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2011.06.13

■村上春樹 カタルーニャ国際賞 受賞スピーチ「非現実的な夢想家として」ノーカット動画


YouTube - 村上春樹氏「原発批判」演説ノーカット1/4(2011/06/10)


村上春樹氏 演説ノーカット2/4


村上春樹氏 演説ノーカット3/4


村上春樹氏 演説ノーカット4/4

 東電原発事故後、こんな言葉を待っていたような素晴らしいスピーチです。
 胸に染みこんでくる言葉。

 オウムのサリン事件、阪神大震災を作品として扱ってきた村上春樹が今後、東電原発事故をどう表現するのか、興味深い。
 『1Q84』の青豆が暮らした、月が2つ浮かぶあの世界に神の火は存在しているのだろうか。

 今回、村上がどう現実と人々にアクセスして行くか、期待したいものです。

 以下、全文の書き起こしへのリンクと、僕が感銘を受けた部分の引用です。
 上のスピーチのムービーもですが、既に多くの人の眼に触れていると思いますが、もっとたくさんの人の眼に留ると良いと感じて、このように掲載してみました。

村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(上) - 毎日jp(毎日新聞)

"(略)日本語には無常(mujo)という言葉があります。いつまでも続く状態=常なる状態はひとつとしてない、ということです。この世に生まれたあらゆるものは やがて消滅し、すべてはとどまることなく変移し続ける。永遠の安定とか、依って頼るべき不変不滅のものなどどこにもない。これは仏教から来ている世界観ですが、この「無常」という考え方は、宗教とは少し違った脈絡で、日本人の精神性に強く焼き付けられ、民族的メンタリティーとして、古代からほとんど変わることなく引き継がれてきました。  
 「すべてはただ過ぎ去っていく」という視点は、いわばあきらめの世界観です。人が自然の流れに逆らっても所詮は無駄だ、という考え方です。しかし日本人はそのようなあきらめの中に、むしろ積極的に美のあり方を見出してきました。(略)

 ここで僕が語りたいのは、建物や道路とは違って、簡単には修復できないものごとについてです。それはたとえば倫理であり、たとえば規範です。それ らはかたちを持つ物体ではありません。いったん損なわれてしまえば、簡単に元通りにはできません。機械が用意され、人手が集まり、資材さえ揃えばすぐに拵えられる、というものではないからです。

 僕が語っているのは、具体的に言えば、福島の原子力発電所のことです。(略)"

村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(下) - 毎日jp(毎日新聞)

"(略)我々は、そのような歪んだ構造の存在をこれまで許してきた、あるいは黙認してきた我々自身をも、糾弾しなくてはならないでしょう。今回の事態は、我々の倫理や規範に深くかかわる問題であるからです。(略)

 広島にある原爆死没者慰霊碑にはこのような言葉が刻まれています。

 「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」

 素晴らしい言葉です。我々は被害者であると同時に、加害者でもある。そこにはそういう意味がこめられています。核という圧倒的な力の前では、我々は誰しも被害者であり、また加害者でもあるのです。
原子力発電に危惧を抱く人々に対しては「じゃああなたは電気が足りなくてもいいんですね」という脅しのような質問が向けられます。国民の間にも「原発に頼るのも、まあ仕方ないか」という気分が広がります。高温多湿の日本で、夏場にエアコンが使えなくなるのは、ほとんど拷問に等しいからです。原発に疑 問を呈する人々には、「非現実的な夢想家」というレッテルが貼られていきます。  

 そのようにして我々はここにいます。効率的であったはずの原子炉は、今や地獄の蓋を開けてしまったかのような、無惨な状態に陥っています。それが現実です。

 原子力発電を推進する人々の主張した「現実を見なさい」という現実とは、実は現実でもなんでもなく、ただの表面的な「便宜」に過ぎなかった。それを彼らは「現実」という言葉に置き換え、論理をすり替えていたのです。

 それは日本が長年にわたって誇ってきた「技術力」神話の崩壊であると同時に、そのような「すり替え」を許してきた、我々日本人の倫理と規範の敗北でもありました。我々は電力会社を非難し、政府を非難します。それは当然のことであり、必要なことです。しかし同時に、我々は自らをも告発しなくてはなりませ ん。我々は被害者であると同時に、加害者でもあるのです。そのことを厳しく見つめなおさなくてはなりません。(略)

 その大がかりな集合作業には、言葉を専門とする我々=職業的作家たちが進んで関われる部分があるはずです。我々は新しい倫理や規範と、新しい言葉とを連 結させなくてはなりません。そして生き生きとした新しい物語を、そこに芽生えさせ、立ち上げてなくてはなりません。(略)

 日本で、このカタルーニャで、あなた方や私たちが等しく「非現実的な夢想家」になることができたら、そのような国境や文化を超えて開かれた「精神のコミュニティー」を形作ることができたら、どんなに素敵だろうと思います。(略)"

◆関連リンク
村上春樹 カタルーニャ国際賞スピーチの動画
冒頭のつかみ (Youtube)
 上の動画に入っていないスピーチ前のあいさつ。
 この動画のうしろの方に入っています。レディーガガの件とか。
記者会見(スペインのサイト)
NHKで流れたスピーチシーン
 アナウンサーの声で聴こえないが、スペインのサイトのムービーをNHKは使用。

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