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2006.11.06

■柴 勤 著 『深井克美―未完のランナー』 : Katsumi Fukai

Fukai_01 Eva_svank_01_1
深井克美 友達1 (1978)  エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー Mediumni kresba (2004)

柴 勤 著『深井克美―未完のランナー』(amazon)
 (北海道新聞社刊 ミュージアム新書〔14〕)

函館生まれの深井克美は病魔に苦しみながら、人間の肉体と魂の在り方を問い、独特の幻想的な世界を描き続けた。30歳で衝撃的な死を遂げた深井の作品と生涯を紹介する。

 以前の記事「澁澤龍彦コレクション『幻想の画廊から』 」を書いた時に、ネット検索で見つけて紹介した、30歳で夭折した北海道の幻想画家 深井克美。彼の画業を紹介した本を購入。カラー25点。モノクロ22点。著述文(詩とエッセイ)7点が収録されている。凄くインパクトのある本になっている。特に絵が素晴らしい。

 内省的で幻想的。自己の内側へ限りなく沈潜していったその先に観えた研ぎ澄まされた幻覚ような絵画が素晴らしい。著述文で自らの脊椎カリエスから生じた肉体的なハンディキャップを苦にし、外出の際の対人恐怖について述べたくだりがある。上の絵で特徴的なのは複数の眼である。この眼の描写と「友達」というタイトル。彼にとっては友人ですら自分を観る視線が気になり、そしてその存在をひとつに固定できない不安の対象でしかなかったのかもしれない。この絶望的な絵画の圧倒的な存在感は凄いと思う。

 上で紹介した作品を観て、僕が真っ先に思いだしたのは、チェコのシュールレアリスムのアーティスト エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーのメディウム・ドローイングと名づけられた作品群。ふたつの絵を見比べた時に、その「内省的で幻想的」なイメージの共通性を強く意識せざるを得ない。残念ながらエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの絶望が何に由来していたのか、チェコ語の読めない僕はまだ理解の端緒にもついていないが、この二人の画家が精神的な面で、どこかで通底していることは間違いないと思う。

 <幻想の画廊から>と題したHPに、この「深井克美」の作品が数点紹介されている。この絵を見てもらうと、さらに深井克美の凄さがわかると思う。僕がインパクトを受けたのは、特に次の二点。(リンク先の絵はスキャニングの品質が今ひとつで、本の色合いとかなり違うため、気になった方は是非本を購入されることをお薦めします。)

◆『2時37分』(1976)

 この怪物三体にみえるものはいったいなんなのだろう。本の著者  柴 勤氏も三体の生物と観ているが、実は一体である可能性も否定できない。一つの体から増殖した臓器のようにも観える。もてあましたそれら臓器に針と糸が天空から降りてきている。いろんな幻想の物語を想像させる画である。が、これも画家の苦悩の表象なのだろう。

◆『オリオン』(1977)

 美術評論家の坂崎乙郎氏が「絵画が達しうる一つの極みである」と述べている言葉が、本書に紹介されている。とにかくどこまでも深みのある絵画。異形のふたりの人間(サイボーグ?)の姿を描いたこの画は、個々をとりだすとH・R・ギーガーとかのイメージと似通っているように観えるのだが、二体の抱擁のようにみえるその形態が凄い。お互いを抱いている異世界の手。この描写が単なる幻想画ではない切実なものを観客に投射してくる。ここから広がるイメージの奥深さは、僕の筆ではとても描写できるものではない。

 この絵は、個人コレクター植木正心氏が、群馬県の自宅を改築した「植木美術館」というところで公開されているらしい。

 その他、多くの深井克美作品は、北海道立近代美術館に収蔵されている。先日、北海道へ行く前に調べたが、残念ながら今は展示はされていないようなので、観には行かなかった。いつか機会を見つけて、なんとか一度は実物を観てみたいものである。

◆関連リンク
・Blog 分け入つても分け入つても本の山さんの「深井克美」に関する文
坂崎乙郎氏の著作(amazon) 著作リスト
エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー関連図録 Eva Svankmajerova

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コメント

こんばんは^^。

オカルト系といえば、夫の友人に
「自分や他人の守護霊が見えてお話できる」
てな方がいました^^;。
某県の旧家で武道を嗜む家のご出身で、
一家全員その能力を持っているという^^;。
今は離れてしまいましたが、
近所に住んでて家族ぐるみのおつきあいをしていた時、
その方の当時1歳のお嬢さんが誰もいない壁に向かって
にこにこと手を振っていたこともありました^^;。

コマ送り特集、楽しみにしてますので頑張ってくださいね~。

投稿: shamon | 2006.11.07 22:22

 shamonさん、おはようございます。

>>”究極<オカルト>映像研究所”

 (^^;)(^^;)、やはりそう感じましたか。迷っていた「アンビリバボー」ネタも書いちゃったし、既に私はうちの中学(娘の中学にして僕の出身校)の電波を濃厚に受けているのかも(^^)。(でも深井克美、本当に凄い絵でしょ。)(というわけでバンババンに振ってみました。)

 最近の沖浦啓之だとか井上俊之、磯光雄とか、凄腕のアニメータに対して、どのくらいの位置に宮崎駿がいるのか?これが僕の立てた命題です。全てのコマが原画っていう作画は、このころにもあったんじゃないかと思いつつ、コマ送りにいそしむ訳です。なんと地道な、、、(^^;)。

投稿: BP | 2006.11.07 03:56

こんばんは。
「友達1」の画像に
”究極<オカルト>映像研究所”
になったのかと思いました^^;。
すごい絵ですねぇ。

投稿: shamon | 2006.11.06 22:27

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