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2007.07.16

■ズジスワフ・ベクシンスキー
  画集 『ファンタスティック・アート・オブ・ベクシンスキー』
  Zdzilsaw Beksinski  "The Fantastic Art of Beksinski"

Zdzilsaw Beksinski 『The Fantastic Art of Beksinski』 (革装本)

Beksinski_2  先日記事で紹介したポーランド現代絵画孤高の巨人 ズジスワフ・ベクシンスキーの画集がAmazonから届いた。

レイアウト/デザイン
    James R. Cowan
出版社
 MORPHEUS INTERNATIONAL(@ラスベガス)

 全72ページで、絵画はカラー52、モノクロ9点、あとディジタル作品が5点。James R. Cowanの序文とベクシンスキー本人のコメントが英語で記されている。

 幻想的というひとことでくくってしまうわけにはいかない陰鬱な絵画群。
 たしかに"The Fantastic Art"と呼ぶにふさわしい幻想の国の物語が溢れてくる想像力をいたく刺激する絵であることは間違いない。しかし、、、。
 たとえばギーガーを比較に持ち出すとよくわかる。彼の絵は同じような骨や異界の生物を描いていても、どこか攻撃的で陰鬱なイメージは少ない。

 絵に漂う陰鬱さ/憂鬱さ/絶望といったようなものから、僕は30歳で夭折した北海道の幻想画家 深井克美のことをどうしても想起する。
 画文集『深井克美―未完のランナー』についての記事で触れた深井克美の絶望に彩られた幻想画、これとポーランドの画家の絵は幻想の地下水脈で通底し響きあって迫ってくるものがある。加えて『GAUDIA(ガウディア)造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル』展で観たチェコのエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーと。

 この三人の画家の合同美術展が開催されることを夢想してみる。
 会場の沈んだ空気。圧倒的なイマジネーションが観客に見せる絶望した脳がみる異界の光景。そして既に鬼籍に入られ、今はかなわぬ三人の「人類の絶望と想像力による・・・・」というタイトルのパネルディスカッション。「・・・・」の部分に入る文字を決められるのは、この異界を真に覗き込んだ三人のみなのだろう。皆さんだったらこの絵画群からどんな言葉を想像しますか? 

 さて、本書から気に入ったものをいくつか挙げる。ベクシンスキーの絵はいずれもタイトルが付けられていないため、どの作品を示すのかが、わかりにくい。本書のページと描かれた年号を示す。

・P43(1976) (上の絵 左)
 戦乱(テロ)の街から逃げ出す、血に染まった包帯に顔を包まれた昆虫のような手足の人間。

・P57(1985) (上の絵 右)
 布に覆われた死神と老人と狼。茶のトーン。迫りくる死の影。

・P54(1972)
 赤い布に包まれた小型生物を大きな骨のような手に持つオーバーを羽織った岩石のような逆五角形の頭の怪異な二足歩行生物。
 モノトーンな色使いが多いのだけれど、この絵の赤のように、色が入ると鮮烈。

P25(1985)
 ゴシックの大聖堂を思わせるが、さらにそれを陰鬱にしたアーキテクチャ。
 そしてまわりの黒い墓石群。

 本書では、ネット上の作品と見比べると、モノトーンの作品が多い。中身をみないでチャレンジで買ったので致し方ないが、もう少し幅のある選択が望みたかったところ。
 Googleで検索すると、英語圏での画集の出版はどうもこれだけみたいである。やはりギーガーのように映画での知名度がないとこんなものなのだろうか。

 日本で出版された永瀬 唯解説 画集 『ベクシンスキー』 (河出書房新社)は、ネットで見る限りでは本書と絵はかぶっている部分があるようだ。

 ちなみにポーランドでは、少なくとも、BEKSIŃSKI 1, BEKSIŃSKI 2, BEX@という画集が出ているようである。本の中身が少し見られる。

 いずれにしても嬉しいのはインターネットの各種ギャラリーでかなりの点数の絵をみることが出来ること。例によって下記にそのリンクを示す。まずはネットで堪能ください。

◆関連リンク
画集『ベクシンスキー』(楽天)
09.1月エディシオン・トレヴィル 画集『ズジスワフ・ベクシンスキー』再復刻版 出版
 (09.1/2リンク追加)
ベクシンスキー公式サイト ここが圧巻。
MORPHEUS INTERNATIONAL GALLERY  Beksinski 展示

Morpheus Gallery specializes in the very best of contemporary surreal and fantastic art, with artists such as Giger, Beksinski, Yerka, Huss, and De Es. We sell art books, posters, signed prints, and original works.

www.beksinski.net  Gallery - Paintings and Digital Photography
beksinski Zdzisława Beksińskiego BEKSIŃSKI (Google Image Search) 
ポーランドのサイト 上の絵はこちらに展示されていたものから。
『The Fantastic Art of Beksinski』(革装本) これはマニアック。

永瀬 唯『欲望の未来―機械じかけの夢の文化誌』
永瀬 唯『肉体のヌートピア―ロボット、パワード・スーツ、サイボーグの考古学』
永瀬 唯『疾走のメトロポリス―速度の都市、メディアの都市』
 永瀬 唯氏の本は、とにかく刺激的で大好きです。特に『肉体のヌートピア』は傑作。

