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2009.05.14

■感想 ダラボン『ミスト』,ターセム『ザ・フォール/落下の王国』
 マクティーグ監督『Vフォー・ヴェンデッタ』,堤監督『20世紀少年 第1章』

 連休に観ていたDVDをまとめてレビュウ。
フランク・ダラボン監督『ミスト』(公式サイト)

 この映画、賛否両論のようだけれど、なかなかの衝撃作。
 僕はこのブラックなラストが好きです。

★★★★★★ 以下、ネタばれ、注意。★★★★★★

 ラスト、宗教的な荘厳な音楽の後、画面は無音になる。
 そしてときおり聞こえるのは、映画のラストで文明の復活を象徴するように現れた戦車とヘリコプターの音。

 まるで主人公が非文明の支配した異世界から、現実へ戻ったところを反復するように、悪魔的に響いてくるその音響の使い方が凄い。そのラスト寸前の巨大な生物の悪魔的描写とか、前半の人間ドラマの丁寧な描き方がこうしたところで効いている。

ターセム監督『ザ・フォール/落下の王国』(公式HP)

 映像は、もっと素朴な映像(泥臭い)でもよかったのではないか。
 公式HPのプロダクションノートによると、ヴァレリ・ペトロフ脚本、ザコ・ヘスキジャ監督のブルガリア映画『Yo Ho Ho』(81)がベースになっている。
 スタイリッシュな映像がむしろこの話の雰囲気を壊しているかもしれない。主役のアレクサンドリアの配役はあきらかにスタイリッシュな映像からの逸脱。だけれども、その方が物語には有効に機能している。

 設定はテリー・ギリアムの『バロン』を思いだす。幻想部分の映像がすばらしい。特に、砂漠の映像。

 世界遺産を数々撮っているが非常にもったいない。プラハのシーンなんてわずか20秒くらいではないか。

ジェームズ・マクティーグ監督『Vフォー・ヴェンデッタ』
 『ウォッチメン』に続き、アメコミ原作の映画が観たくなり、旧作だけれど、借りてきた。
 革命の描写が本作のクライマックスなのだけれど、どうも古い感覚に思えてならない。この革命はきっと成功しないなって。
 映像的には面白いところがいくつかあったので、残念。

堤幸彦監督『20世紀少年 第1章 終わりの始まり』

 映画としての出来はあまり素晴らしいとは言えない。絵は甘いし。
でもさすがに原作の力があるため、面白い。特に子供の頃と現在と近未来を交互に描いているところ。もちろん漫画でも同じなのだけれど、映画の実写になると、特に子供時代のリアリティの与え方が、漫画のある意味すっきりしたものから、ばっちぃ昭和30年代になっていてリアル。服とか鼻が付いて汚いし(浦沢の絵だとすっきりするところが汚い)。

 このリアリティが、正義と悪の対決という幻想/世界征服と世界滅亡の幻覚を、人類史上初めて大量投与された世代をズバリ表現しているように見えた。この感覚がわかるのは、現在の40〜50代に限定されるのかも。富野による正義と悪の相対化を小学生低学年で観た世代には、この作品が描いたような世界征服の幻影にとりつかれた物語は理解できないのかもしれない。(オウムは明らかにその大量投与がひとつの要因になった現象だろう)

<以下蛇足>
・コンビニになっている遠藤酒屋は明らかに『ふぞろいの林檎たち』の仲手川酒屋のコピーだろう。なので、遠藤母(チヨ)は石井トミコでなく佐々木すみ江に是非演じてもらいたかった。佐々木すみ江って第二章で別の役をやっているようなので、、、。

◆関連リンク
Creators Dictionary | Public-image.org » Blog Archive » TARSEM | ターセム | Film Director

僕 自身は10歳で無神論者になったんだけど、イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教、シーク教など、ありとあらゆる宗教系の学校に通ったんだ。そこでひとつ わかったことは、人間が神や宗教を信じ、心を動かされると、必ず美しい建物や音楽、物語、絵画、彫刻といった芸術が生まれるということ。僕は神の存在は一 切信じないけれど、人間が神を敬愛するがゆえに作った美しい芸術が、僕のような無神論者の心を動かすということは確実にある。バッハの「マタイ受難曲」に しても、彼の神に対する畏敬の念がなければ生まれなかった。芸術を生むための原動力としての神の存在は私には一切関係ないけれど、そこから生まれた芸術には感動するよ。

 まさに映像の申し子。
YouTube - ボブレノン バンドバージョン グ~タラ~ラ ス~ダララ~入り
 やはりこの歌は、この人の声があっていると思う。

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コメント

 shamonさん、こんばんは。

>>スーパーハイビジョンの今年の映像はどんなかな。

 ターセム監督にスーパーハイビジョンを撮らせたら、凄いでしょうね。

 映像美の極致、『落下の王国』の冒頭の砂漠山岳地帯の映像をスーパーハイビジョンで観たいものです。

投稿: BP(shamonさんへ) | 2009.05.17 22:45

まいどでーす。

>もっと素朴な映像(泥臭い)でもよかったのではないか。

うん、これ私も思いました。きれいすぎて物足らない。

来週末、NHK技研公開に行ってきます。
http://www.nhk.or.jp/strl/open2009/index.html
スーパーハイビジョンの今年の映像はどんなかな。

投稿: shamon | 2009.05.16 21:47

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» 「落下の王国~The Fall」ターセム [ひねもすのたりの日々]
作品公式サイトはこちら。公式サイトの美しい映像に惹かれて観てきました。ターセム監 [続きを読む]

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