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2006年4月30日 - 2006年5月6日

2006.05.06

■HDR(High Dynamic Range)写真

Hdr01
HDR(High Dynamic Range)写真
ニューヨークの市街地で撮影されたHDR写真集
         (What is going on ?さん経由)

 フェイクミニチュア写真に続いて流行しそうな、HDR写真という手法がPingMagで紹介されてました。
 露光量を変えて同じ場所を撮影した複数の写真を合成することで、ミョーにハッキリ・クッキリした画像が作れるんだそうです。映画"攻殻機動隊"の背景画みたい。

 この写真は、PhotoshopCS2や、ソフトウェアPhotomatixなんかで、作ることが出来るんだけど、合成された写真には、シュールで空想的な感じが生まれるんだ。(略)
 ある曇り日に僕は三脚を持って、東京のいろんな場所の写真をマルチ・エクスポージャーを使って撮ってみた。。(略)
 灰色の空は前よりももっと強調されて、建物の詳細はむき出しになった感じ。そして、僕はこの写真のシリーズを「ゴッサム・シティ東京」と呼ぶことにした。

 かなりインパクトのある写真です。Flickr: The HDR Poolの素晴らしい画像を観ていると時間を忘れます。幻想的。
 でもなんかちょっと昔のアメリカのポストカードの印刷に何故か色合いが近くって、懐かしい感じがするのも事実。

 これを工場萌え的画像や、ハイビジョンの動画に使ったら面白そうですね。
 あと過渡競争状態のデジカメでこんな写真が自動で撮影できるものを売り出したら、差別化技術になるのでは。基本的にソフトウェア処理の技術なので、即発売できるのではないだろうか。ほしい。

 あとCGの世界では、ハイダイナミックレンジ(HDR)レンダリングというのがわりと昔からあるみたい。

◆自作したい人のために
Flower_up_3  この写真を作成するPhotomatixというソフトがあります。Download HDR photo software Photomatix Basic 1.0でダウンロードできます(Basicはフリー)。
 「File - Open」で融合したいいくつかの写真を開いておいて、「HDRI - Generate HDR」を実行すると、たちまち自分で作成できます。私の稚拙な実例は右。いい被写体がなく、なんか普通の写真でごめんなさい。

 これ、とりあえず露出を3段階変えたもので撮影したのだけれど、ホワイトバランスを変えるのも有、かも。この写真と通常撮影のものと比べると、あきらかに色が鮮やか。下手なカメラマンでもなんかうまくなったような気がするくらいのハッとする鮮やかさが出ています。

◆関連リンク
Flickr: The HDR Pool(451ページ有。見ごたえ充分)
Hdr02
 引用した写真は下記リンクからです。
 Midtown Shadow airplane and building shibuya backstreet PragueBuilding

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2006.05.05

■豊田市美術館 ヤノベケンジ他 秘密基地 Secret Base + 内なる子供

Survival_system_train
ヤノベケンジ《サバイバル・システム・トレイン: Survival System Train》
+榎忠《秘密基地 You’re on call at the “HUSH-HUSH”》

Survival_system_train02_1秘密基地 Secret Base (豊田市美術館 公式HP)

 先日、お伝えした展覧会に行ってきました。
 サバイバル・システム・トレインが観れただけで大満足。これって、豊田市美術館の収蔵品ということなので、今後、常設展示されることを望みます。

 今回の展示は、榎忠(えのき・ちゅう)氏(プロフィール)の銃の展示とセットで、上記のような雰囲気を全体で作ってありました。なかなかものものしい感じ。僕の好みからだけ書くと、銃がリアルすぎて、子供の秘密基地という雰囲気とは少し違ってた。これだけリアルな銃が並ぶと、遊びというよりまがまがしさが前面に出てきてしまう、という感想。
 右の写真が入場する入口からのショットですが、この後、会場へ入っていくと大量の銃器が目の前に広がり、なかなかの迫力ではあります。

Survival_system_train03  でも僕は、サバイバル・システム・トレインをやはりずっと観ていたくなった。このプロポーションとつなぎめ等のデテイル、たまりません。今回、中にはアトムスーツを着たトらやんが着座していたが、代わってやりたいくらい。

 何故好きなのか? レトロフィットな機械へのノスタルジー? 廃墟を髣髴とさせるテクスチャ? まるっこい雰囲気? 何が決定的に訴えてくるのかわからないけれど、このイメージがとにかくいい。

