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2011.10.16

■感想 NHK「極上美の饗宴 激情ほとばしる像の秘密 ウクライナ・祈りの彫刻は語る」ヨハン・ピンゼル:Johann Georg Pinzelと金田伊功の共通性についてのメモ

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【極上 美の饗宴】NHK BSプレミアム
   極上 美の饗宴|NHK

"10月10日(月) 午後9時00分~9時58分 激情ほとばしる像の秘密「ウクライナ・祈りの彫刻は語る」 あまりにも生々しい表情。信じがたいほど誇張された衣装。無名だった彫刻家の作品が、いま注目を集めている。ウクライナで18世紀に活躍したヨハン・ゲオルグ・ピンゼル。過剰なまでの感情表現が見る者を圧倒する。作品は、もともと教会の祭壇を飾っていたものだった。なぜ、それほど激しい彫刻が作られたのか? そこには、ウクライナがたどった歴史が深くかかわっていた。日本のテレビ初公開の傑作の魅力をひもときながら謎に迫る"

Publisher Michitani 未知谷のホームページ


"未知谷刊行20周年記念企画
西洋彫刻史に波紋を起こす未踏のバロック
天才彫刻家ピンゼル作品集!

18世紀半ば、ポーランド・リトアニア共和国(現ウクライナ)に
忽然と現れた天才彫刻家ピンゼル
どこで生まれ、技術を磨き、なぜやって来たのか
10年ほどの足跡は、すべて謎、謎、謎……
見よ! 視線、指先、衣服のひだの大胆さ
見よ! キュビスムのごとき多面性
ソビエト体制下、歴史と政治に埋もれかけたが 1960年代半ばボリス・ヴォズニツキにより収集・修復
来年秋、ルーヴル美術館で西ヨーロッパ初の展覧会開催!
世界にさきがけた本作品集は時代精神の顕現、図版97点収録"

■ヨハン・ピンゼル「イサクの犠牲」が凄い。

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 冒頭に引用したのが代表作「イサクの犠牲」を捉えたNHKのハイビジョン映像からの画像。
 まさに感情表現の極北って感じの、鋭くもダイナミックで哀切に満ちた彫刻。動きと感情の瞬間の躍動感が素晴らしい。

 番組で紹介されていたのは、ピンゼルが生きた18世紀のウクライナのリビフとブチャチの街は、ポーランドとの国境付近。
 キリスト教的には西のカソリックと東の東方正教会との狭間で、もともとイコンの絵画のみが飾られていたウクライナの東方正教会に対して、西からカソリックがベルニーニ等のバロック彫刻を持ち込んで、宗教的な領土の拡大を計っている時代に当たるらしい。そしてそこで重用されたのが、西の国で彫刻を学び、バロックにも精通していたヨハン・ピンゼムだという。

 あのダイナミックさは、カソリックのエッジを広げるために、強烈な印象を民衆に与えるための手段のひとつだったというような位置づけが成されていた。そして………。

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 ヨハン・ピンゼム「イサクの犠牲」について、東京芸大 田辺幹之助氏が語るのは、従来の、解剖学的に成立したカソリックバロック彫刻からの脱却をピンゼムがはかっていたのではないかという指摘。まさに下半身と、腰から上、顔の向きと表情が解剖学を逸脱している。
 そして番組では、俳優で再現不可を実証。人間の意志と肉体では、表現しきれないものを木彫りの彫刻のあの独特の造形で表していたのだということが、番組で分析されていく。

■金田伊功アニメートとの近似
 このBlogを読んでいただいている映像ファンなら、このポーズとレイアウトは観たことがあるはず。そう往年の名アニメーター金田伊功の作画に酷似w。

 素晴らしかったのは、もちろん彫刻もだけれど、それを捉えるハイビジョンカメラの回り込みのショット。絶妙に金田伊功のレイアウトそのものの画が再生されていた。もしかしてNHKスタッフが金田に意識的ではないか、と邪推(^^;;)したくなるほどの近似w。

