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2005年1月16日 - 2005年1月22日

2005.01.22

■『ムーンパレス』
    ポール・オースター著/柴田 元幸訳

moon_palace_fan_site BOOK OFFの100円本でたまたま手にとってポール・オースターの『ムーンパレス』を遅まきながら初めて読んだ。「それは人類がはじめて月を歩いた夏だった」という冒頭の一文に魅かれたというだけなのですが、、、。
 オースター脚本/ウェイン・ワン監督の映画『スモーク』は観てなかなか好きだったのだけれど、本は初めて。んで、これが物凄く面白い。100円本で買ったのが申し訳ないくらいの貴重な読書体験をさせてもらいました。

 前半1/3、主人公の大学生フォッグの孤独と諦念が漂うのだけれど、どこか透明感のある一人称の生活描写がグッと読者をひきつける。このまま彼の大学生活に付き合う一冊なのかな、と思っていると、そこからの展開の飛躍がここち良い。
 ところどころ奇想なエピソードが挟み込まれて、連れて行かれる先はニコラス・テスラの世界無線装置ウォーデンクリフ・タワーの建つロングアイランド、西部ユタ州の岩山の洞穴、1939年のニューヨーク万博の会場であったりする。フォッグの一人称小説のだけれど、フォッグ自身はほとんど最後までニューヨークを出ることはない。であるが、20世紀のアメリカの断片を小説はある仕掛けによって拾い上げていく。この仕掛けで描かれエピソードの羅列と思われていた中盤からラストへ、ダイナミックなひとつの物語が姿をあらわすところが、読書の喜び以外の何物でもない。本当にお薦めです。
 特に前半1/3は村上春樹の本にとても近いものを感じる。ポール・オースターは1982年から本を出版しているので、ほぼ同時並行的に日米でこうした傾向のものが書かれていたのだろうけれど、、、。
moon_palace

◆関連リンク
山形浩生氏によるPaul Auster インタビュー(『GQ Japan』1996 年春)

 かれの多くの作品で、読者はけっして人々や事件と直接対面させてもらえない。いつもそれは、手記や談話として第三者に語り聞かされる。具体的でありながら具体的でない、見えるようで見えない、真綿のはさまったような感触が。ポール・オースターのすべての作品を特徴づけている。(山形浩生)
松岡正剛の千夜千冊『ムーン・パレス
ムーン・パレス』のレビュウ
ポール・オースターファンサイト The Unofficial Paul Auster Web Site
・ドイツのPaul Auster, Moon Palaceファンサイト
 この記事の冒頭のコラージュはこのサイトのクールな一枚です。
村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』三浦雅士著(Amazon) The Unofficial Paul Auster Web Site にあるこのレビュウ
ムーンパレス』ポール・オースター著(Amazon)
moonpalace_stage_by_you_kikai芝居『ムーンパレス』(遊機械プロデュース公演)白井 晃演出
芝居『ムーンパレス』感想
 芝居もなかなかよかったようですね。観たかった。






★★★以下ネタばれ注意★★★
 好きなところをメモ的に書き抜いておきます。
 もう二度とエミリーに会えないということ、死はそれを変えはしなかった。すでに確かだったことに裏付けを与えたにすぎない。何年も抱えてきた喪失感が、再確認されたに過ぎないのだ。(P355バーバーの視点)
 バーバーは僕にいろんな話を聞かせてくれたが、この話はその中でも一番最後のほうに聞いたものである。(略)ビクターおじさんの行動の意味を理解し、僕に対する深い愛情を改めて思い知らされて、たまらなく切ない気持ちになった。(P357フォッグの視点)
 ここだけ抜粋すると、なんだか本当にメロドラマ。話の骨格だけ取り出すと、確かにご都合主義名話かもしれない。だけれど、この二つの視点で描かれた家族の重層的な悲劇の部分と、この後に続くフォッグとキティの破局が、ある種破天荒なストーリーをグッと引き絞って余韻の残る一冊にしている。、、、今日また、BOOK OFFの100円本の棚でオースターを2冊買いました。

