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2007.10.14

■マイケル・ベンソン/檜垣 嗣子訳
  『ビヨンド:BEYOND 惑星探査機が見た太陽系』
  機械知性のみが知覚する宇宙の畏怖

マイケル・ベンソン,檜垣 嗣子訳
『ビヨンド 惑星探査機が見た太陽系
 BEYOND : VISIONS of the INTERPLANETARY PROBES 』

 新潮社HP 公式HP ギャラリー(一部閲覧可)

 カラー・モノクロ295点を収録した決定版。 燃えたぎる太陽、優美な土星リング、海王星の青き輝き…。惑星探査機が約40年にわたって送信してきた膨大なデータを厳選。

ベンソン,マイケル  作家、映画制作者、写真家。
 アメリカでは「アトランティック・マンスリー」、「ニューヨーク・タイムズ」、「ネーション」、「ローリングストーン」に、またヨーロッパでも「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」をはじめとする新聞・雑誌に、記事や写真を発表している。
 長編ドキュメンタリー『Predictions of Fire』は、ニューヨークのフィルム・フォーラム・シネマで封切られ、アメリカ各地に配給、いくつかの国際映画祭でベスト・ドキュメンタリー賞を受賞した。
 現在は、世界各地をまわるロード・ムービー『More Places Forever』と、無重力状態での初めての舞台パフォーマンスを題材にした映画『Zero』を制作中。妻、息子とともにスロヴェニアの首都リュブリャナで暮らしている。

 この本は、宇宙機による探索の歴史をえがきながら、太陽系の星を順を追って大判の写真で紹介した本。

 図書館で見かけて、ただの宇宙写真集と思って観はじめたら、中に入っている著者と関係者の文章が哲学的で素晴らしく、写真とともにひさびさに宇宙の雄大さを感じて読み終わった。

Beyond_jupiter  まずアーサー・C・クラークの序文。
 全宇宙の大きさを地球大と仮定すると、人類の活動圏20億km^3はほぼ原子一個分の大きさに過ぎない。類人猿が道具を使うことを覚え、その道具が人類を生み出した。そして人類が生んだ機械知性が人類の到達できない宇宙へ進出してその活動圏を広げている(その活動範囲は最遠のボイジャー1号が130億km彼方で、活動圏は既に人類の4×10の20乗倍)。それを進化と呼ぶなら、既に人類から機械知性へのシフトが始まっているのではないか。
 この探索機の撮った写真に受ける感動は、彼らが既にして知性と創造力を獲得している証なのかもしれない、とクラークは続けて書いている。

 著者のマイケル・ベンソンもこのスタンスは同様である。長文だけれど、なかなか面白い視点なので、紹介する。

Voyager_1_looked_back_at_saturn_on_  もし私が事情に通じていなかったら、地球を取り巻く大気のはるか遠くで、一種のバトンタッチのようなものがおこなわれつつあるのではないかと思ったことだろう。血と肉でできた"私たち"から、ナットとボルトでできた"彼ら"へと。(略)

 時々、私は考えてしまうのだ。人間が作ったセンサーが天空から送りつづけてきた、眼を見張るほどの豊かさに、多くの人が気づかなかった、あるいはあえて眼を向けようとしなかったという事態は、私たちの文明についていったい何を物語るのだろうかと。こうした夢のような機械を作り出した非宗教的な時代が同時に、機械によって解き明かされたものに向けられるべき畏怖の念を多少なりと消し去ってしまう原因にもなっているのだろうか。機械にある程度の心と好奇心を与えたことによって、私たちはその分、自分たちの心と好奇心を失ってしまったのだろうか。もしかしたら、私たちにはもっと時間が必要なだけなのかもしれない。あるいは角度を変えれば、もっと空間が必要なのかもしれないのだ。

 僕はエンジニアとして実にアバウトな人間なので、直感的にテクノロジーが意識を持った人工体を作り出すのは、そう遠いことではないと思っている(以前書いた記事)。なのでこの本で述べられていることは、なんとなく実感できる。有機体では到達にすさまじいコストが必要になる距離でも、宇宙探査機のような機械知性体であれば、らくらくと活動を広げていける。

