諸星 大二郎『蜘蛛の糸は必ず切れる』(amazon)
メフィストに掲載された四編と書き下ろしの一編を加えた諸星大二郎の初第二短編集。
雑誌掲載時に読んでみたかったのだけれど、今回まとめて読んで逆によかったかな、という印象。マンガの諸星作品を彷彿とさせるが、小説ならではの力強いイメージ喚起力に溢れていて秀逸な幻想小説集になっている。
漫画から想像していたのとは違って、意外と端正な文体でつづられている。彼の漫画から想像していた泥臭さとか不可思議さとは少し違ったすっきりとした文体。
しかし登場人物の感性と描かれる舞台はあくまでも諸星大二郎の世界。そして小説であるからこその内面描写で、よりリアルに立ちあがってくる部分がある。
あと本の装丁が素晴らしい。真黒な背景に、諸星のカラーの蜘蛛と蝶の絵。本のページの端面もすべて黒。(挿絵ももちろん諸星。)
「船を待つ」
いつくるかわからない船を待つ奇妙な人々。
倉庫での寝泊まりのシーンは、黒澤明の『どん底』のドロドロの世界を思い出させる。
食堂のオモちゃんとの会話で主人公も読者も一息つくのだけれど、このオモちゃんというキャラクターも黒澤っぽい。
漫画の絵にしない方がイマジネーションをかきたてる世界で、諸星が小説にしたのがよくわかる。
「いないはずの彼女」、「同窓会の夜」
この2編は一人称の漫画では表現しにくい叙述もの。
後者は、読者にはフェイントをかけたりして仕掛けが楽しめる。
先日、実は卒業後三十ん年ぶりの同窓会へ行ってきたので、この「同窓会の夜」は、妙に各シーンがリアルに感じられた(^^;)。小説にしかできない世界。
「蜘蛛の糸は必ず切れる」
芥川龍之介「蜘蛛の糸」の諸星版リメイク。地獄のリアルな描写が素晴らしくもおぞましい。ここは諸星のあの絵で見せてほしかったかも。
クライマックスの主人公
陀多の体がバラバラになり、蜘蛛の糸を掴んだ手だけが意志を持って登っていくシーンは秀逸である。
伏線の破戒僧の使い方とか、舌を巻くうまさ。釈迦の残酷性の描写が余韻をひく。これと「船を待つ」がお薦め。
◆関連リンク
・諸星大二郎 最新情報他 - 葵屋
・芥川龍之介 蜘蛛の糸 全編。(こんなに短い話だっけ?)
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