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2005年7月31日 - 2005年8月6日

2005.08.04

■新刊メモ  『アニメーション監督 原恵一』

浜野 保樹編anime_kantoku_haraアニメーション監督 原恵一晶文社公式頁 目次

 編者の浜野保樹は「小津安二郎、木下恵介につならるホームドラマの担い手」と原を位置付ける。日本映画のもっていたホームドラマのよさは、いまやアニメでしか、引き継ぐことができないのだと。

 浜野保樹氏と言えば、スタンリー・キューブリックの評論等で有名だが、こんな本を出版されたのですね。寡聞にして、新聞広告で観たときはちょっとびっくり。
 でも検索してみたら東大で「メディア環境学」なる研究室(関連リンク参照)を持っているのですね。東大で研究される原恵一っていいですね。あ、これって「税金でやる究極映像研究」だ、うらまやしいぞ、と。
 しかしこのGoogleな時代にこのタイトルはないっしょ。こんなどこにでもあるタイトルでは検索のヒット率が著しく悪い。このデジタル時代、Googleを意識しない固有名詞は軽蔑に値しますね(^^;)。
 ところで原恵一監督の次回作についての情報を誰か知りませんか?

◆関連リンク
浜野保樹の「日本発のマンガ・アニメの行方」 : Hotwired
 原恵一インタビューもここで読めます
未来映画術「2001年宇宙の旅」 映画監督 スタンリー・キューブリック
・『押井守論 MEMENTO MORI
 第2章 映像機動論 映画監督押井守の多角的分析 押井守の時代 浜野保樹
浜野保樹 1951年生まれ。東京大学大学院教授。工学博士。専攻はメディア論
m.e.s.h. -東京大学大学院新領域創成科学研究科 メディア環境学研究室

国家と地域のブランディング
コンテンツ産業
知的財産
アニメーション
映画制作技法
映像制作支援システム
デジタルアーカイブ

 情報計量化計画について という研究も面白い。世界中のフィルムに記録される年間情報量の表とかあります。「バカミス」ならぬ「バカ研究」(ほめ言葉)とはこのことです(^^;)。

「紙、フィルム、光学式ディスク、磁気ディスクの世界において生産された総量をすべて記録するためには、おおよそ150億ギガバイト(15000ペタバイト)の容量が必要となる。これは、地球上の男、女、子どもに至るまでのすべての人、一人あたり250メガバイトの容量が必要であるということに等しい。」

表 1 : フィルムに記録されるデータ量(年間、全世界)


件数

デジタル換算
の指標

合計
(ペタバイト)
写真 82,000,000,000 1枚につき5MB 410
映画 4,000 1本につき4GB 0.016
X線写真 2,160,000,000 1枚につき8MB 17.2
すべてのフィルム合計:    427

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2005.07.31

■ハイビジョン レポート KENJI YANOBE 1969-2005
    ヤノベケンジ作品集出版記念イベント@豊田市美術館

ヤノベケンジ作品集出版記念イベントgiant_trayan_fire

 ヤノベケンジ初の本格的作品集『ヤノベケンジ 1969 - 2005』(楽天)を記念したイベントが今日7/30、豊田でありました。僕は昼からサイン会までハイビジョンハンディカムHDR-HC1を片手に参加しました。

◆アーティストトーク「ヤノベケンジ自作を語る」
 +フィルム上映       
PM 1:00 - 2:30@講堂

talk  1時間半きっちり、ヤノベケンジが幼少の大阪万博会場での「未来の廃墟」体験から、今回のキンダガルテンまでを映像を交えて語った。会場はほぼ満員の盛況。2~300人というところか。