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コメント

 shamonさん、こちらもコメント、ありがとうございます。

>>遺作の「ランナー」の色調はどこか希望を感じさせますが、
>>もしかすると「消える寸前のろうそくの明かり」なのかもしれません。

 絵にもそんな雰囲気はありますね。
 こればっかりは本人さんしかわかりませんが。いや、本人すら衝動的だったらわからない。

>>青の美しい画家といえば、フェルメール、ダリがいますが、
>>ベクシンスキーも負けていませんね^^。
>>茶色と青の組み合わせもダリと似ています。
>>ダリの青はスペインの日差しに負けない青という印象ですが
>>ベクシンスキーの青には東欧の冷えた空気を感じます。

 「冷えた青」とはうまい表現ですね。同感です。
 このクールさが最高。

>>「嫌い」に理由はあっても「好き」に理由はありませんから^^。

 Blogで本や映画の感想を書き続けていると、つい自分の感情の分析を習い性で無意識にやっています。なので「好き」も「嫌い」も分析的につい見てしまう。これはもはや職業病ならぬ趣味病(??)ですね(^^)。

 なので絶えず分析でとらえられないものに、より強く惹かれるわけです。

投稿: BP | 2007.07.18 00:16

連投失礼します。

深井、ベクシンスキー両氏ともエニアグラムで言う
タイプ4(個性的な人)かなという気がします。
(エニアグラムについてはhttp://www.enneagram.ne.jp/へ)
繊細で感受性が強くそんな自分を理解してほしいという欲求が強く、
けれど対人関係は苦手で自分の世界に引きこもりがち、
そして心理状況が悪くなると極度にホラーや陰鬱なものに走る。
心のエネルギーが自分の中に向かうので
絵画や音楽など芸術面で才能を発揮する人が多い。
なので両氏の絵を見ているとものすごく4的なものを感じますね。

>深井氏のように自害されてしまうところまで行ったらまさに悲劇ですが。
深井氏の場合は病気がありましたからね・・・。
遺作の「ランナー」の色調はどこか希望を感じさせますが、
もしかすると「消える寸前のろうそくの明かり」なのかもしれません。

>この青、素晴らしく良いですね。実物を拝んでみたい。
青の美しい画家といえば、フェルメール、ダリがいますが、
ベクシンスキーも負けていませんね^^。
茶色と青の組み合わせもダリと似ています。
ダリの青はスペインの日差しに負けない青という印象ですが
ベクシンスキーの青には東欧の冷えた空気を感じます。

>実は先日ダリ展も行ったのですが、レポートするだけのモチベーショ
>ンが既にわきませんでした。
ダリの絵って奇抜だけどどこか幸せなんですよね。
だからなのかも。

>分析しきれないところに、きっと面白さがあるのでしょうね。
そうですね。
「嫌い」に理由はあっても「好き」に理由はありませんから^^。

投稿: shamon | 2007.07.17 21:20

 shamonさん、このネタへのコメント、実は無茶苦茶嬉しいです。
 こういう絵の話大好きなので。

>>陰鬱絵画というジャンルがあるとすれば、
>>この2人は確定ですね^^;。
>>深井作品はその闘病体験から生まれたものでしょうが、
>>ベクシンスキーの絵に漂う雰囲気は
>>ポーランドというお国柄かな、という気がします。

 ネットの噂では、ベクシンスキーという人も人嫌いで隠遁されていた方だったようです。精神の内奥へ陰々滅々と降りていかないとあんな凄みのある絵はきっとかけないのでしょう。深井氏のように自害されてしまうところまで行ったらまさに悲劇ですが。

>>絵に登場する美しい吸い込まれそうな青は
>>東欧の空の色なのでしょう。

 この青、素晴らしく良いですね。実物を拝んでみたい。
 R o e n t g e n w e r k e A Gの池内[レントゲン]務さんに、皆さんで展覧会開催のお願いをしましょう!>>池内さん、よろしくお願いしまーす。

>>個人的にはベクシンスキーが好みですね。
>>深井作品は正直ドン引きしたので^^;。

 やはりドン引きでしたか(^^)。ごめんなさいね。
 最近、何故だかこの三方のような絵に凄く惹かれます。実は先日ダリ展も行ったのですが、レポートするだけのモチベーションが既にわきませんでした。
 へそ曲がりなせいもあるけれど、これらに惹かれる理由が自分でも少し不可解です。会社生活の疲れはあるけど、たぶん人並みだろうし、、、(^^;;)。

 分析しきれないところに、きっと面白さがあるのでしょうね。

投稿: BP | 2007.07.17 00:00

まいどです^^。

仰るとおり深井克美と雰囲気が似てますね。
そして両方共に漂う陰鬱で絶望的な雰囲気。
陰鬱絵画というジャンルがあるとすれば、
この2人は確定ですね^^;。

深井作品はその闘病体験から生まれたものでしょうが、
ベクシンスキーの絵に漂う雰囲気は
ポーランドというお国柄かな、という気がします。
絵に登場する美しい吸い込まれそうな青は
東欧の空の色なのでしょう。
個人的にはベクシンスキーが好みですね。
深井作品は正直ドン引きしたので^^;。

投稿: shamon | 2007.07.16 09:43

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