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2008.11.17

■赤塚若樹 著『シュヴァンクマイエルとチェコ・アート』

Photo_2 赤塚若樹 著
『シュヴァンクマイエルとチェコ・アート』

        (未知谷 公式HP)

ブルトン『シュルレアリスム宣言』から10年――表現主義、キュビスム、ダダなどの影響のもと、タイゲ、トワイヤン、ネズヴァル、シュティルスキーらは独自のアヴァンギャルド《ポエティズム》を推進し、その後発展的解消を経てシュルレアリスムを宣言する。社会主義体制下では地下活動を余儀なくされるが、幾度もの世代交代を経てチェコ・シュルレアリスムは、現在進行形である。
(略)シュヴァンクマイエル、チェコ映画、チェコ・アートの三部構成で論じる待望の評論集。

 08.7月刊行。
 出版されたことを全然知らなかったので、こんなに記事にするのが遅くなってしまいました。引用した紹介記事にあるとおり、シュヴァンクマイエルとチェコ映画・アートを論じた評論集。

 残念ながら僕は、シュヴァンクマイエル以外のチェコアートの知識が貧しく、それ以外は赤塚氏の文章からイマジネーションたくましくして想像した脳内映像に頼るしかない(^^;)。

 非常に興味深かったのが、第三章のチェコシュルレアリスムの歴史と現在について触れたところ。もちろん「戦闘的シュルレアリスト」であるシュヴァンクマイエルに関連した興味である。この本から紐解いて、ウェブ上でしかなかなか触れることはできないけれど、チェコのシュルレアリストの作品を調べてみたい。いずれこのBlogでリンク集を紹介できたら、と思う。

◆シュヴァンクマイエル
 著者が述べているように、ここ数年、日本のシュヴァンクマイエルの受容が広がっているわりに、ちゃんとした評論が書かれていないのは寂しい。
 そこを埋める形で書かれた5本の論考が収められている。

 「驚きの感覚」こそがシュヴァンクマイエル芸術を理解するのに必要なものではないかとも思う。(P11)

 シュヴァンクマイエルはみずからルドルフ二世の信奉者であるということを表明している。(略)シュヴァンクマイエルが芸術作品と称してつくっているのは、みずからの想像上のクンスト=ヴンダーカマーに収まるだろうもの、収めておきたいもの、そのなかでもとくに自然物(ナトゥラリア)である、と。つまり、夢の世界のナトゥラリアであり、空想世界の自然の驚異をつくりだしているのであり、それがシュヴァンクマイエルという稀有な才能の芸術・創作活動となっているということだ。(P26)

 手の押し跡を「創作者の心的状態の純粋な表出」とみなし、それをとどめる素材として粘土をもちいている(略)。(P46)

 多様な読みが可能なシュヴァンクマイエルであるが、こうしたポイントでの分析が面白い。アニメーションだけでなく、実写映像、コラージュ、オブジェ等、幅広いシュヴァンクマイエルの活動の総体をとらえるのはかなり広範な分析が必要で、今回の5本の論考はいくつかの視点から多角的な読みのアプローチがなされている。

 僕が特に強くひかれたのが、「戦闘的シュルレアリストの賭け」と題して、『ボヘミアにおけるスターリン主義の終焉』について詳しく論じたもの。
 政治的なダイレクトなメッセージと、シュルレアリスムと魔術、魔術とアニメーションの観点からの分析が総体としてのシュヴァンクマイエルをとらえているように感じた。
 そうした観点での戦闘的なシュルレアリストの姿と、人を驚かせてやろうという一種茶目っ気に溢れたヴンダーカマー的感性。これらの渾然一体となった総体が我々を惹きつけるシュヴァンクマイエルの魅力なのだと改めて思う。

 ここで急遽、アンケートです。
 ここの読者の皆さんに答えていただけたら幸いです。シュヴァンクマイエルのどういった作品に魅かれるか、クリックいただければ幸いです。
 ★回答いただくと、即現在の得票結果がグラフで表示されます。
 次の土曜11/22締切として、来週結果を掲載したいと思います。ご協力、よろしくお願いします。(NIFTYにアンケート機能があるのを今日知ったので、今後、利用したいと思います。このBlogに来ていただける皆さんで何かアンケートしたいことがあれば、この記事へのコメントでご一報ください)
 

