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2007.02.25

■宮崎駿 初期原画<3> 『ルパン3世』
  第15話「ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう」

Lupin_15_01_1
                         (右クリック「新しいウィンドウを開く」で拡大)

Lupin_15_02_1  宮崎駿 初期原画<2>の記事で、アニメ様から下記情報をいただきました。貴重な情報、ありがとうございます。

 『大塚康生インタビュー アニメーション縦横無尽』(実業之日本社)に『旧ルパン』の宮崎原画についての記述があります。P208ページです。

 というわけで、遅まきながらこの本を読んでみた。
 大塚さんの本のファーストルパンの宮崎原画情報は、下記のとおり。

 ・第15話「ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう」
   離陸中の飛行機で銭形が通路を転がるシーンまるごと
   金満邸の穴の上で大笑いする銭形
   穴の中をダーッと走る銭形
 ・他の回でも宮崎原画は実に多い

 大塚氏は「漫画っぽいシーン」と表現されていますが、まさにそう呼ぶにふさわしいコミカルな場面の原画を担当している。
 上の画は、ヨーロッパへ向かう飛行機の銭形をルパンが見送るところ。警官が持つ銭形壮行の旗の絵と文字がまさに宮崎氏のものである。文字が特徴的なので特にわかる。中央に黒ぶちメガネで頭の大きい男が目立つのはご愛嬌。左には鼻の大きいベレー帽のおじさんもいるし、、、(^^)。
 当時のおおらかな時代性のようなものが、コミカルなタッチのモブシーンとして表現されていて、静止画ですが、たいへん気持ちのいい雰囲気のうきうきする気分が伝わってくる原画になっている。

Lupin_15_04_1  他のシーンも同様なことが言える。コミカルというよりもユーモラスな感じ。 
 左の穴の中を進む銭形は、繰り返しながら1コマ打ち。穴へ落っこちるルパン、上で笑う銭形の表情が宮崎らしい天真爛漫な表情。
 そして乗りなれない飛行機で緊張する銭形の振る舞いがなんともユーモラス。

 このあたりで思い出すのは、いろいろな本で紹介されているスタジオでの宮崎の落書き。大塚 康生『作画汗まみれ 増補改訂版』の解説で宮崎自身が「中傷絵画」と名づけた落書きのタッチがこれらのシーンと同じ。
 たぶん飛行機で緊張するシーンは、誰かの(自身の?)海外旅行初体験の「中傷絵画」なのだろうし、他のシーンも描く動きは漫画チックというより、「中傷絵画」タッチ。

 劇場作『ホルスの大冒険』の重厚さ、TV『侍ジャイアンツ』のスピーディな動きと一線を画すこのタッチの魅力も捨てがたい。もしかしたらこれが宮崎流のファーストルパンをアダルト路線から子供にも受けるアニメへという局側の要望に答えるための戦略だったのか、、、、というより、リリーフでなかば好き放題の結果なのかもしれない。そこのところは宮崎のみぞ知る、というところである。ただ作画の雰囲気からは、凄く自由な楽しい感覚が漂ってくることは間違いないところである。

 次に大塚氏が「まるまる宮崎さん」と語っている離陸中の飛行機で銭形が通路を転がるシーン。ここは動きの面白さでは、第15話中随一の場面。クリックして拡大して観てもらうとその躍動感が静止画でも充分理解してもらえると思う。

 このシーンでDVDをコマ送りしながら観ていくと、ほとんどのポーズが中割りなしの原画ではないかと思えてくる。ひとつひとつの動きが、とっぴなポーズになっていて、中割りで作られた動画が見つからないのだ(銭形を正面からとらえたカット)。これは、「アニメータ磯光雄と監督作『電脳コイル』」 の記事で書いた磯光雄のフル3コマ(原画)と同等なのではないか。「磯光雄発明」と述べられているフル3コマだが、『ルパン』当時から一部のアニメータの中では描かれていたのかもしれない。このあたり、大塚氏や宮崎氏に是非聞いてみたいものである。

