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2012.05.21

■感想 沖浦啓之監督『ももへの手紙』

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 沖浦啓之監督『ももへの手紙』観てきました。
 丁寧に積み上げられた人物描写によるひと夏の島の物語、そして背景となる瀬戸内の日本的な美しい/過酷な情景 が印象的な秀作となってる。凄腕のアニメータが人物の感情描写に徹底してこだわった気持の良い作品。そして奇想シーンもなかなか観せる。

 作画マニア的wには海と船、雨と台風のエフェクト描写も最高。
 日本的な情景としての台風は、『ポニョ』はじめ、いろんな作品で描かれてい ますが、おそらく本作が最高峰かと。
 そして奇想シーン。妖怪たちの蠢く姿に背中が簇簇(^^;)。これもクライマックスの動きと色彩が最高。

 作画関係の情報を探していたら公式ページに「制作一大記」と題したメイキング紹介ページが。 大平晋也氏の妖怪原画!や動画の指定の標準化等、普段観れない資料も掲載されている。

Production I.G / 作品紹介 / ももへの手紙 / 三人娘巴制作一大記 / 仕上之巻

"田中:本当に楽しかったですよ。もっといっぱい塗りたかったんですよ。時間がなかったからできなかったこともあったのが残念かなと思いました。いちばん大変 な妖怪のカットが塗れたのが記念ですね。キャラクターも可愛い感じでしたし。解像度が高い絵だけど線が少ないので、塗りとしては楽しい作業でした。"

 こちらには、色彩設計の水田信子さんをサボートされた田中美穂さんのインタビュー。twitterで時々会話させていただいている田中さん(@mhtnk)によるディジタル仕上げの解説が興味深い。ソフトRETASとAnimoを使った詳細について。

 これを読むと、映画のエンドタイトルに田中さんのクレジットが"レタス色彩設定補助"と記されていた意味が判明。1カットごとの色設定の詳細と、仮塗りの段階で沖浦監督が全カットチェックして色を変えられる作業。この丁寧な作業が瀬戸内の光と影を描き出していた。

 そして不勉強で知らなかったけれど、この職域は、色彩設定と仕上げだけでなくスキャンした動画の線を整える作業もあるとのこと。
 ここで述べられる田中さん他スタッフの粘り強いこだわりがI.Gの数々の作品を支えているのが実感できるインタビューだった。

 最後に作品全体について、自分の趣味から書くと…。

 沖浦啓之監督作品としては『人狼』の方が好き。リアルで硬質な志向の作画に、物語とテーマがマッチしているのは『人狼』かと。
 『ももへの手紙』でも感情表現は最大限、物語に寄与していたが硬質さが僕にはどこか違和感を感じさせたのです。単なる先入観なのか、どうなのだろう。皆さん、どう思いますか。

 ともあれ、どちらの路線にせよ、次回の沖浦作品、楽しみに待ちます!

◆関連リンク
Production I.G / 作品紹介 / ももへの手紙 / 三人娘巴制作一大記 / 監督之巻

——では、建てている現場ではどうでしたか? 沖浦:持ってきた古い柱が煤けてたんで、新材にも古色塗りを施してバランスが悪くならないようにする作業を自分たちでやったんですよ。でも、これが4~5ヶ月かかったんですよね。

 沖浦監督インタビュー、なんと御自分の家の色塗りにもこだわりが!
「ももへの手紙」 チェコのAniFestでグランプリ獲得 日本作品3部門で最優秀賞 - 10072 - | アニメ!アニメ!

"3月には第16回ニューヨーク国際児童映画祭にてグランプリを、4月にはイタリア・ボローニャの第14回フューチャーフィルム映画祭で最高賞のプラチナグランプリを受賞している"

Production I.G / 作品紹介 / ももへの手紙 / 三人娘巴制作一大記 / 作画之巻
 アニメーター 末冨慎治インタビュー

"——絵コンテを拝見したのですが、凄い細かいですよね。
末冨:そうですね。レイアウトを1から描くのではなくて、コンテを拡大コピーしたものを元にレイアウトを描くんですが、それが難しいですね。こんなに描いてあるのだから、これで良いんじゃないかって思う。これを更に調整しないといけない。"

Production I.G / 作品紹介 / ももへの手紙 / 三人娘巴制作一大記 / 動画之巻

「ももへの手紙」製作委員会, ニュータイプ『ももへの手紙 Art & Animation 』
 こちらには井上俊之氏と田中美穂さん他のインタビューが掲載。

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コメント

妖怪を出しながらリアルで生真面目なつくりは、「丁寧な作風」とも言えますし、子ども向けにしては「硬い」とも感じられますね。

想像の世界よりもリアル指向に振った作品なので、どこかドキュメント映像を見ているような印象がありました。
私はそこに、娘を見守る「父親の目線」を感じたのですが、ももと同年代以下の観客にはどのように見えたのか、とても気になります。

逆にクライマックスでは、リアルな風景とシュールな妖怪が融合して、現代の百鬼夜行を見事に映像化していました。
これって、アニメでSFX的な映像表現を達成した好例といえるかも…。

そして優しい絵柄と繊細な動き、そして細やかな演出は、期待どおりのすばらしさでした。
私も思わず「ももへの手紙 Art & Animation」注文しちゃいましたよ(笑)。

投稿: 青の零号 | 2012.05.26 11:55

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