 ヤノベファンにはお馴染みの話が多かったけれど、生ヤノベの口から語られると、実感としてアーティストの内面が浮き出てくるようで興味深かった。
 知らなかったトピックとしては、愛知万博での「マンモス・プロジェクト」が某新聞社の他社配慮でつぶれた後、身長20mのジャイアント・トらやん(G.-T.R.Y)を「夢みる山」の前に展示する企画があったらしい。これも「とある理由」で頓挫。今回の展示のジャイアントトらやんは7m。この3倍の巨大ロボットが万博に出現していたら、、、。私、頓挫させた理由と人を恨みそうな程、観てみたかった。

 ここで流されたフィルムは、3F展示場でほぼ観えるものばかり。「メガロマニアオープニング」「Tower of Life」と「ジャイアント・トらやんのひみつ」。3つ目のは展示場のと違うバージョンでトらやんCGが入っていた。あとロシアへ万博のマンモス発掘プロジェクトをスパイに行くヤノベのムービー。アストンマーチンに乗り、007ばりに氷原を走るヤノベの映像がかっこいい。

◆「AWAYA」サウンドパフォーマンス
 +トらやんファイヤー
 PM 2:45 - 3:15@展示室 1
awayatorayan  あわ屋という男女2人のユニットによる演奏と歌、そしてヤノベ自身の解説による作品のパフォーマンス。
 あわ屋の曲は、邦楽的な響きの静かな曲でヤノベの雰囲気に少し合ってました。そして圧巻は、「美術館の歴史はじまって以来の歴史的瞬間」(ヤノベ氏談)館内での火炎放射。金沢21世紀美術館ではトらやんは屋外で火をふいたらしいが、今回は約10mの天井の美術館2F(3Fへ吹き抜け)室内。
 火炎は5回+2回、わずか10秒ほどの一瞬。右の写真は、HDVの映像から切り出したもの(クリックすると幅500ピクセルで観えます)。火炎は5~6mはあり、床近くまで伸びて凄い迫力だった。この火炎の先にも観客が居たわけで、機器の信頼性を全面的に信じた勇気あるパフォーマンスですね。正面に居た人は恐怖を覚えたかも。

 ハイビジョンハンディカムの実力は、オートで露出が火炎の明るさに合わせてダイナミックに変化しているのがわかってもらえると思う。これは3~4コマごとに切り出しています。露出の追従はあまり良くないのかな?動画で観てても特に違和感は感じませんが。
  まるで怪獣映画のワンシーンの解析のように、なかなかの迫力画が撮れました。このような切り出しがムービー観ながらHD1のハンディカムのフォトボタンを押すだけでできるのが、皆さん書いているけれど凄い便利。あと炎の端が切れてますが、こういうのを撮る時にテレコンバージョンレンズが欲しくなる。

Ride_on_Mammoth  もうひとつ、ヤノベのトヨタハイエースを改造したロッキングマンモスのディーゼルエンジンの咆哮を聴くことができました。写真のようにヤノベ氏自らが頭に跨りエンジン始動 ! 白いディーゼルの排煙がうしろへ噴き上がっているのが確認できます。動作は鼻を手回しのレバーで動かしていました。幻の万博アート企画「マンモス・プロジェクト」が実現していたら、この迫力の数百倍のイメージだったかと思うと、これも残念。

◆ヤノベケンジ作品集出版記念サイン会
         PM 3:30 - 4:30@展示室 1手前カウンター
sign sign02 
 1冊づつ丁寧にイラスト入りでサイン。僕のはアトムスーツのヘルメット。サイン会は計100人くらい?? 女性が多かったですね。ヤノベファンって、大阪万博ファンとある程度重なっていると思ったのだけれど、その世代はあまり人数的に目立たず(この年代は一般的観光っぽい子連れ客でした)、若い人が多かった。現代美術の視点からなのでしょうね。

◆「AWAYA」映像&サウンドパフォーマンス
 +トらやんファイヤー 
PM 6:30 - 7:00@展示室 1
 これは未参加。昼のパフォーマンスに映像が追加されたらしいですが、どなたかご覧になった方、コメントいただければ幸いです。

