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2006.05.03

■アンドリュー・パーカー著
   『眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く』
   In the Blink of an Eye 感想 前編

Theeyetoeyegallery
BioMEDIA Gallaries the Eye to Eye Gallery

 のっけから生物の眼について素晴らしいサイトを見つけたので、この写真を使わせてもらいました。インパクトと美しさをお楽しみいただければ、幸いです。
 本書とは直接関係ないですが、生物の目について徹底的にこだわったこのサイトが素晴らしいので、まずはご紹介。で、以下、本書について。長いので2回に分けて書きます。

アンドリュー・パーカー著『眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く』
In the Blink of an Eye
(Amazon)
Intheblinkofaneye

 先日紹介した本書を読了。思ったところを関連リンクとともに書いてみます。

本書のなりたちについて

 まずカンブリア紀大進化の謎に対するラディカルな仮説を思いついてしまった著者が、その興奮を抑えようとして、あえて淡々と生物の眼について記述する文体がいい。まだろっこしいという感想もウェブには挙がっているけれど、幼い頃のシュノーケリングで遭遇した生物の色の不思議(P138)を描写して、それとなく自分の生い立ちと生物の関係から紐解くアンドリューパーカーの筆に、僕はむしろ好感とワクワク感を持って読み進めた。
 知的エンターティンメントとしての視点だけからだったら、冗長に感じてしまうじれったさも、この研究者が何故この視点を持つに至ったかという一研究生活の記録として読むと、とても面白い。研究者って、こんなこだわりが一番重要じゃないかと思ったりするので、、、。

進化についての雑感 ここは進化に詳しい方は読み飛ばしてください。

 さて、本書のまずは骨格である生物の進化について。すみません、この部分、純粋に本書の感想ではなく、僕の単なる進化という言葉に関する感想です。

 ここで強烈に思ったのは、生物の進化という現象についての本質的なとらえ方。専門家からみれば、あたりまえのことなのだろうけれど、「進化」って実はあらかじめ目的性を持ってその方向を目指して生物が自分を変えていく現象ではない、ということを痛感した。
 「進化」という言葉を使うから何か目的のベクトルを持っているようにイメージしてしまうけど、実は「進化」の本質は「淘汰」なんですね(うー、当たり前と思った人、読み飛ばしてください)。

 どういうことかというと、進化は結果論でしかなく、実は単に突然変異で生まれたある環境への適応に秀でたものたちが、生き残った結果なのだということ。
 たまたま眼を持った生物が生まれ、それを持っていない生物がどんどん食われて滅びていって、結果として眼を持った生物が我が世の春を謳歌する状態が訪れ、それをヒトが「進化」と名付けた。「淘汰圧」という言葉が象徴するように、太陽光線という圧倒的な普遍的環境が「淘汰」を律して、眼のない生き物が滅んでいく。この淘汰の結果として、眼のある生物が長い時間かけて生き残った結果が「進化」。本来なら「眼を持った生物への進化」などという目的的な言葉を使わず、「淘汰の結果として、なりゆきで死滅を続けて生物は眼を持ったものが主流になった」、と表現すべきなのですね。

Geologytimescale 普通、目的もないところで、そのように見事に生物が発展(と思われる方向へ)変化するということはなかなかイメージできないのだけど、これに進化のタイムスケール:Geology time scaleを加えて考えるとイメージがしやすい。(クリックして拡大してみてください)

 左の地史学の図で、地球46億年の歴史でみると、5.4億年前のカンブリア紀は地球の歴史の88%経過後で、人の誕生に至っては99.96%経過時点のできごと。これだけ気の遠くなる時間をかけて、死滅していった生物の淘汰の結果として、たまたま眼を持った生物と、人類が我が世の春を現在、謳歌しているというわけ。目標を持って進化が進まなくても、なりゆきとしてこれだけの膨大な時間の消費があれば、この機能的にみえる生物群が生き残るというわけです。

 ところで「進化」って何故「淘汰」といわなかったのでしょうね。この方が実態をうまく表現しているのに、、、。これって西洋で神の概念とうまく融和するための学問的戦略だったり、優生学が前面に出すぎるのを嫌ったり、もともとプラグマティックな欧米の考え方とマッチさせたり、という諸般の事情によるのでしょうか。

 (ちょっと蛇足。「淘汰」の視点で見ると、とっても危険ですが(あえて上の認識を理解してもらうために刺激的なことを書くと)、『ダーウィンの悪夢』で触れた南北問題とか、現代日本のストレスによる自殺増加とかも、環境変化に追従した「淘汰圧」の一形態という切って捨てるような言い方が生じてくるからなのでしょうね。それを「淘汰」と呼ばず、「進化」としておいた方が、まずは軋轢も少なそう)

 すみません、繰り返しますが、この部分、純粋に本書の感想ではなく、僕の単なる進化という言葉に関する感想です。本書でアンドリュー・パーカーは当然「進化」についてこうした概念で記述しています(が、一部徹底できていない部分もあって、こんなことを考えつつ読んだのです。) (後編に続く)

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コメント

 Boooooksさん、はじめまして。コメント、ありがとうございます。

>>眼のような超精密な器官が生まれたことは、
>>まさに生物学の神秘だと思います。

 本当に不思議ですね。でも結局、偶然というか偶発的に突然変異が積み重なって起こった自然現象なのでしょうね、こういうことが起こってしまうだけの時間の長さというものの凄さに感慨深いものを感じます。

>>眼の誕生が先カンブリア時代に同時に起こったこと、
>>またそれが、それぞれの生物の中で固有に発生したこと、

 この本を読んで、特に不思議だったのは、何故カンブリア時代に眼がいろいろな種で発生したか、という部分でした。これは説明されていない。ここにもなんらかの自然のメカニズムが働いたのではないかと思います。それがなんだったか、、、、??知りたいですね。

投稿: BP@究極映像研 | 2006.05.17 23:16

初めまして。
眼の誕生が先カンブリア時代に同時に起こったこと、
またそれが、それぞれの生物の中で固有に発生したこと、
驚きを隠せない事実の連続で、非常に興味深い本です。
眼のような超精密な器官が生まれたことは、
まさに生物学の神秘だと思います。

投稿: Boooooks | 2006.05.13 08:22

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