« ■感想 「館長庵野秀明 特撮博物館」 樋口真嗣監督「巨神兵東京に現わる」 | トップページ | ■情報 青森県立美術館「Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語」「没後10年特集展示:成田亨」 »

2012.07.25

■感想(2) 「館長庵野秀明 特撮博物館」 ミニチュア特撮の未来

Img_4938

館長庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技(公式HP)

 先日のレポートの続きを、まずは巨神兵プロトン砲発射造形ヘッドを少し上のアングルから写した眼がかわいいオーマ風の写真からスタートしたい(^^)。

 今回はこの展覧会がタイトルとした「ミニチュア特撮」の未来について。

 図録等によると、特撮博物館のコンセプトはふたつある。
 ひとつは今までの日本映像界の財産であるミニチュア特撮の造形物の保護。もうひとつはその映像に込められた魂とそれを作り出した技術の伝承。

 いつものように結論から書くと、僕は郷愁からコンセプトの一つめの造形物の保護は賛成、加えて二つ目の日本特撮が育んで来た工夫する魂の伝承には大賛成なのだけれど、技術としての伝承/ミニチュアへのこだわりには実は反対だ。

 魂はCGによる特撮/SFX映像にも熱く伝承されるべきと思うのだけれど、技術は進化して行くものだから、ミニチュアにこだわらずにCGへ移行してもいいのではないか、と思う。映像に工夫とワンダーさえあればその手段は問わない(^^;)。これが今日、書きたいことの結論です。

◆命題 ミニチュア特撮の魂は数値海岸に存在するか?

飛浩隆(@Anna_Kaski)さん/2012年07月08日 - Twilog

"つ http://t.co/IfQCXbkw RT @BitingAngle トイ・ストーリー3を見てると、なんだか『グラン・ヴァカンス』を連想しちゃうんだよな。放棄されたおもちゃの存在意義と、彼らの自意識の問題とか。あと、遊びが基本的には残酷で無慈悲な行為で、子供はそれに躊躇がないところとか。 "

 特撮博物館の後、歩きながらBitingAngle:青の零号さんが話してくれたこの内容が本項のきっかけになっているので、引用してみました。

 この引用されている内容もとても興味深いのだけれど、この話をそのまま続けるのではなく、現在の特撮技術CGの数値情報/解析ロジックの中に特撮の魂と技術は伝承できるのか、ということを少し考えてみたいのだ。

 僕は日本のミニチュア特撮に感動したセンスオブワンダーの延長上で、現代の映画で多用されるCGの進化にワクワクし続けている。どちらも大好きで、特に近年では有り得ないような物量とスピード感と奇想なイメージがCGから登場しているため、手放し状態に近い。映像の最先端は、そうしたCGと日本の一部のアニメ(ヱヴァンゲリヲン新劇場版とかw)が切り拓いていると考える。

 ミニチュア特撮の何に人はひかれるのか。
 手作り感が大事ならば、手の触感をどうCGへ持ち込めるかを技術的に工夫するのが重要なのではないか。モデリングの技術として、VR:ヴァーチャルリアリティのテクを用いれば手の触感と数値世界のCGモデルのフィードバックを実施して、手作りの触感の再生は可能だろう。

 ミニチュアの持つチープ感と空気抵抗によるブレのなんとも言えないキッチュ感。そして火炎の渦巻くリアルな迫力。爆発によるビルの倒壊の偶発的な映像のダイナミズム。
 これも実はCGの物理シミュレーションの進化で、数値世界で早晩、再現は可能になるだろう。

 物の動きの解析は既に物理的な線形の計算で実現されている。ハリウッド等のCG作品でもその恩恵にあずかっているものは無数にある。
 工学と科学の世界で実施されている数値シミュレーションで最も難解なものが流体力学解析である。これもロジックの進化と計算機能力の向上でかなりリアルな世界に近づいていて、CGにも多用されて来ている。

 爆発や火炎の動きは、まさに物体の物理シミュレーションとまわりの空気の流体解析問題である。偶然性はランダムの生成で作り出せるし、もっと簡単に言えば、今回の「巨神兵東京に現わる」で新たに開発されたビルの破壊方法2種類は、数値空間の中で、そのままあのミニチュアをモデリングし、同じように動かせば、同等の映像は撮れるだろう。そしてデジタルデータとして生成された映像は、加工や他との合成も自由自在。

◆特撮魂の駆動体としてのCG

 工夫する熱い映像魂とそうした技術の伝承は、物理シミュレーションが可能になったCG空間へ導入することが出来るはずである。
 たとえば不要な部分のビルの中味をモデリングしないとか、超遠近法とか、そうしたものもCG空間へ取込んで自由自在に個性的に使いこなす映像クリエータが今後の特撮/SFXシーンの最先端を走るのではないだろうか。

 シミュレーションテクノロジーを描いた神林長平の『魂の駆動体』を想いだす。
 まさにミニチュア特撮魂の駆動体としてのCGエフェクト。


 むしろミニチュアかCGかなんてことよりも、そこに成田亨や高山良策、小松崎茂、井上泰幸といったアーティストの個性をどう活かしていくか、ということの方が重要だろう。
 CGなら、各アーティストのデザインセンスをロジック化して取りいれることも可能。よくここで書いているように、金田伊功のようなアニメータの感覚もロジック化さえできれば、もしかしたらそんな映像ツールが可能になるのかもしれない。

 ミニチュアへのノスタルジーから博物館を作るのはとても重要だと思う。
 しかし郷愁のあまり技術の進化に眼をつぶってミニチュアに拘りすぎると、ますますガラパゴス化して日本の映像界には暗い未来が待っているような気がする。