◆関連リンク
・その全文がネットに掲載されている。
 「戦闘的シュルレアリストの賭け ヤン・シュヴァンクマイエルの『ボヘミアにおけるスターリン主義の終焉』をめぐって」(「スラブ研究」45号)
シュヴァンクマイエルとアニメーション
 アニメーションは魔術の現代的なかたち。
 初出:『夜想34』(特集=パペット・アニメーション). ペヨトル工房(1998年).pp. 68-83.
編集・翻訳(原文=チェコ語・英語):赤塚若樹
シュヴァンクマイエルとアニメーション インタビュー記事

  私には魔術的な側面のない自分の作品など想像できませんでした。(略)
 かつて芸術と魔術は溶け合って、さまざまな儀式――それによって文明の初期段階を生きる 人間が自然の善意(自然現象、先祖の霊魂、悪霊)を勝ち得ようとしたさまざまな儀式――の分けることのできない一部分になっていました。その後、芸術は魔 術からは距離をおきはじめて、みずから図像学上の機能、美的機能、再現の機能などといった、ほかの機能を獲得し、とうとう全体主義体制のイデオロギーのし もべになりはてたり、あるいは美術市場のためにつくられる品物という悲惨な役割を引き受けるようになったりしました。シュルレアリスムはいつも芸術にその “魔術的威厳”を取りもどそうとしていました。そして、それがあるから、私はそのシュルレアリスムにつよい関心を抱いているのです。

・引用されていたWhen Jan met Terry | Independent, The (London) | Find Articles at BNET.全文(かな)
赤塚若樹氏HP 著書と翻訳書 文章1.

「チェ コ・シュルレアリスムの歴史的概観・1918年から1948年まで」
 『比較文学・文化論集』第14号(1997年).pp. 1-9.
 この文章については、これまでに何度か問い合わせがありました。(ありがとうございました。)これまでチェコのシュルレアリスムの歴史を大づかみにでき るような日本語の文献がなかったので、取っておいたメモをまとめるかたちで書いた研究ノートのようなものです。ですから、何かを「議論」するようなたぐい の文章ではありません。
 内容は表題のとおりですが、同時に日本語(およびフランスと英語)で読めるチェコ・シュルレアリスムの文献をまとめる目的もありました(数はかぎられて います)。掲載誌はたまたまそのとき発表しやすかったものですが、残念ながらあまり入手しやすくないようです。

赤塚若樹『シュヴァンクマイエルとチェコ・アート』(amazon)
・当Blog記事
 小宮 正安 『愉悦の蒐集ヴンダーカンマーの謎』
 ヤン&エヴァ シュヴァンクマイエル展@ラフォーレミュージアム原宿
 エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー関連図録  Eva Svankmajerova
 エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーと深井克美
 『GAUDIA(ガウディア)造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル』

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コメント


 梟木さん、こちらでもコメント、ありがとうございます。

>>愛知芸術文化センターでシュヴァンクマイエル展が催された折に地下の物販コーナーで積まれていたので、てっきりご存知かと思っていました。早めにお伝えしておければ良かったですかね。

 実はこのイベントの週は仕事でボロボロ状態で名古屋まで出かける元気がありませんでした。

>>この本のために書き下ろされたものは多くはないので既視感もあったりもするんですが、こうして見ると赤塚さんがいかに日本のシュヴァンクマイエル受容に影で貢献してきたかを思い知らされる気がします。

 そうですね。大きな貢献をされていると僕も思います。日本語でシュヴァンクマイエルの本が読めるのも赤塚さん他の先人のおかげです。

 こうした良書がたくさん売れるといいですね。表紙の赤塚氏のコラージュも味がありますので、皆さんもぜひ手にとってみて下さい。

投稿: BP(梟木さんへ) | 2008.11.18 23:33

こんばんは。

愛知芸術文化センターでシュヴァンクマイエル展が催された折に地下の物販コーナーで積まれていたので、てっきりご存知かと思っていました。早めにお伝えしておければ良かったですかね。

この本のために書き下ろされたものは多くはないので既視感もあったりもするんですが、こうして見ると赤塚さんがいかに日本のシュヴァンクマイエル受容に影で貢献してきたかを思い知らされる気がします。

投稿: 梟木 | 2008.11.17 04:53

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