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2007.09.24

■天沢 退二郎 『光車よ、まわれ!』

天沢 退二郎『光車よ、まわれ!』(amazon) 復刊.com

 和製ファンタジーの金字塔、思春期の黙示録的行脚がここにある。不朽の名作ファンタジー。73年筑摩書房刊の再刊!

 単行本刊行時の装丁をほぼ再現!(司修氏による装丁デザイン・挿絵は当時のまま。ただし今回は函装でなくカバー装になります)。

 ある雨の朝、登校した一郎は、クラスの様子が、周囲がいつもと違うことに気づく。迫り来る闇の力に、一郎は神秘的な美少女、龍子たちと共に立ち向かう。「光車」とは何か?一郎たちは闇の力を無事に打ち倒すことができるのか?「指輪物語」など幻想文学好きにはこたえられない、神秘の深みを湛えたカリスマ的作品。

 いい評判を聞いて20年前に購入したのに、ずっーと積読になっていたこの本を、最近やっと読んだ。あちこちで『電脳コイル』が『光車よ、まわれ!』を思い出させるという書き込みを読んだから、というアニメな理由(^^;)。『電脳コイル』の天沢勇子の苗字は、この本の作家へのリスペクトではないか、という説もある。

 そして、読み終わった感想。これは傑作ジュヴナイルであり、素晴らしい詩的なファンタジーである。繊細に描かれた少年少女の心の動きと、つむがれている幻想的イメージが素晴らしい。ファンタジーの部分は、理屈やリアリティの構築でなく、詩的空間の構築にすべてが向けられている。

 東京なのに架空の地名の「サダヤ区」が舞台。学校にあらわれる異様に顔の長いばけものとしかいいようのないものとか、地霊文字とか、ドミノ茶とか、緑色の制服の集団であるとか。そこに論理はないのだけれど、リアリティのある小学生たちの生活描写と、これら言葉のイメージで、東京に幻の空間が切り開かれている。

 とくに不可思議な存在が中谷晃人と呼ばれる老人。この人の言う不可思議な言葉の意味は最後までどういうことだかわからない。だがどこか魅力的な詩的イメージが広がる。

 少年少女の快活さと、不可思議な幻想言語イメージ。こんな傑作が磯光雄の『電脳コイル』世界の底流に流れているのかもしれない。『コイル』世界は、今のところ理屈で割り切れる世界を着々と描き、「あっち」へと越境していこうとしている。この先の世界が、理屈を超えた詩的幻想世界を花咲かせて描写されたら、素晴らしい作品になるかもしれない。

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コメント

 say*3さん、亀レス、多謝。 
 いいわけですが、今週、仕事がとんでもなくくんずほぐれず入り組んで疲労困憊(**;)。やっと今日、一息つきました。

>>けっこう昔に買って読んだ覚えが。
どちらかというと「中島みゆき」や「聖杯」というキーワードで記憶してる方です。

 本書に登場人物として出てくる「中島みゆき」って、天沢氏があの歌姫のファンで、意識的に出したのでしょうかね。で、後年「中島みゆき」の評論本をだされた、ということですか。

投稿: BP | 2007.09.29 23:01

けっこう昔に買って読んだ覚えが。
どちらかというと「中島みゆき」や「聖杯」というキーワードで記憶してる方です。

投稿: say*3 | 2007.09.24 11:27

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