 ★追記 パフォーマンスされたご本人Tomokichi@あわ屋さんにコメントで教えていただいた映像はここで観えます。

関連リンク
・Tomokichi@あわ屋さんの日々五里霧中
 G.-T.R.Y虹の要塞の制作にかかわられたレポートが読めます。
 子供都市計画「御開祭祀」オヒラキマツリのページとムービーも必見。
ARTZONE Mammoth Project Office KINDERGARTANムービー
子供都市計画のショートムービー 炎をふくG.-T.R.Yが動画で観える
MEGAROMANIA メガロマニア展のできるまで
・AERAのマンモスプロジェクト記事 産廃マンモスのし歩く
AWAYA曲がここで聴けます
 AWAYA : 邦楽器や声などのアナログ音と、電子音を用いた実験的音響ユニット
青幻舎blog:新刊予告Blog
・ 7/30 ヤノベケンジ1969-2005 刊行記念イベント(豊田市美術館)
・8/6 ヤノベケンジ自作を語る+フィルム上映(東京 青山ブックセンター本店)
・当Blog記事 幻の万博 YANOBE KENJI  『KINDER GARTEN』

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    ヤノベケンジ作品集出版記念イベント@豊田市美術館"

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■『輝く断片』シオドア・スタージョン/大森望編

and_now_the_news
                         (「ニュースの時間です」「ミドリザルとの情事」掲載誌)
河出書房新社 『輝く断片』公式ページ

“ミステリ作家シオドア・スタージョン”の
特異すぎる才能に度肝を抜かれるはずだ
                    大森望

 奇想コレクションから『不思議のひと触れ』に続く2冊目のスタージョンの短編集が出ました。今回のは編者大森望氏の解説タイトルにあるとおり<Crimes for Sturgeon>。ミステリーというよりクライムスートリーという方が似合う。けれども一般的なイメージのそれとは全く異なる世界が展開されている。このアンソロジー、作品選択が素晴らしい。スタージョンのこうした傾向の短編をまとめて読める我々はとても幸せである。

 全体を通して読みおわって、かなりずっしりとおなかの底の方に何かが落ちていく感覚がある。切ないのや暗く重いのや奇抜なシチュエーションの展開に頭がねじれるのや、そんなものが堆積していく。
 これは、社会からドロップアウトもしくは平凡な日常の底流に淀んでいるような登場人物たちが多く扱われており、それによって形作られているイメージの堆積でないかと思う。フリークスというのとも違う、勝手に名付けると、<『わたしは慎吾』のお父さん物>(^^;)というジャンルに属するような作品。と言ってもわかりませんよね、普通。

 僕の場合、こうした登場人物に出会うと、あの楳図かずおが描いたガテン系のちょっと頭の弱いタイプの人というかあのお父さんの不思議なイメージが自分の頭にこびり付いていて、必ず思い出す。独特の思考回路を持っていて、通常のキャラクタから異様にねじれている感覚、『わたしは慎吾』の読者ならわかってもらえますよね、この感覚? 映画で言えば、コーエン兄弟の『ファーゴ』にもこのねじれた感覚があった記憶。P・K・ディックだと『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』のイシドア(ちょっと違うかも)。
 こうした登場人物によって描かれる奇妙な物語。しかしスタージョンのその視点は優しい。明らかに<『わたしは慎吾』のお父さん>の側に立った視点の物語。ずしりと思いのだけれど、どこか心地よいのはこのスタージョンの視点によるものだと思う。<『わたしは慎吾』のお父さん>であることを否定的に描くのではなく、むしろそちらの方がいいのでは?という肯定というか、、、、そのような感覚。

 では、例によってお気に入りの順に、感想。
 (▽が<『わたしは慎吾』のお父さん物><<誤解をまねきそう)

