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2005.11.13

■R・A・ラファティ 『宇宙舟歌』 柳下毅一郎訳

Space_Chantey
 国書刊行会<未来の文学>第5弾 R・A・ラファティ宇宙舟歌』を読了。ラファティの長編デビュー作(のうちの一冊)。画像は左から、エースダブルの原著、英国版、邦訳版。宇宙ほら話なので、イメージは原著の表紙がベスト。国書刊行会版は何か勘違いした表紙としか言いようがない。ま、原著の絵を使ったら、間違いなくSFファンでない海外文学ファンは逃げ出すので商売的には正解な表紙とは思いますが、、、。

 本作も怪作にして快作です。ラファティ版宇宙のオデッセイア。<未来の文学>と言っても、超絶叙述トリックや言語哲学的なアプローチはありませんので、肩の力を抜いてまさに「宇宙ほら話」として、ラファティおじさんの異様なイメージを楽しみましょう。

 収録された各惑星の旅はこんな感じです。

世界を背負う一人の男の話
 知覚しないと存在を停止する世界。その知覚する男との物語。なんだか分からない理論。

 (フィーラーの推論に関して)「不真面目な性質をもつ、ごく小さな天体に関しては、重力の法則に、脱力の法則が優先してもよい」俺は同情的な推論と呼んでるんだ。

・過去へ戻って賭けに勝ち続ける話
 壮麗なカジノで繰り広げられる"世界"をかけた賭博。

 ピョートルは大負けするたびにピストルを抜いて頭を撃ち抜く。ただのジョークだ。いつも同じ穴を撃つ。そしてピストルで穴から吹き飛ばされる。"脳"は実際には脳の穴にたまった粘液だった。とはいつても、はじめての人にとってはかなり異様な見世物だし、すぐ後ろに立った野次馬はしょっちゅう流れ弾で殺された。

・食人する羊の惑星
 乗組員の一人が食べると爆発する人造人間を食人すると、、、

 マーガレットはすでに船の四分の三を占め、男たちは隅に押しこめられ、ぎゅう詰めになって喘ぎ、身を屈めていた。マーガレットはゴロゴロ音をたてはじめ、今にも爆発し、すべてを道連れにしようとしていた。
「爆発する! 爆発するぞ!」と男たちは怯えて吠えた。「爆発したら、俺たちもみんなも船ごと巻き添えになっちまう」大爆発の前触れがさらに低くゴロゴロと音をたてはじめた。
 危機また危機! さらなる危機が襲い来る。故郷はまだまだはるかに遠い。

 襲い来る危機また危機。そして惑星ごとに炸裂するラファティの奇想爆弾。
 ラファティの奇想の特徴は、この作家の頭の中が本当に螺子が外れているのではないかという狂気冴え渡るイメージの飛躍にある。たとえば中井紀夫は、たぶんラファティをめざしてタルカス伝(『いまだ生まれぬものの伝説』他)を書いていたと思うのだけれど、わざとはずした頭の螺子がどっかまだ外れきっていない部分があった(それにしても、国内の奇想作家の中で随一の傑作だったと思う。続編が読みたい!!)。
 ここではたまたま中井紀夫を引き合いに出したのだけれど、たとえば河出書房新社の<奇想コレクション>の海外作家でも、ラファティに比べたら、同じようにどっか螺子は外れていない。作家本人は奇想の外にいて、冷静に描写している気配があるのだけれど、ラファティの場合は、どっぷりとその世界のロジックが作家の体と脳になじんでいる肌合いがある。
 奇想小説ファンで、もしラファティを未読の方がいたら、是非お薦めです。螺子外れっぱなしのラファティ脳内宇宙旅行の楽しさは格別。

◆関連リンク
11月10日(木)神田本店 イベント情報: 浅倉久志さんצ柳下毅一郎さん三省堂書店SFフォーラム『宇宙舟歌』刊行記念トークショー 国書刊行会の案内文

<未来の文学>完結巻、R・A・ラファティ『宇宙舟歌』の刊行を記念しまして、訳者の柳下毅一郎さんと、海外SF翻訳の第一人者として数多くの翻訳書を世に送り出しR・A・ラファティ作品の紹介者としても知られる浅倉久志さんをお迎えしてのトークショーを開催いたします。<史上最高のSF作家><世界でもっとも独創的な作家>であるR・A・ラファティの魅力をそんぶんに語っていただきます。さらに、浅倉氏、柳下氏が翻訳を担当している<未来の文学>第Ⅱ期刊行予定のジーン・ウルフ『デス博士の島その他の物語』や、ユーモア・奇想SFアンソロジー『グラックの卵』についての話もうかがいたいと思っております(編集部ST)。

・松崎健司氏のとりあえず、ラファティラファティ 原書リスト。 トロル族の空飛ぶ石盤のイラスト。
この頃の乱読さんのレビュウ(あらすじも詳しく載ってます)
・原書 R.A. Lafferty 著『Space Chantey 』(Amazon Japanでも扱っているようです)
・『宇宙舟歌 』(Amazon)

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を読了、と。(→詳細「★究極映像研究所★」) 正直のっけからあんだけわけのわから [続きを読む]

受信: 2006.02.06 04:49

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