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 ルーヴル美術館で開かれるという展覧会で、今後、ピンゼルは西欧美術界で大きく評価されていくんだろうけれど、、、

 まじめな話、僕には金田伊功研究にとって凄く重要な作家だと思うw。3Dの彫刻作品との近似は、まさに金田原画が立体を強く意識したものだったという証左になるのではないか。

 村上隆氏が従来から金田伊功分析で書かれている日本の2D(絵画)からの文脈で読み解くのは、僕としては限界があると思っていたので、この立体での情動の表現の文脈からの分析は貴重になると思う。

 もうひとつの作品、このキリストの姿勢もとても金田伊功っぽいw。

■3D-CG映像の可能性
 番組ではさきほども書いたが「イサクの犠牲」をワダエミの衣装と俳優石丸幹二で再現をトライ、実現できないことが判明。
 これにより、この作品の芸術的な魅力がさらに拡大したのだけれど、これって3D-CG映画の可能性を示しているのではないだろうか。

 俳優の体と意識の限界で出来ない情動的な表現が解剖学を無視したCGで可能になるw。特に印象的だったのは、俳優が語る、自らの意識とこのポーズは乖離していて、あの顔と体の形態は同時に取り様がない、と言うコメント。
 体と意識について、重要な認識ではないかと思う。

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 俳優はその形態を自分の意識と体の動きの変わり目の瞬間を切り出すことで実現しようとしたのだけれど、それは現実には無理だった。
 意識と形態の順番が逆だったのではないだろうか。
 言語による思想的な息子殺しという高いハードルをアブラハムが取ろうとした時、最初に意識上で表情が変わって、その後に体が動きだすのなら、あの形態はむしろ実現できたかもしれない。しかしピンゼルの像は、顔が殺しを決断した表情になっていないので、体が現実には動かし様がない形態なのかもしれない。
 逆ならできたかどうか、石丸幹二氏に質問してみたいものである。

 そして先に述べたCGの可能性。これは俳優の意識と体の動きの限界を超えた表現がもちろん可能である。こうしたピンゼルの像のダイナミックで哀切に満ちたような、アンヴィヴァレントな表現をフォトリアルなCGが獲得したとしたら…、その時は俳優の演技をCGが超える時なのかもしれない。

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■朽ち果てた教会の廃墟映像
 彫刻以外でもソ連による教会弾圧で朽ち果ててしまいそうになったピンゼムの彫刻の、ボリス・ヴォズニツキイ氏による救出と、その廃墟となった教会の現在の映像が、素晴らしかった。まさにダイナミックで、そして虚無感のある作品と現実のドラマのシンクロ。

極上美の饗宴 ヨハン・ピンゼム再放送
 再放送は今日10/16(日)13:00-13:58とのことで、既に終了してしまった。
 NHKオンデマンド | 極上美の饗宴 激情ほとばしる像の秘密 「ウクライナ・祈りの彫刻は語る」 こちらで有料だけれど、アーカイブを観ることができます。

参考画像として、NHKのTV画面を、iPhoneで撮影しw、引用させていただきました。(日本の映像文化の分析(おおげさ)のためですので、引用、御許し下さい)

◆関連リンク
本邦初のピンゼル作品集!(片山ふえさんのBlog ムーザの小部屋)

"拙著『オリガと巨匠たち』を出してくださった縁で、すっかりピンゼル・ファンになられた出版者未知谷の飯島社長が、大赤字覚悟でピンゼルの作品集の出版を決められたのは、今年のはじめのことでした。 その後、写真データを私がヴォズニツキー先生からいただいて来るも、画質が不十分で使えなかったり、いろいろと出版上のご苦労があったようです。 そして、その作品集がやっとできあがったのが、NHKの放送で世間の注目がピンゼルに集まり始めたちょうど今だというのですから、これまた「運命の女神」の巧みな采配を感じます。"

ムーザの小部屋 ピンゼル・ブーム、来るか?

