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2007.02.11

■R.A.ラファティ著/井上央編訳『子供たちの午後』
   R.A.Lafferty "Among the Hairly Earthmen"

R.A. ラファティ著, 井上 央編訳『子供たちの午後』

 1982年に刊行されていたものの復刊。ラファティのとぼけた奇想が楽しめる。
 最後の「彼岸の影」は凄い。

アダムには三人の兄弟がいた Adam Had Three Brothers
 約200人のレクェセン人(全員詐欺師)を、スルリと人類世界に潜り込ませるラファティのさりげない筆致が良い。日常の中に捻じ曲がったすっとぼけた人々が暮らしているこの感覚がたまりません。

氷河来たる Day of the Glacier
 予測されていた第五氷河期が一気にやって来た1962.4月1日を描くラファティのSFデビュー作(とのことです)。巨大な地球の歴史の一頁がこうまで微視的に描かれるこの感覚はSFです。

究極の被造物 The Ultimate Creature
 「世界で一番みすぼらしい男」ピーター・フィーニィは宇宙究極の美女を評定する能力の持ち主。そして射止めた究極のクリーチャーとの生活。子沢山のふたりの食事前の風景が何気なく描かれる。「夕食に四人ほど呼んで下さらないこと!」。まったくなんだってこんな話を作るんだろう、このおじさん(下の写真の人)。語り口と奇妙さが傑作。

パニの星 The Pani Planet
 パニ星人の語り部イスカと、探検隊のツォーニング大佐との異世界コミュニケーションの掛け合い漫才が抜群に楽しい。そこへ加わる死んだはずのラドル将軍、、、。
 もし現実に20世紀後半にファーストコンタクトが起こっていたら、地球代表はラファティがつとめたら、きっと素晴らしいコミュニケーションが成立したでしょう、と思わせる話。わけのわからないものには、わけのわからない思考回路をぶつけるしかありません(^^;)。

子供たちの午後 Among the Hairly Earthmen
 地球へ降りたった子供たちが繰り広げる一大歴史劇(期間2~3世紀)。ラファティに地球の歴史をまとめてもらったら、きっと独自のどこかの別の星のような物語が生まれるでしょう。

トライ・トゥ・リメンバー Try to Remember
 わずか7ページの掌編だけれど、僕はこれ、かなり好きです。ラファティのとぼけた味を短い中でいかんなく発揮している。学問追求に集中するあまり、他の生活様式については、妻の記したノートに基づいて暮らすディラー教授の物語。こんなおとぼけ、本当にいそうだから楽しい。(続編はこういうのだそうです、読みたい。)

プディブンディアの礼儀正しい人々 The Polite People of Pudibundia
 超礼儀正しいプディブンディア星人との交流がなぜうまくいかないかの探索行に訪れたマーロウの悲劇。眼を見ると死ぬ事態と言葉の拘束力(礼儀を尽くす)とが引き起こすねじくれた世界。言葉の論理を徹底していくと、このような異常な世界が現われる。現実も冷静に見ると既にこの領域かも、いやねじくれ加減が。

マクグルダーの奇蹟 McGruder's Marvels
 戦争の勝敗を決める超小型コントロールステーション"弾丸頭脳"の受注から製造をめぐるマクグルダー氏とシャハマイスター大佐の物語。大佐が子供の頃に観た蚤の競技と"弾丸頭脳"の関係。郷愁と奇想はとりあわせが良い、僕はこの話大好きです。でもこのネタをここまで真面目に/不真面目に佳作に仕上げられるのもラファティのこのとぼけた文体があるからこそ。このネタ、エンジニアがアイディアに困った時に会社の同僚とする馬鹿話といっしょ(って僕らだけか、、、(^^;))

この世で一番忌わしい世界 The Weirdest World
 地球に追放されたヘビと、地球の直立するイモムシによる賭博の物語。異星生物のコンタクトと金が絡む話というのもラファティらしい切り口。

奪われし者にこの地を返さん How They Gave It Back
 巨大な島の市長に交渉に来るミッドランド鉄砲愛好クラブの役員たち。その目的は、、、、。
 短いけれど、濃密な空間が描かれていると感じるのは僕だけか?でもあまり奇想の度合いは高くなく、本書の中では小粒。

彼岸の影 Configuration of the North Shore
 これは掛け値なしの傑作。精神分析医とその患者が「北の岸」をめざす夢をめぐる物語。
 ふたりはシャドー・ブースと呼ばれる「夢を全ての感覚領域にわたって再生する」装置で夢を共有する。描かれる数々のイメージ描写が、素晴らしい奇想。本来夢は言語には置き換えられないと前半で精神医に語らせておいて、そして確信犯としてラファティが詩的超絶技巧で描写する言語でない夢の世界。すげえ。
 特にギニアの"下地の大地(アースベーシック)"の前触れの夢から始まり、世界の果ての大瀑布に伸びる水路を船が進むところの描写。これは鳥肌もの。

 精神分析医が見る「夢の空の形」、「人間を人間自身から解放する"究極への到達機能"」。
 メタフィクション的に見えるが、これは堂々とそのイメージを描いた傑作だと思う。たぷん形はない。

R_a

◆関連リンク
・ファンサイト 秘密のラファティについて
・ファンサイト とりあえず、ラファティ(徳島大学医学部放射線科) 子供たちの午後 -Among The Hairly Earthmen-(1982年版について) 居住世界シリーズ The Humanly Inhabited Universe  
R.A. ラファティ著作(amazon) 
・当Blog記事
 新刊メモ R.A.ラファティ 『子供たちの午後』
 R・A・ラファティ 『宇宙舟歌』 柳下毅一郎訳

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