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2010年12月26日 - 2011年1月1日

2010.12.31

■金田伊功 の 作画解析-3 3D空間をいかに原画に取込むか

Photo_2

 金田伊功氏のアニメートについて「3D空間の取り込み」という観点で以下、まとめてみた。あの強烈なパースを持ち、そして歪んだ絵に関し、仮説を立て検証してみた(^^);。

 まず上の『無敵超人ザンボット3』において、ザンボエースがマグナムを構えたシーンを見てほしい。
 この激しいパースと、本来、眼から腕、そして銃までが一直線に並んでいるはずなのに、歪んでいる絵(特に左)。これにより強烈な立体感が絵に強い力を与えていることがわかると思う。

 自身の作画について多くを語らずに逝ってしまったこの天才アニメータについて、この絵の謎に少しでも迫りたいという想いがいまだに僕の中に強くある(^^)。お付き合いいただければ、幸い。

■仮説
 アニメーションなので、立体感を奥行き方向に動く画で表現するのは当然として、金田伊功は一枚の絵にも3D空間を封じ込めている。
 3D映像は左右の眼の視差で成立している。金田原画はそれを1枚の絵で封じ込めるために絵が歪む。左右両眼の画像を一枚で表現するために、絵に歪みが生じるのではないだろうか。

■検証
 絵画には、遠近法というものがあるのだが、これは写真のように、単眼の静止画における手法であって、人間が立体を把握している原理を全て再現しているものではない。上述の歪みというのはこの遠近法による物体認識に対するズレのことである。

 立体映画の普及から近年広く知られるようになっているが、人間の立体感は両眼の視野の違いから、脳内の視覚処理により生成されている。

 もともと我々の両眼に入って来る外界の視覚情報は、左右別々の眼には直線により構成される遠近法で世界がとらえられている。しかし実際、視覚認識の過程ではその両眼の画像が頭の中で合成されて、実は遠近法から外れて歪むことで立体把握がなされていると考えられる。
 
 単純にこれを証明するために次の画像をデジカメで作成した。
 正月前に適当な素材を探していて、たまたま見つけたのが破魔矢。今晩、初詣で奉納するのであるが、金田氏のアニメートのように、これが常識的な遠近法の世界を突き抜けてくれると思う(^^;)。こんなことに使ってバチが当たらないか、少々心配(^^;;)

Photo_4

 これは立体視の平行法で、立体画像が認識できるように、両眼の視差をデジカメをズラすことで作成した画像である。
 できればここで、平行法が可能な方は、一度、立体視してみてほしい。矢の先が画面に向かって飛び出てくるのがわかると思う。

Photo_6

 次にこの画を2枚重ねて、脳内でまず左右の映像が合成された状態(と思われるもの)を擬似的に作成したのが次の写真(右上)。

 両眼の視差で、矢のズレがどんな具合になっているかがわかっていただけると思う。
 長さと角度の違いがよくわかる。

 次に右の2枚目を見てほしい。
 本来、左右別々の視差の映像を脳内で視覚処理することに見えている立体画像を、もし静止画で表現するとしたら、どのようになるかと考えて作ってみたもの。
 この2枚目は、右眼の前方の画像と、左眼の後方の画像を半分づつ組み合せた映像である。
 一番下に比較のために、左眼だけの画像を並べてみたが、どうだろうか、2枚目の方が立体感を感じられないだろうか。

■金田伊功作画の歪み
 ここまでで何を僕が言いたいか、わかってもらえると思うのだけれど、この検証画像2枚目のように、金田伊功は、右眼と左眼の画像を、合成して一枚の絵として表現していたのではないか。
 2枚目で示したように一枚に合成すると、矢は単なる遠近法の世界から外れて、本来直線であるはずなのに、曲がって見える。

 単純に右左半々の画像を足したようなものではないだろうが、金田伊功の原画は、両眼で見えているが認識されていない上の1枚目の画像を、一枚の原画に封じ込めようとして、遠近法の世界から外れ大きな歪みを持ってしまったのではないかと考えられる。
 冒頭のザンボエースは、前方に向かう程、反り上がったようなパースが取られている。これと上の2枚目は似たようなパースになっていると言える。

 加えて、ご自身の視覚で、特に意識して試してみてほしい。
 眼の近くで自分の体(特に手)が動いた時の視覚認識についてである。
 例えば、眼に近いところから遠いところへ手がのびて動いているとする。すると右眼と左眼の視野における腕の画像は大きくズレている。これを脳でひとつの映像として処理しているのだが、明らかに動く時には、その画像は大きく歪んで感じられるのではないだろうか。
 腕を眼の前で伸ばして、右眼と左眼を交互に閉じて、確認してもらうとわかるが、この歪みは半端ではない。それをむりやり視覚は、一つの立体として認識し、立体的な空間認識を実現しているわけだが、交互に閉じて確認した画像と、さらに腕を動かした時に、遠近法から外れた大きな歪みが感じられないだろうか。