 そして最後に左の画の最後にあるスチュワーデスのモダンな描線もここでチェック。少ない線で抽象的に描かれているけれども、とても魅力的な女性として描かれている。このタッチというのは、東映長編等の森康二氏の素晴らしい線の影響があるのではないか。ここになにやら正調東映漫画映画の雰囲気と、それに加えてリアルな描写との中間に存在した幻の(その後の宮崎作品で正調とはならなかった)アニメーションが存在するように思う、と言ったら妄想しすぎだろうか。(参照→アニメの作画を語ろう 三原三千夫(1))

★続いて、他の回の情報。長文になるので、続きはクリックください。

◆宮崎ルパン情報 リンク
作画を二人で語ろう(仮) 第2回 旧ルパン
 (非公式ルパン三世ファンサイト ルパン倶楽部) 

くま 15話は(略)銭さんが妙に動いてるんですよね(笑)1コマ作画で走ってたりしていたように記憶してます。(略)
池本 あれは1コマのフルアニメじゃあないと思いますよ。2コマ位じゃないですかね。だから結局は誇張とか切り取り方の問題で。宮崎駿ってのはエネルギッシュな動きに関して天才的ですよね。旧ル後半のコミカルな演技で挙げるなら「エメラルドの秘密」のダンスシーンとか、「罠にかかったルパン」のアドバルーンでの逃避行の件りとかが、気持ちいいですよね。
 「宝石横取り作戦」の空中戦なんかも宮崎駿節爆発で必見です。画面構成がとにかく上手い。「どっちが勝つか三代目!」なんかも倉庫に本物の銭形が登場してからのドタバタや、フランスフェア会場での大騒ぎなんかが実に楽しい演技の連続ですよね。最終話「黄金の大勝負!」がその集大成で。

 お二人の会話が絶妙で楽しいルパンの作画分析。またここの全ルパンシリーズをカバーしたアニメータリストは圧巻
 ただ上の引用部分にある宮崎の「エネルギッシュな動き」については、各話確認してみると、必ずしも原画をやっているシーンばかりが述べられているわけでもない様子(個人的見解)。僕の判断は下記。上のお二人の会話では原画分とコンテ分の両方について述べられているように思います。

・「罠にかかったルパン」のアドバルーンでの逃避行
 宮崎コンテ。「泥棒は平和を愛す」のロボット兵ラムダの空中逃避行に似ている。
・「宝石横取り作戦」の空中戦
 宮崎コンテ。『コナン』のファルコそっくり。だけど作画がいまいちで戦闘機との戦闘の臨場感は残念。
・「どっちが勝つか三代目!」
 宮崎コンテ+原画(??)。これ、微妙。エスカレータを銭形が駆け降りるところの絵は宮崎かも??
・「黄金の大勝負!」
 宮崎コンテ+原画。詳細はこちらの記事
・「エメラルドの秘密」のダンスシーン
 アニメ様情報では宮崎は第一原画。詳細はこちらの記事のコメント欄

 大塚氏のインタビューでは「他の回でも宮崎原画は実に多い」とのことなので、他にもありそうなので、探してみたいと思う。というわけで、いつになるかわからない初期原画<4>をお待ちください。

◆関連リンク
ルパン三世 (TV第1シリーズ)(Wiki)
宮崎駿 初期原画<2> 『ルパン3世』
 第23話「黄金の大勝負」第14話「エメラルドの秘密」

宮崎駿 初期原画<1> 『侍ジャイアンツ』第一話
叶精二『宮崎駿全書』 と 宮崎駿『もののけ姫』について

大塚 康生『作画汗まみれ 増補改訂版』
大塚康生, 森遊机『大塚康生インタビュー アニメーション縦横無尽』

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コメント

池本剛さん、コメント、ありがとうございます。

>>アニメ様のソースについては、僕は存じ上げないです。

 以前、コメントをいただいた情報からすると、アニメ様のソースは、データ原口さんの調査結果ということのようです。

 これからもよろしくお願いします。

投稿: BP | 2007.03.25 22:35

アニメ様のソースについては、僕は存じ上げないです。お仕事がお仕事ですから、僕などが知り得ないような情報をきっと色々と抱えてらっしゃるでしょうし。

僕がソースとしているのは、こちらでも資料とされている「宮崎駿全書」と「大塚康生インタビュー」です。

投稿: 池本 剛 | 2007.03.22 00:55

 池本剛さん、はじめまして。
 情報、ありがとうございます。

>>「ルパン倶楽部」での対談は全くと言っていいほど何の反応も無かった代物なので、まさか今になってブログで言及する人が現われるなんて、ちょっと虚をつかれた感じです(苦笑)

