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2007.04.29

■細田守監督 『時をかける少女』
  「アノニマス 逸名の名画」展 『白梅ニ椿菊図』の邪推

 今日は、初夏のような青空の日だった。で、昨年夏公開の青空が印象的なこの映画をDVDで観た。いまさら僕が言う必要もないのだけど傑作。脚本の瑞々しさと演出の組み立ての緻密さ、そして作画の活き活きとした躍動感。一級の夏の記憶の映画。
 既にネットに限らず、あちこちで語られ、きっとこれから書くことはどこかで既に語られていると思いつつ、僕が一番この映画で書きたくなったポイントについてメモ。

★★★★★ ネタばれ 注意 ★★★★★

Shiraume_nitsubaki_smal_1
 これらの絵は映画を観られた方なら、説明はいらないかもしれない。
 左から、①細田版『時かけ』の青空 ②「玄奘三蔵像」 ③「白梅ニ椿菊図」 ④「隠岐配流図屏風」。②~④はDVDの48minの時点で、主人公紺野真琴が芳山和子といっしょに国立博物館「アノニマス 逸名の名画」展を観るシーンで登場する作者不詳の絵画である。

 この映画でキーとなるのが③「白梅ニ椿菊図」。芳山和子が映画でこのように語っている。

 この絵が描かれたのは何百年も前の歴史的な大戦争と飢饉の時代。
 世界が終わろうとしてた時、どうしてこんな絵が描けたのかしらね。

 普通に考えればこの絵は過去のいつかの時代に日本で描かれた絵ということになるだろう。だけど僕が違和感を持ったのが「世界が終わろうとしてた時」という言葉。日本のいつの時代かの国の没落に、「世界が終わろうとしてた時」という表現を使うことの違和感である。

 この違和感と、未来人である間宮千昭がわざわざこの絵を観る為に過去へやってきたという事実を組み合わせて、僕は映画のクライマックスで、たぶん邪推なのだろうけれど、こんなことを考えていた。

 間宮千昭は、未来の滅亡寸前の地球から、その時代の希望をなんらかの形で象徴する「白梅ニ椿菊図」を観に来たのではないか。そしてその「白梅ニ椿菊図」は、かつてタイムリープをした芳山和子(もしくは彼女とコンタクトしたケンソゴル)が未来から現代へ運んだものではないか、という邪推。このように考えると、なんだかクライマックスの余韻はさらに深みを増すような気がする。

 この邪推はともかくとして、映画の前面に流れているコミカルで快活な前向きの意志と、背景に横たわる死の気配。これら4枚の絵に表出するそれらの陰影が、このアニメーションを印象的なものにしているのは間違いない。

◆関連リンク
9月2日 渋谷オールナイトのレポート(『時をかける少女』公式ブログ)

Q. 「あの天女の絵は元ネタがあるんですか?」
細田 「あれですね、国立博物館にある「白梅ニ椿菊図」。お答えしますと、元になった絵は特に無いんですよ。最初は絵を見るってことだけを決めてて、どんな絵か探してたんですけど、実在する絵に適当なものは無かったんです。描いたのはマッドハウスの平田敏夫さん(略) 普通なら日本画家にお願いするんでしょうけど、そこを敢えて演出家の平田さんにお願いした。

細田守 その26 (1001)

 その展示を監修したのは、同博物館主任研究員の松嶋雅人さん。
 「白梅ニ椿菊図」にふさわしい特集陳列として、悲惨な時代を背景に、 名も知れぬ絵師が残した作品展「アノニマス―逸名の名画―」を考えた。
 仮想出品リストもある。くだんの作品の両脇に並ぶのは、 島に流された貴人を描く「隠岐配流図屏風」と、 はるばる経典を求めて旅をする「玄奘三蔵像」。前者は細田監督の選択というが、 映画を見た人は、両作品の画題を趣深く感じるかもしれない。

時を駆け巡る少女 第五十九夜

 作品はひとつを除き全て東京国立博物館蔵 作品名を羅列するするのもなんなので、二つの作品についてだけ書いておきます。
 メインとしておかれている「白梅二椿菊図」 これは今回の映画のために作成されたものであることは「NOTEBOOK」などにも記事として載っています。
 で、この作品の左側に配置されているのが「玄奘三蔵像」
 右側に配置されているのが「隠岐配流図屏風」
 この作品だけが、東京国立博物館蔵ではなく、アメリカのキンベル美術館蔵なのだけれども、当初はこの「隠岐配流図屏風」を千昭が見に来る絵として使用することも 考えていたという話にはとてもおどろかされました。

