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2007年8月26日 - 2007年9月1日

2007.08.29

■三菱電機 立体映像機能付きAV機器を開発中(?)
  2D-3D映像変換機能をPS3に装備(?)

3D映像機能を備えたPS3が2008年に登場?
3D-enabled PS3 coming in 2008? (原文)
そしてその情報ソース↓
 Mitsubishi planning 3D Blu-ray player for early 2008 | Crave : The gadget blog

 数人の他の科学技術のジャーナリストと共に、私は今日、ウェスチェスターCountry Clubで2,3時間を過ごしました。(略)それぞれの1組の高級3D眼鏡を手渡して、会社が扱う何らかの新しい3D画像技術のデモを我々に示しました。

 この記事、とても興味深い。
 ある人たちが三菱電機からDLPプロジェクタで3D映像のデモを受けた時の様子が細かく述べられている。そしてBlue-Rayプレイヤーを搭載したゲーム機で、既存の2D映像を3Dへ変換する技術が開発されているらしい。もちろん記事では、そのゲーム機はPS3だろうという可能性も書かれている。

 これが本当だとしたら、ハリウッドはあせるだろう。
 詳細は関連リンクの記事を見てほしい。ホームシアターのハイビジョン映像がどんどんレベルを上げていく中で、ハリウッドは映画館がホームシアターに勝るために、アメリカの劇場を立体投影の映画館へシフトしつつある。
 そんな中で、DLPのフルハイビジョンで家庭でも手軽に、立体映像がみえるようになったら、映画館には脅威だろう。

 おまけに、PS3で2D映画を3D映画に変換するような技術がもし出てきたら、、、。

 きっとその技術は、PS3の映像熟成機能を用いて実現されるのだろう。
 ゲーム機を人が使っていない時に、その高速のCPUパワーで、2D映像の動きから、物体の奥行き方向の情報を解析し、3D映画として左右の眼に別々に写すCGで加工して立体映像へ変換する。そういうのがPS3の熟成機能のひとつになる。

 その際には奥行きの強弱とか色合いとか、きっと自分の好みで3D変換のモードをいくつか選べるようになっているだろう、あたかもサラウンドのモードを選ぶように。

 立体映画好きには素晴らしい時代を予見させる技術。記事では来年の登場について触れている。こんなのが出たら、PS3間違いなく、買います。でも当面、きっと三菱としては新型DLPプロジェクターとのセット販売を目論むんだろうなー。

 僕もプロジェクターは三菱なので、是非旧型機への対応をお願いします。>>三菱殿。

 あと願わくば、ここのBlogでしっかり分析/記事にして宣伝するので、是非試写かデモ機貸し出しを!!こんなBlogじゃしょうがない、なんて言わずにもし読んでみえたら切に希望!(^^;;)とにかく早くそんな立体映像をこの眼で観たいのです。


◆関連リンク 当Blog記事
ジェームス・キャメロン3D『エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ:Alien of the Deep』と新作情報
スターウォーズを立体映画にする技術 In-Three Dimensionalization®
PS3は映像を熟成する究極映像装置か?!

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■レポート④ ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展(2)
   @ラフォーレミュージアム原宿

 展示会のレポートの続きです。

●人形たちのインパクト

 葉山の展示会の時にインパクトがあったのは、『ファウスト』の人形(『舞台装置』と名づけられた作品)だった。
 今回の展示でも『ファウスト』の人形とセットを使って、『小劇場』という作品が展示されていた。舞台の中のセットと人形は少し前回と違うが、たぶん両脇に立つ巨大な2体の人形は同じもの。
 全体の印象は何故か少し違っていた。照明の関係だろうか。 

 今回、インパクトがあったのは、『悦楽共犯者』の人形二体を使った『ロウバロヴァーとピヴォンカ』という作品。

 会場でこの二体がいる空間は、何かまがまがしいものが漂っていた。前回の『自慰マシーン』の猥雑な空間も相当だったけれど、インパクトではこちらが勝ち。

 その他『アリス』の人形たちによる3つの作品も存在感が素晴らしい。
 前回もあった『兎とボート』の兎の顔は何度観ても飽きない。あとその兎が洋服を脱いで、裸の樹の人形と対峙する『帽子屋』。そして魚の剥製の貴族たちの『家』。

