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2010.05.18

■感想 スタジオジブリ・レイアウト展 @ 松坂屋美術館

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高畑・宮崎アニメの秘密がわかる。
スタジオジブリ・レイアウト展
4/29→6/13 松坂屋美術館:松坂屋名古屋店

 スタジオジブリ・レイアウト展、観てきた。
 以前、shamonさんに、東京の展示で入手し送っていただいた図録でもカンドーしたが、やはり生レイアウト画は鉛筆の線のタッチまで迫力を伝えてくるので、じっくり見入ってしまった。

 でもいまさらながら感じるのは、レイアウトが完成した映像の仕上がりに大きく影響していること。各シーン、思い出しながらじっくりと眺めて行くと、いいレイアウトの映像は、映画の画面でも力がこもって観えていたことに気づく。

◆初金田伊功 画!
 以前、美術手帖の表紙になったアスベルのガンシップ・コックピットシーンが迫力。鉛筆の筆圧含めて原画から伝わる筆致。ガンシップの歪んだ線が醸し出す機体の重量感は、金田アニメートの神髄だ。

 こうした絵に顕著な、情動の表現が金田伊功の真骨頂。

◆宮崎駿のレイアウトの見分け方(^^;)
 そして、やはり宮崎駿のレイアウトが凄い。作画wikiに本レイアウト展図録のアニメータリストがあるが、何故か宮崎の名前がそこにはほとんど記載されてない。

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 しっかり数えたわけではないけれど、全体の1〜2割は宮さん本人のレイアウトなのではないか、と思うのだけれど、、、。
 判別するのは、公開されている宮崎自筆の絵コンテと類似した特徴を探す手がある。例えば、腕と脚のひょろりとした特徴的な人物のシルエット、顔の○チョンの縦長の眼(右図先頭を走る子供の眼)、そして文字の筆跡。これらから判別すると、宮さんに間違いないレイアウトが、かなりあるはずなのだけど。

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 間違いないのは、この左に示すサイン。明らかに「みや」と読めるので、これが記されたものは宮崎のものと考えて間違いないはず。

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 そしてさらに宮崎の漫画やイラストで知られたあのメカや建物の物凄い重厚な描き込みのレイアウト画。たとえばこれは『ハウルの動く城』に顕著だろう。

 全体を見ると、特に『もののけ姫』『千と千尋』『ハウル』は相当量のレイアウトを宮さん自身が描いてるのではないか。ハウルの城が特に凄い。あの質感をしつこく表現していく筆致は間違いないと思う。気が抜けたレイアウトの『ナウシカ』(特に前半)をその宮さん的レイアウトに脳内変換すると凄いです(^^;)。

◆展覧会への苦言
 レイアウト画は、そのほとんどが額に入れ一枚の絵として鑑賞させる形態で展示されていた。一枚づつの映画の設計図を、ひとつの美術作品として展示してあり、観客はじっくりと一枚づつの絵を鑑賞できるようになっている。

 ただここでひとつ苦言。以前図録を観た感想として書いたけれど、何故美術展なのに、額の中の絵を描いたアーティストの名前が一枚づつに記載されていないのだろう。美術作品の扱いとしては、相当に異常。
 この展示会は美術展を名乗ってはいけないと思う(正確には名乗ってないけど)。展示会スタッフとジブリはアニメータをなんだと思ってるんだろう。

 売られているポストカードやレイアウト画の実物複製もいっさい、絵描きの名は入っていない。少なくともこれらの絵はかなり代表的なシーンなので、調べればすぐわかるのではないだろうか。

 そして、宮さんの絵はこれが宮崎駿の直筆だと明示してあれば、作画オタクだけでなく一般の人にも喜ばれたと思う。特に『ハイジ』『三千里』は全部だし、『名探偵ホームズ』も大部分そのはず。監督としての宮崎でなく絵描きとしての宮崎の、ちゃんとした評価はそんなことを積み上げて行かないといけないのではないかな。

◆大平晋也 釜爺
 名古屋の展示は(twitterで複数の方に教えていただいたところ、東京も大阪も同様の展示だったらしい)、『千と千尋』のみ部屋の三面、天井まで数百枚のレイアウトを隙間なく並べ圧巻。ただ上の方の絵はしっかり眺めることが出来なくて残念。

