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2005.01.09

■宮崎駿監督 『ハウルの動く城』

howls_moving_castle
 『もののけ姫』『千と千尋』に比べると、適当に肩の力が抜けていて(世界を背負っていない感じ)、アニメーションらしいメタモルフォーゼとか奇想なイメージが豊かに広がっていて楽しめた。

城と飛行の奇想イメージ
 冒頭の動く城がまずいい。ハーモニー処理で描かれた各パーツを(スキャナで)取り込んで、CGによってそれぞれが独立/連係して動くようにしたらしい。山の中を歩き回るこの城のイメージがまず奇想イメージとしていい。(最初にこの映画のことを知った時は、映画のようにこじんまりした城でなくクリストファー・プリースト逆転世界のようなもっと大きな町のような城が動くイメージを思ったのだけれど、、、。) 『風の谷のナウシカ』で、ハーモニー処理「王蟲」のチャチさには、がっかりした記憶だけれど、CGの進歩と今回の歩く城の動画担当のセンスで、なかなか圧巻です。少なくともスチルの絵だけでは味わえない奇妙な感じが動きを伴うことで楽しめた。
 ハウルの魔法や戦争とかの飛行シーンの奇想度もなかなか。王室付きのサリマンとハウルが会うシーンのメタモルフォーゼと空中のイメージは出色(も一回観たい)。原作は未読なので宮崎駿のイマジネーションだけかどうかわからないけれど、最近の日本が舞台のものより伸びやかなイメージに感じる。
 メタモルフォーゼということだと、ソフィーの年齢的な変貌も面白い。特に同一シーンの中で年のとり方が様々に変化するところ。ここらへんがアニメーションらしい画面になってて良かった。
 まだまだ物語るためのアニメなのだけれど、これらのシーンをもっと幻想的にストーリーに縛られないで拡張していったものも、短編で良いので観てみたい。巨額のビジネスを背負ってるとそうも行かないだろうけれど、今回目をみはるイメージがかなりあったのでそんなことを思った。
・クリストファー・プリースト逆転世界
inverted_worldby_priest

原画マンの個性
 画面構成とかイメージは良いのだけれど、アニメータの技という点でいくと、ダイナミックな動き、ワクワクする動きは少なくて、最近のこじんまりとまとまった宮崎アニメという感じがしてしまう。なんなのかな?アニメータ宮崎駿らしい動き(彼のレイアウトでなく原画の魅力)を思い出す時に、『旧ルパン』とか『侍ジャイアンツ』(第一話)とか『空飛ぶ幽霊船』の戦車シーンとか、ダイナミックな線と動きをイメージしてそれと比較するのが悪いのか、、、、(ロートルファンの郷愁??)。ただ『ハウル』のストーリーポード観ても宮崎のそのタッチが今も感じられ、かつ原画修正で監督本人が書き直してもいるようなので、そんな原画も期待してしまうのだけれど、、、。あの躍動感(と素朴さの)味のあるアニメートを継ぐアニメータが現れるのを期待するしかないのか。ああいう原画の個性というのは、継げるものではなくって、個性そのものという気がしないでもないので、若い頃の宮崎本人を連れてくるしかないのかも。

戦争
 ストーリーとしては、戦争に対するスタンスが僕は良かった。
 クライマックスのカタルシスを戦争で描かないという姿勢、背景としての戦争。映画としてはクライマックスをもっと戦争の活劇で描いた方が盛り上がったのだろうけれど、今回はあくまで主人公たちの生活の視点で戦争のほんの一部を描いているのみ。大上段に戦争に立ち向かったのが漫画版『風の谷のナウシカ』だけど、2時間強の映画で描ける題材ではないはずで、戦争じたいを唯のカタルシスの道具にしてないのも好感。
 前にここで『カリオストロの城』について、幼少時の宮崎が空襲時に少女を助けられなかった体験がかなり大きく彼の映画に影響していると書いたけど、今回もその視点でみるとズバリ。
 ただしハウルのみが助ける話でなく、ふたりで乗り越える戦火という感じになっている。これを助ける話の発展形としてみるか、バリエーションとしてみるか、、、??

 ラストの案山子のカブのセリフで戦争の行く末をあまりにあっさり描くのには仰け反ったけれども、全体、なかなか楽しめる映画だった。

◆関連リンク
★究極映像研究所★: ■BS アニメ夜話 『カリオストロの城』

『宮崎駿の原点―母と子の物語』という大泉 実成が書いた本の中に非常に興味深い宮崎の子供時代のエピソードがある。あまりに後の作品にピッタリはまりすぎてかえって嘘くさく思えるエピソードなのだけど、、、。

・そのエピソードについては「時代を翔る アニメ監督 宮崎駿」(北海道新聞)の記事にも。
 その時-。「助けてください」。子供を抱いた近所の男性が駆け寄ってきた。しかし、小さいトラックは既に宮崎の家族でいっぱい。車はそのまま走りだした。次第に遠ざかる叫びが、荷台の兄弟の耳に残った。

ここの掲示板に『宮崎駿の原点―母と子の物語』での戦争中エピソードと『ハウル』の関係について少し触れられています。
監督が少年だった戦争時代に、救えなかった少女への生涯離れない想いが、
監督=ハウルで、二人が守り守られて幸せになる形となって表に出てきたのかな、とか。

夕刊フジ
公開中の宮崎アニメ「ハウルの動く城」(宮崎駿監督)に「何か変?」の声が上がっている。
「従来の宮崎作品に比べて迫力がない」「色づかいがらしくない」「千尋の時のような盛り上がりに欠ける」などの声も…。

・原作小説と映画脚本比較 こことか、覇王の書斎とか。
『逆転世界』クリストファー・プリースト著,安田 均訳(Amazon)
〈地球市〉と呼ばれるその世界は全長千五百フィート、七層から成る要塞のごとき都市だった。しかも年に三十六・五マイルずつレール上を進む、可動式都市である。この閉鎖空間に生まれ育った主人公ヘルワードは成人し、初めて外界に出た……そこは月も太陽もいびつに歪んだ異様な世界? 英国SF協会賞に輝く鬼才の最高傑作。

・Masslogueさんの「ハウルの動く城」と歩く建築 イギリスの前衛建築家集団のユニット アーキグラムハウルの城に関する記事。このアーキグラムの歩く建築にそっくりなフォルムを持つ現実の建築物の写真も掲載されていて、見逃せない内容です。
 

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