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2006年1月22日 - 2006年1月28日

2006.01.27

■レイモンド・カーヴァー Raymond Carver ファースト・インプレッション

carver
 今年になってから、ふと図書館で手にとってレイモンド・カーヴァーを読みはじめた。読んだ順にまずは簡単にファーストインプレッション。

 うちの町の図書館にカーヴァーは『必要になったら電話をかけて』が一冊あるきり。カーヴァの死後に見つかった未発表の原稿からなる短編集。凄く読みやすい。静かなトーンの小説群。でもゴツゴツと何か引っかかる感覚。(しまった、こういう特殊な一冊から読むべきでなかった。)

 ということで、気になってきて村上春樹が選んだ傑作選『カーヴァーズ・ダズン』を読む。
 これは、どれもレベルが高い。「でぶ」、「ダンスしないか?」、「足もとに流れる深い川」、そして「大聖堂」。どれも底流でほのめかされる何かが響いてくる感覚。書かれないことで予感させる向こう側。

 んで、次に読んだのが、最近再刊された初期短編集『頼むから静かにしてくれ Ⅰ』。
 ただの日常の描写なのにどこかで齟齬する現実。書かれないことで訴えてくる何ものかが全ての短編にある。一編づつ、ジワジワと自分の中にそれが堆積していく。

 そして後半の「アラスカに何があるというのか?」と「ナイト・スクール」を読んだところで、カーヴァー作品によって無意識領域に堆積していたものがグワッーと浮き上がってくる。背筋がゾクゾクする。これがカーヴァーの凄さなんだと(まずは第一段階だろうけど)わかった気がする。この作家、本当に凄いです。

 白日にさらし描写されるよりもそこへ至る過程のみを淡々と見せられ、その先を想像にまかされることほど、人間の想像力を刺激するものはないのかもしれない。想像力ほど怖いものはない。そんな本質を直撃する短編を(それだけを)なんでもない日常の物語としてずっと書き続けていたカーヴァーの暗黒を思う。直視することは決してないのだろうけれど、その淵からのぞきこんだものの深さに慄然とする。凄いイメージをみせてもらいました。

◆「ナイト・スクール」より。

 その窓の男は部屋の中をじっと覗き込んでいる。それから網戸をこじ開けにかかる。夢を見ている男は身動きすることができない。彼は悲鳴をあげたい。でも息を吸い込むことができない。しかしそのとき雲が切れて、月が姿を見せる。そして彼は外に立っている男が誰かを見分けることができた。それは彼の一番の友達だった。夢を見ている男の一番の親友、でもその悪夢を見ている人間にとってはまったくの知らない男だ。

◆P.S.
・カーヴァーを全て訳している村上春樹も作品のタッチはとても近い。だけれどももしかしたらカーヴァーのは桁が違うレベルなのかも。
・あと村上春樹の『アフターダーク』は、何故この作家がこういう本を書いたのかな?と不思議だったけれど、カーヴァーをそのミッシングリングにあててみると、凄くよくわかる気がした。日常に現われた裂け目をこの作家は覗き込んでみたかったのでしょう、きっと。

『必要になったら電話をかけて』 『Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選』
『頼むから静かにしてくれ〈1〉』 (Amazon)

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2006.01.26

■ジョン・ラセターがディズニーランドのアトラクションを制作

pixar_head_officeCNN.co.jp : 米ディズニーがピクサー買収

ピクサー株の50・6%を持つ米アップルコンピュータ最高経営責任者(CEO)のスティーブ・ジョブズ氏は、ディズニー最大の個人株主となり、ディズニーの取締役に就任する。

ジョン・ラセター氏は、両社のアニメスタジオ合併に伴い制作現場の最高責任者に就任し、テーマパークのアトラクションの制作にも関与する。 (略)
「カーズ」後のピクサー作品は未発表だが、パリのレストランに住みついているネズミが主人公の新作が07年公開とみられ、ヒット作の続編第3弾「トイ・ストーリー3」の制作も進行中とされる。

