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2007.03.30

■スタニスワフ・レム, 久山 宏一訳『フィアスコ(大失敗):FIASKO』

スタニスワフ・レム, 久山 宏一訳『フィアスコ(大失敗)』 (公式HP)  

任務に失敗し自らをガラス固化した飛行士は、二十二世紀に蘇生して太陽系外惑星との遭遇任務に再び志願する。不可避の大失敗を予感しつつ新たな出発をする「人間」を神話的に捉えた、レム最後の長篇。

Lem_fiasko

 1986年に出版されたポーランドのSFの巨人スタニスワフ・レム最後の長編小説。
 真正面からのファースト・コンタクトテーマのSF。思弁的であり、そして何故か日本のSFアニメーションを髣髴とされるストーリー。アニメファンに受けるワクワクする物語になってます(ラストはやはりレムですが、、、)。SFとしては、同じファーストコンタクト戦争ものとしても、神林長平の『雪風』の方がSFしてるかもしれない。

 世界の『FIASKO』のカバー絵。皆さんはどれがイメージに合いますか?
 残念ながら巨大ロボットを描いた表紙画家はいなかったようです。国書刊行会には、再販時には是非アニメータかロボットメカデザイナーの採用を希望したい(^^;)。

------------------以下、ネタばれ含みます。ご注意を---------------------------

 木星の衛星タイタンで描かれる巨大二足歩行マシン「ディグレイター」。壮大な木星のパノラマ映像の中で描かれる無骨な巨大ロボット「ディグレイター」の絵がまず素晴らしい。(あとレムの筆致で木星の巨大ロボットアニメを読める喜び(^^;)。)操縦方法はライディーン型というかエクゾスケルトン(外骨格)タイプ。乗り込んだ操縦者とロボットがマスター/スレーブの関係となっている。

 そしてロボットともにタイタンの地から掘り起こされ、22世紀の未来世界で復活する操縦士(固有名詞は不明)。
 人類は初の異星生命体とのコンタクトのため、「エウリディケ号」でブラックホールを利用して、光の速さを超える宇宙の旅へ。そして遭遇する球体戦域惑星クウィンタ。
 人類とクウィンタ星は知的なファーストコンタクトに失敗し戦闘状態に入ってしまう。そして、、、、。
 
 どうです、血沸き肉踊るでしょ。これがレムの小説のあらすじだと思えますか?ほとんどSFアニメ。

 ところどころ人類についてのレムの思弁が語られはするものの、それでもストーリーは真正面からファーストコンタクトSFアニメとしても読めるわけで嬉しくなる。ちまたでは翻訳の文が難渋で読みにくい話と言われているようだが、そんなことはなくて実に読みやすい(と言っておきます)。(確かに翻訳文は、わかりやすい言葉でも、単語が何故か原語のまま綴られて(   )の中に訳語が入っていたり読みにくいところはあるけれど、、、。)

 後半のクウィンタ星人とのコンタクト手法として、レーザーを用いてクウィンタ星の大空一面に映像が描かれるシーンがあるのだけれども、こんな壮大な映像ショー、是非観てみたい。クウィンタ星の知的生物がどうそれを認識したのかは想像するしかない。

 ラストは、レム的な不条理で終わる。しかし中盤の戦闘シーンがあまりに人間的な異星人を想像させており、僕はラストの不条理感とストレートにつながらなかった。もっともその落差、違和感が異質なものの出会いということなのかもしれないが、、、。
 あの擬人化したようにみえた敵 異星生命の思考の描き方は、レムは意図してやったのだろうか。もっとひねりがあっても良かったと思うのは、僕が読み込めていないだけなのかもしれない、、、。エンターテインメントとしても思弁的にも、とても刺激的なSFだけれど、ここがさらに過激だったら素晴らしい傑作になっていたと思う。

◆関連リンク
スタニスワフ・レム (Wikipedia)   
スタニスワフ・レム - 評山の一角:書評wiki

柳下毅一郎氏の 映画評論家緊張日記: 『大失敗』スタニスワフ・レム

 これは究極の宇宙冒険SFであり反宇宙SFである。つまり、究極の反SFなのだ。これが最後の小説になったのも当然のことである。

 実は柳下氏の言う「反SF」というところの意味が正直僕にはよくわからない、、、。たぶん読み込めていないと思うので、誰か僕に解説していただけると幸い。

・殊能将之氏の a day in the life of mercy snow 

 わたしの貧弱な脳みその限界ぎりぎりまで知的興奮をかきたてられるうえ、ほとんどスペースオペラのような通俗性があり、最後は夢の体験に酷似した幻想的・寓話的結末を迎える。「今年の海外SFベスト」と呼んでも、気が早すぎないと思う。

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地球外生命体の存在を信じていた女性天文学者が未知なる世界への旅に出て、地球外の知的生命体と接触した姿を描くSF超大作です。 主演ジョディー・フォスター [続きを読む]

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