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2006.02.21

■トマス M.ディッシュ、若島正編, 浅倉久志他訳『アジアの岸辺』

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 収録作品は本邦初訳8篇を含む全13篇。とにかくブラックでラディカル。
 実はトマス・M・ディッシュは今まで、『いさましいちびのトースター』しか読んでいないという体たらく。やっと有名な「リスの檻」もこの本で読みました。
 僕にはディヴィドスン『どんがらがん』よりこちらの方が馴染めた。わかりやすさからかな。物語性もこちらの方があるからかも。

 あと編者の若島正が、あとがきで最高傑作と書いている『歌の翼に』(サンリオSF)をどうしても入手したくなった。筑摩文庫あたりで再刊されると良いのだけれど、、、。スタージョンのミニブームに続く形で、ディッシュの再評価と出版が続くことを期待したい。サンリオを高い値段で入手した後で、再刊されると悔しいので少し待とうかな。

◆降りる
 エスカレータで下り続ける男。なぜだか理由はわからない世界に紛れ込んでしまったシチュエーション。こういうのがまさにシンプルだけども奇想。好き。奇想って、ある意味、自分が夢で(現実だったらイヤだけど)遭遇したいシチュエーションだったりする。

◆争いのホネ
 いやーな話。こういうブラックなのがつくづく好きなのか、読者にそういう気分を味あわせたいのか。とにかく人の悪さが如実にでている。ある一点をのぞけば単なる夫婦の不仲のどこに出もある話なのだけれど、その原因のホネが、、、。でもこんな時代がいつか来るかもという怖さもありますね。

◆リスの檻
 これはやはりオールタイムベスト級で傑作。
ただ単にこうした不条理な閉塞されたシチュエーションだけでも面白いのだけれど、さらにこれはそこに作家を置いてメタフィクション的な仕掛けを施している。凄くうまい。
 「一くだひげ虫」とか「動物園の午後」だとか、この狂いっぷりも凄い。
 映画『トゥルーマンショー』や『CUBE』、こうした奇想映画のルーツにあたる作品。で、こっちの方が強力な破壊力を持っている。

◆リンダとダニエルとスパイク
 これもブラック。なんでこんなにも残酷なストーリーを書くのだろう。しかし現代的な心のゆがみの物語として読める。キングの『キャリー』はみにくいアヒルの子的に救われる部分もあったのだけれど、これは救いがない。本当にディッシュってひどいやつだ。

◆カサブランカ
 不幸の連鎖でどんどんどん底へ落ちていくアメリカツーリスト。これってアメリカ覇権主義のアンチの話なのだろうか。アメリカが無意識の上で世界の中心と(たぶん)信じている主人公夫妻が異国の常識の中でもがく話。
 ブッシュに擬似的でも良いからこういう体験をさせてやりたい。異文化を身に染みさせる必要がありますね、あの男には。しかしそんな経験でも何も変わらないような気もするけれど。

◆アジアの岸辺
 イスタンブールを舞台にした異文化コンタクトもの。主人公が写真屋で自分の撮った写真を受け取るところがなかなかショッキング。
 ディッシュには日本の訪問記もこんな小説に仕立て上げてほしかった。

◆国旗掲揚
 これもえぐいなー。アメリカの恥部ってしっかりとこういう形態があるのでしょうね。このエスカレートの様も気持ち悪い。

◆死神と独身女
 これはユーモラスでブラックな一編。僕には黒いだけに見える上の方の作品だったけれど、こいつはちゃんとブラックユーモアと感じられた。死神と秘書というのがなんかビジネスライクなんだけどユーモラス。

◆黒猫
 狂気へ至る過程を描いた掌編。

◆犯ルの惑星
 異様な性習俗を描いた作品。これもどぎつい。

◆話にならない男
 これ、なんか好きな一編。コミュニケーションがこんな風に許可制になったら、ますますややこしい。しかしこの主人公の雰囲気が読ませる小説にしていました。

◆本を読んだ男
 これはSFというより、現実にありそうな話。日本もこんなビジネスが成立しそうな気がする。
 そういえば最近、新聞であなたの原稿を本にします、という広告をよく見ます。この話と一緒だということではないので、念のため。

◆第一回パフォーマンス芸術祭、於スローターロック戦場
 これはネタ的に「パフォーマンス芸術の祭」というのが好きでした。

◆関連リンク
『アジアの岸辺』(Amazon)
『SF/が読みたい! (2006年版)』 第6位でした。
・WEB本の雑誌 今月の新刊祭典メニュー 『アジアの岸辺
・復刊ドットコム リクエスト投票 『歌の翼に』(サンリオSF) 是非投票しましょう!

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