 これらも人形の質感を想像しつつ、シュヴァンクマイエルがどうひとコマづつ、触覚しながら動かしていったかをイメージすると、さらに味わい深い。舞台の横やうしろにも回れるので、いろんな角度からそんな想像をするのが、シュヴァンクマイエルの撮影風景をよりリアルに体感できる。
 

●メデュウム・ドローイング

 エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの作品でとても気になっている『メディウム・ドローイング』であるが、今回も数点紹介されている。前回とは全部異なる作品で13作品。プラス『メディウム・オイル』と名づけられた同様のイメージの油彩の2点。

 いずれも眼や手や顔がモチーフになっていて、それらがなんとも言えない奇妙な、そして病的なタッチで捻じ曲がって描かれている。

 今回、ひとつ気づいたのは、モチーフとして二点に獣(たぶん狼)のイメージが大きく入り込んでいること。エヴァ氏はこうしたイメージをどのように抽出し、何を感じながら描いていたのか。抑圧したイメージが相当に浮かび上がっているので、質問するのが怖い気もするが、ご本人に一度でいいから聞いてみたかったと思う。すでに鬼籍に入られており、これは叶わぬことなのだが、、、。

 作品はいずれも2000年以降の最近のエヴァ作品。

 講座で話があったエヴァが書いていたヤン・シュヴァンクマイエルの映画脚本に、そうしたメディウム・ドローイングの内容が反映していたとしたら、、、。そして美術をエヴァが担当していたら、、、。シュヴァンクマイエル作品の幅をさらに深く広げることになったかもしれないこのイメージの導入は、我々ファンのイマジネーションを広げる。いや、この路線がファンを増やすのか減らすのかは、誰にも分からないのだが、、、。

Jan_svank_sign●触覚の一日としてのサイン会の意味

 そして17:00から整理券の順にサイン会が展示会場の外でスタート。

 順番がまわってきて、図録にサインをしてもらう。一人ひとりの時間が短いので、僕はペトル・ホリーさんを介して、講座がとても有意義だったことと、新作をがんばってください、と伝えただけだった。

 サインの際に握手をするのだけれど、シュヴァンクマイエルの手は大きく柔らかく暖かい感触を僕の手に残した。

 今日は触覚をめぐっていろいろと考えさせられた一日だったのだけれど、この握手の触覚がそんな一日の締めくくりになったのは、素晴らしく印象的で象徴的。

 この手が、あの映画作品のひとコマひとコマを作り出し、触覚実験を感覚していった手なのだ。ごく短い握手だけれど、その手の感触からいろんな触覚の想像を膨らませてしまった。まだ僕の手には、シュヴァンクマイエルの手が経験したいろんな触覚が微かだがイメージとして残っている気がする。その手が持っている感触がPCをタイピングする僕の指からこれら文章で伝わっていたらいいのだけれど、、、。

 このシュルレアリストのサイン会と握手は、触覚というキーワードで他と違う特別な意味を日本のファンにもたらしたのかもしれない。

 行かれた他の皆さんの触覚はいかがでしたか。コメントいただければ幸い。

●ちょっとしたまとめ

 2ヶ月前にダリ展を見に行ったけれど、実はあまり感動しなかった。高校の頃からずいぶん好きだったはずなのに、実物を見てもインパクトを今は受けなかった。

 シュヴァンクマイエルの作品は、ダリに比べると一見美術的な価値は低く見える。知名度はもちろんだが、ダリのがフォーマルな絵画の文脈の中にあり、シュヴァンクマイエルのアートはそこから外れてジャンクな感覚に溢れている。

 ダリ展の年齢層のそれなりに高い客層に対して、今回は若い人がほとんどな会場をみて、ダリが20世紀の代表的シュルレアリスムなら、こちらのジャンクで肉感的なシュヴァンクマイエルがもしかしたら21世紀のそれになるのかも、なんてことを考えていた。

 幻想的なチェコ人形アニメーションの映画作家という現在のシュヴァンクマイエルの位置づけは、しか本来映画の文脈だけでとらえるのでなく、映画にも絵画やオブジェやそうしたアートにも反乱を続ける戦闘的シュルレアリストと捉えなおした方がいいのではないかと思った今回の展示会だった。

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■レポート③ ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展(1)
   @ラフォーレミュージアム原宿

Laforet_svank ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展
~アリス、あるいは快楽原則~
(公式HP)