 知性体の進化を宇宙への活動範囲の広がりで計るとすれば、既に人類は次の世代へバトンタッチするその端緒に着いているというクラークのコメントは卓見である。そして彼らが直視した宇宙の脅威の映像の一端がここにある。

 この写真集で我々は、機械が直面した非宗教的だけれども、とても宗教的なそれらの光景の持つ畏怖をどれだけ感じとれるのだろうか。そんな感慨とも諦観とも感じられる感想が本書の読後感である。ウェブで探した本書の感想は、ただ写真の感想が多いけれど、著者のラディカルな思想をこころしてお読みください。

◆その他 メモ  映像研究的に面白いところ。

・ルナーオービター探査船は70mmフィルムを露光・現像し、それをスキャンした情報を地球へ送信していた。
・ボイジャーをはじめ探査機からは宇宙の写真が洪水のごとく送られてくる。ハッブル宇宙望遠鏡からは20億バイト/日。次世代宇宙望遠鏡は数百テラバイト/日に拡大する。
・既に天文学のある部分は、これらデータをヴァーチャルな空間で観察するデータマイニングの領域へ突入している。
・著者はスロヴェニアの首都リュブリャナからインターネットで探査機のデータアーカイブを探索し、NASAの画像処理技術者と協力して、マルチフレームの合成画像、データに基づいた着色作業を進めて、この写真集を構築した。
・ユークリッドは、人間の視覚は眼から出た光の反射により生じていると考えていた。
・火星の運河で有名なパーシヴァル・ローウェルが金星に車輪状の構造を見つけたのは、実は望遠鏡内部に映った自分の目の血管だった。これは2002年にある論文で明らかになった。

◆関連リンク
Michael_Benson(Wikipedia)
Beyond_more_places_for_everhttp://www.kinetikonpictures.com/
 マイケル・ベンソンのHP(?)
 ギャラリーや映画作品の紹介
 次回作 MORE PLACES FOR EVER(右写真)
 宇宙と人間のかかわりを描いていそうで期待。
・同HPの宇宙関係アーカイブへのリンク 

芸術としての宇宙写真が人類に伝えるもの(WIRED VISION)

 ベンソン氏の写真集の折り込みピンナップとされるだろう作品からは、宇宙の巨大なスケールが感じ取れる。それは、ボイジャー1号が撮影したエウロパの連続写真を融合させた魅惑的なモザイクだ。木星表面の旋回する渦、帯、荒れ狂う大気の「大赤斑」をバックに穏やかに浮かんでいるエウロパを、ベンソン氏は「宇宙に浮かぶ一粒の真珠」と描写している。

 ベンソン氏は、『フォトショップ』を使って3週間作業を続け、高解像度の画像60点をもとにこの大作を作り上げた。この作品は、探検画家トーマス・モランの絵画『イエローストーンのグランドキャニオン』について、美術評論家のD・O・C・タウンリー氏が1872年が書いた批評を思い起こさせる。「巨大なキャンバスの使用を正当化する主題がもしあるとしたら、確かにこれが該当する」とタウンリー氏は述べていた。

探査機『ニューホライゾンズ』、冥王星に向かって出発
NEW HORIZONS NASA's Pluto-Kuiper Belt Mission
JAXA SPACE REVIEW MAGAZINE
 BEYOND プレビュー

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コメント

 shamonさん、say*3さん、こんにちは。

>>持ってます〜。
>>でも封きるのもったいないのでそのままだったり。
>>意味ねぇw

 かさばりますよね、この本。でも置いておいても映えますね。中味もいいよ。

>>手元におきたいですが高いので・・・。
>>古本屋で探してみようかな。

 たしかに手元にほしい本です。
 CD-ROM版でないかなー。

投稿: BP | 2007.10.20 15:43

持ってます〜。
でも封きるのもったいないのでそのままだったり。
意味ねぇw

投稿: say*3 | 2007.10.15 23:06

こんばんは。

これ、OAZO丸善に置いてあったのをぱらぱらっと見ました。
クラークの序文が素晴らしいですよね。

手元におきたいですが高いので・・・。
古本屋で探してみようかな。

投稿: shamon | 2007.10.15 19:58

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