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2005.04.17

■神山健治監督 『攻殻機動隊S.A.C.2nd GIG』 23-26話

KOUKAKU_2nd_GIG_last

第23話 「橋が落ちる日 MARTIAL LAW」
第24話 「出島,空爆 NUCLEAR POWER」
第25話 「楽園の向こうへ. THIS SIDE OF JUSTICE」
第26話 「憂国への帰還 ENDLESS∞GIG」

 全巻、観終わりました。こちらでは昨日から深夜枠でTV放映もスタート。地上波のハイビジョン、DVDよりきれいで、また、も一回これで観てしまうことになりそう。

総論
 1stの方がわかりやすく盛り上がったけれど、今回もラスト、テンションは最高潮。
 難民問題や革命に正面から挑んだ意欲作で、小説や映像作品含めて謀略モノとしてなかなか追従できないくらいのレベルを実現しているのではないだろうか。前の記事でシナリオが後半ほとんど神山監督の手になるため、監督のドラマ作りの力量がしっかりわかるのではと書いたけれど(第15話-第20話感想)、その結果は素晴らしいものでした。エンタテインメントとしての構成もそこそこ良いのだけれど、そこからはみ出してストーリーすら破壊してしまいそうな革命とか戦争部分への思考。万人が好むスタイルではないと思うけれども、、。聞き耳たてても聴き取れないクゼとかの政治的発言、通常文字で読まないとこのレベルの意味は音声ではなかなか認識できません。作家達は確信犯なんだけど。
 (『亡国のイージス』で福井晴敏氏の現在の日本の状況への批判のことを書いたけれど、神山監督のものはその先を行ってると思う。下記インタビューにも出てくるがあまりにも「低きへ流れる水」ということが批判のコア。少なくともその屈折した複雑さにおいて、現実の様相をどちらが色濃く反映できているかは自明。エンタテインメントとしては福井作品の方がずっと面白いけど。)

 作画レベルは2nd GIGはCG以外はかなり貧弱なイメージがあるのだけれど、25-26話はIGパワー全開。9課のキャラクターの立ち姿が惚れ惚れするくらいカッコいい。原画には沖浦他、IGの強力スタッフの名がある。

 で、クライマックス。26話全編がここに集約しているように思える。
 この項最後に記すのは、タチコマのこと。ファンの1人としてはもう落涙の最高のラスト。おまえたちっーーー、よくやったぞぉーーー、と空に向かって言って上げよう。(でも何で地上にダウンリンクしんかったの??)

関連リンク
・IG公式サイトの神山健治監督インタビュー ネタばれで引用しますが、やはりSACがこういう作品になっているのは紛れもなくこの監督の成果。この人に『イノセンス』の持つハイレベルな映像を継承させたら、最高の傑作が生まれるのではないか、是非映画を一本撮ってほしい。
DVD『攻殻機動隊S.A.C.2nd GIG Official Log 2』(Amazon)
・攻殻機動隊PKIの26話セリフ詳細
公式ページあらすじ
菅野よう子 サントラCD『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.2』(Amazon) クライマックスのボーカル Ilaria Graziano " i do "収録。
◆06.2/4追記
・総集編を超えた劇場版クラスの『攻殻機動隊S.A.C. 2ndGIG Individual Eleven
 shamonさんの「ひねもすのたりの日々」レビュウ

当BlogのSAC記事
 ■『攻殻機動隊/S.A.C. 2nd GIG』 第15話-第20話 
 ■『攻殻機動隊/S.A.C. 2nd GIG』 第11話-第14話
 ■『攻殻機動隊/S.A.C. 2nd GIG』 第1話-第10話
 ■STAND ALONE COMPLEX 1-26
 ■J・D・サリンジャー「笑い男」と神山健治『攻殻機動隊 S.A.C.』

★★以下、ネタばれ注意★★

戦争
 イージス艦による長崎空爆。戦場の描写はイラクを明らかに意識している。まったく反撃の手がない上に子供までいるところへの一方的空爆。この映像を観ながら、戦場としてのイラクを疑似体験させる意図があるのでないかと思った。『イノセンス』での戦艦からの爆撃は押井守が趣味でちょっとラスト派手にしてみましたって、本編との融合度の弱いものでしたが、こっちはここがコアだったりするので、戦艦描写凄いと喜んで観れるシーンでないです。が、いいよ。

クゼと草薙とタチコマ
 クライマックス、菅野よう子曲-ボーカル Ilaria Graziano " i do " を背景にした空爆下のシーンが白眉。(この曲についての記事)
 素子を探すバトー。地下に閉じ込められたクゼと素子。第11話「草迷宮 affection」で語られた素子とクゼの過去の伏線が最高に活きてきている。

クゼ 「お前には、心を許せる誰かがいるか?」
草薙 「いなくはない」
    (鉄骨を持ち上げようとしているバトー)
クゼ 「そうか。 俺は、ずっと探している。」