「日本の美術」2月号に細田監督の対談が掲載されてます
 (『時をかける少女』公式ブログ)

日本の美術2月号(No.489) 至文堂刊・定価
・映像演出家からみた久隅守景の造形
―劇場版アニメーション『時をかける少女』の細田監督と―
(細田 守/松嶋雅人)

「アノニマスー逸名の名画ー」
・作者の名前は失われている 
・地獄の絵は、貴族以外の人を鬼として描く 
・描かれた場面は、華やかだが、現実世界は悲惨な状況。 
・享楽の世界・・・・桃山、江戸 
 (例外)「親指のマリア」・・・祈りの絵

隠岐配流図屏風(おきはいりゅうずびょうぶ) (キンベル美術館蔵)

An Exiled Emperor on Okinoshima c. 1600
Japan
Momoyama period (1573-1615)   

読売朝刊、文化面に登場してます(『時をかける少女』公式ブログ)

BSアニメ夜話 放送一覧
 4月27日(金)18時から、香川県・四国学院大学で公開収録
・収録の模様レポート 
 「南河内パチモン製作所」さん、「駄文とか駄文とか駄文とか」さん
・『ボトムズ』、『母を訪ねて三千里』、『時かけ』(6/27放映)
細田守『時をかける少女 絵コンテ』
DVD『時をかける少女』

2006年の夏映画のベスト!『時をかける少女』(海から始まる!?さん)
 リンク集はここが凄い。

NHK少年ドラマシリーズ『タイムトラベラー』最終回復活の経緯
 DVDで復活、発売された経緯をビデオテープの持ち主ご本人が書かれています。
「タイム・トラベラー」オリジナル・サウンドトラック(Amazon)

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コメント

 白梅二椿菊図の秘密さん、初めまして。

 とても興味深い情報、ありがとうございます!
 gifでの分析、一目瞭然でとても面白いですね。

>>その他にもピカソの母と子を元絵にトレースした痕跡があることが分かると思います。

 隠れたテーマがこの絵をヒントに浮かび上がるかもしれないですね。

 細田監督、さすが芸大出身。


 今後とも、よろしくお願いします!

投稿: BP(白梅二椿菊図の秘密さんへ) | 2010.09.18 09:25

>Q. 「あの天女の絵は元ネタがあるんですか?」
>細田 「あれですね、国立博物館にある「白梅ニ椿菊図」。
>お答えしますと、元になった絵は特に無いんですよ。

細田守は、白梅ニ椿菊図には、元になった絵が特に無いと言っていますが、
時をかける少女の白梅二椿菊図には、元になった絵があります。

それはピカソの「母と子」です。
http://www.seibidou.com/cgi-bin/herodb/souko/bin/bin0803131913430010.jpg

これは白梅二椿菊図を反転してピカソの母と子を合成したものです。
http://art33.photozou.jp/pub/474/286474/photo/49271936.v1284288563.gif


日本画の顔の左に、ピカソの絵の母の顔が残っているでしょ。
その他にもピカソの母と子を元絵にトレースした痕跡があることが分かると思います。

投稿: 白梅二椿菊図の秘密 | 2010.09.12 20:15

「世界が終わる」=「末法思想による恐怖」

投稿: | 2010.04.10 03:16

 shamonさん、コメント、どもです。

>青い空と白い雲、夏と青春を表す2つのモチーフが
>これほど清清しくスクリーンに焼きついた映画を知りません。

 映画は傑作だったのですが、実は青空の映像には個人的に不満が残りました(^^;)。もっと夏の空の雲はくっきりと青と白の境界がはっきりしていて雲の立体感がグッと迫ってきてほしい、というのが僕のイメージ。

 山本二三氏の背景画は好きなのですが、演出意図もあってか、今回の雲は実はのりきれていません。素晴らしい夏の映画であることは変わりないのですが、、、。(すみません、茶々入れて(^^))

投稿: BP | 2007.04.30 22:12

TB感謝です^^。

ロングラン上映だったので
DVDが遅れたそうですが、
GW前発売というのは絶妙のタイミングでしたね^^。

>一級の夏の記憶の映画。
最後のタイムリープ、真琴と一緒に”時をかけた”気分でした。
青い空と白い雲、夏と青春を表す2つのモチーフが
これほど清清しくスクリーンに焼きついた映画を知りません。
DVD買ってよかった~。

投稿: shamon | 2007.04.30 07:11

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