 虚をついちゃいましたか(^^;)
 とても楽しく読ませていただきました。サイト、たいへん労作ですね。

>>旧ルの宮崎駿原画については…僕が調べた範囲で、ハッキリクッキリと確証があるものとして情報が拾えるのは「殺し屋はブルースを歌う」「エメラルドの秘密」「ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう」の三本です。

 これはアニメ様と同じソースなのでしょうか。

>>「黄金の大勝負!」について。
銭形と総監が言い争う件のシーンは河内日出夫氏の担当です。(略)ただ…私見としては、河内さん単独ではなくて青木悠三さんの画も混ざっているように思います。

 河内日出夫氏、青木悠三氏、ともに名前は知ってますが、どんな絵を描かれるか、実はよく知りません。青木悠三氏というと後期ルパンの印象が強いです。

>>ついでなので「黄金の大勝負!」について私見を述べれば…宮崎原画部分は恐らく『穴を掘ってる五ヱ門のところに現われるルパン』の場面から『小判を盗み出して去るルパン』の場面までがそうじゃないかなぁ…と思います。確証はありませんが。

 今度、確認してみます!

 いろいろとありがとうございます。
 アニメータ探索の旅は果てしないですね。

投稿: BP | 2007.03.21 22:09

ついでなので「黄金の大勝負!」について私見を述べれば…宮崎原画部分は恐らく『穴を掘ってる五ヱ門のところに現われるルパン』の場面から『小判を盗み出して去るルパン』の場面までがそうじゃないかなぁ…と思います。確証はありませんが。

投稿: 池本 剛 | 2007.03.21 07:33

「ルパン倶楽部」での対談は全くと言っていいほど何の反応も無かった代物なので、まさか今になってブログで言及する人が現われるなんて、ちょっと虚をつかれた感じです(苦笑)

旧ルの宮崎駿原画については…僕が調べた範囲で、ハッキリクッキリと確証があるものとして情報が拾えるのは「殺し屋はブルースを歌う」「エメラルドの秘密」「ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう」の三本です。

…って、これじゃ何の情報提供にもならないので、以前の記事で採り上げられていた「黄金の大勝負!」について。
銭形と総監が言い争う件のシーンは河内日出夫氏の担当です。アジト壊滅作戦の書類に「私個人のことを申せば途中入院など致したために」云々とイタズラ書きがしてあるんですが、旧ル制作中に入院したスタッフが誰なのかを大塚康生さんに尋ねたところ、河内日出夫さんだと教わりました。ので、河内日出夫さんで確定でしょう。ただ…私見としては、河内さん単独ではなくて青木悠三さんの画も混ざっているように思います。

投稿: 池本 剛 | 2007.03.21 07:17

 shamonさん、こんにちは、またまた情報、ありがとうございます。

>>NHKで宮崎駿氏の特番があります。
>>「プロフェッショナル 仕事の流儀 宮崎駿 創作の秘密」

 これは楽しみですね。
 コンテや原画を描く手元がみたいです。そのタッチが。

 浦沢直樹の時は、そこがしっかり映っていたので、今回も期待ですね。

投稿: BP | 2007.03.18 17:36

こんにちは。

NHKで宮崎駿氏の特番があります。

「プロフェッショナル 仕事の流儀 宮崎駿 創作の秘密」
2007年3月27日(火)放送予定。
http://www.nhk.or.jp/professional/schedule/index.html