Torayannko004_1  この展示スペースで昨年、ジャイアント・トらやんが火を噴いたわけだけど、今年はVTRでその情景を映していた。上映作品は下記の3作品。PLAY STATION 2は、神戸でのイベントを中心に構成。

1.PLAY STATION 2
  2006,12分20秒 制作:青木兼治,榎忠
2.妄想砦のヤノベケンジ
  1992,9分 制作:石橋義正
3.キンダガルテン G-TRYのひみつ
  2005,11分15秒 制作:青木兼治,ヤノベケンジ

 右の絵は、じっと見入る父親を待ちくたびれたうちの子が描いたトらやん女ヴァージョン。

内なる子供 (豊田市美術館 公式HP)

国内外の作家たちによって表されたこども像約80点をとりあげます。心象のありかともいうべき、さまざまなこどもの像をとおしてアーティストの心のうちを覗き、そこに住みついている〈こども〉を見つけ、また皆さんのなかにいる〈こども〉とも出会っていただきたい展覧会です。

 奈良美智(《Dead Flower》)、会田誠、荒木経維とかの子供を対象とした作品展。

Kato_izumi_01_1  圧巻だったのは、加藤泉という作家の作品。ここ(藍画廊 加藤泉展)とかここ(GALLERIA CHIMERA )で作品が観えますが、この凶暴さがなかなか凄い。
 ネットで見つけたオブジェ作品の写真が左。
 どうですか、このまがまがしさ。

 あとルーマニア出身の彫刻家コンスタンティン・ブランクーシ中澤 英明、クリスチャンボルタンスキー(Christian BOLTANSKI )(GOOGLE IMAGE)とかが好みでした。こういうたくさんの作家の作品を一同に観えるのっていいですね。堪能。

◆関連リンク

・『iPodでアートを持ち歩こう!ART STAR:ヤノベケンジ「KENJI YANOBE」』
(Amazon)

・『ドキュメント子供都市計画
』(Amazon)

・作品集『ヤノベケンジ1969‐2005』
(Amazon)

はてな - 加藤泉、ドイツの画廊 Murata&friends 略歴
湯沢 英彦『クリスチャンボルタンスキー―死者のモニュメント』 水声社

 

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2006.05.04

■BSアニメ夜話/王立宇宙軍~オネアミスの翼
  ROYAL SPACE FORCE- Wings of Honneamise

BSアニメ夜話/王立宇宙軍~オネアミスの翼(公式HP)

5月3日(水) 23:00~
「王立宇宙軍~オネアミスの翼」 1987年 / 監督 : 山賀博之
 
[出演] 江川達也、神山健治、古厩智之
岡田斗司夫、氷川竜介、中川翔子、里匠

 まさにこの映画に魂を込めた岡田斗司夫がいるので、なんかいつになくしゃべりにくそうな気配を感じたのは僕だけでしょうか(^^;)。しかも前半盛り上がりすぎて、後半は結構展開が厳しくなってきた、という雰囲気。
 しかし江川達也氏がしっかり言ってくれました。山賀監督を前面に出しての質問と言う形で。リアリティを主題にしたのに、当時のガイナックスの面々が持っていた地が出ていないのではないか?もっと熱気とか情熱とかがリアリティとして表現できたのではないか?という突っ込み。

 僕は『王立宇宙軍』って、劇場で一回観た限りで、その後、見直していない。リアリティ前面であまりにドラマ性がなく、しかもその主題にも乗り切れなかったので、再見する気持ちが盛り上がらずに一回こっきりになっている。

 そこんところの違和感をうまく江川氏が突っ込んでくれたと思ってみてました。

 ただその時の岡田氏の反応がとても興味深かった。あれだけ真剣な雰囲気で考える姿は今までこの番組で観たことがないくらい。回答は山賀はあれが地だ、というもの。
 そこでさらに突っ込んで聞きたかったのは、何故岡田氏にとってこの一本が生涯一本と決めた映画なのか、そして何故それが徹底したリアリズムを狙ったのに当時のスタッフと岡田氏周辺のリアルな熱気(学園祭前日)が画面に表現されていないか、というところ(当然、僕は直接、それを知らないのだけど、、、)。リイクニと宗教の関係とかと合わせて、そこらをもっと聞き出してもらいたかったと言うのが、今回の感想。どっかインタビューとかでここらを語っている記事はないのでしょうかね。知りたい。(この作品が企画デビュー作でその後、何本か映画を企画もしくはプロデュースしてほしかったという意味で、何故生涯一本なのか知りたい。) 

