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2010年1月3日 - 2010年1月9日

2010.01.08

■感想 伊藤 計劃『ハーモニー』

伊藤 計劃『ハーモニー』

 「一緒に死のう、この世界に抵抗するために」—御冷ミァハは言い、みっつの白い錠剤を差し出した。21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は医療経済を核にした福祉厚生社会を実現していた。誰もが互いのことを気遣い、親密に“しなければならない”ユートピア。体内を常時監視する医療分子により病気はほぼ消滅し、人々は健康を第一とする価値観による社会を形成したのだ。そんな優しさと倫理が真綿で首を絞めるような世界に抵抗するため、 3人の少女は餓死することを選択した—。

 遅まきながら昨年のSF大賞受賞作『ハーモニー』読了。
 健康テーマのユートピアもの、と単純にイメージしていたのですが、豈図らんや、伊藤計劃氏が追求していた「意識」テーマの本格SFでした。

 我々人類が獲得した意識なるこの奇妙な形質を、とりたてて有り難がり、神棚に祀る必要がどこにあろう。(P316)

 このストーリーはある意味SFの王道である。『幼年期の終わり』を思い出させる。そして僕の文脈だと『The End of Evangelion』にもつながりますね(ありゃありゃ)。(おおげさに言うと)デカルトの打ち立てた「近代」くんの転倒。そしてそれに立脚した「文学」ちゃんへの決別でもありますね。

 そしてもしかしたら作家からご親族へのギリギリの状態のメッセージ。本当にラストページ、涙なしには読めません。

 伊藤計劃氏、やはり「意識」が主要テーマだったのですね。
 次に「From the Nothing, With Love」(『超弦領域』所収)でさらにそれを深化させる方向性が書かれていただけに(こちら参照→ http://bit.ly/751Rhf)、本当に残念。もっともっと読みたかった。

 伊藤氏が亡くなり、今は叶わぬこととなってしまったが、この本のラストの後の世界を描く小説が読んでみたかった。あのラスト、小説の形態を喰い破っているわけだから、その先を描いたらそれは「ポスト小説」。なんだかわからないものになりそうだけど、そんなゴールを伊藤氏が構想していたとしたら、、、。

 この本では、意識と意志の区分けが曖昧だった(両者をイコールとして書かれていた)。意識=意志+コミュニケーション(言語)では、と思うのでこのコミュニケーションについて触れていないのは少し残念。
 ここを描いて、意識のメカニズムが自明になった世界において(つまり「近代」の呪縛から解き放たれて)、主人公たちが行動して行くような小説が読んでみたい、なーんて夢想をしてしまった。

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2010.01.07

■デイヴィッド・リンチ作品ネットオークション David Lynch on artnet

Artwork_images_davidlynchtile

David Lynch on artnet
 デイヴィッド・リンチのアート作品の展覧会を紹介してきたが、今回はその作品のネットオークションの紹介。
 上記artnetというHPで、現時点66点のリンチ作品が販売されている。
 それなりの大きさの画像で、作品を楽しめるので、リンチファンの方にはお薦めです。
 上記はそこから12点、僕の気に入ったものを引用しました。
 まるでリンチの映画のワンシーンを見るような独特のタッチの映像。ブレた写真は彼が敬愛するフランシス・ベーコンの絵画を思わせる。

 しかし不安になるのは、われわれはもう彼の映画を観られないのだろうか、という心配。これら作品の売り上げが次の作品の資金になることを強く希望したい。
 twitterでリンチ宛につぶやいてみようかな(^^)。

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2010.01.06

■デイヴィッド・リンチ個展
 DARK SPLENDOR & New Paintings @ GRIFFIN Gallery

Dark_splendor_photoDavid Lynch – Dark Splendor Raum Bilder Klang(公式HP)

22.11.2009 - 21.03.2010

artnet Magazine - Expositions - David Lynch par Werner Spies 展示の全体像を紹介
DAVID LYNCH: DARK SPLENDOR OPENS(T E X T U R E)

 ドイツのマックス・エルンスト・ミュージアムで昨年11月から今年3月まで開催中のデイヴィッド・リンチの展覧会。
 絵画とオブジェを融合したような写真の作品がなかなかいい味。

Hatje Cantz Verlag | David Lynch Dark Splendor - Raum Bilder Klang
 こちらにこの展覧会の図録が紹介されている。Amazon.deでも扱われているという情報もあるが、今のところ、売られていない。以前紹介した美術展カタログ『The air is on fire, David Lynch』のように、日本からも購入できるといいのに。

David_lynch_griffin02DAVID LYNCH: New Paintings @ GRIFFIN Gallery

September 12th - December 12th, 2009

Opening Reception: Saturday, September 12th at 8 PM
GRIFFIN is pleased to present a solo exhibition of new monumental paintings by David Lynch. This will be his first exhibition with the gallery and his first solo exhibition of paintings in Los Angeles in over a decade.