"2011年11月から2012年1月まで、パリのルーブル美術館で「ピンゼル展」が開かれるのです。"

ムーザの小部屋 ヨハン・ピンゼル Pinzel関連記事
 ピンゼルについて、日本で最初に紹介された片山ふえさんのBlog。
 最も早く詳しい情報が掲載されています。
片山 ふえ『オリガと巨匠たち―私のウクライナ紀行』
 こちらの本でウクライナでピンゼルに出会われた衝撃が語られている、とのことです。

Exhibitions | Louvre Museum(ルーブル美術館公式HP)
 将来の展覧会の頁にも、今のところ、Pinzelの名前がない。
Johann Georg Pinzel - Google 画像検索
田邊幹之助 - 東京芸術大学(公式)
イサクの燔祭 - Wikipedia
 キリスト教でのアブラハムとイサクの逸話について。

ヨハン・ゲオルク・ピンゼル画集『ピンゼル 』(Amazon)
Publisher Michitani 未知谷のホームページ

"未知谷刊行20周年記念企画
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天才彫刻家ピンゼル作品集!

18世紀半ば、ポーランド・リトアニア共和国(現ウクライナ)に
忽然と現れた天才彫刻家ピンゼル
どこで生まれ、技術を磨き、なぜやって来たのか
10年ほどの足跡は、すべて謎、謎、謎……
見よ! 視線、指先、衣服のひだの大胆さ
見よ! キュビスムのごとき多面性
ソビエト体制下、歴史と政治に埋もれかけたが 1960年代半ばボリス・ヴォズニツキにより収集・修復
来年秋、ルーヴル美術館で西ヨーロッパ初の展覧会開催!
世界にさきがけた本作品集は時代精神の顕現、図版97点収録"

 こちらの2011年の記事には、来秋(2012年)と記されています。

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コメント

 geometricさん、詳細コメント、ありがとうございます。

 私も同等に感じています。

 NHKの俳優を使った分析も基本的にズバリの表現はなかったですが、同一の認識のもとに語られていたように思います。

 とにかくとても興味深い作家ですね。

投稿: BP(geometricさんへ) | 2011.10.30 19:54

説明不足でした。長い補足を。
「漫画のコマ時間」に擬えたのは、漫画家がコマのサイズやフキダシの文字数で、読者の作中時間を計算し調整しているからです。ひとつのコマを横断するのにどのくらい時間を要するか、どういうリズムで読み進めるか、それを作家が計算して取り決めている訳です。極端なことをいえば、同じコマの左右は同時刻ではありません。それと同じ原理をピンゼルは利用しているのではないかと。
もしそうだとすれば、俳優は固定的な「ひとつの形態」を取れなくなります。何故かといえば、いくつかの動的な感情や時間変化がそこに込められているからです。そこまでがピンゼルの計算です。だから「乖離していて同時に取り様がない」という感想になるのではないかと。

投稿: geometric | 2011.10.19 20:15

 geometricさん、この彫刻には、かなり衝撃を受けたので、反応いただけて嬉しいです。

>>ピンゼルの像から『漫画のコマ時間』を連想しますが。つまり、空間的な視点移動を予め取り入れた造形ではありませんか。下方から上方へ。身体より顔面に。見る側の情感もそれにつれて変化します。

 確かに実物に遭遇したら、きっと下から見上げていくことになりますね。
 その視点移動をあらかじめ想定して、ダイナミックなドラマをそこで見せているということなのでしょうか。

 その仕掛け、是非実物で観てみたいものです。

投稿: BP(geometricさんへ) | 2011.10.19 00:17

某ブログ管理人です。こちらでは初めまして(かな?)

>俳優が語る、自らの意識とこのポーズは乖離していて、あの顔と体の形態は同時に取り様がない、と言うコメント。

ピンゼルの像から『漫画のコマ時間』を連想しますが。つまり、空間的な視点移動を予め取り入れた造形ではありませんか。下方から上方へ。身体より顔面に。見る側の情感もそれにつれて変化します。

投稿: geometric | 2011.10.18 20:51

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