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2010.04.19

■「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」展
  @神奈川県立近代美術館<葉山館>

Tale_of_tales

「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」@神奈川県立近代美術館<葉山館>

 寡聞にして知らなかったのですが、この展示会、美術担当のノルシュテイン夫人ヤールブソワさんの作品がかなりのボリュウムを占める。ノルシュテインの映画は、彼女の絵の世界がとても色濃く出ているのですね。不勉強を恥じるばかりです。

 フランチェスカ・ヤールブソワのユーリ・ノルシュテイン作品に占める作品全体への影響度は、同じ葉山で夫妻展の開かれたエヴァ・シュヴァンクマイエ ロバーとヤン・シュヴァンクマイエルでのエヴァの影響より、随分大きいように思う。(参照:シュヴァンクマイエル展 記事)

 この展示会はフランチェスカ・ヤールブソワさんの絵画作品がアニメーションより前面に出ている。「ノルシュテイン展」と呼ぶのは実は失礼で、むしろヤールブソワ展(+ノルシュテイン展)だ、と感じた。

◆「話の話」と「霧の中のハリネズミ」

 作品では、やはり「話の話」と「霧の中のハリネズミ」が圧巻。素朴で、そしてとろけるような「話の話」の世界に浸りました。
 特にこれらの作品を展示品としてまとめた、マケットと呼ばれるガラスによるマルチプレーンの立体画が素晴らしい。4〜5枚のガラスに映画撮影当時のセルを貼付けて箱に収め、上から蛍光灯の光で照らし出した作品。霧にかすむあの映像世界が眼前に。
 ヤールブソワさんの描かれた絵とともに、正に会場はあの独特の空間に転移している。

◆「外套」

 今だ完成せざる大作「外套」の絵画とスケッチも膨大な量の展示があった。30年の堆積。1982年に一時、ヤールブソワさんが制作から抜けられたとの記述があった。再度合作になっているようだけど、お二人にも夫婦で仕事というと、いろいろあるのかな、と邪推してしまうw。

 「外套」の20分ver.を会場で上映会をやっているのだけど、これは既に上映時間を過ぎていて、閉館1時間前に滑り込んだ僕は観られなかった。
 ただ、会場の液晶モニタでもその映像が流れている。これで観るアニメーションのシーンが超絶。あの絵画が連続した映像として流れた時に、コマ間で脳内に補完されて立ち上がるあのイメージの、どこにもない溶け込むような感覚は何なのだろう。

 映像はわずか十数インチの液晶モニタであっても、ヤールブソワさんの描かれた絵以上のイメージをそこに創出している。コマ間を繋ぐ脳内映像の成果であろう。ノルシュテインも撮った映像がどんな補完をされたか映像で確認して、それの修正をかけるんだろうか。それともそこが天才の一度撮りなのか?知りたい。

◆神奈川県立近代美術館 図録『Tale of Tales』

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 「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠」 展の図録。P183カラー2/3。出展作品がスケッチ、絵コンテ含めかなり(全部?)掲載されて圧巻。でもディテールは実物に比べようがない。これも脳内補完して眺める(^^;)。

 中でもマケットは立体作品。これは図録の平面写真では再現できない。あの本当に素晴らしい立体は実物でなくては味わえない作品だ。欲しくてたまらない。まねして自分で作るしか手はないですね(^^;)。

◆その他

・神奈川県立近代美術館 葉山、海沿いで、素晴らしい環境の美術館。一日中、近所をぷらぷらしてたい(^^;) が、今回も本業出張の帰りに寄ったので、閉館ギリギリ。前のシュヴァンクマイエル展の時もそうだった。時間の流れが他と異なるようなあの環境の美術館に、二度も閉館間際で短い時間でバタバタと鑑賞した自分が悲しい。

・「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」展の図録から各地の開催時期。2010.4/10-6/27 神奈川県立近代美術館。7/18-9/26 高知県立美術館。10/16-11/28 福岡三菱地所アルティアム。12/11-11.1/23 足利市立美術館

◆関連リンク
"Good Night, Children"
 「話の話」展で触れられていなかった近作。「外套」の暗くて重いトーンも好きだが、子供たちがウキウキするようなこの絵柄もいい。
CM "Russian Sugar:ロシア砂糖" 動画
 「話の話」展で触れられていなかったもうひとつ、角砂糖の30秒CM3本。

・当Blog記事
 GAUDIA EVAŠVANKMAJERJAN ― 造形と映像の魔術師シュヴァンクマイエル展 幻想の古都プラハから

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コメント

 リージョン・10さん、はじめまして。コメント、たいへんありがとうございます!