 なんかインパクトあります、このニュース。
 ジョブズがディズニーをどうカジ取りするかも楽しみですが、ラセター氏が作るディズニーアトラクションというのが楽しそう。『トイ・ストーリー』を皮切りに、何かやってくれそうな予感。 3D-CGを武器に立体映像空間とアトラクションを高次元で融合したようなものを期待。
 ラセターといえば、宮崎マニア。いつかシンデレラ城がカリオストロの城に替わり、ランド内をハウルの城が動き回る日が来るかも。

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■雑誌 CUT (カット) -岩井俊二が語る、岩井俊二の10本

Cut 06.2月号 特集:CUTが選ぶ50人2006年は彼らだ!!(rockin'on刊)
(Amazon)

特集:ヴェンダースが語る、ヴェンダースの10本/岩井俊二が語る、岩井俊二の10本
脚本家サム・シェパードと20年ぶりにタッグを組んだ新作『アメリカ,家族のいる風景』で「復活」との呼び声高いヴィム・ヴェンダース。そして、ついに初期の伝説的なTVドラマ作品集がDVDでリリースされる岩井俊二。 ’80年代と’90年代をそれぞれに駆け抜けてきた監督たちの唯一無比の軌跡を、彼ら自身の言葉で振り返る特別企画!

 本屋で見かけて立ち読みしました。
 岩井俊二の特集の雑誌って、ひさびさに見た気がする。『initial イニシャル ~岩井俊二初期作品集~』が出るのに合わせて、過去の自作について語っている。『FRIED DRAGON FISH』での浅野忠信の持っていたインパクトとその映像の撮り方とか、興味深いコメントが出ています。ファンには嬉しい記事。

◆関連リンク
 最近、こんなのも出ているのですね。ラジオ「円都通信」から、というですが、最近、聴いていないのでよく知りません。番組のサイトはここ
・岩井俊二プロデュース 戯作通信 ラジオドラマ (1万枚限定生産) [Limited Edition]
『J.C』 『朝日の影で朝食を(仮)』 『カルシウム (仮) 』 
戯作通信サイト

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2006.01.25

■新刊メモ『さまよえる天使』『絵画の準備を!』『爆発道場』
   『モンティ・パイソン正伝』『プロセス・アイ』

       

柾 悟郎著『さまよえる天使』
 ひさしぶりにこの作家の本を見かけて嬉しかったので、メモメモ。実はまだ買ってないので、まさに備忘録として。

松浦 寿夫著『絵画の準備を!』

■いとうせいこう氏■ 語られるべきすべての絵画の、言語形式での完全アーカイブ。このテキスト群はまるで百科全書のように一生涯参照可能だ。

 なんか凄い。たぶん知ってる人にはもの凄く有名な本なのでしょう。図書館で借りようと思っています。

福井晴敏×樋口真嗣『爆発道場』

 作家・福井晴敏と、映画監督・樋口真嗣が、古今東西の「爆発映画」(=特撮映画)を語っている本。映像好きには「爆発」と言えば、アニメータ「金田伊功」がまず思い浮かぶのだけれど(??)、樋口真嗣の語る金田アニメ評って読んでみたい。この本に書いてあるかはまだ未確認。

グレアム・チャップマン, ジョン・クリーズ, テリー・ギリアム, エリック・アイドル, テリー・ジョーンズ, マイケル・ペイリン, ボブ・マッケイブ著『モンティ・パイソン正伝』

伝説のコメディ・グループ、モンティ・パイソンのメンバーが、はじめて明かす「モンティ・パイソンによるモンティ・パイソンのすべて」。各自の生い立ちから学生生活、テレビ界での活躍とグループの結成秘話、パイソンズとして活動中のひみつ日記、解散後の各自の言い分から未来の予定(?)など、聞きたくないことまで含めてパイソンズ自身がこれでもかと語る。未公開のプライベート写真や図版約200点を収録した、モンティ・パイソン最新作。

 モンティ・パイソン本もいくつか出ているけれど、これは正伝だそうです。これも図書館で借りたいので、メモメモ。

茂木 健一郎『プロセス・アイ』
 なんと初の小説刊行とのこと。ちょっとびっくりしましたが、考えてみれば、クオリアの問題意識って、小説の世界に近い部分があったので、出るべくして出たということなのでしょうか。氏のクオリア日記によれば、山田正紀氏推薦とのことです。『神狩り 2 リッパー』で「クオリア」をキーワードにしていたので、推薦文を依頼されたのでしょうか??