 金田アニメートを見ていて、僕がまず感じたのは、非常にこの自分の近辺で動くものの視覚認識に近い動きが再現されているのではないか、ということだった。

 おそらく金田伊功は、ロボットの巨大感を出すための絵をイメージしていく過程で直感的にこの手法を編み出したのではないかと想像できる。

 絵を動かすが故に、奥から手前に来る時の視覚の変化の表現が必要になり、遠近法から外れざるをえなかったのではないか。
 また巨大ロボットを描かなければいけなかったが故に、巨大感の表現のために、遠近をわざと静止画で強調するために、立体的な空間の導入/遠近法からの歪みが必要であったのだと考える。

■補足
 単眼のカメラは、広角レンズ他レンズの画角や、ボケによって立体空間を捉えようとしている。その枠の中だけでは、金田氏のアニメートは説明できないと考えて、上記検証をしてみた。

 本来、冒頭のザンボエースの画でなく、もっと他にこの説明に近い画を引用して比較する作業も必要であると考えるが、今日のところはひとまず、ここまでとする。追って、他の金田作画の例を引用していきたいと思う。

 また3D映画の隆盛で、両眼カメラによる立体空間取り込みのノウハウもこれからどんどん進化していくと思う。
 次回は、3D映画のアングル/画面レイアウトと金田作画の関係についても描いてみたいと思う。

 以上、現代のアートにおいても金田伊功の位置づけはとても重要でないかと思っていて、遠近法からどのように離脱しようとしていたのか、といった観点で、今後、もっと解析が進むことを望むものである。

■蛇足
 実は破魔矢の前に、下記のような画像を試しに作ってみた。

Photo_7

 破魔矢に似た形で、戦闘機を用いて作った画像である。
 ただし、もともとが立体写真を撮ったのでなく、ビデオにより航空祭を撮ったものから平行視できそうな画像をキャプチャーして代用したので、随分無理をして作ったものである。
 なので、とてもへんてこになってしまったので没!
 いずれ本当にこういう対象物で検証したいけれど、今回は失敗作として掲載しておきます(^^;)。戦闘機はヤマトのブラックタイガーとかの金田作画と比較してみたい。

◆当Blog関連記事
■金田伊功 の 作画解析-1
 池谷裕二 『進化しすぎた脳』 感想 3 + α アニメーター磯光雄と金田伊功と脳の構造の関係
■金田伊功 の 作画解析-2
 ガイキングオープニング 金田伊功の作画の進化 

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2010.12.29

■マルチアート集団 溺れたエビの検死報告書


溺れたエビの検死報告書(公式HP) 

" 頭はエビ、体は人間。 怪人【溺れたエビ・総帥】率いるマルチアート集団。 2001年より、関西を拠点に全国的に活動中。 集団の統治者【溺れたエビ・総帥】のもとに日本中の多数のミュージシャンやパフォーマーがエビ人間に改造され参加。 メンバーは全員、精巧な【エビ】の仮面を装着。(ライブ中に決して外す事は無い。)

 往年のP-FunkやTalkingHeadsを彷彿とさすようなファンクから、特撮怪獣映画サントラのようなオーケストレイションを用いた重厚なプログレやチェンバーロック、 アメリカのカートゥーンアニメが目まぐるしく走り回るようなコミカルな曲や、アンビエントやドローン音響系、そして完全快楽主義で天真爛漫なテクノまでその表現手段は多岐に渡っている。

 しかし表現する題材は常に、<溺れたエビ達が生息する>人間社会とは全くの異世界である水中(海中)がテーマとなっており、それは極彩色のサイケデリックな風景であったり漆黒の深海であったりする。"

 偶然、Youtubeで知った音楽パフォーマンスグループ「溺れたエビの検死報告書」。
 冒頭の引用動画は、このグループの【アノマロカリス】という曲。
 奇妙な蝦の風采のバンドによって、特撮風のマーチが勇壮に奏でられる。

 そして素晴らしいのが次にリンクしたページにあるパフォーマンスの写真。
溺れたエビの検死報告書 photo

Photo

 赤と青の鮮烈な光の中の、クールな怪獣達。
 引用させていただいた写真の素晴らしさもあると思うが、こんな映像が目の前に生で展開し、そして怪獣音楽のような勇壮な音楽が奏でられるとしたら、なかなかの鳥肌ものではないだろうか。

