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2007年6月3日 - 2007年6月9日

2007.06.07

■山田 正紀『イノセンス After the Long Goodbye』

山田 正紀『イノセンス After the Long Goodbye』(Amazon)

 バトーの一人称で、映画『イノセンス』の前日譚を語ったハードボイルド。
 主役は、バトーとその愛犬バセットハウンドのガブ。しかし主役は、僕たちが『攻殻機動隊』で知っているバトーではない。九課も出ない。トグサが一瞬出るだけ、新巻は名前だけ。
 まさにバトーを山田正紀が描いたらさもありなん、と想像できる小説。よって、アンチヒーロー的バトー。

 冒頭で、バトーが車の中でハッキングされ、無意識層に意識を移行させるような描写があるが、ここはなかなかエキサイティングだった。
 山田正紀はこの小説を書くにあたって、電脳と意識とゴーストの関係について、SF的にかなり突っ込んで考えているのではないか。ただ書きすぎてしまっていて、士郎正宗のサイバーパンクな描写には勝てない、という感じ。
 だけど意識と無意識の境界を描いているところは、面白かった。

 いないはずの息子の夢を観るくだりとか、ガブへ向かって一直線のところとか、ここにも切ないもう一人のバトーがいます。

◆関連リンク
・山田正紀『襲撃のメロディ
 車の中からのネットへのアクセスを30年前に描いた小説。僕はおそらくネットでの情報検索というのを初めて読んだのがこの小説だと思う。『イノセンス After the Long Goodbye』の車の中でハッキングにあうシーンで、この本を思い出した。
山田正紀(wikipedia)
山田正紀 - 書評Wiki『イノセンス』
山田 正紀『襲撃のメロディ』(Amazon)
『イノセンス』公開記念 押井守とバセットバウンド
押井 守, 桜 玉吉
 『犬の気持ちは、わからない―熱海バセット通信』
(Amazon)
押井作品のキーワードを探る@野良犬の塒 押井守と犬についてはここが詳しい。

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2007.06.06

■古川日出男 超大作『聖家族』シリーズ 朗読ムービーファイル

Furukawa_roudoku_seikazoku
『聖家族』シリーズの情報ページ (古川日出男公式サイト)

 『狗塚らいてうによる「おばあちゃんの歴史」』(「すばる」06.6月号)
 『地獄の図書館シリーズ』( 「小説すばる」06.4, 7, 10月号)
 『聖兄弟』(「青春と読書」06.6月号~現在)
 三本柱でスタートした古川日出男の超大作『聖家族』シリーズの情報ページ
 朗読のムービーファイルを掲載。『聖兄弟』と『ロックンロール七部作』より「ロックンロール十段」前半後半の3本。(撮影・編集 下田彦太氏)

 当Blog記事で紹介した、朗読ギグ 古川日出男×向井秀徳を聴かれた方なら、古川氏の小説のセンスを、まるで音楽のように、そして演劇のように演じてしまうこの作家本人の朗読の魅力はわかってもらえるでしょう。
 もっと聴きたいと思っていた方、残念ながら今回は向井秀徳氏の音楽はありませんが、古川氏独特の朗読が3本、聴けます。

◆関連リンク
古川日出男インフォメーション 

6月16日 短期集中連載『聖兄妹』スタート 【Date:2007.6.1】
「小説すばる」7月号より、三ヵ月間の短期集中連載『聖兄妹』がスタート
朗読ギグ「古川日出男×向井秀徳」(5月3日開催)のグラビア速報も併録

すばる 2006年 06月号
 『狗塚らいてうによる「おばあちゃんの歴史」』収録

・当Blog記事
『爆笑問題のススメ』 古川日出男の巻 『ロックンロール七部作』 『ボディ・アンド・ソウル』 『ベルカ吠えないのか』  『LOVE』 NHK週刊ブックレビュー 特集 古川日出男『LOVE』を語る

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2007.06.05

■非公式情報 押井守新作映画は『スカイ・クロラ』?
   THE SKY CRAWLERS

Sky_crawlers

Blog 野良犬の塒さんに、特ダネ(?)が掲載されてました。

押井守最新作は『スカイ・クロラ』?(野良犬の塒さん)

