A LIFE IN PICTURESの記事を拝見。以前にNHKで放映されたのを観た時の感想をアップします。(実はトラックバックいただいた『バリー・リンドン』は未見なので、、、、。)

 BS2で放映されてた『STANLEY KUBRICK:A LIFE INPICTURES』(製作・監督:ヤン・ハーラン)という3時間あまりのドキュメントをビデオで観た。これ調べてみると『スタンリー・キューブリック DVDコレクターズBOX』というのに特典ディスクとして付いているものですが、見ごたえ十分。(まーやさんのページで映画の場面写真が観えます)
 家族との映像や子ども時代の映像も、あまりマスコミに出なかったキューブリックの人となりを知るのによかったが、一番はマーチン・スコセッシが語る60年代に彼の映画が登場した時のリアルタイムの衝撃度合い。このインタビュー場面を観つつ、少しだけ、当時のセンセーショナルな登場を追体験できた気がした。
 『ロリータ』『博士の異常な愛情』『2001』『時計仕掛けのオレンジ』とあの時代に矢継ぎ早にタイプの違う映画で、観客にインパクトをあたえていたことを紹介している。
 そして当時はこの衝撃によって、客をよび、凄く当たる監督だったというのにも驚いた。僕らの時代にはそういう監督はいないので、同時代で経験できなかったのは全く残念(僕のリアルタイムのキューブリック体験は『シャイニング』からで、もはやものすごい衝撃ではなく、伝説の監督だったので、、、)。思うにデビット・リンチでも60年代のキューブリックの衝撃には勝っていないと思う(、、、、違うかな??)。最盛期だった60年代に、60年代の空気の中で『2001』とか観たかったな、と強く思った。
 あと子ども時代に父親(医師)が8mmで撮った映像、眼の下のくまが既にかわいらしい子ども時代にもあったのが印象的。子供には少し残酷なトレードマークですね。& 60年代のひげのない顔がミスタービーンみたいだとか、、、、巨匠に失礼とは思いつつ、笑っちゃいました。
◆関連リンク
・なかなかマニアックなキューブリック関連ページ
スタンリー・キューブリック DVDコレクターズBOX(Amazon)

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2004.07.07

■ロボット『クロイノ』動画公開!!

  M O O - T _ b l o g:さんに、トラックバックで教えていただきました。『ROBO GARAGE』の公式ページに4つの動画があります。
 噂のSHINーWalkは、横からのショットで少しわかりにくいのが残念ですが、歩くのも見えます。ムービーは次の四本。
 1.ボールを蹴る 2.立ち上がる 3.歩く 4.一本足でポーズ
 足を動かす時に、持ち上げるのと逆の足の側へ体を傾かせることによって、ひざを曲げないで伸ばしたままの歩きを実現しています。なかなかアクションが優雅です。
 まだぎこちない感じだけれど、僕が見た二足歩行ロボットの中では、鉄腕アトムに一番近い動きです。一見の価値有!!
※ただこのロボットって、足の裏に磁石(電磁石?)を持ったロボット マグダン (magdan)を作った高橋智隆氏が作られているということだけれど、このクロイノも磁石を使っているのかな??(マグダンはだから鉄板の上しか歩けなかった記憶) 足の裏の動きをじっと見比べると二つは違って見えるのだけれど、、、、たぶん磁石は使っていないのでしょう。
 ◆究極映像研内記事 「小型ヒューマノイド「クロイノ」CHROINO」

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2004.07.06

■米ISR社 宇宙エレベーター

 CNN.co.jp - サイエンスより。
space_Elevator.jpg

宇宙行きのエレベーターを開発しているのは、民間研究機関ISR(本社・ウェストバージニア州フェアモント)のブラッドレー・エドワーズ氏ら。ブッシュ政権が有人月面探査再開の目標年度とする2020年より1年早く、総工費約100億ドルのプロジェクトとして実現を目指す。

最近になって軽くて強い炭素系新素材「カーボンナノチューブ」が開発され、見通しが開けた。幅約1メートルで紙のように薄いカーボンナノチューブの「帯」を、地上から高度約10万キロまで伸ばし、エレベーターを走らせる――というのが、エドワーズ氏らの計画だ。

 A・C・クラークの『楽園の泉』ハヤカワ文庫SF(Amazon)
ファンには、こういうニュースはたまりません。カーボンナノチューブは、燃料電池(FC)用の水素吸蔵だとか、なんやかやと利用方法の提案がいろいろとありますが、SFファンにとっては、宇宙エレベーターにとどめをさすでしょう。何とか生きているうちに宇宙へ登ってみたいものです。10万kmというとスペースシャトルの500倍(違ったかな?)上空です。本格的宇宙へ打ち上げの負荷なしに上がれるというのは、これからどんどん体力が落ちていく世代にとっては、願ってもない宇宙への手段です。皆でエールを送りましょう!!
ISR : Institute for Scientific Research, Inc. The Space Elevator Gallery

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2004.07.04

■ハイビジョン画質のWMV
         : Windows Media High Definition Video

 窓の杜 - 【NEWS】ハイビジョン画質のWMVが再生可能であるかを測定できるオンラインベンチマークより
 これによるとMicrosoftのWMVに要求されるマシンスペックは、1280×720画質でPentium4 2.4GHz以上、フルハイビジョン1920×1080画質でPentium4 3.0GHz以上ということである。
 Microsoftが用意しているサンプルをダウンロードして試してみた。うちのマシンはPentium4 2.4GHzだけれど、とりあえず1920×1080のサンプルでもスムーズに再生できている。
 画質的には、プロジェクタが1280×720なのではっきりは言えないけど、DVDよりは綺麗、BSハイビジョン並という感じ。IMAXの映像もサンプルで用意されているけど、かなりいける。WMVは、DVDディスクでハイビジョン画像というのが、嬉しい! ディスク、買ってみようかな。
ここ(DVD Fantasium)、"Terminator 2: Judgment Day: Extreme DVD"が買えます。海外版だけど。
◆WMV公式ページ Windows Media High Definition Video

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