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2007.03.18

■池谷裕二 『進化しすぎた脳
   中高生と語る「大脳生理学」の最前線』 感想・1

 池谷裕二『進化しすぎた脳』
 知らない著者の本に書店で出会い、吸い寄せられるように購入、結果、傑作!というのは本好きにとっては至福なのだけど、この本はそんな本の一冊になった。

 タイトルどおり、脳科学者の著者が中高生と語りながら、人間の脳認知の最先端状況を説き起こす本。書かれた本ではなく、語られた本なので平易。今、届いた学会誌にこんな記事がとか、まさに現在進行形の話が、ホットに語られる。あとがきで著者が述べているようにグルーヴ感に溢れた熱い一冊。(2年前に出た単行本からブルーバックスで再刊された本だけど、最後一章に自身の東大の研究室の学生と最新の情報を交えた最新分が追加されている)

 以下、刺激的な部分から僕が思ったことをご紹介。

人の脳は「無限の猿定理」の5億乗

Monkey_typing  無限の猿定理とは「無限の数の猿がタイプライターを叩き続けば、いつかはフランス国立図書館に収蔵されている書物の全てを書きあげることができる」ことを意味する定理」である。この本にこうした話が出てくるわけではないけれど、読後、僕がまず思い出したのはこの無限の猿定理。ちょっと長くなるけれど、どういうことかというと以下。

 『進化しすぎた脳』によると、脳のニューロン:神経細胞の数は1000億、そこから出たシナプスがそれぞれ1万。1000億×1万=1000兆のシナプスが神経伝達物質による神経細胞のスパイクを1000分の1秒ごとに行っているのが我々の脳の活動ということになる(P231)(大脳皮質だけ140億×1万=140兆のシナプス)。

 そして脳がものを考える時間ステップは、だいたい0.1秒、100ステップのシナプスの活動で言葉を認識したり思考したりを繰り返している(「脳の100ステップ問題」P272)。たとえば大脳皮質だけで考えると、140兆の100乗の組み合わせにより思考を生み出している。
 140兆の100乗!!これはexcelでは既に扱えない(扱える最大値はわずか9.9E307≒140兆の21乗)。この神経細胞の膨大数の組み合わせ活動が思考の源と考えると、脳科学は、「再現性があり追試が可能であることを基本とする」科学の範疇をはみ出すのではないか、という疑問も提示されている(P372)(この部分だけでも凄く刺激的)。

 で、ここからこの膨大数を理解するために僕が思い出したのが「無限の猿定理」。 わかりやすくここではシェイクスピアの本で仮定する。
 シェークスピアの本が200(文字/ページ)×300(ページ)=6万文字で構成されているとすると、猿が英文タイプライターを叩いて時にシェークスピアの作品を書き上げる確率はアルファベット26文字の6万乗。これは26の6万乗匹の猿が全員6万文字タイプすると、その中の一匹が『ハムレット』を書き上げる計算になる。
 この時タイプされた全情報量は、26文字≒2^5とすると、
 26^60000匹*60000文字*2^5≒(2^5)^60000*2^16*2^5≒2^300021≒2^30万。

 140兆の神経細胞の発火のありなしの組み合わせは2^140兆。2^140兆≒(2^30万)^5億。我々の大脳皮質が瞬時瞬時に持っている情報は、「無限の猿定理」の5億乗ということになる。もちろんこれは強引な比較だけれど、膨大数を直感的に理解するためということで、お許しを。

 つまり我々一人一人の脳の中には、大脳皮質だけでも「無限の猿定理」の5億乗の情報が存在できることになる。これは物凄い数だと理解できる。我々は26の6万乗匹の猿に任せなくても、つねに『ハムレット』5億冊を生み出せる可能性をもっているのだ。(アッテルカナ?)

 脳が意識を持つことの不思議も、この膨大な数字の積み重ねの結果なんですね。(アレ、この膨大数の話だけでこんな長文に。この本の紹介はもっといろいろ書きたいので、次回に続けます。押井対談会のレポートもあるのに、、、。)

◆関連リンク
池谷裕二のホームページ 東大薬品作用学教室 (公式HP)
 池谷裕二は何を研究しているのか、何を目指しているのか

・当Blog記事
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