夢と現実、秩序と混乱・・・
カオスを漂うシュヴァンクマイエルの自由世界へようこそ

会場/ラフォーレミュージアム原宿
期間/2007.8月25日~9月12日

 待望の美術展がスタートした8/25に、観てきました。

 既にレポートした朝日カルチャーセンターの講座とあわせて、東京へ出かけることにした。シュルレアリスムに理解のない家族にはまるで韓国スターに会いに行くおばさんみたい、と言われつつ(苦笑)。ま、チェコまで行ったと思えば安いし、この機会に会えれば、と思った僕の感覚はそうした人たちに近いでしょう。

 ヨン様ならぬ、ヤン様だね、と家族に自虐的に言って出発。あんまりだ。
 どうせ君たちには戦闘的シュルレアリストに会ってみたいなんていう僕の感覚はわかんないんだ(^^;)。

◆ファースト・コンタクトと骨骨ファースト・フード

 朝10:30に炎天下のラフォーレに着いた。もう既に長蛇の列。列の後ろにつくとサイン会の整理券97番です、11時までここで並んでください、と言われる。
 どうせ東京まで出たんだからしっかり充実させようと思っていたので、炎天下だけど並ぶことにする。それにしても若い人ばかりの中に並ぶのは、なかなか抵抗が、、、。にしても直射日光が暑かったー。

 やっと11時に会場へin。しかしそこからさらに図録を買って整理券をもらう順番をラフォーレの階段に並んで待つ。

 で、並びつかれた30分後。
 突然、階段を下りてくるチェコのシュルレアリスト。オープニングセレモニーが終わった会場から出てきたらしいシュヴァンクマイエル氏は、僕たちの横を手を振りながら、にこにこして軽やかな足取りで通り過ぎていく。
 今、ヤン・シュヴァンクマイエルが近くにいるんだ、という現実感のない感覚が到来。とにかくこれだけで並んだ汗は充分報われた感じ。

 図録を買った上で、整理券をもらって会場を後に。今度は13:00の新宿の講座へ移動だ。移動前に原宿で昼飯。やはりシュヴァンクマイエル・デーは骨骨なフードが似合うと、骨付きチキンが食べられる駅前の名も知らぬファーストフード店へ。手が油でベタベタになるあの触感とスパイシーな味覚を感じつつ、新宿住友ビルへ。(朝日カルチャーセンターの講座の詳細はこちら)

◆ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展 

Laforet_svank02

 講座で直にアーティストの言葉を聞いた後、その作品をじっくり観る。これは作品が我々に与えるイメージをある領域へ縛り付けるリスクもあるけれど、語られた思想をダイレクトに生の作品で体感できるという贅沢なチャンスでもある。

 そんなワクワクした気持ちで再び原宿へ。

 会場の広さは葉山の神奈川県立近代美術館で05年に開催された展示会に比べると狭いと感じたが、作品数は葉山165点から今回の216点(除資料)へと拡大し規模は大きくなっている(図録を数えたので点数は正確かわかりません)。

 まず骨のオブジェの06年新作「ヤマアラシの馴致」が観客を出迎える。
 このヤマアラシくんの愛嬌が素晴らしい。卵と骨で作られた愛嬌。この不気味とユーモアのバランスがシュヴァンクマイエルファンにはたまりません。

●視覚と触覚のジャンクイメージ

 そして葉山でも凄いと思った猿の剥製を貝殻や鉱物でキメラ化した「食虫動物Ⅳ」。これは圧巻。ずっと観ていたい。
 そして今回、講座の言葉がまざまざと脳裏に。触覚をフル稼働して触れぬ作品を脳内で触って体感。そうすると以前の展示と違った見方が立ち上がってくる。あくまでも映像として視覚で感じていた作品が、もうひとつ豊かな触感として脳内にイメージを沸き起こす。
 つまり猿の体毛に触る柔らかい感覚、鉱物のごつごつした手触り、貝殻の軽密度な独特の触感。そうしたものが綯交ぜになった独特の触覚イメージと、視覚から入ってくるブラックでシックでシュールなキメラ映像の融合。この感覚はどう表現したらいいだろう。触れないことによる想像力の倍加イメージも手伝って、このジャンクな感覚は、新しいものだった。