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2005.01.21

■押井守『めざめの方舟』完成

hakobune_pann 愛・地球博特集-押井監督が上映作品の完成発表(中日新聞)

 新作を待ち望む世界中の「押井ワールド」ファンのため、DVD販売も検討中だが、押井監督は「会場で実際に体感するのとは別物」と断言。「出来に満足しているし自信もある。ぜひ多くの人に見てもらいたい」と強調した。

 ついに完成したようです。10分間の押井守新作。
 天井と床に押井映像、まわりには百三十九体の擬人像。どんな感覚が我々をおそうのか、興味深深。欲を言えば、鳥、魚、犬の像ではなく、チャイニーズゴシックを模型で再現してほしかった。
 掲載した写真は、天井から吊るされる「汎(ぱん)」と呼ばれる精霊の人形。リンクした中日新聞のHPの写真がしょぼかったので、それよりきれいに発色している中日新聞紙面の画像をスキャンしてのっけてみました。おそらくネットの画像としては最高画質。地元の強み(^^;)。いいのか著作権(全国的な盛り上りに欠ける万博のCMと思って許してちょ。)
 リンク先には、「(C)八八粍・DEIZ/中日・CBC・東海TV」と著作表示があります。「八八粍」というのは戦車砲の名前(?)みたいなので、押井守の「二馬力」みたいなものかもしれません。
 「DEIZ」は『Avalon』とかポシャッた『G.R.M.』とか、『鉄甲機ミカヅキ』の制作プロのようです。この「DEIZ」の日記には、「名古屋での作業が急遽増えて、週末帰れるはずのスタッフが帰って来れず、本日悲しげな電話がありました。着替えがなくて、とうとうこの真冬の深夜、素肌にTシャツ短パンでコインランドリーに出没してしまった模様です。女性なのに…。お疲れ様です。」というような『めざめの方舟』関連の苦労のほか、メイキングがいろいろと語られています。

◆関連リンク
中日共同館 押井監督が映像チェック

「環境や自然が記憶している映像を目指した」と押井さん。足元で展開する縦九メートル、横十メートルの床面映像に、建築評論家の五十嵐太郎・中部大学助教授は「垂直に見下ろす感じ。迫力がすごい。人間中心の発想でない作品は、今回の万博にふさわしい」と話していた。

 五十嵐太郎は、都市論としての『イノセンス』 中華ゴシックと垂直のランドスケープという建築からみた『イノセンス』を書いた学者さんですね。

巨大床面映像で神秘的な世界へ 「めざめの方舟」概要発表

 実物大のサメが海で遊泳する姿など大自然の迫力ある映像が足元で展開される。
 また、百三十九体の擬人像(高さ二-三・五メートル)が画面を取り囲む。像の頭部は、映像の内容とともに二カ月ごとに鳥、魚、犬に変わる。天井には卵形のスクリーンも登場。
 神秘的な照明や音楽と一体化した映像ショーで、自然への畏敬(いけい)の念を体感してもらう。上映時間は一回十分で、収容人数は二百人。

「夢みる山」上映テスト 天から地から「自然」体感

 総合演出する押井守監督は「イメージ通りの出来栄え。自然に対する畏敬(いけい)の念を感じてもらえると思う」と自信をみせた。

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2005.01.17

■3.5インチ動画再生機能搭載ハードディスクケース
    TViX M3000U

M3000U製品情報 DViCO M3000U

・TVでの再生時にPC不要。
・動画ファイルやオーディオファイルの再生が可能。
・マルチチャンネルデジタル音声出力をサポート。
・画像ファイルをスライドショー形式で表示可能。
・プログレッシブ再生に対応。
・簡単にファームウェアアップグレード可能。