 特に大平晋也氏による釜爺のレイアウトがいくつもある。もっとじっくり観たかったんだけど、視界から遠くて細部が見えないので、残念だった。

◆関連リンク
 ・スタジオジブリ・レイ アウト展(NTV)
公式ブログ

『美術手帖 2008年 09月号』(amazon)
 表紙が金田な美術誌!!これは素晴らしい事件です。でも無記名なのだよな、これも。
『Cut (カット) 2008年 09月号』(amazon)
 今回の展示のレイアウト画が17点掲載されています。遠方の方は是非。
YouTube - 大平晋也 : Shinya Ohira MAD 
作画@wiki - 大平晋也

・当Blog記事・当Blog記事
 『スタジオジブリ・レイアウト展』カタログ図録
 ガ イキングオープニング 金田伊功の作画の進化 アニメータ磯光雄と『電 脳コイル』 
 池 谷裕二 『進化しすぎた脳』 感想 3 + α アニメーター磯光雄と金田伊功と脳の構造 
 磯光雄,井上俊之監修 『電脳コイル ビジュアルコレクション』原画2000点とタイムシート

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コメント

>鈴木Pの独断だったりして(^^;)。

その辺は任せちゃってるんでしょうね。会社の運営と宣伝関係。


> ただ現場がそういう感覚だったとしても、(中略)個人名の明記って必要な気が、それでもします。

これは同意です。展示物に関しては、書く人より見る人の為ですからあった方が良いと思います。

> 今後もアニメに良い人材を集めるためにも、そういうことは必要な気がしますけどね。宮崎さんとかのそうしたところへの気持ちって、どうなのか、聞いてみたいものです。

まさにここで、宮崎さんも忸怩たる思いはありつつも、時代の流れと後進の育成の為にも、って感覚はあるんじゃないかと。
以前(コナンの頃ですから30才半ばの頃でしょうか)はムック本やら、アニメファンのそう言ったムーブメントに対して批判的だった気がしますが、近年はそこまでではないような気がします。ジブリ作品に定期的に入る友人のアニメーターの話を聞いても、やはり周りのスタッフもどんどん新しい血が入ってくるので、丸くなったと言うか開き直れたと言うか、そう言った感覚なんじゃないかと想像してます。

投稿: t0mori | 2010.05.23 09:06

 t0moriさん、おはようございます!
 制作現場を肌で感じられている方からのコメント、感謝です。

>>日本のアニメーション制作の現場は、個人ではなく集団作業による作品の完成形にのみ、価値を置く習慣があり、あまり「これが俺の絵だぞ」と言うのは美徳に思われない(スタッフに好かれない)所があります。特に宮崎さん(と言うか大塚さんとかその上の世代から)は、そう言った共産的なモノづくりとか、職人的気質を良き物として率先して広めてきた節があるので、まずご本人がレイアウトの絵に対してサインを入れるとは考え難いです。

 たしかにそうした感覚は、宮崎さんや大塚さんの発言から、僕らファンにも感じられるところはありますね。

>>案外、レイアウトの展示に個人の名前がないのは、ジブリからの指示かも知れませんよ。そう考えた方が、業界的には自然に感じます。宮崎さんとか、「こんな物は作品を生み出す為の過程で生まれる物で、ゲージュツじゃない!」とか言って怒りそうですし。

 そういうことかもしれませんね。
 本来この展示も正規に宮崎さんに承諾してもらおうとしていたら、実現しなかったのかも。
 鈴木Pの独断だったりして(^^;)。

 ただ現場がそういう感覚だったとしても、アニメータを尊重しアーティストへの敬意を示したい我々ファンのためには、個人名の明記って必要な気が、それでもします。
 今後もアニメに良い人材を集めるためにも、そういうことは必要な気がしますけどね。

 宮崎さんとかのそうしたところへの気持ちって、どうなのか、聞いてみたいものです。

投稿: BP(t0moriさんへ) | 2010.05.23 08:20

あ、実はコメント書き込むのは2回目(今回で3回目)です。一度はゲド戦記か何かの記事だったかと思います。
ケチをつけるつもりではなかったので、お気を悪くされたらごめんなさい。何となく同じ業界に身を置くものとして、感覚的に腑に落ちなかった、と言うだけですので。

>サインは、レイアウト以降の行程への指示を書いているように読めたのですが、、、

ああ、だとするなら本人の物である可能性もありますね。
本人が直した上で、「これこれこうしてくれ - サイン」と言う形は割とよくあります。と言うか、多分サインを残すパターンで、一番多いのはこれでしょう。

この場合は絵に対してではなく、このコメントは誰の発言ですよ、と明示する為です。
集団作業なので、絵は誰が書いたかの証明は要らない(*後述)けど、コメントは誰が発信した物かが分かっている必要がありますので。つまり、本人の絵でなく、コメントだけ書き込んだ場合(この場合は監督としてのコメント)も、やはりコメントにはサインします。

