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2005.08.08

■Animation Director HARA
     浜野 保樹編『アニメーション監督 原恵一』

anime_kantoku_hara  先日、新刊メモで紹介した浜野 保樹編『アニメーション監督 原恵一』 (晶文社公式頁)を購入、一気読みしました。もともと映像作家関係の本とか、映画メイキング本に目がないのだけれど、この本は面白い!!
 子供を連れて行ったはずの『クレヨンしんちゃん』で、「思わず涙した理由のしりたい大人は必見だぞぉーー。読めば。

 この本から受ける興奮は、アニドウFILM1/24別冊『未来少年コナン』 (黒い豪華本)で宮崎駿のインタビューを読んだ時に近いものがある、と言ったら言いすぎでしょうか。でもここで示される監督原恵一の胎動は確かなものだと思う。

◆原恵一とは何者か??
 浜野保樹東大教授が原恵一に嵌まったのは、樋口真嗣経由で『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』を知ったことによるものらしい。
 本書は、そこからスタートした浜野教授の原恵一探索の成果。ふだんの交友と2日間におよぶロングインタビューから、原恵一の人となり、演出家/映画作家としての全体像が浮かび上がる。(浜野教授、東大の研究室で原恵一監督デビュー作『エスパー魔美 星空のダンシングドール』や『チンプイ』を真剣に観たのだろうか。なんていい仕事なんだ!)
 その全体像は次のような言葉でくくれる一人の日本映画監督の姿である。アニメファンだけでなく日本映画ファンにもお薦めです、この監督。

 東南アジアが好きな素朴な演出家。木下恵介とデビット・リーンを愛する静かな映画ファン。理論化していないが感覚で判断していく骨太の映画監督。

◆絵コンテとスケッチanime_kantoku_hara_e_konte
 『オトナ帝国の逆襲』と『アッパレ! 戦国大合戦』(ふだんタイトルにこだわらない原監督が最後まで『青空侍』というタイトルにしたかったらしい)を中心に、原恵一のアイディアスケッチや絵コンテが掲載されている。
 これがめっぽううまい。紙面の小さな絵コンテに既に息づく「イエスタディワンスモアのケンとチャコ」「夕日町銀座商店街」「ひろしの過去」、そして青空侍「又兵衛」。映画の画面の絵柄や雰囲気を決定しているのが、作画監督やキャラクタデザイナーや美術監督ではなく、原恵一監督本人であることがこの絵コンテからよく伝わってくる。
 東京デザイナー学院アニメ科卒、進行から演出になった原監督がどこで絵の腕を磨いたのか、よくわからないが、絵コンテのうまさは抜群。東南アジアへの7ヶ月の旅で描かれたスケッチも掲載されているが、朴訥とした筆致が素晴らしい。『オトナ帝国の逆襲』と『戦国大合戦』を観た人ならわかると思うけれど、画面から受ける実直なキャラクタの印象は、原恵一の人となりを伝えるこの東南アジアの人々のスケッチと同じ筆致である。

◆引用
 読みながら僕が気になったのはこんな部分です。

 当時10歳だった僕らにとって、万博会場はコミューンみたいな、儚い夢のような場所だった。あまりにも現実離れした虚構の未来っぷりがまた切ない。(P84)

(宮沢賢治への興味を語った後) 今、茂木プロデューサーと長年あたためてきたアニメの映画の企画を進めているところです。パイロットのアニメーションは、作りました。ようやく本編の制作もスタートしました。(P111)

 木下(恵介)監督のものを受け継いだ山田太一さんのドラマも大好きです。(略)『沿線地図』というドラマが衝撃的だった。(略)山田太一さんは極限状況でギャグを作るのがうまい。本人たちは全然笑えないけれど、観ている方が笑ってしまうような。シナリオ本も結構読んで、セリフとか、山田さんがよく使う「薄く笑う」というト書きを絵コンテで真似して使っていました。(P113)

 これからもガツガツしないで、たまには外国へも行ったりして、自分なりの美しさとか、切なさのあるものを作っていきたい。虚勢を張らずに、ちっぽけな自分のままで。(P115)

 1959年生まれの原監督、万博とか山田太一という世代的な共通基盤に立脚している部分が、しんちゃんのお父さん世代を直撃したようです。あとこのすぐ上のコメントは「青空侍」そのものでいいですね。バリ島のウブドというところに過去の日本への郷愁を覚えるという原監督のコアに「又兵衛」が住んでいる。

 そして友人たちの言葉。

 監督本人と会ってみて酒を酌み交わし、初めて知ったその力の抜けた生き様に正直面食らった。しかし、その抜けたチカラの奥底に潜むエネルギーを私は決して見逃さない。(略)今後は"固定されたキャラクター"から離れ、比較対象物のない物語世界を一から構築していくことになる。あのパワーがついに世に放たれるのだ。(略)そんな恐ろしい男がいる限り、私はアニメーションに関して、"手伝い"以上の仕事にかかわりたくないのである。(P129樋口真嗣の言葉)

弟子入りというのは、「心を開いて他の人と触れ合うというのは、一体どういうことなのか、もっと知りたい」。それで僕みたいにわけのわからない人になってみたいという欲望が出てきた。今まで体験したことのない生命体と触れて、自分の中にもそれが眠っていたことを悟ったのだと思うのです。(P219CMディレクター中島信也の言葉)

◆こんなのも入れてほしかった
・次回作の情報は、茂木仁史プロデューサーと進めているということはわかるが、どんな題材かは隠されている。浜野教授は知っているのでしょうが、緘口令。上の引用とかで、オリジナルか宮沢賢治もののような気もするが、果たして、、、。とにかく少しでも早く新作が観たい。
・アニメータとかスタッフのインタビューがもっとあってもよかったかなと。末吉裕一郎とか、あとアニメ評論家/映画評論家の評論。まとめてそういうのも読みたかった。

◆関連リンク
・この本の目次
・品川四郎編 『クレヨンしんちゃん映画大全―野原しんのすけザ・ムービー全仕事
 「唐沢俊一、切通理作、夏目房之助ら豪華執筆陣による作品論、スタッフインタビュー、初公開の設定集など、劇場版「クレしん」を徹底分析!」
藤本賞・奨励賞受賞の言葉
Director's MAGAZINE | ディレクターズマガジン OUT OF FRAME 原恵一
宮崎映画祭 ゲスト挨拶 『アッパレ戦国大合戦』で私は、格好いい日本人を描きたいと思いました。それも見た目の格好良さではなく、心の格好良さを目指したつもりです。どうも最近の日本人は自分も含め、何だか格好悪い。でも、昔の日本人はもっと格好良かったのではないか?もっと覚悟が出来ていて、さわやかで・・・・・・などと考えながら作った映画です。
eAT'04 KANAZAWA SeminarA原恵一監督参加のイベント。中島信也弟子入りの成果(?) 「皆さん乳首立ててますか?」事件の生コメントも読めます(^^;)。
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 ■BS アニメ夜話 第三弾『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモー レツ!オトナ帝国の逆襲』

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