 ご本人のBLOG岡田斗司夫のプチクリ日記には、「イノセンス」私的解読はありますが、『王立』については触れられていません(イノセンスはバトー寅さん映画という指摘と、押井守どS論が面白い)。

◆蛇足に僕の感想
 生活観とかドラマ性を廃したリアリティということでアニメでは当時画期的だったかもしれないけど、既に大友克洋の漫画がそれを数段上のレベルで実現していたので、なるいと感じた記憶。打ち上げシーンも、サターン5のNASA実写映像のコピーとしてみえてしまった。(そりゃ、庵野作画でブローアップはされていると思うけど、狙った感動の質が同一なので、新鮮味を感じなかったわけです))

◆5/4追記
 アニメ夜話『イノセンス』で、岡田氏が語っていた3D CGアニメのリアリティについて、メモ。「フィギュアの世界でもリアリティなフィギュアを作れる人はいるが、それを魅力的なものにできるのは100人に1人。」 『王立宇宙軍』で江川氏が言いたかったのはまさにそこでは。
 僕らが観たかった『王立』はリアリティをクールに追求した映画でなく、リアリティ+魅力(作り手のリアル追求以外の想い)を表現した作品であったはず。その回答が番組で語ってほしかった部分なのだった。

◆関連リンク
GAINAX NET|王立宇宙軍 オネアミスの翼
王立宇宙軍~オネアミスの翼 - Wikipedia
<ファンサイト>
王立宇宙軍 オネアミスの翼映画監督・山賀博之を勝手に支援するHP
WWF 『王立宇宙軍という映画』

当BlogBSアニメ夜話 関連記事
カリオストロの城 ・『嵐を呼ぶモー レツ!オトナ帝国の逆襲』
『未来少年コナン』  ・『機動警察パトレイバー』
『銀河鉄道999』
第6弾 ・第4弾 ・第3弾 

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■Real Life Simpsons Intro
  ザ・シンプソンズ実写版 予告

Real_life_simpsons
YouTube - Real Life Simpsons Intro 
 (ITmedia News:異例の人気 動画共有「YouTube」の正体より)

 これ、本当なのでしょうか。実写版の予告篇。ほとんどアニメの本家をそのまま実写に移し替えただけのオープニング。でもバートはまだしも、ホーマーとマージのイメージが違いすぎ。あの黄色い顔とマージのとんがりヘアーは再現してほしかった(^^;)。
Itchyscratchy

 もし実写版があるならば、イッチー アンド スクラッチー:The ITCHY & SCRATCHY Show (YouTube)も希望、、、って残酷すぎますね。

◆関連リンク
Live Action Simpsons New York Timesの記事
THE SIMPSONS (公式HP)
英国Sky One 
 ITmediaの記事によれば、ここがYouTubeにこのイントロビデオの配信を許可したとある。

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■トーマス・ジョンソン監督 『チェルノブイリ 連鎖爆発阻止の闘い』
  Thomas Johnson's Battle of Chernobyl

Discovery Channel - Battle of Chernobyl (米国公式HP)
チェルノブイリ 連鎖爆発阻止の闘い (米国公式HP)

 1986年4月26日午前1時24分、1000mの高さにもなる虹色の炎がウクライナの空に立ち上った。チェルノブイリ原子力発電所が爆発事故を起こしたのだ。
 それから8ヶ月、8000人の若き兵士、炭坑夫、市民がソ連全土から救援に駆けつけた。彼らは広島に投下された原爆の10倍とされる2次爆発を防ぎ、全世界を放射能汚染から守ったのだった。それから20年が経った今、史上最悪の原子力発電所爆発事故を様々な角度から検証する。
04/26(水) 21:00~23:00  04/27(木) 12:00~14:00
05/03(水) 01:00~03:00  09:00~11:00  18:00~20:00

 ディスカバリーチャンネルで事故20年を期に放映されたドキュメンタリー番組。隣接したウクライナのプリチャピ市を中心に、20年前の事故当日から「石棺」の封印が完成するまでの約7ヶ月を描いている。ここでいう闘いとは、放射能の封じ込めと、二次爆発の阻止である。