 これ、最近ネットのあちこちで評判を見かけます。韓国製のなかなかの優れもの。
 3.5インチの標準的なIDEハードディスクをこのケースに収めて、取り替えて使えるので、いわば容量無限のハードディスクレコーダになる。DVDをリッピングしてハードディスクに貯めこむのに適した商品で、PCと切り離してもDVDデータを再生できるところが売り。PCでどんどん貯めたDVDデータをTVやAV機器に接続して再生して楽しめるらしい。
 AV用ハードディスクでなく、安価なPC用を使えるところが評判を呼んでいるよーです。

 、、、、と言いつつ、僕はハイビジョンレコーダI-O DATA 「Rec-POT M」 HVR-HD250Mを買ってしまったのである。これで、やっとハイビジョン観るために家にいることから解放されます!
 しかしRec-POT Mはハードディスクの換装ができません。ハイビジョンが録れるこういう商品が発売されるのを切に望みたい。(SONYのVAIO現モデルVGC-RA71PRA61シリーズは、ハイビジョンチューナ等とi-linkで繋いでHD録画することができる。「録画した番組データを外付けハードディスクドライブなどにバックアップとして保存することは可能」なので、実質このM3000U相当のことをハイビジョンで既に実現している。ほしい!!が今回手が出ませんでした)
◆関連リンク
・コメントで書き込みいただいたMACでも使える新型の情報 TVIX M3000F FireWire付。
・同様の製品。GR-DVX002(DVD CUBE MPEG4)
 ・DVDドライブかHDドライブのどちらかを搭載可。
 ・HDD接続時はFAT16&32専用。上限120GB。 「NTFSフォーマット」には非対応(ここ)。WIN XPでは駄目でWIN 98等であらかじめフォーマットが必要。
 ・1万円くらい。たとえば、Yahoo!ショッピング TRY×3(トライスリー)GR-DVX002

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2005.01.16

■高橋洋著 『映画の魔』

eiga_no_ma_hyoushi 『映画の魔』青土社
 『リング』『女優霊』他を書いたシナリオライター高橋洋の本格ホラー映画評論集。
 『女優霊』がとにかく怖かった。そしてその脚本を書いた高橋洋は、「ユリイカ」で映画で人を怖がらせることを深く分析する文章を載せていた。その評論の恐怖映画への真剣な書きっぷりが良かったので、この本を期待して読んだ。
 期待にたがわず、マニアックぶりが楽しい(?)一冊。特に長い文がいい。自身の恐怖映画体験とその分析、そして創作の秘密。こんなに脚本家としての企業秘密(?)を書いちゃっていいのかというくらい、分析して怖がらせるメカニズムを書き出している。短い分は、深い思い入れで圧縮された言葉遣いがなされていて、高橋洋仕様の圧縮解凍ソフトがないと解読できないようになっていて、凄みは伝わるがもう少し解説してくださいって、感じ(特にP211「MJ12の秘密」なんて妖しすぎる文章だ)。僕はこういう勢いのある文章が好きなのでいいけれど、きっと何言ってんだか、ちゃんと書け、という人もいるんでしょうね。それくらい気迫があって、いい映画評論だと思う。

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 左の写真は、本書の扉絵で使われている馬徐維邦の映画『夜半歌声』のスチルである。いろいろと怖そうな映画が紹介されている本書の中でも、この作品の扱いは格別である。どんな映画だか、とにかく一度観てみたくなる。
 あとP322で「どう凄かったか説明できないくらい凄く」と表現しているモーリス・ルメートルとレスリスム展 Maurice Lemaitreでのイジドール・イズーの『涎と永遠についての概論』。これもなんだか凄そうである。しばらくこの本を片手に、「映画の魔」を旅してみようかと思ってしまう。しかし、、、、今日、高橋洋監修の『呪怨』をまず観て、怖くて自分ちの天井の方を見えなくなっている怖がりなので、探索の旅はどうなることやら、、、。