 こちらは昨年9月から12月まで、カリフォルニアサンタモニカのギャラリーで開催されたデイヴィッド・リンチの個展。
 すでに昨年末で終了していますが、リンク先で、一部新作の絵が見られるので、御紹介。

David_lynch_griffin  オープニングの様子 写真と記事。絵の前に立つのはローラ・ダーンですね。

 他にはLIFE誌がオープニングの模様を写真で伝えています。

◆関連リンク
デイヴィッド・リンチ:ニューペインティング! (Blog 海から始まる!?さん)
 現在、GRIFFIN GalleryのHPで既に掲載終了になっている作品が紹介されています。

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2010.01.05

■デイヴィッド・リンチ ギャラリー・ラフェイエット展示
  David Lynch Machines Abstraction and Women Exhibition Paris

David Lynch Galeries Lafayette(Youtube検索結果)
 みなさま、あけましておめでとうございます。
 既に新年も5日。正月休みでボーとしててBlogの更新が滞り、すみませんでした(twitterはしてたんですけどね(^^;))。本年もどうぞ御贔屓によろしくお願いいたします。
 さて新年はデヴィッド・リンチからスタートです。

David_lynch_gallerie_lafayette

David Lynch Machines, abstraction and Women 展示の全体像

 2009年9月デイヴィッド・リンチが、パリの百貨店ギャラリー・ラフェイエットのショーウィンドーを飾ったアート作品のビデオ。
 最近、新作映画の噂を聞かないですが、活動を映画からアートへシフトしてますね。(後日、別の展覧会情報も掲載予定)

女性の立像

 この作品は映画的オブジェ作品。映像と音楽とのコラボレーションで、今までのリンチのアート作品(主に絵画)から映画へと近づいていってますね。で、紛れもなくリンチ。あの音楽だけで参ります、私(^^;)。
 こうした作品で映像と音楽のコラボレーションをすることで、映画の欲望は充足してしまうのではないかと、ファンとしては心配。

デイヴィッド・リンチのピタゴラ装置

 ピタゴラ・スイッチに比べると、まだまだだね、なーんて(^^;)。

 リンチのこのようなアート活動の活発化は、一昨年のパリの大規模な展覧会ジ・エアー・イズ・オン・ファイアー展: "the air is on fire"で評判が良かったから、というのが理由なのでしょう。それにしても、もしかしたらリンチは『マルホランド・ドライブ』で20世紀映画芸術の到達点に至ってしまったため(これは僕の解釈)、続く『インランド・エンバイア』はスタイルを崩しに崩し、今や映画そのものに興味を失っているのではないか、という心配も僕の頭には浮かんできます。

 特に日本では展覧会が開かれる気配がなく、ファンとしては彼の新作に出会う機会がなくなっているので、上記心配が危惧に終わることーー次回作の映画情報を早く知りたいものです。

◆関連リンク
デイヴィッド・リンチ版画購入 | 滝本誠 夢のヒント、悪夢のピント | WEBマガジン e-days「イーデイズ」.

 新刊刊行パーティは、所有のリンチ・ペインティング+写真を展示できる空間でやりたい。そこでモチベーションをあげるために、印税前倒しと称して、先頃パリの百貨店ギャラリー・ラフェイエットで開催されたリンチの新作版画展で1点購入した。

 滝本師匠のBlogにこのアート展の情報がありました。版画を買われたのですね。
David Lynch @ Galeries Lafayette (Paris, France) ~ Haute World
 11個のショーウィンドーを写真で紹介。
David Lynch en vitrine aux Galeries Lafayette — Le Journal des Vitrines ムービー集
::: au fil de la Seine ::: : Expo David Lynch
 ギャラリー・ラファイエットの展示会場の様子。
フランス生活情報 フランスニュースダイジェスト
  - デヴィット・リンチがパリを彩る

「パリを彩るこの百貨店のショーウインドーは私の感性を刺激する宝石の箱のような存在です」というデヴィット・リンチ。シュルレアリスムをこよなく愛する彼ならではの不思議な空間を演出しています。

2009-11-03 - だめ日記

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