◆1986.4/26
 冒頭、1986.4/26 AM1:23に起こった爆発は地上1000mまで届く「オレンジと赤と青の閃光で、まるで虹のようだった」という目撃者のコメントとCGの(ちょっと稚拙な)再現フィルムからスタート。Chernobyl_0426 AM8:00のシーンでは、一番にヘリコプターで取材したノーボスチ通信社のイゴール・コスティン氏の空撮映像がながれる。これは番組によると、20年間極秘とされていた封印された映像らしい。続く、放射性物質の直撃を受けたプリチャピ市の映像では、放射線による画面の白い閃光が確認できて、生々しい。

◆人の作りしものとの闘い 
 今回の番組で初めて知る当時のソ連政府の現場での対応がものすごくリアル。下記のプロセスが、その場その場で作戦が練られて対策として処置されていく様が描かれる。まさに人類が自ら招いたパンドラの箱を前にして、あわてふためいてそれを封印する様が描かれる。

ヘリコプターで80kgの砂袋で合計6000tの砂とホウ素を投下してまず灰の拡散を止める。
地下に貯まった消火の水と核燃料が反応して一瞬にして3~5メガトン級の爆発が起こり欧州全域が壊滅する危険があるため、地下の水を抜く。
地下トンネルを掘って、爆発した4号炉の地下に30m四方の穴をあけ、最終的には炉が地下へメルトダウンしないようにセメントを流し込む。
セメントと鉄骨と鉄板で石棺を建造し、4号炉を封印する。その過程で、問題となった建屋屋上の汚染された高放射能を帯びたグラファイトの処理がすさまじい。ロボットで対応していたのが、電子機器がいかれて作業が進まず、最終的には予備役の20代の若者たちが自家製の急ごしらえの簡易装備だけで素手でグラファイトを階下へ投下していく。この兵士たちを「バイオロボット」と呼んだ。なんとも痛ましい。人間を機械的でそう呼ぶ感覚がどう出てきたのかまでは番組は追求していないが、行く方も行かせる方も、そこまで過酷な状況だったのだと思う。
Chernobyl_biorobo
 カメラマンのイゴール・コスティン氏はこの光景を「別の惑星のようだった」と表現している。現実感が保てなくなるほど、辛い光景だったのだろうと想像できる。

 最終的には、50万人が作業に従事し、この人類未曾有の人災はなんとか封じ込めることが出来た(といっても第二の石棺計画を急ぐ必要が出ているというが、、、)。しかしソ連の政治的にこのタイミングで起きたことが人類としてはまだましな結果になったようにみえてしまった。(もちろん被爆し死亡もしくは後遺症に苦しむ人たちには本当にたいへん気の毒なのだけど、、、。)

 ひとつは当時ゴルバチョフが進めていたグラスノスチで情報が西側にも開示され、国際原子力機関の査察が可能だったこと。
 そしてもうひとつは、とは言ってもまだ共産主義体制が継続しており、人海戦術をとらざるを得なかったところで、兵士や民間人(特に賞賛すべきはわずか100ドルの賃金で穴を掘らされた採掘労働者)を強制的に政治の力で投入できたこと。これが自由主義の国だったら、これだけの人を投入することはきっと不可能で、事故の被害はもっと拡大していたことだろう。

 国際原子力機関でのソ連のレガソフ氏の4万人がガンで死亡する恐れがある、という当初の推定の数字は、当の原子力機関で西側に受け入れられずに4千人の見積りとされたらしい。そして、結果現在までの公式な死者はわずか59人。作業員50万人と避難民13万人の現在までの実態調査はなされていないという。なんということか、愕然としてしまう。

◆日本では 
 もし日本で起きた時に、誰がその現場へ作業へ向かうのだろう。自らの命を賭けて(ほとんど捨てて)、日本人を救おうとする人々がどの程度いるのか、、、。むずかしい問題だと思う。国家プロジェクトもしくは電力会社がその利益を吐き出してでも、そうした時に遠隔で作業が出来るロボットの開発は、狭い国土でこれだけ原発を擁する日本としては、リスクマネジメントとして急務ではないだろうか。

 と言ったことを考えさせる鮮烈な映像の番組でした。これが一部の限られた視聴者に向けてしか放映されないところが、チェルノブイリ問題の「風化」なのでしょうね。僕としては、『ダーウィンの悪夢』より衝撃的でした。映像の持つ力をまざまざとみせつけられた2時間。これから広く再放映されることを望みます。