 シュヴァンクマイエルが描くオブジェに込めたものは、その素材の選定から触覚を大いに意識したものであることがぐっと身近に体感される。

●何故、触覚のシュルレアリスムなのか

 何故彼が触覚芸術に目覚めたかは、今回の講座では、映画が当局の弾圧で撮れなくなって、その期間に何か新しいことをしようとして触覚実験をしたと語られただけだったけれど、僕の推定はこうだ。

 粘土や樹の人形を使ってコマ撮りをするアニメータは、長時間手を使って撮影対象をこねくり回す。これは映画監督や2Dアニメ監督が対象を視覚と聴覚だけで捉えているのに対して、圧倒的な差異である。コマごとに粘土の形を指で変え、視覚的な形状の小さな変化の連続を映像として捉える。しかし彼の手はその触覚をひとコマごと感覚し、試写の際にはその触覚を明瞭に頭の中に再生しているのではないか。ひとコマづつが連続して流れることにより、その触覚の記憶も連続的に。

 ここでクリエータの脳内イメージとして感じられているのは、視覚だけでなく触覚の連続的なイメージである。粘土が変形する指がそこに食い込んで行くヌルッとした感覚。人形の材料である樹木の断片の持つごつごつした手触り。

 講座で映写された『闇・光・闇』が持っていたのは、粘土、樹、布、卵、毛、そして骨や動物の内臓や脳の手触り。脳そのものの手触りを脳内イメージとして視覚と触覚が稼動して立ち上げる。

 人形劇とコマ撮りアニメから出発したシュヴァンクマイエルのシュルレアリスムが触覚の芸術へと向かったのは、こう考えると必然に感じられる。

 そんなことを考えつつ観る、オブジェ作品は、今まで以上に刺激にとんだ脳内イメージを沸き起こしてくれた。触覚を想起しながらの鑑賞をお薦めします。

★長文になったので、続きは(2)で書きます。

◆関連リンク
渡邉裕之編集『ヤン&エヴァシュヴァンクマイエル展 アリス、あるいは快楽原則』(amazon)
Blog 辛酸なめ子の女一人マンション シュヴァンク先生

◆当Blog記事 関連リンク
造形と映像の魔術師シュヴァンクマイエル展 
エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー回顧展カタログ
エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー関連図録
エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーさん 逝去
『GAUDIA(ガウディア)造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル』

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2007.08.28

■レポート② 公開講座 シュヴァンクマイエル氏と語ろう(2)
   (朝日カルチャーセンター講座)

Analogon  右の写真は、僕の持っているチェコ・シュルレアリスム・グループの会誌『ANALOGON』。今回の講座で、チェコアニメの文脈でなくチェコ・シュルレアリスムの側面で感じるものが多かったので掲載。

 ではさっそく講座の続きです。

◆⑥『闇・光・闇』はトゥルンカの『手』の影響はあるか、また『オテサーネク』はチェコの伝承の話、ポーやキャロルらの原作、そうしたいろいろなものの作品への影響について聴きたい。

 チェコの人形劇の伝統の影響を受けている。特に7~9才の頃に両親に買ったもらったこのくらい(注. 20cmくらいを手で示す)の人形劇セットの人形で遊んでいたのが大きな影響になった。子供の頃、内気でいろいろな問題を抱えていたが、善玉と悪玉を誰かに見立てたりして、人形で問題解決していた。

 これがプラハで人形劇学部へ入った理由。映像の教育は受けていないが、映画にこれだけ人形とか書割とか出てくるのは、この影響。

 ポーやキャロルについては、生き方の一部というくらいの影響がある。 
 ただそうした本や映画については、筋はすぐ忘れてしまい、筋と関係ない部分が残り、それが作品に影響する。

 たとえば『アッシャー家の崩壊』では筋ではなく、流れてくる泥を活躍させたくてあの映画を作った。そうした細部の切抜きから、間違いなく私の作品として作り出している。

 クレジットするのは、断らないと盗んだことになるから(笑)。

◆⑦作品を作り上げて観客に届く時に、日本語字幕が入るとか、本来の表現からどうしても変わって死んでしまう部分がでてくる。自分の中に入って出ていく時に変わってしまっている。この時の感情をどう思うか。

