« ■万博レポート チェコ共和国 | トップページ | ■新刊メモ 『逃亡くそたわけ』 『ローレライ全画コンテ』 »

2005.04.12

■山田正紀 『神狩り 2 リッパー』

★究極映像研究所★: ■新刊メモ 山田正紀 『神狩り 2 リッパー』

 30年前に読んだ本の続編! 中学の時に神の言語とヴィトゲンシュタインの哲学に触れ、主人公達が強大な存在に挑む『神狩り』をワクワクして読んだ。そして30年後の自分が、またワクワクして続編を読めるのかどうか?

◆結論
 僕の答えは前半○(ワクワク)、後半うーんちょっとって感じ。ドイツを舞台にしている前半の緊密で硬質なイメージは良かった。が、後半の殺人事件から始まるミステリー調の部分、日本が舞台になったところから、登場人物の神への闘いのベクトルが弱くって、なんだか乗り切れない。前半のイメージ構築に比べると、パワー不足でだれた雰囲気がしてしまう。前作は60年代の反体制な臭いと切羽詰った山田正紀の青臭さが良かったのだけれど、今回はそうした雰囲気が現代を舞台にすると馴染まないからか、山田正紀自身の変化かわからないけれど、いずれにしても『神狩り』とは大きく違った読後感だった。

◆神について
 神についてのアプローチがいろいろ出てくるが、山田正紀はこういうものを神として描いたのかなと思った『神狩り』でぼんやりと浮かび上がってきた解釈が、今回はモロに出てきている。(詳しくは下記のネタばれ部分に書きます。) 『神狩り』では、それを言っちゃあおしまいよ、というある意味身も蓋もない解釈のギリギリ一歩手前で踏みとどまって、その周辺を描写して強大な敵のイメージを作り出していた部分が今回割りとあっさり語られてしまっている。しかしラストで、、、、、。
 ラストのイメージは好きです。何、あれ??と思ったけれど、でもなんか迫真なイメージが構築されている。SFにしか描けないイメージ。ここは山田正紀に「ブーメラン」(あとがき参照)が戻ってきた瞬間なんだな、と思った。

◆関連リンク
・山田正紀作品の分析をやられているページ 
神狩り 2 リッパー』山田正紀(Amazon)
山田正紀 - Wikipedia

★以下、ネタばれ★

◆神について(ネタばれ編)
 P397で描かれている下記の解釈。これが僕が『神狩り』で感じた山田正紀の神の解釈に近かった。

 人間の文化を情報自己複製システムと考えるなら、『神』とは人の心を培地にした文化的複製のミームの最大集合のようなものではないのか、と。
 『神』がしろしめす『奇跡』こそは『ミームの最大集合』が生き残るために進化させた『表現型効果』なのかもしれないと・・。
 要するに人間の心に住みつく存在としての神。実態は否定している描写だと思う。上にも書いたが、これをそのまま書かずに匂わせるだけであった『神狩り』。そのまま書いたら神のイメージが矮小化されるところをうまく回避していたと思ったのだけれど、今回は明示している。
 そしてラストで描かれる実態化した神。途中の解釈を覆すイメージをラストで描くためにこのP397の明示があったのだと思う。
 実態化した神は何がなんだかわからないけれど、イメージ喚起力は凄い。ここは好きです。

◆以下、雑記
・P334「脳がすべての編集を放棄したときに生じる現実の実相なのだろう」。こういう描写がかっこいい。
・神をクオリアとして描写したり、リッパーによって側頭葉の発火で超能力が働くところまではなんとかついていけるが天使が実体化するところから先はついていけなくなる。「せん光が空と海を赤い十字架でつらぬいた。」これじゃまんま『エヴァンゲリオン』じゃないっすか(^^;)。側頭葉の発火部分は『マトリックス』だし、、。イメージの極北を切り拓くはずが映像作品からの引用じゃ、小説の位置づけが疑われますぜ>>山田先生。
・クオリアの階層について描いている部分が面白い。意識の発生というのがこの階層構造から起こっているように思われるので。
・なぜ島津の名前が違うのか。『神狩り』では「島津圭助」、今作は「島津圭介」。どうやらワザとのようだけれど、違和感あります。あそこまでぼろぼろに「島津圭助」を描くことに抵抗があったのでしょうか。
・あとがきにはこれでも原稿をだいぶ削ったとある。しかしところどころ出てくる山田正紀の独特の長ったらしい文章がつらい部分がある。一度書いた文を別の言い方で補強したりするあの文。いつもくどいと思ってしまうのだけどなーー。

|

« ■万博レポート チェコ共和国 | トップページ | ■新刊メモ 『逃亡くそたわけ』 『ローレライ全画コンテ』 »

コメント

 Kenny Uさん、こんばんは。コメントとTB、ありがとうございます。

 最近の山田正紀はミステリー中心なので、SFファンとしては浮気されているような気がしますよね(^^;)。でも『神狩り2』のあとがきを読むとSFへシフトするようにも読める書き方なので期待したいものです。

投稿: BP | 2005.04.24 00:30

Kenny宛の
TBありがとうございます。

山田正紀氏の原点は絶対SFですよね!
ハードSFが最高!

投稿: Kenny U | 2005.04.23 11:05

 keishoさん、はじめまして。

 確かに山田正紀、最近はすっかりミステリーづいてますね。『神狩り2』もそのテイストが結構出てました。

 しかしやはりSFが似合う人だと僕も思います。『最後の敵』とか『弥勒戦争』とか、好きなのを挙げていくとキリがありません。

 ミステリーでは、断然『人喰いの時代』が好きです。(Amazon) 呪師霊太郎、かっこいいですよね。

投稿: BP | 2005.04.13 00:08

TBありがとうございます。

最近は推理作家としての方が有名かもしれない、山田正紀。
しかし、原点はやはりSFでしょう。
しかもハードSFなのが嬉しい限りです。

投稿: keisho | 2005.04.12 11:17

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/24373/3538913

この記事へのトラックバック一覧です: ■山田正紀 『神狩り 2 リッパー』:

» 神狩り2 / 山田正紀 [Not-Boiled]
神狩り2 30年お待たせの続編。 SFJapanでちょろっとさわりを目にしてしまい、子供時分に神狩りの洗礼を受けた山田(SF)教信者の身からすれば当然のごとくこれを無視することはできず、「いつ出る?やっぱり出ないのか?」などとやきもきしていたのだが無事購入。とりあえず一読。 あとがきにもあるように確かに「カッコイイ」山田正紀はそこにある。ただそれは「マトリックス」であったり「エヴァ」であったり「航路」であったり「エクソシスト」であったりもする。もちろん「最後の敵」や「宝石泥棒」でもある... [続きを読む]

受信: 2005.04.12 09:37

» 山田 正紀 『神狩り』 シリーズ [Kenny's Music&Cinema&Books]
「神狩り 2 リッパー」山田 正紀 (著) 2005年3月19日 徳間書店 刊 山田 正紀(やまだ まさき 1950年生) 愛知県名古屋市生まれ。明治大学政経学部卒。 1973年 『神狩り』でデビュー 私が手元に置いているのは、 角川文庫版(昭和五十二年初版発行) 『神狩り』についての詳しい紹介サイトは・・・ http://homepage1.nifty.com/kragen/hobbys/001.html... [続きを読む]

受信: 2005.04.23 11:02

« ■万博レポート チェコ共和国 | トップページ | ■新刊メモ 『逃亡くそたわけ』 『ローレライ全画コンテ』 »