 是非とも一度、ライブを拝見したいものである。

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2010.12.28

■神山健治監督『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D』立体映像 予告篇

映画『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D』公式サイト

"『攻殻機動隊 S.A.C. SSS 3D』は、「観る人を電脳化する」をテーマに、これまで、誰も観たことがない、立体視3D表現に挑戦しています。

    * 全編3D化
    * オープニング完全新作
    * 神山監督自ら、全カットフルグレーディング

ウェブ版予告編は2Dですが、本編では、全てのカットが3D立体視化され、特に表示系と呼ばれる、サイボーグ目線に登場するインターフェースが、映画をご覧になっている皆さんのすぐ目の前にまで飛び出してきます!"

 待望の3D予告篇が『トロン』の劇場で上映開始。
 あわせてネットでの2D予告篇がスタート。
 是非、上の動画、解像度1080Pに変更し、画面をクリックしてフルハイビジョンでご覧下さい。

 にしても東海地方では3D予告篇上映が一館もない! 劇場で公開されている立体映像の予告篇が観たい! 電脳空間へのジャックイン、3Dで観られないのがとにかく残念である。
 twitterで、神山監督に御願いしてみた。

BP@究極映像研(@butfilp)/ Twilog

"@kixyuubann 劇場予告で3Dを観られない地方ファンのために、是非Youtubeの3D機能を利用して立体視版UPを!(^^)"

Twitter / @神山健治

"@butfilp @PH9 その辺りに関しては、また後日改めてw〜"

 残念ながら、まだYoutubeの3D機能を用いたネット予告篇公開はされていない。
 神山監督の書かれた「後日」に、地方ファンとしては期待したいもの。

YouTube - avatar stereo 3d trailer
 こちらがYoutubeの3D機能を使用したアバター3D Trailer。
 裸眼で明度も落ちないし特殊な機器がなくても観られるのだが(訓練は必要(^^;))、画面の小ささが難点。

 ということで、究極映像研 東京分室のshamonさんが『トロン』が上映されている新宿バルト9で観戦し、レポートしていただいているので、リンク掲載。詳しく3D予告篇について知りたい方は下記へジャンプ!!

『攻殻機動隊S.A.C. Solid State Society 3D』予告編 : ひねもすのたりの日々

Sss_3d_poster_s

 合わせて、劇場用のポスターも公開されている。コピーがいいですね!

 "その問題を、解決してはならない。"

◆関連リンク
アニメフェアで「攻殻機動隊 S.A.C. SSS」のトークショー(AV Watch)
攻殻機動隊 S.A.C Solid State Society NYでプレミア上映(アニメ!アニメ!)
【攻殻SSS】オリコンDVDデイリーチャート第1位!(攻殻機動隊 S.A.C. まとめサイト)

当Blog記事
『攻殻機動隊 S.A.C. SSS』真犯人の謎解き STAND ALONE COMPLEX Solid State Society
STAND ALONE COMPLEX Solid State Society制作決定
3D-CG監督 遠藤誠インタビュー
初映像
タチコマ潜伏レポート
 神山監督初のオリジナル長編ということで盛り上がって、いろいろと記事にしました(^^;;)。

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2010.12.27

■デイヴィッド・リンチ "Good Day Today" "I Know" PVコンテスト

One Day Band "Good Day Today" (Videos | Genero.tv)

"20 hours filming ( from 8 a.m to 4 a.m )
We tried to make it as honnest as the faces of people we asked to wear a mask this day.
Credits: One Day Band & a lot of Brussels people"

David Lynch - PV "Good Day Today" "I Know"  (Videos | Genero.tv)

"募集期間 : 11/29-12/20  投票締切 : 12/25
候補者 : 12/27 受賞者発表 : 1/3
賞金 : 2000ポンド(約26万円)
審査員 : デイヴィッド・リンチ, Genero.tv"

 デヴィッド・リンチ監督のソロボーカル・シングル デビュー曲 "Good Day Today / I Know"のPVを一般公募している。

D_lynch_vimeos

 応募作は、全265作品。

 同じ曲を聴き続ける、ある意味、リンチ修行のような鑑賞を続け(^^)、十数本を観たが、リンチ映画のエッセンスを薄めた作品のオンパレードで食傷。そんな中One Day Band氏による"Good Day Today"は秀逸なので、冒頭に動画を掲載。

 覆面もいいし、展開も楽しい。
 ブラジルの人びとの表情と、リンチのテクノポップが何故かとってもマッチする一本。
 さて、僕の一押しのこの作品が、まずは12/27(今夜)に候補に残るかどうか、期待!

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