 と書いているけれど、庵野秀明監督も樋口真嗣監督も映像の戦端を切り拓いている方々なので、そんなことはとうに理解された上での特撮の見直しなのだろうと思う。(宮崎駿監督だけは手描きアニメへの偏執的な拘りからCGを敵視しているようだが…本来、今やるべきは日本手描きアニメの何がCGに比較した利点で、それをどうCGに取込むべきかの工夫だろうと思うのだけれど、これはまた別の話(^^;))

◆関連リンク
CUT7月19日発売号、表紙&ラインナップ! - Cut 編集部日記 | ブログ | RO69(アールオーロック) - ロッキング・オンの音楽情報サイト

"特集:庵野秀明、語る。――巨神兵、エヴァ ンゲリオン、そして自分。 原体験としての特撮、宮崎駿との邂逅をもたらした巨神兵、そして、エヴァンゲリオン――。展覧会『館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』の開催を機に、そのクリエーションの本質を剥き出しにする20000字インタビューを敢行! そし て彼をよく知る人物らのインタビューにより、庵野秀明という“人間”を浮き彫りにする。
・樋口真嗣、なぜ特撮だったのか ・鈴木敏夫 「庵野秀明 欠席裁判」"

『Cut (カット) 2012年 08月号』

|

« ■感想 「館長庵野秀明 特撮博物館」 樋口真嗣監督「巨神兵東京に現わる」 | トップページ | ■情報 青森県立美術館「Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語」「没後10年特集展示:成田亨」 »

コメント

 かずたまさん、面白そうな映画の御紹介、ありがとうございます。

>>今夏地域限定でロードショーされていたインド映画「ラ・ワン」はハリウッド技術バリバリ使ったCG映画なのですが、一か所だけミニチュアを使った大迫力映像が使われています。
CGとミニチュアの良いところを融合させている素敵な映画です。

 映画『ラ・ワン』公式サイトの予告篇、観ました。
 ムンバイのCST駅のシーンは、ちょっとだけでした。
 ミニチュアとCGの破壊シーン、DVDで観られるのを楽しみにします(^^) !

投稿: BP(かずたまさんへ) | 2012.11.18 20:48

早速の返信ありがとうございます。

表現したい映像が、費用対効果も踏まえた上で、ミニチュアの方が上回るにこした事は無いと思います。

いい加減のようで実は人間の眼の機能は高性能なので、騙すのは本当に難しいですからね。


話が少しそれますが今夏地域限定でロードショーされていたインド映画「ラ・ワン」はハリウッド技術バリバリ使ったCG映画なのですが、一か所だけミニチュアを使った大迫力映像が使われています。
CGとミニチュアの良いところを融合させている素敵な映画です。

http://twitter.com/kazu_tama/status/214158304014909440

どちらか一方ではなく、それぞれの良いところの融合は日本特撮でも見てみたいです。

投稿: かずたま | 2012.11.18 20:06

 かずたまさん、はじめまして。
 コメント、ありがとうございます。

>>樋口監督の「やる気なくす」呟きからこちらに飛んできて拝読しました。

 深夜ヱヴァQを観たのと、親しい友人との会話で、つい暴走して書いてしまい、お恥ずかしい限りです。

>>もしも今も円谷英二翁が生きていれば、ミニチュアだろうが、CGだろうが、より撮りたい方法で撮っていたのではないだろかと夢想します。

 でもこのように読んで頂ける方がいらっしゃり、本当に感謝です。
 私も同意見です。手段であるミニチュアにこだわるより、凄い映像を撮る目的で手段を選ぶようであって欲しいですね。

 もちろんこんなこと私が言う前に、樋口監督他スタッフの方々は、それを既に実践されている訳ですが、、、(^^)。

 ハリウッドのCGを観るにつけ、円谷英二がこの技術を縦横無尽に使っていたら、どんな凄まじい映像ができるか…と夢想することもしばしばです。

>>限られた時間、予算、技術、スタッフの中で、費用対効果が高ければミニチュアでもいいと思うのですよ。

 おっしゃる通り、予算規模の問題や、時間、スタッフのスキル等々、映画は現場にフィットした手段を取ることも重要ですね。

>>CGがミニチュアを凌駕する近未来は、それはそれで楽しみですね。

 CGでミニチュア特撮のあの味含めて、再現出来た時に、また新たな映像の地平が開かれる様に思います。今後とも宜しく御願いします(^^)

投稿: BP(かずたまさんへ) | 2012.11.18 18:04

樋口監督の「やる気なくす」呟きからこちらに飛んできて拝読しました。

>映像に工夫とワンダーさえあればその手段は問わない(^^;)。

>アーティストの個性をどう活かしていくか

このご指摘のとおりかと。

もしも今も円谷英二翁が生きていれば、ミニチュアだろうが、CGだろうが、より撮りたい方法で撮っていたのではないだろかと夢想します。

あとはCGにしろミニチュアにしろどちらが商業ベースで採算が取れるか、なのかな~と。

限られた時間、予算、技術、スタッフの中で、費用対効果が高ければミニチュアでもいいと思うのですよ。

CGがミニチュアを凌駕する近未来は、それはそれで楽しみですね。

投稿: かずたま | 2012.11.18 16:57

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/24373/55257277

この記事へのトラックバック一覧です: ■感想(2) 「館長庵野秀明 特撮博物館」 ミニチュア特撮の未来:

« ■感想 「館長庵野秀明 特撮博物館」 樋口真嗣監督「巨神兵東京に現わる」 | トップページ | ■情報 青森県立美術館「Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語」「没後10年特集展示:成田亨」 »