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2005.04.17

■エドモンド・ハミルトン『反対進化』中村融編

 昨年の<奇想コレクション>『フェッセンデンの宇宙が同じ中村融氏の編で面白かったので今回も期待して読みました。
 『フェッセンデンの宇宙』よりも全体的に古い感じもあったけれど、なかなか堪能。
 一編づつの短評、行きます!気に入った順番。

◆「異境の大地」(Alien Earth,1949.4,青心社『星々の轟き』1982既訳)
 奥さんのリイ・帝国の逆襲・ブラケットが「埋もれた名作」と呼んでいると編者あとがきにあるけれど、これは本当に傑作と思った。植物の異界を描いた作品。目の前に異様な世界が突然広がったような気持ちになる。SFってこういうものだというパワー溢れる作品。
 「樹木信仰は人類の歴史と同じくらい古い。(略)あのもうひとつの異質な世界への原始信仰に由来する。」(P321)とか、スリリングな視点が素晴らしい一編。

◆「ウリオスの復讐」(The Avenger of Atlantis,1935.7,SFM既訳)
 こういうアイディアはバカバカしいと思いつつもワクワクします。歴史の闇に脈々とこんな闘争があったっていうのが、いい感じ。『妖星伝』とか『バビル2世』は遺伝子に潜んだけれど、この作品ではダイレクトに、、、。しかしむちゃくちゃしつこいおっさんやね。付き従ったスサンくんに敬意。

◆「失われた火星の秘宝」(Lost Treasure of Mars,1940.8,初訳)
 この宇宙冒険調の一編、楽しいです。短い一編に恋あり、冒険あり、火星の秘密あり。てんこもりの楽しさ。全体のトーンがどっかユーモラスでいいのですよね。

◆「呪われた銀河」(The Accursed Galaxy,1935.7, 青心社『星々の轟き』1982既訳)
 これ、あとがきにも科学的間違いについて指摘されているけれど、わざと書いてるような気もする。ここでの膨張する宇宙の解釈って、なんか好きです。「反対進化」とも通底する人類への冷たいまなざしが好きです。

◆「審判の日」(Day of Judgement,1946.9,初訳)
 編者鍾愛の一編とか。中村融氏は犬が好きなのかな、犬好きにはたまらない一編。
 僕は石森章太郎や手塚治虫より藤子不二雄をイメージした。S(すこし)F(ふしぎ)な短編。

◆「審判のあとで」(After a Judgement Day,1963.12,SFM既訳)
 こういう地球最後の日ものもなんか哀愁がいい。そして宇宙に流されるサイボーグに託される人類の記録。
 こういうのを読んで、星空を眺めると、中学のころのSFが蘇る。

◆「プロ」(The Pro,1964.10,青心社『星々の轟き』1982 、新潮文庫『スペースマン』1985既訳)
 アメリカ人の父子って雰囲気が良い。ハミルトン父子の実生活の、SF作家とその子供の関係もエッセイか何かで読んでみたい。あ、だれか著名SF作家の子供達が父親のSFの想像した未来をどんな風に受け止めていたかってエッセイ集を作ってくんないかな。万博の年にそんな本が無性に読みたい。

◆「反対進化」(Devolution,1936.12,ハヤカワSFシリーズ『フェッセンデンの宇宙』1972既訳)
 これは以前読んだことがあった。あー昔の脳の襞が覚えているって感じ。SFの原初的アイディアのひとつと思う。こういうのを自分で考え出した時のSF作家って嬉しかったでしょうね。

◆「超ウラン元素」(Transuranic,1948.2,初訳)
 壮大さでは本書中随一かも。月面での閉ざされた研究施設とか、これもひさびさに味わうプリミティブなSF。

◆「アンタレスの星のもとに」(Kaldar, World of Antares,1933.4,SFM既訳)
 これはいかにもな古い感じの話。「物質転送機による惑星間輸送」はハミルトンが初めて書いたアイディアとのことなので、そのアイディア創出には敬意を表する必要があるのでしょうが、古さはいなめないと思う。


関連リンク
・猫は勘定にいれませんさんの反対進化/エドモンド・ハミルトン
東京創元社|反対進化(エドモンド・ハミルトン)編者あとがき[全文]中村融
『反対進化』エドモンド・ハミルトン(Amazon)
・手当たり次第の本棚さんの『反対進化』 キャプテン・フューチャーのいない世界
・FSF通信さんの『反対進化』 ハミルトンによる珠玉のSF短編集
・BBSカフェアルファの『反対進化』について

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» 『反対進化』 ハミルトンによる珠玉のSF短編集 [FSF通信]
タイトルにも書いたけれど、珠玉の作品集。 使い古されたように思われる、この言葉が [続きを読む]

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