 いつもそれはハンディ、気になって仕方がない。
 それなので長いことセリフを拒んでいた。

 また作品を作る場合、プロデューサや観客(の受け止め方)を気にしないように。それが結果的には観客のためにもなる

◆⑧『人間椅子』は何がよかったか。そして何をイメージしたか。

 江戸川乱歩はその名前だけでなく、作風もポーの影響を受けている。そして日本のオリジナリティを持っている。
 『人間椅子』は乱歩の触覚主義にびっくりした。私たちが70年代にやった触覚実験の結果に非常によく収まっている。こんなのが日本にあったんだとすぐに気に入った。

 『人間椅子』は「触覚的文学」。早くに知っていれば『触覚と想像力』でも触れたかった。今のところ挿絵のレベル。(注. 将来映像化の可能性を含ませたニュアンスだったと思う)

 他の「触覚的文学」としては、フランスのラシェルド(?)『魔法使い』とか詩人のアポリネール(?)『わが友ルードヴィヒ』とかがある。

◆⑨卵と髑髏を使う理由は。プラハ城で髑髏の置物を見たが、チェコでの髑髏の認識は何かあるか。

 卵は誕生、髑髏は人が亡くなってからの様。チェコ文化としての特別な意味はない。
 骨については、建築の素材として優れている。物体として巧みなことができ、オブジェに使っている。
 卵は子供の頃、スクランブルエッグが(嘔吐されたもののようで)気持ち悪くて食べられなかった。強迫観念があった。今は、食べられます(笑)。

 今日は限られた時間でまだまだ質問があると思う。その答えはラフォーレ原宿の展示から得てほしい。

 最後、大きな拍手の中、微笑みながらはにかみ気味に出て行くシュヴァンクマイエル氏のうしろ姿が印象的でした。

レポートの最後に

 触覚の芸術とか想像力による反乱というのは、シュヴァンクマイエル氏がいろいろなところで書いている/インタビューに答えている言葉である。しかしそれを直接生で聴けたのは、とても有意義。

 目の前で直に話を聴くのは書かれたものを読むのとはまた違う。コミュニケーションとしては身振りや顔の表情といった文章だけでない情報が加わる。
 そして加えて眼。僕は一番前の左側にいたので、時々視線が合う。講座の内容にもあるが、まさに眼は心の窓。大げさに言うと、視線のコンタクトでシュルレアリストの心を直接覗けたわけだ。今まで読んで知っていたことが、それだけでない実感として伝達された。

 本当にその視線は優しく暖かいものだった。あの作品の過激さは、口から述べられるラジカルな言説は別にして、御本人の雰囲気からは感じられない。あの暖かい雰囲気がただグロテスクなだけでないシュヴァンクマイエル作品の素朴なユーモアの源泉のような気がした。

 この講座の後、ラフォーレ原宿の美術展へ向かう。そこで観た作品200点は以前の葉山のものともダブっている。しかしその見え方は少し変わっていた。

 特にポイントは、触れないオブジェや映像作品もかなり触覚を思い出させるようなものになっているということ。あらためてこの講座の後、展示作品を見ると、今までオブジェ等も視覚としてみていたが、それに触った時の触覚を想像しながら見るとずいぶん変わった印象になる。講座で伝わったイメージをもとに、脳の中の触覚感覚を呼び起こしながら見てみる。「触覚の芸術」というのが、実態として迫ってくるのが感じられた。(展示会については別に追ってレポートします。)

講座の様子、そして想像力。

 最後に講座の状況から無理やり日本のコアなシュヴァンクマイエルファンの様子を想像してみる。

 会場はほぼ20代の若者が95%。特に女性が9割くらい。しかも上の9つの質問は女性からのみ。

 シュヴァンクマイエル作品は葉山の展示も若い女性ファンが圧倒的に多かったし、今回の展示会場も7割くらい女性だった。

 全般的に最近は美術展とか行くと女性が多い傾向なのだけれど、特にシュヴァンクマイエル作品は顕著。この視点で分析するのも面白そう。(女性が社会で感じている現実と、そこを突破するためのシュヴァンクマイエルの体内的な感覚の芸術による反乱、という切り口でひととおりの分析の言説は書けそうに思うが、それこそシュヴァンクマイエル氏が嫌う人の想像力を何らかの形の中に閉じ込めるような行為かもしれない。)