 情報筋によると、現在プロダクションI.Gで制作中の、2008年に公開予定となっている押井守最新作劇場アニメーション映画は、森博嗣の小説『スカイ・クロラ』を原作にしているという。(略)
 ただ強調しておくが、現段階で公式発表は一切行われていない。

 リンク先には、追加の情報もあります。詳細は是非、Blog 野良犬の塒を見てください。

 ググると、こんな情報もありますね。押井守総合スレ・その32
 ※07.6/20公式発表にもとづき赤字修正

もし巷で言われている小説が原作なら、その小説の最新刊(完結巻)の
発売日前の6月初旬くらいに正式発表かな?

もし言われている通りなら

監督 押井守
原作 森博嗣著「スカイ クロラシリーズのどれか)
脚本 伊藤ちひろ   演出 西久保利彦
キャラクターデザイン・作画監督 西尾鉄也
メカニックデザイン  竹内敦志
音楽 川井憲次    
制作 Production IG
製作プロデューサー 石川光久

 このうわさが本当なら、第5巻が発売される頃に公式発表があるのかも。浮遊工作室(予定表)によると、6/25「クレィドゥ・ザ・スカイ」(中央公論新社刊)の予定らしい。

 森 博嗣氏の本は、ミステリーの初期3冊ほどは読みましたが、どうも合わなくて、最近全く読んでいません。なので、表紙に惹かれはしましたが、この本も未読。

 鶴田謙二氏のキャラで、押井守とIGスタッフの稠密絵作りで爽快な空の映画になったら、とてもいいですね。しかし押井氏のことなので、ひとひねりもふたひねりもあるのかなーー。
 
(07.6/5追記) と思ったら、下記のような情報。完全なエンタテインメント!

アニメのニュースと情報 押井守に劇場映画の新企画進行中?

 「それと現在、企画段階ですが、『イノセンス』で組んだ押井守監督の新作を進めています。今度は押井守監督の意向もあって、完全なエンタテイメント作品を目指そうとしているんです。」

◆関連リンク
・当Blog記事 押井守 大学の講義で××× (次回作 伏字情報)
 ×××の一部は今回の情報で、「戦闘機」と確認できたわけです。
鶴田謙二氏の絵を予告編風にまとめたもの。(スカイ・クロラ公式HP)
森 博嗣『スカイ・クロラ』
『ナ・バ・テア―None But Air』
『ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven』
『フラッタ・リンツ・ライフ』

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■円城 塔『Self-Reference ENGINE』

円城 塔『Self-Reference ENGINE』(Amazon)
ハヤカワ・オンライン

〈ハヤカワSFシリーズ Jコレクション〉進化しすぎた人工知性体が自然と一体化したとき、僕と彼女の時空をめぐる冒険は始まった。イーガンの論理とヴォネガットの筆致をあわせもつ驚異のデビュー作。Jコレクション創刊5周年記念作品

 これは傑作。変態で不条理、雄大でユーモラスなハード(?)SF。
 特に奇想小説ファンは、是非読まれることをお薦め。素晴らしく脳がひっくり返る奇妙なイメージ世界を堪能できます。

 全体が二部構成、18編のそれぞれが独立して読めるバラエティに富んだ短編集(連作というよりこちらの表現が近いと思うがどうだろう)。しかし全体で、ひとつの大きな通常の人間の認識ではとらえきれないだろう世界が描かれている。素晴らしい。

★★★★★★★★以下、ネタばれ、注意★★★★★★★★

 僕が好きだったのは、下記の7編。

◆「A to Z Theory
 二十六人、ぴったりアルファベットAからZまでの名前の数学者が同時に単純にして美しい定理を発見する物語。何が起きているのかわからない不思議なダイナミズムにまず一撃。

◆「Event
 神父Cのテーゼというのがまず面白い。
 そしてそこから逃れるために巨大知性体が選択した自然現象そのもので演算する方法。これにより世界の時間律は解放され、人間が過去を改変されることに慣れてしまった世界。とにかくこれもわけがわからないが、自然現象そのもので知性体が計算を創める、というところのイマジネーションが凄い。

◆「Freud
 これぞハードSF版不条理日記。
 「床下から大量のフロイトが出てきた。」この一文のインパクトが凄い。フロイトとはもちろんジグムント・フロイトその人。二十畳の和室の畳の数と同じだけ、二十人のフロイトが亡くなった祖母の家で発見されたら、貴方はどうしますか?