◆関連リンク
製作会社 PlayFilm
・イゴール・コスティン Igor Kostin photographer Google Image
Igor Kostin『Chernobyl: Confessions of a Reporter』(Amazon)
Igor Kostin『Tschernobyl. Nahaufnahme. Nahaufnahme』(Amazon)
23 Random Images from album :: Chernobyl(スライドショー)
日本チェルノブイリ連帯基金-home-
チェルノブイリ子ども基金
・京都大学原子炉実験所 原子力安全研究グループ
  チェルノブイリ事故データ等

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2006.05.03

■アンドリュー・パーカー著
   『眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く』
   In the Blink of an Eye 感想 前編

Theeyetoeyegallery
BioMEDIA Gallaries the Eye to Eye Gallery

 のっけから生物の眼について素晴らしいサイトを見つけたので、この写真を使わせてもらいました。インパクトと美しさをお楽しみいただければ、幸いです。
 本書とは直接関係ないですが、生物の目について徹底的にこだわったこのサイトが素晴らしいので、まずはご紹介。で、以下、本書について。長いので2回に分けて書きます。

アンドリュー・パーカー著『眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く』
In the Blink of an Eye
(Amazon)
Intheblinkofaneye

 先日紹介した本書を読了。思ったところを関連リンクとともに書いてみます。

本書のなりたちについて

 まずカンブリア紀大進化の謎に対するラディカルな仮説を思いついてしまった著者が、その興奮を抑えようとして、あえて淡々と生物の眼について記述する文体がいい。まだろっこしいという感想もウェブには挙がっているけれど、幼い頃のシュノーケリングで遭遇した生物の色の不思議(P138)を描写して、それとなく自分の生い立ちと生物の関係から紐解くアンドリューパーカーの筆に、僕はむしろ好感とワクワク感を持って読み進めた。
 知的エンターティンメントとしての視点だけからだったら、冗長に感じてしまうじれったさも、この研究者が何故この視点を持つに至ったかという一研究生活の記録として読むと、とても面白い。研究者って、こんなこだわりが一番重要じゃないかと思ったりするので、、、。

進化についての雑感 ここは進化に詳しい方は読み飛ばしてください。

 さて、本書のまずは骨格である生物の進化について。すみません、この部分、純粋に本書の感想ではなく、僕の単なる進化という言葉に関する感想です。

 ここで強烈に思ったのは、生物の進化という現象についての本質的なとらえ方。専門家からみれば、あたりまえのことなのだろうけれど、「進化」って実はあらかじめ目的性を持ってその方向を目指して生物が自分を変えていく現象ではない、ということを痛感した。
 「進化」という言葉を使うから何か目的のベクトルを持っているようにイメージしてしまうけど、実は「進化」の本質は「淘汰」なんですね(うー、当たり前と思った人、読み飛ばしてください)。

 どういうことかというと、進化は結果論でしかなく、実は単に突然変異で生まれたある環境への適応に秀でたものたちが、生き残った結果なのだということ。
 たまたま眼を持った生物が生まれ、それを持っていない生物がどんどん食われて滅びていって、結果として眼を持った生物が我が世の春を謳歌する状態が訪れ、それをヒトが「進化」と名付けた。「淘汰圧」という言葉が象徴するように、太陽光線という圧倒的な普遍的環境が「淘汰」を律して、眼のない生き物が滅んでいく。この淘汰の結果として、眼のある生物が長い時間かけて生き残った結果が「進化」。本来なら「眼を持った生物への進化」などという目的的な言葉を使わず、「淘汰の結果として、なりゆきで死滅を続けて生物は眼を持ったものが主流になった」、と表現すべきなのですね。

Geologytimescale 普通、目的もないところで、そのように見事に生物が発展(と思われる方向へ)変化するということはなかなかイメージできないのだけど、これに進化のタイムスケール:Geology time scaleを加えて考えるとイメージがしやすい。(クリックして拡大してみてください)

 左の地史学の図で、地球46億年の歴史でみると、5.4億年前のカンブリア紀は地球の歴史の88%経過後で、人の誕生に至っては99.96%経過時点のできごと。これだけ気の遠くなる時間をかけて、死滅していった生物の淘汰の結果として、たまたま眼を持った生物と、人類が我が世の春を現在、謳歌しているというわけ。目標を持って進化が進まなくても、なりゆきとしてこれだけの膨大な時間の消費があれば、この機能的にみえる生物群が生き残るというわけです。

