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2005.03.15

■樋口真嗣監督『ローレライ』

 公開初日に行ってきました。んが、記事を書くのが今頃になってしまいました。
 期待にたがわぬ力作でした。端正ないいイメージ満載の特撮も、あの長い小説を一本の映画にうまくまとめあげた丁寧なドラマも堪能できて、秀作です。

★ ★ 以下、ネタばれ注意 ★ ★

 特に魅かれたシーンは、B29の飛び立つ前の息をのむような機影と、大湊諜報主任が見つめる終末を待つ東京の鳥瞰風景、折笠の絵の舞う長崎の滅亡シーン。イ507の戦闘もよかったのだけれど、特に核攻撃の終末観があふれるこれらの場面の特撮がグッと胸に迫る映像でした。特撮映画はこうでなきゃ、って映像が満載でたまりません。

 だけど何故か傑作というには、クライマックスからラストの部分が拍子抜け。
 庵野秀明絵コンテのテニアン島海戦が意外と短くあっさりしていたのと、ラストのイ507の扱い。B29を打ち落とすシーンは小説を読んだ時に脳内映像で観たのの方が良かった(福井晴敏の勝利)。ラストのイ507は、海に潜っておしまいでなく、敵陣を突っ切っていこうとする意志を示して終わってほしかった。絶対に脱出できないというところでもあきらめない姿で終わったほうが全体のテーマにも寄与できたと思うので。
 原作にもあった現代のシーンは蛇足だったのではないかな?浅倉が言っていた「誰も彼もが我欲を追う獣になり果てて、百年もすれば日本という国の名前も忘れた肉の塊になる」(原作のセリフ。映画もこのニュアンスのセリフがありました。)その日本の姿を現代として描くならわかるけれど、単なる老アメリカ人の感傷で締めくくるのが全く理解できない。時計で折笠たちのその後の生を描写したかったのなら、むしろN式で太平洋を渡るシーンで終わったほうがよかったと思う。
 あと俳優達の雰囲気、紛れもない現代人の顔が映画の時代の緊迫感をそいでいる気がしたのは僕だけではないと思う。ここがまさに浅倉良橘いうところのけじめをとらなかった日本の行く末を映画自らが体現してしまった部分だと思う。小説では緊密に組み立てられた文体で全編に緊張感があったのが、映画ではストーリーはきっちりそれを導入しているのだけれど、どこかぼんやりとそこを俳優達の存在感がスポイルしているように感じた。小説のテーマそのものがこの浅倉のセリフだったと思うので、映画が痛々しく思えてしまったのかもしれない。
 他の日本映画に比べても演技は充分いいレベルなのだと思うけれど、さらされている現代日本という環境が醸し出してしまう避けられない部分なのだろう。(いや、自分のたるんだ顔つきは忘れて、今、書いてます。(^^;))
 映画館を出る時になんか傑作とはいい難かった気持ちを自分なりに分析して書いてみました。いや、充分いい映画だと思うのだけれど、、、。

・当Blog記事
 ■福井晴敏『終戦のローレライ』
 ■映画「ローレライ」メイキング番組

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コメント

 さきほどメールで返事しました。遅レスで申し訳ないです。

 『ローレライ』は電車で読むと、確かに涙腺が気になります。今年は花粉症がひどいので、ごまかせますが、、、、(^^;)。

 『亡国のイージス』と『戦国自衛隊』もちょっと楽しみだったり、、、。

投稿: BP | 2005.03.27 00:30

個人的な書き込みでアレですが、13日に送信したメールに
映画の感想は記したのですが…届いていませんか?
原作はまだ1巻迄しか読んでませんが、たしかにこの緻密細密
な描写に溢れる文章を読んでから映画を観たのでは物足りなさ
を感じてしまうのは仕方ないですね。会話だけでどんどん展開
していく類いの小説ではないだけに。
1巻の、仲田砲術長のくだりで落涙…電車内でちょっと恥ず
かしかったです(笑)。

投稿: となえ | 2005.03.22 23:21

 となえさん、こんばんは。

 映画『ローレライ』はどうでした?
 GHOST GUNの中でもいいので、感想を聞かせてください。僕のは随分辛口だったかも、、、。

投稿: BP | 2005.03.21 23:01

こんばんは。
原作読む前に映画は観ましたが、今日
近所の本屋に行ったらフィギュア付きBOXがあったので購入しました。
休みの間にじっくり読んでみたいと思いますー。

投稿: となえ | 2005.03.19 22:59

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2005年3月公開。公式サイトはこちら。 舞台は第二次世界大戦末期、主人公の艦長 [続きを読む]

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