◆「Contact
 人類と巨大知性体の、宇宙人とのファーストコンタクト。
 その宇宙人アルファ・ケンタウリ星人は、「Event」で描写された人類が想像すらできない巨大知性体に対して、さらに知性階梯を30段ほど登ったところにいるという。既にあまりに想像力の限界の果てのさらに彼岸まで行ってしまった存在の描写に、我々読者も巨大知性体とともにアタフタするのみ。

 この途方もないアルファ・ケンタウリ星人に言語中枢をのっとられてコミュニケーションのツールにされた巨大知性体ヒルデガルドが、その体験を詩篇として幻想的なレポートとしてまとめた25テラバイトの文章が興味深い。地球知性が途方もないものと出会った時、その表現ツールとして文学はまだ有効なようだ。しかし自然で演算する知性体の書いた詩篇、たぶん我々に理解はできません。これぞ究極映像じゃ。

◆「Japanese
 この一編、恐ろしく完成度の高い短編。
 発見された日本語文書は、その文字120億文字が全てが別々の文字で記されている。
 そして最初期に発見された14ページの一度は解読されたと思われた文書も実は、、、。人類と巨大知性体の知力を尽くした戦いの描写として、この設定とラストの落ちが素晴らしい。あー、なんて凄い短編なんだ。

◆「Yedo
 知性階梯を30段ほど登ったところにいる超越知性体アルファ・ケンタウリ星人とのコンタクトの手段として、地球巨大知性体のとった戦略は、喜劇専従の巨大知性体八丁堀とサブ知性体ハチによるお笑い駄法螺演算だった。
 超越したものとのコミュニケーションは、天才と馬鹿の紙一重を超えて、馬鹿の領域でコンタクトしようという、恐ろしくも馬鹿馬鹿しいハード数学SF(?複雑系SF?)。

◆「Disappear
 そして滅んだ巨大知性体。その理由は因果律を超えて、人間が想像した原因は全て否定されるところに存在する。決して手の届かないイマジネーションの世界を、群盲が撫でる、というのがこの本の巨大なテーマであるのかもしれない。まさにこの一編もそうした結構を持っている。

 とにかくこの不条理哲学超知性体SFに、ノックアウトされました。
 この作家の次が見逃せません。

◆関連リンク
Self-Reference ENGINE | Self-Reference ENGINE
 円城 塔氏本人のBlog。Profileによると、ここの社員さんらしい。凄まじい想像力を駆使したウェブサイト開発の仕事をしているのか!?
重力と恩寵: オブ・ザ・ベースボール―円城塔
『文学界 2007年 06月号』 文藝春秋
 第104回文學界新人賞発表-受賞作『オブ・ザ・ベースボール』円城塔(Amazon)
円城塔(wiki)
・菊池誠氏のkikulog
 Self-Reference Engine (円城塔、ハヤカワJコレクション)
nozomi Ohmori SF page (since Mar.31 1995)

(SFセミナー)合宿企画では、(略)Jコレの部屋では、「『Self-Reference ENGINE』を20分割したものを配る」というネタがそれなりにウケてめでたしめでたし。円城さんはすでにベテランの落ち着きで質問を次々に処理。新人らしい初々しさに欠けるのが問題と言えば問題か。

 ちなみに、「なにが書いてあるかわからない」と塩澤編集長から突き返された円城短篇「Boy's surface」は(予想通り)志村弘之に異様にウケていた。ちなみにBoy's surfaceとは、射影幾何の3次元空間への埋め込みのひとつで、日本語だとボーイ曲面(たぶん)。ボーイは、それを発見した人の名前なんですが(Werner Boy)、もしそれが男の子だったら……という駄洒落から生まれたボーイ・ミーツ・ガールの初恋物語(と推定)。(略)