 『2nd GIG』が極限での恋愛映画になった瞬間である。
 そして電脳空間への脱出-禁断の知恵の木の実を齧ろうとする素子。発射される米帝の核ミサイル。このシーンで菅野よう子の曲は悲劇的なクライマックスを盛り上げていた。で、かぶってくるAIタチコマたちの歌、「手のひらを太陽に」。凄い、凄い。ここ観るためだけに26話通して観る意味はあります。

 本当のラストで、クゼがリンゴを齧っていたことがわかる。この意味は、電脳空間へいってしまったことを指しているのかもしれない。「低きへ流れる水」が革命を希求していくベクトル。「上部構造へのシフト」。もちろん時間的には次に位置する映画『攻殻機動隊』のラストへリンクしていく。(すでに映画『攻殻機動隊』に対していろんな意味で逸脱しているのだけれど。)

3rd GIG(?)の冷戦構造
 茅葺総理のセリフ「一身独立して、一国独立す」。茅葺の連絡先は航空自衛隊の秘密部隊。で、米原潜への挑発。
 つまり3rd GIGは日本と米帝の冷戦を描くわけですか? ということは現在のアメリカの行動を射るテーマ。難民問題から続いて、まさに今日的テーマを書いていこうとしているようです。すげえ。きっとクゼも電脳空間からなんらかの働きかけをするのでしょう。明らかに『パトレイバー2』『亡国のイージス』の先へ行ってます。この第26話は神山監督のアメリカへの戦線布告だったんだ。行け行け!!
 これ、アメリカでもしっかり放映しましょうよ。
 (合田「まあいい。どの道茅葺の行動如何で冷戦構造が完成する」。そこまでシナリオとして持っていた合田はしかし最後どういうつもりで米帝のサトウ・スズキと合流、亡命しようとしたのだろう。身をもって冷戦構造への最終のボタンを押したということか??誰か教えて。) (関連→第10話「密林航路にうってつけの日JUNGLE CRUISE」に出てきた米帝CIA職員サトウ・スズキワタナベ・タナカ) (合田が茅葺に期待していた連絡先は中国だったという説もありますが、、、。日中vs米の冷戦構造を狙った??)

神山健治監督インタビュー抜粋
 背景から業界に入ったということだったけれど、こんな過去が。もともと強烈に演出志望なんだ。あとこのインタビューは現在第三回までの掲載ですが、今後、この冷戦構造部分を何か語ってくれることを期待します。

それは今振り返れば、10代20代のころの自分の行動が思い起こされて結構痛い部分でもあるわけですが。(笑)まだ自分が何者でもなかったころ、SONYや松竹に企画書を持っていって失笑をかったりしていたわけだけど、そのころは訳も判らずイライラした。でも今思えばあたりまえで、かなり滑稽な行動ですよね。どこにも所属していない素人演出家が、松竹に企画書だけ持っていったってそりゃあ誰も相手にしませんよ。

20世紀後半には希望を描くことが難しくなり、いつしか衰退してしまった「SF」というジャンルで未来への希望を描き出すことまで出来た・・・。「STAND ALONE COMPLEX」とは、人間であり社会そのもののことなんだ、ということが自分の中で明確に見えてきて、今度はその先には何があるだろうか?という好奇心がエンジンとなり、『2nd GIG』 に挑戦することも出来たんだと思っています。

1stと2ndの感想を、あえて一言で言うならば、『情報は伝播して並列化される。「STAND ALONE COMPLEX」という現象は確実にある』というのが1st。でも2ndは『良いことは並列化しにくく伝播しない』ということなんです(苦笑)。「水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる」というセリフがあって不快に思われた人もいるかもしれないけれど、そんなことはないという証拠を2ndの作業の中には見つけられなかった・・・。

<追記>(05.06.11)
 インタビュー第六回まで読みました。続きをやるとしたら、今度は警察の側からではなく犯罪者の側から「社会の中で「何者でもない人間」の視点で「攻殻機動隊」の世界をさまよってみるのも楽しいんじゃないか」ってことですか。うーん、どんな話になるんだろう。

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コメント

 Yoshiさん、はじめまして。

 おっしゃる通りの構造を、神山監督は描いていましたね。茅葺総理の決断の潔さに、カタルシスを感じました。

 昨今の戦争法案論議、Facebookで神山監督のタイムラインは見せて頂いてますが、それに関するコメント、どこかの記事のシェアはなかったと記憶します。

 Yoshiさんがおっしゃる通り、2nd.gigの世界に現実が近づいている中、神山監督が、現在の日本をどう捉えているか、今後の作品でまた観せて頂きたいですね。

 SAC 3rd.が、茅葺総理の今後が、是非見たいのは僕だけでしょうか。

投稿: BP(Yoshiさんへ) | 2015.09.27 08:32

初めまして。もう11年前のアニメにもかかわらず、現在の水準からしても比肩する作品が無い素晴らしいポリティカルサスペンス仕上がっていますよね。

私見ですが合田の言った「冷戦」というのは「日本と米帝」ではなく「中国と米帝」の事だと思います。合田がデカトンケイルで語った「第三者を消費する事で得られる桃源郷」は米ソ冷戦構造の元で米国に隷属し富を享受した日本を再び実現させるもので、茅葺総理の独自路線とは正反対です。