 もちろん『アリス』とかその他、どこか可愛らしい人形やオブジェが、なんとも言えない独特のユーモラスを身に纏って現われる部分が女性に受けているのかも。

 (ちなみに僕はエヴァのメディウム・ドローイングについて突っ込んだ質問をしたかったが、会場はシュヴァンクマイエル本人のことを聞きたい空気が強く、エヴァさん中心の質問をしそびれました(^^;)。
 僕は語り合えはしなかったけれど、先に述べたように御本人の視線を感じながら、シュルレアリストの思想を聴けたのは、とても貴重な経験だった。遠い東欧の地で語られていたチェコ・シュルレアリスト・グループの息吹を少しだけ受け止められたかもしれない。「想像力は現実の原理に対する反乱である。解放せよ。」この言葉は、究極映像研の座右の銘のひとつとして、しっかりと刻まれた。(なんちゃって(^^;)))

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2007.08.27

■レポート① 公開講座 シュヴァンクマイエル氏と語ろう(1)
   (朝日カルチャーセンター講座)

Svank_asahi_calture シュヴァンクマイエル氏と語ろう
 詳細
(朝日カルチャーセンター)

映像作家、シュルレアリスト:
     ヤン・シュヴァンクマイエル
チェコセンター所長:ペトル・ホリー

講座の内容:
 その作品の日本語訳も手がけるなど親交の深いホリー氏をまじえて、短編作品を見ながら受講生とディスカッションを行います。※短編作品のタイトルは当日のお楽しみとなります。

場所:新宿住友ビル7階
期間・曜日・時間:8/25 土 13:00~14:30

■上映作品 『闇・光・闇』

 この作品を特にディスカスするということでなく、結果的には参加者がシュヴァンクマイエル氏に聞きたい事を質問し、その回答の中で『闇・光・闇』に触れるという形になった。
 質問者は日本語、ペトル・ホリー氏が間に入られて訳し、シュヴァンクマイエル氏が答える。

 こうしたファン(今回約100名)とシュヴァンクマイエル氏の直接の対話はもちろん日本では機会が少ないので、ファンには大変貴重な1時間半。質問は次から次へと手が挙がり、終わってもまだまだ会場には質問したい空気が溢れていた。

 以下、9つの質問とその後のシュヴァンクマイエルの回答のポイントをできるだけニュアンスを表現できるように書いてみた。長文なので、2回に分けて掲載。

(下記の表現はダイジェストなため少し硬いが、会場は終始、彼と今回通訳を務められたペトル・ホリー氏が質問者聴講者に気づかいし、ほほえみながら和やかに進行したことを最初に付記。)

◆①五感のうちどれを大切にしているか。
  もしどれかひとつだけ失うとしたら、どの感覚を選択するか。

 重要視しているのは触覚。失っていいとしたら嗅覚。

 この世を我々は五感で感知している。世界に興味があるので、五感にも興味を持ってきた。現代文明は機材を使うことで手を直接使わなくなったり、触覚を忘れがち。そこで触覚実験をチェコシュルレアリスム協会で皆の協力を得て実施した。
 その結果は1974年に地下出版で5冊だけ『触覚と想像力』を出した。このうちの一冊を展覧会で展示している。
 触覚はエロティシズムと関係している。
 皆さんも触覚芸術作品を作ってほしい。『闇・光・闇』も触覚そのもの。

 嗅覚は動物には重要だが、人間にはそれほど重要でないと思う。 

◆②作品に食物が出てくるとまずそうに見える。何か嫌悪感があるか。

 (1)イデオロギー的な答えと(2)個人的な答えの二つがある。

 (1)文明は(資源を)食べつくしてしまう。大きな国の押し付けとか、消費性の恐ろしさを表現している。
 (2)子供の頃、体が弱く、食べることをいろいろと強制された。今は食べることが大好きだが、この子供時代の強迫観念が映画に出る。決してチェコ料理がまずいというわけではない(笑)。今でもゆでたタマネギは大嫌い。親子丼でも玉子丼でもタマネギをはずす。生のタマネギは大丈夫。

◆③エヴァさんというパートナーを失われた。共同制作についてお話を聴きたい。

 性格は180度違っていたが、よりよく連れ添えた。
 私は内気で、エヴァは対照的。また私は戌年で、エヴァは辰年。(注.チェコにも干支があるようです。これが性格とどう関係するか、説明はありませんでしたが、、、。)
 二人の関係はダイナミックな時もあったが、それが調味料のようでもあり、退屈しなかった。 
 彼女は画家で詩人だった。作風が独特でエヴァのものは彼女のものだとすぐにわかる。共同作業で作風のどこが混ざっているか、展示作品で確認してほしい。 
 私の長篇映画の脚本をエヴァが手がけていたが、05年に急逝し完成できなかった