◆関連リンク
『映画の魔』高橋洋著 (Amazon)
・高橋洋監督作品 『ホラー番長---ソドムの市』
俎渡海新聞 第8号
 04.11/19新宿ロフトプラス1 「ドクトルマブゼと恐怖の映画省」 小中千昭、高橋洋両氏によるホラー講義レポート
・馬徐維邦『夜半歌声』(深夜の歌声)中国製VCDが1,400円で買えるようです。
・イジドール・イズーの『涎と永遠についての概論』のレビュウここの日記の12/08分にも。なんだかややこしい映画のようで。

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■酒井健 『ゴシックとは何か―大聖堂の精神史』

 『ゴシックとは何か―大聖堂の精神史』酒井健 (講談社現代新書)
 ヤン・シュヴァンクマイエルの自宅兼シュールリアリズム展示場であるガンブラギャラリーからわずか500mの距離にあるプラハ城 聖ヴィート大聖堂というゴシック建築を見て、「ゴシック」の文化的位置づけが知りたくなって読んでみた。
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 この本は建築様式の分析ではなく、数世紀にわたる宗教・社会・文化の視点から大聖堂を考察することを試みた本。著者は、バタイユの研究者としてフランスへ留学、そこで見たゴシックへの衝撃から本書を構想したことを語っている。

 大聖堂はなぜ建てられたのか──過疎化の極にあり不活性の底に沈んでいた都市を興隆させたのは、農村からの移住者たちだった。……だがその彼らには聖性の体験の場が欠如していた。食糧難に苦しむ農民たちは、大開墾運動の流れにのって、やむなく、崇拝する巨木の森林を滅ぼしていった。都市において、失った巨木の聖林への思いは強く、母なる大地への憧憬を募らせるばかりだった。
 巨木の森と母なる大地にもう一度まみえたい。深い左極の聖性のなかで自分たち相互の、自分と自然との連帯を見出したい。このような宗教的感情を新都市住民が強く持っていたことにゴシック大聖堂の誕生の原因は求められる。
 他方で、裁きの神イエスの脅威も彼らに強力に作用していた。最後の審判で問われる罪は贖(あがな)っておかねばならない。免罪を求めて彼らは惜しみなく献金をした。また、天国行きを執り成してくれるマリアに聖所を築いて捧げる必要性、いや強迫観念にも彼ら新都市住民は駆られていた。
 だがゴシックの大聖堂が建った理由はこれだけではない。別な動機からその建設を望んでいた者たちがいた。大聖堂の主である司教、そして国王は、自分たちの権威の象徴として巨大な伽藍の建設を欲していた。(Amazonの解説より)

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■ライナー・チムニク 『クレーン男』
      der kran   矢川澄子訳

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 たまたま図書館で表紙とタイトルが気に入って読んでみた。
 1956年に書かれたドイツの絵本。港町にできたクレーンとそこが気に入って住みつく男の話。
 このクレーン男と友人のテクトロの生活が、じわりと染みてくるいい物語になっている。村上春樹の少し不思議な短い小説に雰囲気が似ている。Geschichten vom Lektroというテクトロが主人公の本もあるらしい。妙に気に入ったテクトロの本もどっかで手に入れたいものです。
 たまたまこの本を読んでいた日にネットで目にした「ほぼ日」の糸井重里氏の超ロングインタビューで、村上春樹の言う小確幸(小さくはあるが確固とした幸せ)のことが出てた。この『クレーン男』って、小確幸の世界ですね。(小確幸は、『ランゲルハンス島の午後』村上春樹著, 安西水丸他に出てきます)
◆関連リンク
『クレーン男』ライナー・チムニク著,矢川澄子訳(Amazon)
ライナー・チムニクの本(Amazon)
パロル舎のライナー・チムニクの本
ドイツ語読書案内さんのドイツ語読書案内   クレーン男
・著者について詳しいページ Utrecht[ユトレヒト] | 人物リスト ライナー・チムニク Reiner Zimnik

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