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2007.09.11

■Production I.G 創立20周年記念
  押井 守監督 講演

Production I.G 創立20周年記念講演
『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』押井 守監督
        ( shamonさんのひねもすのたりの日々経由 )

Production_ig

◆I.Gの拡大要因

 (略)その意味において、I.G はいってみれば健全に機能している、ぼくに言わせれば非常にめずらしい会社です。傍で見ているほど、大胆に、ドラスティックに経営規模を拡大しているわけではないですし、コンスタントに右肩上がりに大きくなっている。(略)
 今後もおそらく、株主さんたちの期待を裏切るかもしれません。大ヒット作と呼ばれるものはI.G からは出てこないような気がします。

 一作、大ヒットしてしまうと、それに縛られてスタジオとしての作品の幅が狭まり、安定的拡大は難しくなる、という論説。

 一見、ものすごくもっともに聞こえるけれども、でもどっか詭弁っぽい。何故なら、普通の企業なら、そうした大ヒットを当てた上で、そのヒットを支えたコアコンピタンスを有効利用して、その他事業で安定的な拡大を図るのが常道だから。

 本当にアニメスタジオを優良な企業として成立させていくには、客商売ゆえ、大ヒットは必要事項と思う。その後の戦略を持った上で、ということだけれど、、。それを大ヒットがないのはこの会社が優秀だから、という論へ持っていくのはいかにも詭弁に聞こえる。

 結局、こういう論説が通りよく聞こえるのも、アニメビジネス自体が未成熟ということなんでしょうね。

◆そして『スカイ・クロラ』

 若いキャラクターの感情の動きを軸にして、非常にドラマチックな物語を考えております。甘酸っぱい恋愛感情に浸りながら、最後は衝撃的な結末に向かっていきます。ぼくにしては珍しく、ドラマチックな方法論を取っています。具体的にいうと、作品内の台詞の分量を大幅に減らしています。いままでの1/4以下です。
 これで当たらなかった場合、もちろん1000万人の観客動員を目指すといったバカなことは言いませんが、ぼくの場合は100万人が一つの壁ですので、本作で100万人の壁を超えられなかった場合は、元に戻ります。

 こうは言われているけれど、実は100万人より上を狙えるというしたたかな勝算を持っていそう。ただ大ヒットしなくても、I.Gとしては逆にいいんだ、と論陣は既に上のように張っているので、既に鉄壁の守りが作られている。なんとしたたか。大ヒットしてもヒットしなくても既にI.Gの株価をこうして守っているわけだ(笑)。

 そして神山健治を次を支える監督として育てる布陣もしかれていて、実は大ヒット後の戦略も持っていそう。きっと押井守と石川光久でこうした戦略は日ごろから討議されていて、この堅実さがI.Gを支えているのですね。

 ジブリが宮崎駿の子息という同属経営戦略をとるしかなかったのに対して、やはりI.Gは本当に成熟した企業へアニメ・スタジオを持っていこうというしたたかな戦略が(押井の詭弁戦術含め)ありそう。株、買っとこうかな(^^;)。(資金ないけど)

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コメント

こんばんは。

>後藤作画監督の頑張りが期待されるところ
詳細は申し上げられませんが、
神山監督の「クオリティ落とすまじ」という姿勢で
現場はすさまじい修羅場と伺いました。
ここ数話、後藤さんの名前が原画に並んでいるのが
それを象徴している気がします。
あと2話、後藤さんには踏ん張って欲しいです。
この作品の質・興行的成功によってはこのシリーズが
IGの新しい”顔”となることも十分考えられますし。

>いやらしい話ですみません。
そんなことないですよ。
こういった観点でファンが制作会社を見ていくことも
必要だと思います。

>返ってこないのでこれは寄付ですが、、、。
よろしいんじゃないでしょうか^^。
私のIG株だっていつ寄付に化けるかわかりません(^^;