投稿: shamon | 2007.03.17 13:50

 アニメ様、こんばんは。貴重なコメント、ありがとうございます。

>>当該カットはコマ送りしていませんが、それはフル3コマではなくて「全原画」と呼ばれるものだと思いますよ。全原画は文字通り、全部の動きを原画マンが描いてしまう事で、なにも『ルパン三世』に限らずとも、作画の濃いアニメ(特にメカもの)ではよく見られるものです。

 「全原画」と「フル3コマ」、同一のものと認識してました。
 たしかに言われてみれば「全原画」、他でもみかけますね。

>>磯さんのフル3コマは、3コマでありながら、1コマでもなかなか表現できないリアルな動き(この場合の「リアル」が適切な表現かは微妙ですが)を表現した作画の事です。

 フル3コマについて、小黒さんがインタビューされた「animator interview 井上俊之(3)」「井上俊之(4)」の該当部分をもう一度、読んでみました。

 「それにはまず、頭の中に、描く動きのイメージがないとダメなんだけどね。イメージがないのにやっても、自分で自分の原画の中を割る作業にしかならないから」という井上俊之さんのコメント部分がポイントなのですね。磯アニメートを通常のスピードとコマ送りで観ると、確かにここで井上俊之さんの言われる「イメージ」というのがボンヤリとわかります。

 たぶん「リアル」というよりも、「リアル」な動きをアニメータが自分の中で租借し一度それをイメージの抽象レベルへ引き上げたうえで、脳内でそれを超える「ハイパーリアル」な映像として解釈しなおした映像、とでも言えるような代物ではないでしょうか。

 自分でも何を言ってるのかうまく表現できませんが、画家が「リアル」を超えた抽象レベルのイメージ変換(リアルな映像に脳内の感覚をミックスした)静止画を描くがごとく、それを動画の動きに特化してフィルムに定着したリアルを超えた動きが、ここで言われている「フル3コマ」なのかなーと思います。

 例えばクリムトの絵は、リアルだけれども非常に耽美な、彼独特の感覚の世界が絵に定着させられています。

 「耽美」ではないけれど、磯アニメートというのもリアル+「幽玄」(「男の戰い」の覚醒した初号機)だったり、リアル+「苦痛」(?)(「第25話 Air」の弐号機)という感覚の世界を、そのアニメートの動きに重畳しているのかもしれません。そこいらに我々は痺れているような気もします。(「全原画」と「フル3コマ」、基本的にコマ数とか中割りなしとかの議論ではないのでしょうね。要は表現しているイメージのレベルの問題なのでしょう)

 では今回の宮崎原画は?
 リアル+「ユーモラス」という表現は獲得していますが(^^;)、「男の戰い」レベルかと言われたら、そのレベルではないです。「全原画」と「フル3コマ」の議論は定義上難しいのですが、インタビューで述べられている趣旨から言ったら、「全原画」ということなのでしょうね。

 宮崎「全原画」で、「フル3コマ」のレベルに達しているものがあるのか、という次なる命題が思い浮かびます。これはこれからの宿題にさせてください。何しろ磯光雄は宮崎駿をアニメータとして超えているか、という難しーい命題になるものですから、、、(^^;)。
 「ルパンを追いかけていたら、とんでもないものを見つけてしまった。どうしよう」まさにそんな気分です(^^;)。

 ではでは、今後ともこんな議論をしていただけたら、楽しいです。

投稿: BP | 2007.02.28 00:22

>磯光雄のフル3コマ(原画)と同等なのではないか。

 当該カットはコマ送りしていませんが、それはフル3コマではなくて「全原画」と呼ばれるものだと思いますよ。全原画は文字通り、全部の動きを原画マンが描いてしまう事で、なにも『ルパン三世』に限らずとも、作画の濃いアニメ(特にメカもの)ではよく見られるものです。『ど根性ガエル』等でも多いですよ。たとえば以下の例を見てください。 http://style.fm/as/05_column/some62.shtml 磯さんのフル3コマは、3コマでありながら、1コマでもなかなか表現できないリアルな動き(この場合の「リアル」が適切な表現かは微妙ですが)を表現した作画の事です。

投稿: アニメ様 | 2007.02.27 02:10

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