攻殻の世界では中国は日本と戦火を交えるなど、アジアにおける巨大な軍事国家として君臨しており、ノベライズでも描かれていますが日本の政治家も親中派と親米派に分かれています。合田は切羽詰まった茅葺が中国に助けを求めると踏み、日本を取り巻いた米中の冷戦構造を完成させようとした訳です(原潜の乗組員が言っていた「81の軍旗」は中国人民軍のマークです)。かつての米ソの様に水面下で対立する米中の元で、日本を大国のお膝元にすがる「従順な消費者」にする事を合田は「日本人の総意」だと言って実現させようとしました。ですが結局、茅葺総理は信念を貫いて中国に助けを求めませんでした。「一身独立して一国独立す」は酔狂ではなかったという事ですね。

中国の台頭、アメリカとの安保関係やEUに流入する難民など、現実に日本を取り巻く国際情勢が2nd gigに近づいてる所に深く考えさせられます。

投稿: Yoshi | 2015.09.24 04:29

 『攻殻機動隊』の小説本はノーマークでした。徳間デュアル文庫の藤咲 淳一著の3冊でしょうか?
 この藤咲淳一氏って、押井塾出身でSACシナリオライターで、今度『BLOOD+』の監督・シリーズ構成する人ですよね。(あ、今調べたら『SAC』のゲームの総監督もしてる。)
 機会があれば読んでみます。

投稿: BP | 2005.05.16 04:00

参考までに。
攻殻機動隊にはいくつかノベル本が出されてますが、これらの本の多くが2ndのシナリオに活かされてます。
オリジナル最初の映画の公開後に書かれたノベル本も背景の違いから直接の流用はできないのですが、SACの1st後に書かれたノベル本は、もろそのものというストーリーもあります。
6話の中で描かれている荻窪駅の状況とか安宿のイメージは、ノベル本に書かれているシナリオ通りですし、東京の惨状はノベル本の方が詳細に画かれています。
ノベルのセリフを声優のイメージに重ねながら読めますよ。タチコマとか、素子とか、バトーとかになりきって音読できたりします。
おもしろいですよ。amazonなどで中古本を探してみてはいかがでしょうか。

投稿: | 2005.05.12 23:51

  酎犬八号さん、こんにちは。

>>3rdの製作、期待しても良いんでしょうか?

 IGのサイトの神山インタビューできっと触れられるのでしょうね。期待したいですが、神山監督には攻殻を離れたオリジナルとか、映画とか、撮ってもらいたい気も半分。

>>(頭の中で i doが鳴り止みません)

 同じく!! で、その曲につられてまた最終話を繰り返し観てしまうという、、、。昨日は「草迷宮」の二回目も観てしまいました。あの曲が画面の背後に流れるだけで、涙腺が、、、。 i doが使われたのって、あと何話なんでしょうね?

投稿: BP | 2005.05.04 18:25

BPさんの記事は、いつも情報が満載で参考になるなぁ。
2ndの最終回も具沢山で、見ごたえがありましたよね。
3rdの製作、期待しても良いんでしょうか?
(頭の中で i doが鳴り止みません

投稿: 酎犬八号 | 2005.05.03 19:33

BPさん。レス感謝です。
遅ればせながらTB送らせていただきました。
今晩私が住む東京でクゼ初登場の回が地上波放送です。

最終話は私も何度も見てしまいました。
で、泣いちゃうんですよね~(苦笑)。

今発売中の「日経キャラクターズ」によると、
いろいろ次の企画が進んでいるようですね~。
どういう形で発表されるかはわかりませんけど、
もし3rdGIGなら素子の手で例の二人(及び米帝)に天誅を!です。

投稿: shamon | 2005.04.26 16:07

 shamonさん、はじめまして、こんばんは。

 クゼのセリフ、泣かせますよね。あのあたりのシーンは記事書いてからも3回ほど見直してしまいました。タチコマの歌までの一連のシーンは、何度見ても良いです。

 3rdGIGは、やはり米帝との闘いですか。時代的には現ブッシュの子が大統領でまた馬鹿やってると、、、、。草薙にブッシュをたたいてもらいましょう。(んな、陳腐な、、、。)

投稿: BP | 2005.04.26 01:05

はじめまして。検索して辿りつきました。

2nd最終話、クゼの「俺はずっと探している」で
涙ボロボロでした。
探してた人は目の前にいるのに、すれ違って想いは届かない。
11話での二人が思い出され、同じように流れる「i do」がせつない最終話でした。

3rdGIGぜひ作って欲しいですね。

投稿: shamon | 2005.04.25 18:42

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※ネタバレがあるので未見の方はご注意下さい。 第21話「敗走 EMBARRASSMENT」 第22話「無人街 REVERSAL PROCESS」 第23話 「橋が落ちる日 MARTIAL LAW」 第24話 「出島、空爆 NUCLEAR POWER」 第25話「楽園の向こうへ THIS SIDE OF JUSTICE」 第26話(最終話)「憂国への帰還 ENDLESS∞GIG」 A :「・・・はい、ダッシュしました」 やっぱりということで感想です。 敗走 EMBARRASS... [続きを読む]

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