 ところで「進化」って何故「淘汰」といわなかったのでしょうね。この方が実態をうまく表現しているのに、、、。これって西洋で神の概念とうまく融和するための学問的戦略だったり、優生学が前面に出すぎるのを嫌ったり、もともとプラグマティックな欧米の考え方とマッチさせたり、という諸般の事情によるのでしょうか。

 (ちょっと蛇足。「淘汰」の視点で見ると、とっても危険ですが(あえて上の認識を理解してもらうために刺激的なことを書くと)、『ダーウィンの悪夢』で触れた南北問題とか、現代日本のストレスによる自殺増加とかも、環境変化に追従した「淘汰圧」の一形態という切って捨てるような言い方が生じてくるからなのでしょうね。それを「淘汰」と呼ばず、「進化」としておいた方が、まずは軋轢も少なそう)

 すみません、繰り返しますが、この部分、純粋に本書の感想ではなく、僕の単なる進化という言葉に関する感想です。本書でアンドリュー・パーカーは当然「進化」についてこうした概念で記述しています(が、一部徹底できていない部分もあって、こんなことを考えつつ読んだのです。) (後編に続く)

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2006.05.01

■ハイビジョンレポート 川合次郎兵衛塚1号墳

 HDR-HC1を持って、ご近所の世界遺産(?)を調査に行ってきましたので、ご報告。

Jirobei_zuka_02
川合次郎兵衛塚1号墳
(公式HP)

 次郎兵衛塚1号墳は、出土した須恵器から古墳時代の終わりごろ、7世紀の初めに築かれたものと考えられます。すべて川原石で葺かれた墳丘は二段に築かれており、平坦なところにもこぶし大の石が敷かれていました。
 復元を終えてみると、古墳の頂上以外で目にするものは石ばかりで、その姿は見る人を威圧するかのようです。まわりを巡る濠も人を寄せつけません。

 実は我が家から車で5分のところに、こんな古代の遺跡がありました。引っ越してきたこともあって、不勉強で知りませんでした。子供が学校で見学に行って、近くにあるのを知りました。どうやら近くを流れる木曽川と飛騨川の自然の恩恵を受けて、けっこう古代には栄えていたらしいです。

 これは、一辺29.5mという巨大な石積みの古墳(方墳と言うらしい)ですが、言ってみれば日本のミニピラミッド。こんな雄大なものが近所にあってなんか感動。エジプトのピラミッドへは一度は生きてるうちに行ってみたいと思っていますが(きっと行けない)、こんな近くでまさかこのようなものが見えるとは。

 古墳って、前方後円墳とか、土の塊の小山というイメージが強くて、こういう石積みのものは知らなかったので、観てびっくり。石は木曽川から豊富にとれたものなのでしょうね。みんな丸っこい川原石でした。
 登ってみたかったのですが、残念ながら禁止でした。

Jirobei_zuka_01
 土に埋もれていたようですが、もしかしてこれもミミズの仕業(^^;)。
 いや、冗談じゃなくて(^^;)、古代遺跡が土に埋もれているのは実はミミズが周りの土を数千年かけて掘り起こすのが原因、と栗本慎一郎の本で読んだことがあります。これ、遺跡が何故埋もれているか不思議だったので、目から鱗でした。
 小さいことの積み重ねなので破壊されることもなく、徐々に埋もれていくというところが時間のスケールを感じさせます。

◆関連リンク
ボロ具は懐古の薫り☆気儘に全般...etc.さんの記事によると、石積みは全国でも珍しいそうです。
古墳公園 日本各地の古墳の写真を掲載されています。これで見比べると、次郎兵衛塚、なかなか大物の風格。しかも美しい。
東海古墳★NAVi☆ 川合次郎兵衛塚1号墳

 岐阜県指定史跡 1辺30mの2段の方墳で、墳丘全面に貼られた川原石が復元されています。3基の横穴式石室を持ち、中央の主石室は全長15.5mの複室構造で県下でも最大級の規模です。