投稿: shamon | 2007.09.16 22:55

 shamonさん、INUさん、こんにちは。

>>合併して社名も変る直前の総会だし、
それが犬監督を(表向き)引っ張り出す口実としては
最適に働いた、というところでしょうか。
来年あたり神山監督が引っ張り出されたりして・・・^^;。

>>押井監督はご自身もIGの株主ですから、上がるにこしたことは無いけど、それより創る環境を確保するというのが第一の利益でしょうし…。

 Production I.G IR情報によると、押井監督はI.Gの役員ではなく、持ち株比率は0.8%の大株主なんですね。どちらかというと経営陣に文句を言う立場??なんだけど、やはりINUさんの言われるように、制作環境確保のために、石川Pと戦略的に動いているのでしょうね。

 ちなみに上のリンク先情報と時価株価でみると、I.G株資産として、石川P 持ち株比率31.4% 22億円、押井氏 0.8% 6千万円、後藤隆幸氏 1.4% 1億円ということです。神山監督の持分は、このリストの最低持ち株比率0.6% 4500万円未満ということですね。

 『精霊の守り人』も後藤作画監督の頑張りが期待されるところ。神山監督と違い、役員ですしね(^^;)。いやらしい話ですみません。でもこんな観点のデータも持っておくと、I.Gの動きが理解しやすいかも。

>>GONZOにせよIGにせよ、会社単位に投資するのは難しいですね。
イノセンスと精霊には投資したいけど、ライディーンを誰が作れと言ったか、みたいな感じで会社名がスタッフの質を保証しない限り投資対象にはしにくいですね。
作品ごとのファンドも、まだ成功してませんし難しいですね。

 作品ファンドがもっと有効に働くとファンにはいいですね。
 僕はD・リンチに投資したいので、先日2000円と高いリンチコーヒーを購入しました。なんとささやかな投資(^^;)。返ってこないのでこれは寄付ですが、、、。

投稿: BP | 2007.09.16 11:50

おじゃまします。
押井監督はご自身もIGの株主ですから、上がるにこしたことは無いけど、それより創る環境を確保するというのが第一の利益でしょうし…。
GONZOにせよIGにせよ、会社単位に投資するのは難しいですね。
イノセンスと精霊には投資したいけど、ライディーンを誰が作れと言ったか、みたいな感じで会社名がスタッフの質を保証しない限り投資対象にはしにくいですね。
作品ごとのファンドも、まだ成功してませんし難しいですね。
なにより株主だったら、こんなにイノセンスを偏愛出来ているかどうか!

投稿: INU | 2007.09.14 02:35

こんばんは^^。

さすが、BPさん。読みが深いですね~。

>策士押井守と石川光久がそこにいると思うのですが、、。
かも^^;。
合併して社名も変る直前の総会だし、
それが犬監督を(表向き)引っ張り出す口実としては
最適に働いた、というところでしょうか。
来年あたり神山監督が引っ張り出されたりして・・・^^;。

投稿: shamon | 2007.09.13 21:36

 tetsuさん、shamonさん、こんばんは。

>>アニメビジネス自体が未成熟、というのも一理あると思いますが、
ビジネス(いわゆる産業としての)として考えることがもともと難しい素材のような気もしますね。
>>工業というより、手作業で作品を創っている工房のようなもの、ということで。大ヒットして仕事の量が増えても、作り手(この場合アニメーターや彩色の方達)の数は簡単に増やせないところとか、陶芸や、指物の工房に近いものを感じます。
>>そういうものに近い存在と考えた時に、効率化して規則を決めて工業化すると、作品の質が変質していくのではないかという危惧を感じてしまいます。