Hash lab | Self-reference ENGINE

 ところで,円城氏は金子研のOBで,関数マップという超マニアック研究をヒトリコツコツやっている(た)人.関数が関数に作用して,関数自体が時間発展していく.要は,オペレータとオペランドの分離不可能性を真っ向から扱っている,複雑系ルール(ダイナミクス)派の仲間だと(勝手に)思っている.その彼が,「Self-reference ENGINE」と来たのだから,読むのがとても楽しみなわけである.

東大 総合文化研究科 広域科学専攻相関基礎科学系 金子邦彦研究室 関数マップ

円城塔とは - はてなダイアリー

ペンネームは金子邦彦『カオスの紡ぐ夢の中で』収録の短編「小説・進物史観―進化する物語群の歴史を観て」に登場する自動物語システムが名乗る筆名のひとつに由来する。

金子邦彦『カオスの紡ぐ夢の中で』

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2007.06.04

■『電脳コイル』 第4話「大黒市黒客クラブ」
  電脳戦闘スタート 作画、本領発揮!

◆『電脳コイル』 万能の映像世界 

Coil04_battle  いやー、第4話、素晴らしかった!
 もともとこのミックスド・リアリなコイル世界でなら、現実に覆いかぶさる仮想映像として、どんな奇想なイメージが大黒市に登場しても不思議でない。今回は202X年の小学校で、リアルにミサイル戦(直進くんと追跡くんの活躍)が繰り広げられるというエキサイティングな映像が楽しめた。

 このコイルの設定は、現実のちょっと先の科学技術でリアリティを確保し、どんな映像の自由度も獲得できる。まさにアニメーションにうってつけの素晴らしい設定。なにしろメガネに投影することで、どんな仮想映像でも街にリアリティを持って、登場できるのだ。
 特撮の「怪獣と街の破壊」だろうが、ファンタジーの「魔法合戦」だろうが、SFの「知性階層を超える異星人のオーバーテクノロジー」だろうが、およそ想像できる映像の全てが大黒市に登場してもリアルにOK。かつ現実空間は物理法則と人間の肉体の制限があるので、作画の腕のみせどころ。

 同じ電脳戦でも、『攻殻機動隊』との違いは、ミックスドリアリティが現実世界に適用されている点。現実の事物との相関関係で仮想世界が影響を受ける(例えば、現実空間にダンボールが置いてあると、ミサイルは貫通できない)ところ。これにより、あたかも仮想の電脳物質が現実に侵食しているような映像が手に入っているため、『攻殻機動隊』では描けなかった奇想でエキサイティングな世界が小学校に現出。

 磯監督、この設定を思いついた時は、きっと興奮したと思う。まさに世界を創造するアニメーターにうってつけの設定。

 第1話は、ポシェットから電脳釣竿を取り出す展開で、21世紀のドラえもんを目指すのかと微かに危惧の念を抱かせた(^^;)。だけどまさに今回でその危惧はきれいにぬぐい去られ、イマジネーションの飛躍する映像が校舎の廊下で炸裂。

◆第4話「大黒市 黒客クラブ」

Coil_under_water  今回の作画は、師匠とカリスマ-本田雄と井上俊一が作画監督をはなれ、筆頭原画。この自由な設定でいかんなく実力を発揮。(といっても僕にはどこが誰の作画か不明)
 普通の生活芝居と戦闘がみごとにひとつの画面にレイアウトされ、この取り合わせが素晴らしい異化作用でセンス・オブ・ワンダーを醸し出していた(いや、ただかっこよかったと表現するほうが正しい(^^))。

 今後、当然メカだろうが怪獣だろうが、小学生の小遣いが続けば(^^;)何でも可。派手なバトルを見せてくれるなら、全国のおじさんがダイチにお年玉を惜しまないだろう(なんのこっちゃ ^^;)。まずは以前に公式HPに掲載されていた左の不思議な生き物の暴れる姿がみたいもの(大黒市○○伝説??)。