・2ch 「遺跡は、何故、地中に埋まっているのか? 」では、ミミズ説も書かれていますが、決定打にはなっていません。

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2006.04.30

■豊田市美術館 秘密基地 Secret Base

Secret_base
豊田市美術館 秘密基地 Secret Base (公式HP) 06.4/14-6/18

出展予定作家=榎忠、大岩オスカール幸男、岡崎和郎、小沢剛、須田悦弘、中原浩大、日高理恵子、村上隆、ヤノベケンジ
 キーワードは「秘密基地」。誰もが子どものころ、大人に干渉されない秘密の場所を持っていました。大人の視線から開放された秘密基地は、心躍らせる冒険的な空間で、子どもたちの願いをかなえる可能性を秘めた場所だったのです。

 豊田市美術館で、ヤノベケンジの展覧会「キンダガルテン」を観てから、もう一年近く経つのですね(遠い目)。今年もヤノベケンジ作品が豊田市にやってきます。「サバイバルトレイン」は観たかった作品なので、是非行ってきます。美術館の企画名が「秘密基地」というのも、なかなか素晴らしい。ゴールデンウィークにふさわしい美術展に拍手。

豊田市美術館 内なる子供 The Child(公式HP)  06.4/14-6/18

 あわせて、こんな写真展も開催されていて、一粒で二度おいしい!

◆関連リンク
・<5/5追加> 当Blog感想 秘密基地 Secret Base + 内なる子供

という楽しいNEWSとあわせて下記を紹介。村上隆は私も嫌いです。町山氏の熱い筆を読んでみてください。
Sankei Web 社会 村上隆さんとナルミヤが和解(04/24 23:23) 
ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
 やっぱり、どうしても村上隆はムカつくんだ。 
 村上隆のDOBのモデルってミッキーマウスじゃないの?
村上隆が訴訟提起した著作権侵害事件の和解による終了について
 カイカイキキ: Kaikai Kiki Co.,Ltd.
(村上隆公式HP)
 ここでDOBとマウスくんの絵を比較して見えます。
 村上隆のキャラクタなんて、気持ち悪いだけなので、真似すんな、と私は言いたい。街であの絵の服を着た子供が増殖するのはイヤです。

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■土井裕泰監督 『いま、会いにゆきます』

Ima_a_yukimas 映画『いま、会いにゆきます』(公式HP)

 録画してあったのをさっき観終わりました。なかなか端正で感じのいいファンタジー(SFというよりはファンタジー)になっています。主人公は『黄泉がえり』と同じ竹内結子で、梶尾真治を思わせる話。

 今更この映画を取り上げるのもなんですが、カート・ヴォネガット・ジュニアの『タイタンの妖女』と『スローターハウス5』が出てくる映画(?)ということで気に入ったので、紹介。

 回想シーンで、高校の陸上選手である主人公の性格描写にヴォネガットの作品がうまく使われている。ヴォネガットファンは、このシーンで一気にこの人物像を想起(^^;)。あとのシーンでも、現在の主人公の書棚にハヤカワの青背がチラリと何冊か見えて嬉しくなる。タイトルはハイビジョンでも読めないけれど、きっとヴォネガット作品でしょう。「アーカイブ星」の設定もちょっとヴォネガット。

 素晴らしくマニアックなファンサイト映画「いま、会いにゆきます」小ネタ集・設定など)によれば、このヴォネガット作品の登場は、「原作の設定が受け継がれています。(原作の巧はカート・ヴォネガット・ジュニアのSF小説が好き) 」とのこと。監督の趣味というか、原作の市川拓司の趣味というわけ。

 映像的には、種田陽平の美術がいい。印象的だったひまわりのシーン、家族の住む古い民家と工場跡地の「#5」と書かれたドア。ここらあたりは種田陽平美術の真骨頂という感じ。この工場には設定があって、「株式会社 金星スプロケット工業 ―歯車・機械部品―」 とのこと。

 あと子役の武井証、繊細な子供の役をやらせたら抜群という感じ。TV版も脚本の岡田惠和と、この佑司役は武井証で同一となっているようです(ファンサイトより)。

 連休初日、いい映画で心あらわれました。
 家族には「何観てるの?似合わん!」と一言でバッサリ切られましたが、、、。

◆関連リンク
ファンサイトより小説、映画、TV、コミック比較
堤幸彦監督『恋愛寫眞 Collage of our Life』(2003)のトリビュート(?)『恋愛写真―もうひとつの物語』が市川拓司。
『おぼえていてね―アーカイブ星ものがたり』 (Amazon)
映画DVD 『いま、会いにゆきます』(Amazon)
カート・ヴォネガット・ジュニア(Amazon)

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