>>既にtetsuさんが仰っていますが、この業種を家電や自動車と
同じように捉えるのはどこか無理だと私も感じています。

 芸術のあるべき姿としては、おっしゃるとおりかもしれません。工房として職人的にいい作品を作り続けてほしい気持ちはファンとしては当然ありますね。

 んが、問題は株式公開したこと。
 今回の記事を書くのに株価のグラフをエクセルで作ったのですが、この落ち込みぶりははっきり言って悲惨。

 僕がアニメに理解のない大株主なら、株主総会で暴れます。

 石川社長は相当なプレッシャーだったと思います。

 押井守講演は、それを救うために戦略的に実施されてますね、きっと。

 株式公開したことで、ただのアニメ工房でなくアニメ企業への脱皮を宣言したのは彼ら自身。なので家電や自動車と同じように利益拡大を狙わなきゃいけないのは自明と思うのですが、、、。

 もともと自動車にしても実は組織力もあるけれど、何人かの職人的天才エンジニアのコンセプトでヒット作が作られている構造もあるわけで(企業はやはり人ですね)、芸術家とはそれほど違わない部分もありますから。

 それをうまく組織として有効活用し、ヒットを出し続けていくべき戦略を持つのが株式公開企業の本来の姿と思うのですが、、、。

 株式公開は彼らのアニメスタジオを近代的企業へもって行きたいという宣言のはず。『スカイ・クロラ』は今までの押井守監督作品とまったく違ってヒット作狙いなのは、まさに資本主義の論理にのっかってます。製作スタートの2006年春の株価を見るとよくわかります。あれだけ落ち込み始めたら、経営者はヒット作を確実に狙える作品の準備をはじめなきゃ、株主総会に怖くて出席できないのではないかと。

 今回の押井守講演が株主総会と合わせて行われああした内容になっているのは、まさに策士押井守と石川光久がそこにいると思うのですが、、。

 あの講演されたら、懇親会で苦言を言いたかった株主は、トーンダウンは必至。

 これ読んでこういうしたたかな経営陣で、今の底をはうような株価ならかって損はないかなー、と思ったしだい(資金なく僕は本当に買えませんが、、、)。

 これでも株価が上がるように応援してるつもりなので、ながなが書きましたが、お許しを(^^;)。

投稿: BP | 2007.09.13 00:05

こんばんは^^。TBありがとうございました。
犬監督、講演会、懇親会とも終始ご機嫌でしたよ。

件の「大ヒット作がない」発言ですが、
ジブリへのカウンターも少々混じっているかと(苦笑)。

既にtetsuさんが仰っていますが、この業種を家電や自動車と
同じように捉えるのはどこか無理だと私も感じています。
第一ヒットを出したからといってその内容がお粗末であれば
次の仕事は来ない。ヒットが仕掛けた結果であれば尚更。
小さな仕事を確実にこなしていいものを残せば
業界内で信用ができていい話も回ってくる。
結局いいたいのはそこじゃないかなと私は捉えました。

>I.Gの株価をこうして守っているわけだ(笑)。
ご本人は株価より人材育成に興味がおありじゃないかな。
この秋の「真・女立喰師列伝」にしても
バージョンアップした「押井塾」みたいだし。

>神山健治を次を支える監督として育てる布陣もしかれていて
この秋実写デビューさせるのもその1つでしょうね。
実写を経験させてその経験をアニメにフィードバックさせてよりよいものを作らせたいのでしょう。

投稿: shamon | 2007.09.11 18:01

アニメビジネス自体が未成熟、というのも一理あると思いますが、
ビジネス(いわゆる産業としての)として考えることがもともと難しい素材のような気もしますね。
工業というより、手作業で作品を創っている工房のようなもの、ということで。大ヒットして仕事の量が増えても、作り手(この場合アニメーターや彩色の方達)の数は簡単に増やせないところとか、陶芸や、指物の工房に近いものを感じます。
そういうものに近い存在と考えた時に、効率化して規則を決めて工業化すると、作品の質が変質していくのではないかという危惧を感じてしまいます。

投稿: tetsu | 2007.09.11 10:54

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