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2006.11.21

■ラース・フォン・トリアー 『ドッグヴィル』
   LARS VON TRIER "DOGVILLE" 

Dogvilleドッグヴィル
  (日本公式サイト)
"DOGVILLE"
  (デンマーク公式サイト)

 映画館で観ようか迷っていた映画だけど、Hi-Vision放映でやっと観た。

 これ、凄い映画だ。
 ほとんどなんの情報もなく観たが、ラストで完全に打ちのめされた。とんでもない暗黒映画が、ニコール・キッドマンというハリウッドメジャーな女優を主演にして撮られていたわけで、さすがラース・フォン・トリアー。
 先日、Blogの記事で、北海道の夭折したシュールレアリスト深井克美を紹介したが、そのダークサイドな衝撃度では、この映画も負けていない。

 以前、会社の同僚に「最近何か、面白い映画ない?」と訊かれて、ちょうど前夜に観て衝撃を受けた『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を推薦して、「なんて暗い映画を好きなんですか」と少し冷たい視線をあびせられたことがある。

 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』にしてそうなのだから、間違っても、この映画は普通のお茶の間のエンターティンメントを求める映画ファンには薦めてはいけない。家族といっしょにこのような映画を観たら、トラウマになることは間違いない。薦めるなら、さっきテレビでやってた『ザ・ディ・アフター・トゥモロー』にしませう。

『ドッグヴィル』 『ドッグヴィル・コンプリートボックス』(Amazon)

★★★ 以下、ネタばれ注意 ★★★

 舞台のような村の描写が異色なのだけど、これによりある意味、神の眼で村を見ている視点を獲得しているのではないか。この仕掛けは映画としてはチャレンジャブルで、観ている間も違和感があったのだけれど、観終わった時にこの視点により、全体の怖さが増幅されていたことに気づき、効果を上げていると感じた。

 物語は、一見善良な人の中に住む魔物がだんだん主人公グレースに牙をむいていくのだけど、真綿で首を絞められるような息苦しさがある。それを神の視点で覗き見る我々観客。
 あきらかな差別とか虐待が、明確な言葉で表現されているわけでなく、さらにジワジワと恐怖を盛り上げる。明確な悪役を設定せず、会話とか態度は普通の市民にみえるが、総体でしでかしていることが不気味で怖い。まさにムラ社会のジメジメした恐怖。これが怖いのは現実のイジメとかが、実はこの映画と同じように明確な悪役や罵詈雑言がそこにあるわけでなく、このような真綿で首を絞めるような状況として我々の社会に巣くっているのではと思えるから。タイトルは『DOGVILLE』だけれど、邦題はむしろこの怖さを文字で表現して『犬村』の方がよかったのではないか(って、コメディと勘違いされるか??(^^;))。
(こうした映画の内容から、黒沢明『どですかでん』、今村昌平『神々の深き欲望』を連想した。特に前者はこの『ドッグヴィル』の直系ではないか。トリアーが黒沢明にインスパイアされているかどうか知らないが、村人の普通だけれども異常な描写や、因習的な怖さがまさに直系と思う。)

 そしてラスト。ギャングのボスとグレースの会話。ここでグレースの心変わりの描写が凄い。たんたんと凛とした女性として観客に好感を持って、知性的な女性として描かれていたグレースの放つ言葉が凄い。ここで私はこの映画にノックアウトされた。

 このグレースというキャラクター、『もののけ姫』のえぼし御前の凄み。同じ宮崎作品なら漫画『ナウシカ』のクシャナとか、そうした女性像に通じるところがある。

 この後のギャングとしてのニコール・キッドマンの活躍を描いた続編も観てみたい。岩井俊二『FRIED DRAGON FISH』のナツロウみたいに、クールなアンダーグラウンド世界を描いてしまえる気がする。もしかしたら凄く痛快な娯楽作として作っても凄い映画になるんじゃないかな。いいキャラクタをこの映画一本で造形したと感じた。

  、、、と今、検索していたら、ラース・フォン・トリアー監督で続編!『マンダレイ』が05年にすでに完成していた。全く知りませんでした(恥)。ニコール・キッドマンに代わり、グレース役はブライス・ダラス・ハワード。ここに監督とプライスのインタビューがあります。06.3/11公開。ラース・フォン・トリアーのアメリカ3部作の2作目という位置づけ、第三作『WASHINGTON』というのも公開予定。痛快な娯楽作では全然ないようだ。近いうちに、DVD『マンダレイ』も借りてみます。(12/11追記 当Blog記事 『マンダレイ』感想 )

 最後に蛇足。この映画の後に、無垢な村を描いたM・ナイト・シャマランのそのまんまのタイトルの『ヴィレッジ』がある。シャマランはトリアーの本作を観たのだろうか。観ていたら、あのままの映画としては撮れなかったのではないかと思えるのだが、、、。

『ドッグヴィル』×『マンダレイ』 『マンダレイ』

黒沢明『どですかでん』 今村昌平『神々の深き欲望』(Amazon)

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コメント

 髭ダルマLOVEさん、はじめまして。コメント、ありがとうございました。

>>この作品、衝撃的でしたね~。

 この衝撃度が良かったですね~。三部作の最後がどんな映画になるのか、楽しみです。

 これからもよろしくお願いします!

投稿: BP | 2007.04.01 22:41

はじめまして。
髭ダルマLOVEと申します。
映画生活からお邪魔致しました。

この作品、衝撃的でしたね~。

文面より映画や芸術に造詣が深い方だとお見受けいたしました。またよらせていただきますっ^^

TBさせてくださいね。

投稿: 髭ダルマLOVE | 2007.04.01 17:35

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