12章を読んで新幹線で泣いた。この「物語」には風が吹いている。その風は世界を吹き抜けてぼくのクオリアを優しく震わせる。
山田正紀

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   『モンティ・パイソン正伝』『プロセス・アイ』"

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2006.01.23

■工場萌えリンク

Blog 工場萌えな日々さん

 どこかの雑誌で立ち読みしてキーワードだけ覚えていたので、検索してみました。主に化け学系の工場の風景がいい味出してますね。素晴らしい写真をお楽しみ下さい。

 人は『ブレードランナー』等(『ウルトラマン』?)の映像の記憶からこうした風景に萌えるのか、それとも現代人のなんらかの精神作用からそのデッドテックな風景に萌えるのか??興味のあるところです。
 ちなみに僕は、名古屋の港区のやはり化学工場群の風景が好きです。ケミカルプラントというところが『ブレードランナー』説を思い起こさせる根拠かな。

 以下、工場写真の素晴らしいサイトをいくつかリンクして見ました。

モカモカパラダイス moca's eye モカの目さんの工場写真
 川崎のコンビナートの夜景が素晴らしい。

立体交差中心 工場写真 化学・電力 製鋼・鉄鋼・セメント
 工場より、道路の立体交差萌えの写真

東京周辺の夜景

夜景五十三次一覧 工場だけというわけではないですが、、、。

夜景Blog と 夜景壁紙.com工場・埠頭

・グーグル検索 plant night view
 この写真は海外サイトのものです。タンクのロボット的な画像が痺れます。
plant_night_view

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2006.01.22

■町山智浩著 『ブレードランナーの未来世紀』

Bladerunner_no_mirai〈映画の見方〉がわかる本 
80年代アメリカ映画カルトムービー篇 
ブレードランナーの未来世紀 (Amazon)

 町山智浩氏の本を実は初めて購入。自分の好きな映画についてのレビュウとエピソードを読むのが元々好きなのだけれど、この本はその両面で大満足。知らないエピソードや、新たな切り口の監督論が楽しめます。

 監督ごとに紹介されているこの本を読んで思い出したのが、いにしえのSF雑誌『奇想天外』に連載されていた中子真治氏の<新進主流派SF映画作家論>。これは僕の学生時代の映画のバイブルでした。当時気鋭の新進映画監督であったジョン・カーペンター、ダン・オバノン、S・スピルバーグ他の作家論と作品論を、僕たちが観たこともない映画のタイトルを挙げて紹介した評論で、ワクワクする映画論になっていました。(記憶で書いています。実家の本棚を調べないと全部の監督を挙げられません。ネットにもこの評論の情報がないのが残念。どこかの出版社で是非単行本化してほしいものです)。
 まさにこの本の紹介の仕方が、中子氏の映画論を彷彿とさせて、もしかして町山氏もこの連載のことが頭にあって、こういう構成にされたのかと邪推。各作品を徹底して調べた上で、各監督にインタビューして確認していく丁寧な仕事が着実に実った力作。あと80年代をハリウッドが監督中心からプロデューサ中心の映画作りに動いた時代で、これら監督はアウトサイダーだったという年代論も興味深い。次の本、『80年代アメリカ映画ブロックバスター篇』で描かれるこのプロデューサの時代も楽しみに待ちたいと思います。

◆で、本書の各監督の章について、ちょっとだけ自分の思い出話等メモを。 。

第1章 デヴィッド・クローネンバーグ『ビデオドローム』―メディア・セックス革命
第2章 ジョー・ダンテ『グレムリン』―テレビの国からきたアナーキスト
第3章 ジェームズ・キャメロン『ターミネーター』―猛き聖母に捧ぐ
第4章 テリー・ギリアム『未来世紀ブラジル』―1984年のドン・キホーテ
第5章 オリヴァー・ストーン『プラトーン』―Lovely Fuckin’War!
第6章 デヴィッド・リンチ『ブルーベルベット』―スモール・タウンの乱歩
第7章 ポール・ヴァーホーヴェン『ロボコップ』―パッション・オブ・アンチ・クライスト
第8章 リドリー・スコット『ブレードランナー』―ポストモダンの荒野の決闘者