◆イサコの過去

 物語の縦糸を構成する「優子と勇子」のコミュニケーションの話も、今回の二人の会話でスタート。特にヤサコの金沢での過去を鋭く指摘したイサコの言葉が重い。

 4話前半もいじめの描写があったが、こんなところから今の小学生たちのリアルな物語が徐々に立ち上がってくる。うちの娘をみていても(特にいじめられているわけでないが)、学校へ出かける時の雰囲気は、ちょっとした戦場へ向かうような表情をすることがある。
 現実の学校社会のもろもろを聞くと、人間関係は僕たちが子供のころよりか随分とシビアなものになっているように思える。ストーリーのこの部分が今後どう視聴者の子供たちへくいこむか、これもひとつの現代的なみどころである。

 ヤサコのアニメートで、背中を丸めて、手を前で合わせた独特の及び腰ポーズ。これもこの物語設定を作画で表現したものなのだろう。

◆磯監督の作画への関与

 凄く知りたいのがこのポイント。
 現在、磯光雄のクレジットは、原作・脚本・監督とデジタルエフェクトで、絵コンテ・作画は第1話のみ。つまりクレジットでは第2~4話はデジタルエフェクトを別にすると作画面の関与がないことになる(正確には第2話で美術設定も担当している)。

 『未来少年コナン』で宮崎駿は、クレジットと別に絵コンテ、レイアウトから果ては原画修正まで作画の全領域に関与したらしい(今の映画でもほとんどそこまで関与してるらしい)。

 アニメータとしたら、万能の映像設定を得た中で、存分に腕を振るいたいはず。少なくとも絵コンテは担当してもよさそうだけれど、、、、。監督としての修正等、どこまで関与しているか、今後、製作現場の様子を伝えるDVD特典とか特集本が望まれるところ。(まずはアニメスタイルでの小黒編集長のインタビューを待望)

◆関連リンク

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  電脳戦闘スタート 作画、本領発揮!"

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2007.06.03

■『電脳コイル』探索<3> 脳-電脳インタフェース
 ブレイン - コンピュータ/マシン インタフェースBCI, BMI

◆脳-電脳インタフェース BCI,BMI

 今回はミックスドリアリティとオーグメンテッド・リアリティ(MR,AR)に続き『電脳コイル』ワールドのキーテクノロジーとなっているブレイン-コンピュータインタフェース(BCI:Brain Computer Interface)、もしくはブレイン-マシンインタフェース(BMI:Brain Machine Interface)と呼ばれる技術について。

 「メガネ」がMR,ARを象徴してるとすれば、「コイル」がBCI,BMIを象徴する言葉であり(と思う)、ダイレクトにタイトルの『電脳コイル』に関係する。そんな重要キーワード。

 現在、研究されているBCI,BMI技術については、詳細は下の関連リンクを見てもらうとして、簡単に表1にまとめてみる(wikipediaが充実してないのでしかたなく整理してみます。素人の整理ですので、間違ってたら教えてください)。 

表1. BCI,BMI 脳とコンピュータの情報インタフェース
 脳 / 体内情報   センシング方法     体外への取り出し
  脳波(EEG)    侵襲的手法  電極他  プラグ(サイバーパンク作品),電波,
 電磁誘導 (
コイル?),
 光 (
イマーゴ?)
  脳内血流変化  

  筋電位

   非侵襲的手法  fMRI, EEG, MEG, NIRS,    不  要
  視 線    キーボード, カメラ他   (元々体外でセンシング)

 まず何から脳のコンピュータへの指示情報を読み取るか。脳神経の活動情報としては、EEG(脳波)と脳内血流変化の2種類が挙げられている。BCI,BMIは、このどちらかから脳内の指示を読み取ろうとする技術。加えて筋電位や視線といった脳の活動の結果をとらえる場合も表1に加える。
 次にそれをセンシングする方法は、大きく分けると侵襲的手法と非侵襲的手法に分けられる。これは文字通り、脳に機器(センサ)を直接潜入させるか/させないか、という分類。