>>此方のサイトで当展の情報を知ったため、見逃さずに済みました。(何せ、情報弱者の高齢者なので)。とにかくお礼を申し上げたいと思いました。

 そういっていただけると、毎日の情報収集のモチベーションが上がります。自分がこういうワクワクするものが好きなもので、これからもご紹介できるよう頑張ります。
 こちらこそ見逃すことが多いので、何か情報があれば、是非、教えて下さい!

>>マケットと呼ばれる立体ミクストメディア展示がゾクゾクする出来映です。箱入りフライシャー式マルチプレーンであり、美意識自体の表出たるビオトープであると感じられるそれは、何ともムズかゆい、でも根源的な快感を当たえて呉れる気がする物でした。

 本当に眼が喜ぶ!展示でしたね。
 本文でも書きましたが、一家にひとつ是非ほしいものです!(作るしかない??)

 以前に山村浩二さんの同様の展示を見たことがあるのですが、アニメの素材の最もアーティスティックな表現形態かもしれません。

>> 又、そこに於ける光の温かさに、こみ上げてくる物を禁じ得なかったのは、私だけでなく、来場者の方の多くが感じた所ではないでしょうか。

 そうですよね、あの暖かいふあッっとした光。ずっとそこに居続けたくなります。

>> いきなりの長文、失礼致しました。 その他の展示についても、語り足りないものが有りますが、とりあえず勝手な御報告をお許し下さい。

 よろしければ、どんどん語ってください(^^;)。
 レスがなかなか出来ないかもしれませんが、ここを訪問される方も、こんなご感想を皆さん、お待ちだと思いますので、こちらこそ、よろしくお願いします。

投稿: BP(リージョン・10さんへ) | 2010.06.09 00:14

 はじめまして。いつも楽しく拝見させて頂いています。
私、昨日(6/6)この展覧会を観に行って来た者です。 
 此方のサイトで当展の情報を知ったため、見逃さずに済みました。(何せ、情報弱者の高齢者なので)。とにかくお礼を申し上げたいと思いました。
 さて、展覧会ですが、矢張り素晴らしい! ほとんどがヤールブソワ氏のエスキースで構成された本展ですが、管理人様の仰る通り、マケットと呼ばれる立体ミクストメディア展示がゾクゾクする出来映です。 箱入りフライシャー式マルチプレーンであり、美意識自体の表出たるビオトープであると感じられるそれは、何ともムズかゆい、でも根源的な快感を当たえて呉れる気がする物でした。 又、そこに於ける光の温かさに、こみ上げてくる物を禁じ得なかったのは、私だけでなく、来場者の方の多くが感じた所ではないでしょうか。
 いきなりの長文、失礼致しました。 その他の展示についても、語り足りないものが有りますが、とりあえず勝手な御報告をお許し下さい。

投稿: リージョン・10 | 2010.06.08 01:36

 青の零号さん、おはようございます。

>>葉山館がちょうどガラスの箱という印象の建物ですから、中に展示したマケットがちょうど入れ子構造のように思えて、なおさら作品内に入ってしまった気分でした。

 言われてみればそうした構造が無意識にそんな感覚を生み出していたのかもしれないですね。

>>感覚的にはリンチの「マルホランド・ドライブ」に出て来た青い箱がそのまま劇場に転化するイメージを、ナマで体験したような。

 シレンシオ、ですか(^^;)。
 あれとは違って、ノルシュテインとヤールブソワの世界は随分暖かい世界でしたね!

>>会場で流される「外套」の映像は圧巻でしたが、年を追うごとにアカーキーとノルシュテインが一体化しているように感じました。
>>だから「外套」が完成しない間は、ノルシュテインも健在では…と思うと、なんだかこのままずっと未完でいいような気もしてきます(笑)。

 作品と作家って深ーい部分でつながってますからね。途中でもいいので大画面で観たいものです。

投稿: BP(青の零号さんへ) | 2010.05.23 07:58

今回の展覧会、アニメ作家ノルシュテインと美術家のヤールブソワによる二人展という感じで逆に二人の強い結びつきがよくわかる内容でした。
ヤールブソワさんの絵画表現なくして、ノルシュテインのアニメはありえないなと。

>ヤールブソワさんの描かれた絵とともに、正に会場はあの独特の空間に転移している。

葉山館がちょうどガラスの箱という印象の建物ですから、中に展示したマケットがちょうど入れ子構造のように思えて、なおさら作品内に入ってしまった気分でした。
感覚的にはリンチの「マルホランド・ドライブ」に出て来た青い箱がそのまま劇場に転化するイメージを、ナマで体験したような。

会場で流される「外套」の映像は圧巻でしたが、年を追うごとにアカーキーとノルシュテインが一体化しているように感じました。
だから「外套」が完成しない間は、ノルシュテインも健在では…と思うと、なんだかこのままずっと未完でいいような気もしてきます(笑)。

投稿: 青の零号 | 2010.05.21 23:24

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