 クローネンバーグについては、ダビングを重ねてボケた映像になっていた『ビデオドローム』を観たときの事をひさびさに鮮明に思い出した。町山氏が書いている「今、見直すとすんなり理解できるので驚いた」というクローネンバーグの最近の言葉は実感しますね。

 ジョー・ダンテの『グレムリン』1と2は、僕には悪ふざけな映画にしか観えていなかったのだけれど、このような解説を読むと、ダンテの恐ろしいまでのカトゥーンへのこだわりに涙が出ます。僕はダンテは『エクスプローラーズ』がベスト、と思う。

 『未来世紀ブラジル』についてのギリアムの言葉、「体制はテロリストが必要なんだ」。これってまさに現在のアメリカを考えるとぞっとしますね。今こそ、ギリアムに反体制な映画を撮ってもらいたいけれど、『ブラザーズ・グリム』がこけたのでそれどころではないね。

 『プラトーン』のオリヴァー・ストーンの屈折した青春時代と監督になるプロセス、実は知らなかったので、凄く面白く読めた。あとベトナム戦争についての記述とかなかなか凄い。一度この映画見直したい。ストーン「中卒の貧乏人には徴兵をのがれる術はない。貧乏人たちがジャングルで戦っている間、中産階級以上の連中は戦争をテレビで観るだけで、金儲けに忙しかったんだ」。自由の国アメリカが聞いてあきれる。

fish_kit   リンチの『イレイザー・ヘッド』については自分に子供が出来たことがモチーフになっているのは知っていたけれど、結構根が深い。娘のジェニファー・リンチの「あの赤ん坊は間違いなく私」って、当人にはショックでしょうね。あと本書で触れられているリンチのFish Kitはこことかここに写真(右)がある。やはりこういう趣味がある人なんだ。
 で、面白かったのが、リンチが好きな画家フランシス・ベーコンの絵と『ブルー・ベルベット』のシーンの対比についての町山氏の指摘。本書ではモノクロの写真だったのだけれど、どうしてもカラーで観たくて、下記ネットで探して引用。ベーコンのTwo Figuresとの対比です。映像のボケ方に注目。
FrancisBacon_bluevelvet

 次のヴァーホーヴェンについても同じオランダが生んだ画家ヒエロニムス・ボッシュの絵の影響が指摘されていて面白い。ヴァーホーヴェン、あまり好きではないので、ちゃんと作品観てないのだけれど、オランダ時代の作品が凄そう。『危険な愛』とか。

 最後の『ブレードランナー』についてはさすがにエピソード的にはいろいろなところで語りつくされ、あまり新味のあるネタはでてないように思った。でもポスト・モダン言説とウィリアム・ブレイクとかミルトンとかを引用しながら、デッカードとロイの最後の決闘シーンを描いた描写が素晴らしい。

関連リンク
ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
当Blog記事 新刊メモ『ブレードランナーの未来世紀』

◆中子真治関係
Blog版香港中国熱烈歓迎唯我独尊 りえ的日常・非日常@香港 : 中子氏来港、香港TOY巡り
 ネットには既に中子氏ご本人のHPは消えています。このリンク先で近況発見!この中子さんの発言、凄く良いです。

「50代以下は、まだまだ子供だね。やりたいことなんていくらでもできる。
やり直しだってできる。俺なんか、これからだってまだまだ大きなこと
やろうと思ってるよ~。」

中子真治氏 下呂のアプライド美術館と中子真治氏の倉庫
 僕が過去に書いた中子真治氏関連記事。

◆リンチ関係
Francis Bacon Image Gallery
Francis Bacon Image Gallery_Two Figures, 1953
 ベーコンはこのモチーフにこだわりがあったみたいで。
あの「ツインピークス」に続編製作の計画浮上! : ABC(アメリカン・バカコメディ)振興会
LynchNet: The David Lynch Resource

First Photos from Inland Empire! The Canal website has a video clip which features some stills from Inland Empire.

◆ギリアム関係
・ギリアムの中断した映画『ドン・キホーテを殺した男』のメイキング『ロスト・イン・ラマンチャ』(公式HP)。このトップページが秀逸。
キース・フルトン, ルイス・ペペ監督『ロスト・イン・ラマンチャ』(知らなかった。Amazonで買えるんだ。)

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