« ■新刊メモ 『輝く断片』 『現代SF1500冊 乱闘編 1975-1995』 | トップページ | ■究極映像小説 »

2005.06.05

■荒俣宏・京極夏彦プロデュース 「大(Oh!)水木しげる展」

Oh_Mizukishigeru_ten_zuroku
岐阜市歴史博物館開館20周年記念特別展 荒俣宏・京極夏彦プロデュース 「大(Oh!)水木しげる展

 6/3-7/24開催の「大(Oh!)水木しげる展」へ行ってきました。昨年4月の鳥取をスタートに、北海道から福岡まで日本各地を巡業した後、やっと東海地方へやってきたというわけです。
 私、大ファンというわけでもないので、実はそれほど期待していなかったのですが、これは凄い。小水木ファンにもお薦め。
 なにが凄いって、この展示のマニアックさがたまらない。
 水木しげるの生い立ち、戦中の過酷な経験を写真とパネルにした水木漫画で紹介。まずそれを追体験させ、そして紙芝居、貸本から漫画、イラストまで怒涛の作品群を並べている。おまけに水木コレクションの仮面とか彫刻とかの民族資料と妖怪フィギュア、京極夏彦多田克己他による古今妖怪文献の数々(荒俣コレクションからの出展はないみたい)。受付で配られたリストによると、総数890点
 さすがは大水木ファンの荒俣・京極両先生のプロデュースだけあって、並みの漫画家の展示会ではありません。博覧強記で知られるお二人のマニアックさが炸裂。僕は観るまではその事実を忘れ、デパートでやる漫画家の展示会くらいのものをイメージしていたので、とにかくびっくり。

 数多くの原画を観ることができるけれど、過剰なまでに緻密に描きこまれた妖怪画、風景画が圧巻。もともと漫画の紙面でも異様な迫力のある細密画なのだけれど、原画に目を寄せて見ると画力が迫ってくる。一本の線もおろそかにせず書き込まれていることがよくわかる。この集中力は物凄いと思う。あとデッサンの凄さがよくわかるのが、「トーマの日々」と名づけられたスケッチ。南洋の人々の体を少ない線で見事に描いてある。(図録P40-41)

 水木ファンだけでなく、民俗学/妖怪ファンにも貴重な展示会になっています。
 南方のものを中心に世界の仮面と彫刻が75点。江戸・明治時代の妖怪図録等の本物が69点。この中には、京極の妖怪シリーズで有名な鳥山石燕百鬼徒然袋今昔百鬼拾遺河鍋曉斎百鬼画談、その他稲生物怪録など妖怪ファン、京極ファンなら一度は目にしたいものが盛りだくさん。しかも京極所蔵のものはまさにそれを見て、あの小説群が書かれたわけで、思わず凝視してしまう。(なんてミーハー!)

 あと特筆すべきは今回の展示会のパンフレットのすばらしさ。冒頭の写真の左端のがそれで「大(Oh!)水木しげる展 図録」と名付けられている。オールカラー総数246ページに作品や関係者のエッセイが満載。特に展示会で出ていない作品、妖怪図録のように本の形態で中身が展示では見えないものも相当数収録されている。これで2000円は凄いお買い得。お薦めです。

 Oh_Mizukishigeru_ten_enter
 入り口からの風景。入ってすぐ実物大、水木像が観客を出迎える。これがリアル。

 あと今回の展示会で自分の収穫はもうひとつ。元々水木しげるの戦争体験は、あちこちで拾い読みした記憶はあるが、生い立ちからずっと戦後までを俯瞰するように自伝等を読んだことはなかった。
 今回の展示は、先に書いたように、入場してまず水木しげるの歴史が語られる。特に知らなかったのは、腕を失った時の話。生死の境を彷徨って戦場という過酷な環境で2年ほどの療養生活。そしてニューブリテン島でのトライ族との交流。南方での熱にうなされた中で見た幻影、ニューギニアのジャングルの深い緑。
 この展示の後、スケッチや原画を観ることで、この戦地でのイメージの熟成(?)が後の水木漫画の世界観に大きく影響したことが初めて実感として沸いてきた。
 初期の貸本の『墓場鬼太郎』等を読んだ時、飛躍だらけで辻褄のあわない、物語の拮抗を無視したような流れに異様な感触を持ったことがあるけれど、あの壮絶な体験があったら物語をきっちり描くことなんかはどうでもよくって、異様なイメージをまずは吐き出すことが前面に出てきても不思議はない。そんな風に実感して、水木漫画に少し近づけた感じがした。