*ほとんどの場合、修正は役職(優先順位)を示す色付きの紙で行うか、全直しなら新しいレイアウト用紙(フレームが書いてあるもの)に書きます。そしてそれが作業工程の柱となるので、優先順位(ヒエラルキー)は明確であるべきですが、誰が書いたかはあまり重要ではないのです。

日本のアニメーション制作の現場は、個人ではなく集団作業による作品の完成形にのみ、価値を置く習慣があり、あまり「これが俺の絵だぞ」と言うのは美徳に思われない(スタッフに好かれない)所があります。特に宮崎さん(と言うか大塚さんとかその上の世代から)は、そう言った共産的なモノづくりとか、職人的気質を良き物として率先して広めてきた節があるので、まずご本人がレイアウトの絵に対してサインを入れるとは考え難いです。
これは乱暴な言い方をすれば、工業製品の部品に、いちいち名前を書かないのに近い感覚です。
もちろん、誰の絵が巧い、カッコイイ、真似したい、的な事、或いは俺の方が巧い、もっとこうして欲しい、と言うのは個人個人であります。あくまでオフィシャルには、個人を主張する事は少ない、と言う意味です。

案外、レイアウトの展示に個人の名前がないのは、ジブリからの指示かも知れませんよ。そう考えた方が、業界的には自然に感じます。宮崎さんとか、「こんな物は作品を生み出す為の過程で生まれる物で、ゲージュツじゃない!」とか言って怒りそうですし。

長文失礼いたします。

投稿: t0mori | 2010.05.22 21:38

 t0moriさん、はじめまして。

>>ジブリの習慣は知りませんが、通常アニメーション業界で本編用に書かれた素材に、書いた本人が自署をする事はほとんどないと思います。サインを必要とする場合、チェックサインである場合がほとんどです。

>>特に宮崎さんのような職人肌で、自己顕示欲よりも作品第一と考えるような人(お会いした事はないので本当にそうかは知りませんが)は、自署などしないのではないかと思います。

>>或いは、全直しした上で、チェックOK、と言う意味でサインをする事はありますので、書いた本人のサインである事もあるかとは思いますが、選別の基準にはならないかと。

 実際は、サインと絵のタッチで判断してました。
 サインは、レイアウト以降の行程への指示を書いているように読めたのですが、、、。


>>どちらかと言うと、サインが入ってたら本人の物でない、と考えた方が良いかと思います。

 うーん、悩まなくて良いようにジブリがはっきり図録に明示してくれていたら、、、。ジブリの人、もーし、見てたら教えてほしいなー。

投稿: BP(t0moriさんへ) | 2010.05.21 22:59

 竜眼寺文蔵さん、こんばんは。
 確かtwitterでもお会いしてますよね。

>>ボクもジブリ大好きなので行きたいなぁ・・・。

 遠いんですね。名古屋の後の巡回はどこへ?

>>今、自分の部屋を「小ジブリ美術館」にしようとしています(笑)

 僕もラピュタのロボットとか、ハウルの城とかメカものは欲しくなります(が、高いので買ってない。なんでジブリものは高いんでしょう?)

投稿: BP(竜眼寺文蔵さんへ) | 2010.05.21 22:55

サインの件で。
ジブリの習慣は知りませんが、通常アニメーション業界で本編用に書かれた素材に、書いた本人が自署をする事はほとんどないと思います。サインを必要とする場合、チェックサインである場合がほとんどです。
特に宮崎さんのような職人肌で、自己顕示欲よりも作品第一と考えるような人(お会いした事はないので本当にそうかは知りませんが)は、自署などしないのではないかと思います。逆に何かにシャレで書いた落書き、とか、絵コンテの表紙などであれば、自署を入れるかも知れません。
或いは、全直しした上で、チェックOK、と言う意味でサインをする事はありますので、書いた本人のサインである事もあるかとは思いますが、選別の基準にはならないかと。
どちらかと言うと、サインが入ってたら本人の物でない、と考えた方が良いかと思います。

投稿: t0mori | 2010.05.19 04:06

こんにちは!

いいですね~行けて♪
ボクもジブリ大好きなので
行きたいなぁ・・・。

今、自分の部屋を「小ジブリ美術館」
にしようとしています(笑)

よかったら、ブログに見に来てくださいね♪

投稿: 竜眼寺文蔵 | 2010.05.18 21:25

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