◆「ルウェリンの犯罪 A Crime for Llewellyn('57) 柳下毅一郎訳 ▽
 これ、切なくて、一番のお気に入り。主人公ルウェリンの淡々とした日常とその後のアンチ犯罪な展開。この主人公、生活能力に乏しい(頭が弱い)人なのだけれど、その日常と思考、そして長いこと一緒に暮らしているアイヴィとの関係がとても切ない。
 短編アニメ五本つき子供向き映画+ポテトの皮むき、という991週 続いた休日の習慣が崩れる時、それでも金銭的な計算をこの映画代何年分と考えてしまうルウェリン。ここいらがこの短編の雰囲気を決定していると思う。
 そしてラスト。ある意味書き方によってはまさにコメディでしかない物語がこんなにも胸に迫るものになるところが凄い。
 あと殺人研究家の柳下毅一郎をここで訳者に持ってくるのもなかなか。サイコな事件である「マエストロを殺せ」と合わせて訳した柳下氏の文体の切り分けも楽しめました。

◆「マエストロを殺せ Die, Maestro, Die!('49) 柳下毅一郎訳
 というわけでもないけれど、次も柳下訳。
 ジャズバンドをひとつの生体として描いた短編。クライムストーリーとして、このひねり、凄いです。ジャズファンは楽しめること、確実。これは▽ではなく<キモメン文学>という定義があるらしいですが、、、。

◆「輝く断片」 Bright Segment('55) 伊藤典夫訳 ▽
 最初のおどろおどろしいシーンから、このような物語を結晶化できるスタージョン、凄い。上記二編より下にしたのは、主人公と他者との関係の描写が一方的で少ないため。しかしその分、濃密ではありますが、、、。これもミステリー雑誌に載っていたら、異彩を放つこと間違いなしの名品。

◆「旅する巌 The Traveling Crag('51) 大森 望訳 ▽(ちょっと)
 これはこの本では他の1篇(秘す)と合わせて2編だけのSF。タイトルはある新人作家が書く傑作のタイトル。作家のエージェントが触れるある秘密。この作家が山に一人隠遁している人物として設定されているが、この孤高というかストレンジャーな感じがよい。

◆「ニュースの時間です And Now the News...('56) 大森 望訳 ▽(ちょっと)>
 今年の星雲賞受賞短編。本書の中ではこのくらいの順位かな、と。でも奇妙な感覚は一級です。これもある理由で隠遁する主人公を描いている。それにしてもこのねじくれ感、相当のもんです。
 それにしても、本作の初出は1956年のF&SF。その表紙は上の右から2つ目。凄いですね、この時代にこういう掲載誌で、超絶技巧を駆使した小説を書いていたスタージョンって、改めて凄い。そして今年の星雲賞。やはり50年は早かった小説なのでしょう。

◆「ミドリザルとの情事 Affair with a Green Monkey('57) 大森 望訳
 これ、案外好きです。割とシンプルなアイディアストーリー。主人公の女性とその夫の関係と、夫の強引な偏見描写が秀逸。そしてオチの部分と合わせて、独特の手触りを構成している。

◆「君微笑めば When You’re Smiling('55) 大森 望訳 ▽
 これも主人公の強引な描写が面白い。あとその相手との関係から生み出される奇妙な一夜。これはでも普通のミステリー的ではあります。

◆「取り替え子 Brat('41) 大森 望訳
 シチュエーションが面白い一篇だけれど、小品という感じ。アメリカの家族親族の描写とか面白い。

関連リンク
『輝く断片』刊行記念大森望× 柳下毅一郎×中原昌也トークショー
神田本店 1階さん: ♪大森望さんצ柳下毅一郎さんトークショーのご報告★
かめの洞窟日記さん: スタージョンについて語る

WEB本の雑誌 課題図書
すみ&にえ「ほんやく本のススメ」 『輝く断片』
Theodore Sturgeon Literary Trust

・『輝く断片』(Amazon)

当Blog記事
シオドア・スタージョン『ヴィーナス・プラスX』大久保譲訳
『願い星、叶い星』アルフレッド・ベスター/中村 融訳

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