◆④作品を作る時は、アイディアとテーマ性とメッセージ性のどこから入るか。また原作がある場合、それをどのように選択しているか。

 作品を作る時の想像力についての質問として答える。
 想像力の扉の鍵を持っているかどうかが問題。鍵は夢、心理オートマティシズム、エロティシズム、幼少期の経験、快楽原理といったもの。

 想像力は文明が押しつぶそうとしているものからの解放。学校、会社、警察、宗教といった現実の諸原理が文明の持つ圧力。これに対して、例えば快楽原理の道とか、想像力の自由を守ることが必要。自分の解放、心の解放が想像力への道。これは現実の原理に対する反乱である。

 国の体制や社会は今の世界が素晴らしいと人々に思い込ませようとする。それに対する反乱=想像力。

◆⑤『闇・光・闇』もそうだが、映像に舌や唇や口が良く出てくる。これらについて触覚の面、トラウマの面で何か想いがあるか。

 口は体の器官のうちで最もアグレッシブ。何もかも食べてしまう。チェコでも「目は心の窓」と言うが、私は口もまさにそうだと思う。

 俳優の配役でも目と口で判断している。
 下手な役者でも映像の編集等の持つ奇跡で救えるが、からっぽな目と口では救いようがない。

 『アリス』の主役の少女を選んだときは、目が素晴らしかった。両親の離婚とかを経験した後だった。(そうしたものが現れていたのかもしれない、というニュアンス。) ただ口が気に食わなかった。そこで口のクローズアップだけは、別の俳優のものを使った。

☆あと4つの質問は、次回掲載。

◆関連リンクNinngennisu_3
江戸川乱歩著 シュヴァンクマイエル画『人間椅子』(amazon)
渡邉裕之編集『ヤン&エヴァシュヴァンクマイエル展 アリス、あるいは快楽原則』(amazon)

当Blog記事 
造形と映像の魔術師シュヴァンクマイエル展 
エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー回顧展カタログ
エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー関連図録
エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーさん 逝去
『GAUDIA(ガウディア)造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル』
『シュヴァンクマイエル PREMIUM BOX』 限定913部 発売

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2007.08.26

■ヤン・シュヴァンクマイエル新作『サバイビング・ライフ』準備中
  Přežít svůj život:SURVIVING LIFE, Jan Svankmajer

 ラフォーレ原宿の展示会「ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展 ~アリス、あるいは快楽原則~」の図録に掲載された年譜に、新作の情報がありましたので紹介します。

 年譜の2007年のところに「映画『サバイビング・ライフ』(仮)を準備中」とあります!
 ネットの情報を調べてみました。詳細はわかりませんが、いくつかの手がかりを発見。

Czech Film Commission - Media Links

Surrealist filmmaker Jan Svankmajer, whose latest film, Lunacy, is included in this year's Tribeca Spotlight section, has announced his next project: Surviving Life (Theory and Practice) will be Svankmajer's first since the death of his wife and long-time collaborator, Eva Svankmajerova.

 エヴァが亡くなった後、初の作品、とあります。これまでのコラボレーション作品との違いがどう出てくるか?

Czech film fund slashed

In the future, even such Czech creative heroes as Jan Svankmajer, whose animated pic-in-progress, “Surviving Life,” won about $376,000 this year

 これは予算について述べています。37万ドルというのが、今年度の予算ということでしょう。いくら東欧といっても全体予算としては低すぎるので、、、。

Přežít svůj život

Originální název:Přežít svůj život
Žánr:horor / animovaný
Režie:Jan Švankmajer

Final Draft of Screenplay

Přežít svůj život (teorie a praxe) Surviving Life (theory and practice)

 原題です。(  )の中の「理論と実践」が副題なのでしょうね。

Přežít svůj život(pdf)

 たぶん2002年に書かれたシナリオ(!!)。このPDFファイルのP130-149。ただ全部チェコ語なので、どなたかチェコ語の読める方の情報をお待ちします。

Czech Presence at the 35th Intl

Czech projects selected for CINEMART 2006:
SURVIVING LIFE, Jan Svankmajer, Athanor (Czech Republic)

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