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2011.12.19

■黒澤 明,小國英雄,菊島隆三 シナリオ準備稿『虎 虎 虎』電子書籍 無料公開

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シナリオ準備稿「虎 虎 虎」 [黒澤 明,小國英雄,菊島隆三] - 0円 : BinB-store.

"40年間以上、消失してしまったとされていた黒澤 明監督の「虎 虎 虎」シナリオ準備稿が『大系 黒澤明』全五巻(講談社刊)の著者、東京大学大学院教授浜野保樹氏の調査により発見された。200字詰め原稿用紙で960枚という大部な脚本、この歴史的映画資料を電子書籍で完全公開!
 1941年12月8日、淵田少佐の零戦機上から打電された「我奇襲ニ成功セリ――トラ・トラ・トラ」。日本は真珠湾攻撃により太平洋戦争へと突入していく。 この真珠湾攻撃を日本サイドから、しかもハリウッド資本で描こうとした監督がいた。 黒澤 明監督である。
 黒澤 明監督は1967年、脚本家小國英雄、菊島隆三と共同で、このすべてのスタートとなるシナリオ準備稿「虎 虎 虎」、ペラ(200字詰原稿用紙)960枚にもおよぶ壮大な脚本を書き上げる。
 しかしこの準備稿は二十数回におよぶハリウッドとの改訂作業によって、意図に反して解体されていく。そして相次ぐ意見のぶつかり合いの末、黒澤監督は、この企画自体を降板するという結末をむかえてしまうのである。 今回電子書籍化されたシナリオ準備稿「虎 虎 虎」は、黒澤 明、小國英雄、菊島隆三3氏によって書き上げられた、解体される前の完全オリジナル版である。 戦後70年の今年、44年の眠りから覚めてよみがえる、シナリオ準備稿「虎 虎 虎」。この歴史的映画資料を是非ご一読ください。"

 シナリオ準備稿「虎 虎 虎」読了。
 開戦に向かう悲痛な政治状況と、開戦に備える訓練の前半。
 そして大戦闘・破壊・殺戮シーンの後半。人間の実態を、硬軟織り交ぜ、素の描写で描き出す筆致が見事。

◆名シーン引用紹介
 僕が感銘を受けたシーンをメモしておきます。シナリオ全部を読んでいただくのが一番良いので、これを読まれて惹かれたら是非に。

シーン166 長門艦上 "夕照を背にした山本の黒ずんだ姿は完全に一堂を圧倒する"

 山本五十六 連合艦隊司令長官の艦上の姿に、反対していた戦争に至る悲哀の感情が滲んでいる名シーンになったと思われる。

シーン173 小島 "霧雨のたれ込めた夜明けである。年老いた漁夫が一人、あばら家の雨戸のすき間から、そっと表をうかがって、おびえた眼を光らせ……霧雨に煙る暗い海上を巨大な鉄の建造物がすべって行く…
それは戦争を象徴する陰惨な悪夢の如く、置いたる漁夫を脅かして霧雨の中に姿を没する"

 戦艦大和の登場シーン。黒澤の映像で是非観たかった。
 (でも、船上の漁師から大和を見せた、まるで友永秀和が描いた『宇宙戦艦ヤマト』のモノクロ追想の名シーンを思わせるw。まるでこのシナリオを読んでいたかの様にピッタリの描写である。)

シーン176 長門艦上 長官公室 "山本、めずらしく投げ出す様な調子で「ふん! 勝手にしろ! やめた!」…と、急に、はにかんだ様な顔になり…"

 連合艦隊長官の公の顔と人間味が溢れるシーン、そして他に淵田の関西弁とか、こうした生身の人の描写が、戦争という巨大な愚行のベクトルの中に挟み込まれ、歴史と呼ぶのか何か得体の知れない人間によるマクロな事象の実像が描かれていく。

シーン412 赤城 飛行甲板 "村田機の輪止めを抑え込んでいる整備兵の眼の前のタイヤが、艦の動揺と腹に抱えた魚雷の重さに、歪む"

 戦闘シーンにおいて、こうしたディテイルの描写が派手なシーンのリアルを支えている。

シーン508 松村機 "それは地獄のシンフォニイの如く凄絶苛烈であり、非常の場合に直面した人間の一見ユーモラスな言動と奇妙な対比を示し、現実感を強調する"

 特に後半、もし映画化されていたら、黒澤明による大特撮映像となったはずで、物凄く観てみたかった。きっと大迫力の戦闘であるとともに、凄絶な戦争地獄絵図として描写されていたはずで、頭の中に一方的な奇襲による、血みどろの戦闘がイメージされた。

 この準備稿は、『七人の侍』に顕著な、黒澤が得意とする限定された空間を舞台にした緻密でダイナミックな、「悪魔のように繊細に天使のように大胆」なドラマと大きく異なる。
 歴史そのものを複数の神の視点で描くこのような大作が、黒澤の手でどのような映画となっていたのか、今はこのシナリオから想像するしかないのだが、市井の視点と、生身の人を超越してしまう政治そのものの描写がどのように成されたか、本当に映像として観たくてたまらなくなる作品である。

◆関連リンク
解説「虎 虎 虎」—— 根本的には悲劇であることが土台だ [浜野保樹] - 0円 : BinB-store

"『解説「虎 虎 虎」−−根本的には悲劇であることが土台だ』は、黒澤 明の研究で知られる東大教授浜野保樹氏が、このシナリオ準備稿「虎 虎 虎」の背景を、貴重な資料と写真とともに徹底的に解説した、必携の案内書です。
…当時美術を担当した村木与四郎氏と近藤司氏が所蔵する、今回初めて公開される貴重な撮影風景やセットの写真、黒澤監督直筆の絵コンテなどは、すべて資料集としてご覧になれます。"

 映画メイキング本好きとしては、こちらも見逃せません。

・関連当Blog記事
 田草川 弘著『黒澤明vs.ハリウッド 『トラ・トラ・トラ!(虎 虎 虎)』その謎のすべて』
 この映画の真相に迫った名著の感想。素晴らしい本なので御薦めです。
 黒澤明関連 当Blog記事 Google 検索

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