◆関連リンク
展覧会にあたり、水木老のお言葉
水木プロの公式ページ
企画した朝日新聞社ページ
図録の通販ページ
江戸東京博物館:企画展|大(Oh!)水木しげる
岩手県立美術館
・who cares?さんの 堤幸彦監督『ゲゲゲの鬼太郎』実写映画化 来年公開予定
水木しげるの本 DVD(Amazon)
水木グッズ(楽天)

|

« ■新刊メモ 『輝く断片』 『現代SF1500冊 乱闘編 1975-1995』 | トップページ | ■究極映像小説 »

コメント

こんばんは、BPさん^^。
スタージョンでドゥーガル・ディクソンな夏休みを過ごしているshamonです(笑)。BGMはもちろん「攻殻O.S.T.3」。

>「ひねもすのたりの日々」でのレビュウ、楽しみにしています。
了解しました~^^;。現在友人がお土産にくれた「めざめの方舟」のパンフ及び「夢見る山通信VOL.5」にて予習中です。

>各宿場が隣どおしでならべられていたら面白いかも。

時間があったら見てきます~。

投稿: shamon | 2005.08.08 20:36

 shamonさん、おはようございます。今日も灼熱の一日になりそうですね。

>>「目覚めの方舟COMPLETE VERSION」、予約しました。
>>届くのが楽しみです(わくわく)。

 「ひねもすのたりの日々」でのレビュウ、楽しみにしています。

>>水木しげる氏関係ですが丸善丸の内本店で、
>>「歌川広重と水木しげる展-「東海道」と「妖怪道」をめぐる旅-」
>>といった展示即売会が開催されます(8/14-8/20)。

 これ広重の「東海道五十三次」と水木の「妖怪道五十三次」を並べた「夢の競演」というやつなのですね。各宿場が隣どおしでならべられていたら面白いかも。

http://www.maruzen.co.jp/home/tenpo/maruhon-saiji.html

投稿: BP | 2005.08.08 09:22

こんにちは、BPさん^^。
「目覚めの方舟COMPLETE VERSION」、予約しました。届くのが楽しみです(わくわく)。

水木しげる氏関係ですが丸善丸の内本店で、
「歌川広重と水木しげる展-「東海道」と「妖怪道」をめぐる旅-」といった展示即売会が開催されます(8/14-8/20)。
個人的には「大(Oh!)水木しげる展」をもう一度東京で見たいのですが(^^ヾ。

そしてこの丸善の向かいには「JAXAi」(http://visit.jaxa.jp/jaxai/index_j.html)があり、現在宇宙ラーメンと宇宙服のレプリカが展示中。
自分のブログ(8/4分のエントリ)にも書きましたけどなかなか楽しめる場所です^^。

投稿: shamon | 2005.08.06 16:29

 shamonさん、こんばんは。

 『水木しげる [妖怪]人生絵巻』、本屋で見かけました。確かにこの展覧会のパンフと同じ内容ですね。(ざっと立ち読みで見ただけなので、確証なし、ですが、パンフの一部抜粋のようでした。)

 も一回、行きたくなりますが、今週はヤノベケンジのイベントを見に豊田市美術館へ行こうと思います。この人の作品に、なんでこう心がざわめくのでしょう、私(^^;)。

投稿: BP | 2005.07.29 00:18

こんばんは^^。BPさん。

こんな本がでてるのはご存知ですか?
『水木しげる [妖怪]人生絵巻』http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023303585/249-1259883-2798709