 侵襲的手法は、電極を脳に埋め込む『ニューロマンサー』、『攻殻機動隊』、『マトリックス』等サイバーパンクSFが描いてきた方式が最も有名。この場合、体外へ情報をどう取り出すか、というところで、プラグを使ったり電波を使ったりという手段が別に必要。

 電極を埋め込む技術もかなり最近進んでいて、既に聴覚障害者への適用は医療として実現しているらしい(これはマシンから脳への情報伝達ですが)。

 非侵襲的手法は、頭の外側にセンサを置き、脳神経情報を読み取る方法。
 これには、EEG(脳波)を読み取る方法として、fMRI(functional Magenetic Resonance Imaging 機能的磁気共鳴画像)、EEG(Electoroencephalogram 脳波計)、MEG(Magnetoencephalograph 脳磁計)といったものがある。脳内血流変化をセンシングするのは、近赤外分光法(NIRS: Near Infra-Red Spectroscopy)というものが代表的。

 あと脳内情報をダイレクトに読むのではなく、その結果の体の動きから判断する方法。
 キーボードは指の動きで意識情報をとらえるインタフェースと言える。
 その他、視線の動きをカメラ等でセンシングして、マウスやキーボードの動きの代わりにする技術も有名で、こちらも障害者のコンピュータ操作デバイスとして、既に実用化されている。

Coil04_bci ◆『電脳コイル』におけるBCI,BMI

 第四話でかなり技術のヒントが示された。
 教室でのダイチによる黒客(ヘイクー:ハッキング)シーン。ダイチは手の入力でないと処置できないはずのメール爆弾攻撃をイサコに仕掛ける。しかしイサコの手と指(どころか体全体)が動かないのにダイチの攻撃は防御/反撃される。

 そこで語られるメガネの「イマーゴ」と呼ばれる隠し機能。
 どうやら脳からダイレクトに非接触でコンピュータへアクセスする方法があるらしい。

 イサコの眼が赤と青に点滅する後半の映像から考えると、この「イマーゴ」、光によるメガネへの非接触情報入力の可能性大。
 たぶん侵襲的手法で脳内から情報を読み取り、そして電気/光変換デバイスで眼を光らせてメガネに情報入力しているのだろう。

 ではイサコ以外は、どのように情報入力しているのか。
 こっからは完全な邪推だけど、たぶん仮想のキーボードを叩く指の動きを、体にながれる筋電位をとらえて伝えているのではないか。そしてキーになるのがたぶん「コイル」。(以前も少し書いたけれど、追記とちょっと修正。)
 
 「コイル」は、イサコの眼光の代わりに人の体からメガネへ情報入力する手段ではないか。
 イサコが脳の何らかの信号を眼の光に変えるデバイスを埋め込まれているのに対して、他の子供たちは、筋電位をとらえ、それをメガネのツルへ非接触で伝えるデバイスを埋め込んでいるのではないか。それが「コイル」。
 コイルというのは、技術用語では通常銅線を巻いたもののことである。銅線を巻いて磁界を発生させて、それをメガネのツル(ここにも銅線が巻いてある)がその磁界を電磁誘導でとらえているのではないか。

 おそらく、この筋電位とコイルによる情報量は、イサコの埋め込んでいる侵襲デバイスより、ビットレートと精度で劣る。しかもイサコが、第三話で電脳空間が破壊される時に衝撃を受けたことから、メガネから逆に感覚情報に近いものも脳内へ伝達されていることがうかがい知れる。

 ここの真相は、今後の展開が待たれる。何にしてもタイトルの「コイル」の意味がわからないのは気持ち悪い。「コイル電脳探偵局」は何故コイルという文字を使っているのか?「coil a circle of children」という英語タイトルの意味は?(燃える電脳戦の第四話の感想を書くはずが、長くなってしまったので、トピックを分けます。楽しい電脳戦の話は次回!)

 2chでも、「コイル」の謎についてはほとんど語られていない。
 どなたでも謎の推測があれば、コメント欄に書き込んでいただけると嬉しい。

◆関連リンク

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