この展覧会のダイジェスト版みたいな本です。

投稿: shamon | 2005.07.28 21:11

こんちは。水木しげる展は去年の夏、京都大丸で見ました。そんなに熱心なファンではないのですが、その時は岐阜でやるのが一年も先かあと感じたのと、「青春18きっぷ」を使い切る必要もあって在来線で(苦笑)京都まで出かけたわけです。結構混んでいてそんなに落ち着いて見られませんでしたが、やっぱり戦争の話が印象的でしたね。想像を絶する経験をしながら生き延びて、国民的なマンガ家になるという、水木センセイの運命そのものが摩訶不思議。選ばれた人というか、要するに天才なんだなあ、と感じた次第です。

投稿: donald | 2005.06.13 00:06

BPさん、こんばんは。

今日、東京国立博物館で「ベルリンの至宝展」を見てきました。なかなかよかったですよ。

私ももう一度観たいです(苦笑)>大水木展。東京では平日でも入場者でいっぱいだったからアンコールでやってほしいですね。

投稿: shamon | 2005.06.10 18:09

 shamonさん、こんばんは。

 大水木展、2時間しかいられなかったので、まだ観足りません。もう一回行きたくなってます。入場料がちょっと高いけど、、、。半日くらい時間をとって行かないとじっくり観れないくらい充実してますね。

投稿: BP | 2005.06.08 23:27

 yukizoさん、はじめまして、こんばんは。

>>堤幸彦監督『ゲゲゲの鬼太郎』実写映画化 来年公開予定

 検索してみましたが、なかなか続報がないですね。僕は鬼太郎では「大海獣」とか好きなので、そういうのが観たかったりします。妖怪よりウルトラ怪獣の洗礼の方が強烈だったものですから、、、。

 これからもよろしくです。

投稿: BP | 2005.06.08 22:32

こんばんは、レス感謝です。

この水木氏の展示会はほんっとに素晴らしいですよね。私もあまり期待せずに行ったんですけど大満足でした。人魂のてんぷらは私も食べてみたかったですね(笑)。やってほしかったわ。図録は金欠なので買いませんでした^^;。

『怪感旅行』の中のお話はどれも読んで損はないです。図書館等で探されてはいかがでしょうか。私は「蝶になった少女」以外では「器物に宿る霊」「エネルギー泥棒」がよかったです。

投稿: shamon | 2005.06.07 20:24

はいじめまして!
who cares?のyukizoと申します。
アク解からたどってきました。
関連リンクに載せていただいちゃって、ありがとうございます(。-_-。 )
「大(Oh!)水木しげる展」行かれたんですね~いいなぁ~
私は地元でやってたときに行きそびれてしまって
すっごく後悔しております…
またやらないかな…
そんなこんなで、これらかもヨロシクお願いいたします♪

投稿: yukizo | 2005.06.07 07:32

 shamonさん、再びこんばんは。

>>水木氏のエッセイ「蝶になった少女」をご存知でしょうか。

 あ、読んでません。ほとんど水木氏のエッセイは未読です。
 Amazonで検索かけたら、『怪感旅行』中公文庫所収ですね。機会があれば、読んでみます。この展示会で、ニューギニアに関するエッセイをまとめて読んでみようかと思っています。また面白いの教えてください。

投稿: BP | 2005.06.06 21:50

 shamonさん、こんばんは。

 そうそう、日本の戦前戦後史にもなってますね。そして水木情報の圧倒的物量。

 人魂のてんぷらを見れたのも収穫でした。どうせなら、喫茶コーナーで食べさせてくれればいいのに。

 

投稿: BP | 2005.06.06 21:38

こんばんは。shamonです。

私は昨年江戸東京博物館で見ました。平日でしたが、学生や水木氏と同じ年齢の方でとても賑わっていましたよ。氏の業績もさることながら戦前戦後の日本史を勉強できるよい内容だったと思います。

BPさんは水木氏のエッセイ「蝶になった少女」をご存知でしょうか。水木氏のニューギニアでの淡い恋の記憶を描いた作品です。蝶とハイビスカス、ニューギニアの言い伝えがせつなく心に残るお話でした。

投稿: shamon | 2005.06.05 23:47

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/24373/4405477

この記事へのトラックバック一覧です: ■荒俣宏・京極夏彦プロデュース 「大(Oh!)水木しげる展」:

« ■新刊メモ 『輝く断片』 『現代SF1500冊 乱闘編 1975-1995』 | トップページ | ■究極映像小説 »