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2012年2月19日 - 2012年2月25日

2012.02.24

■感想 黒沢清監督『贖罪』

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連続ドラマW「贖罪」|WOWOWオンライン
 黒沢清監督 新作『贖罪』、これはテレビドラマの枠なんて関係なく、正真正銘の黒沢清映画作品。
 各女優陣はいずれもハイレベル。中でも安藤サクラと池脇千鶴が鬼気迫る出来。そして最終話のあの男優。近くにいたら怖くて狂いそうw。

 映像空間が呪いに満ちる黒沢映画で言葉による意識下への呪いを映像化して欲しいですね。『贖罪』はまさに四人の少女にとり憑いた言葉の妖怪の物語w。
 以下、各話ごとに感想をまとめます。

◆第一話「フランス人形」
 続きが激しく観たくなる初回、傑作である。
 森山未來、映像の独特の間に、狂気が宿っている…。

 湊原作未読ですが話の骨格は『告白』に似て、あざとさギリギリのラインw。
 というか有り得ないレベルではみ出てるか…。だけれど鬼気迫るラストになってるのは、この話がどこにでもありそうな夫婦の大きなすれ違いをカリカチュアとして描いてるからだろう。

 何気ない日常の光景に異物が混入してくる映像はまさに黒沢清映像の真骨頂。体育館の夕方、カーテンによる光の差し込み方で描かれた恐怖のトラウマの刻印は見事。 特に跳び箱のシーンはヤバかった。

 そして刻印シーン、残された4人を前に俯いてて髪を上げる小泉今日子の怖さ、ただ事でない。

【蛇足】冒頭、上田の町へ越してくる転校生の都会の少女。あの辺りの描き方で『マイマイ新子』をデジャヴュしたのは僕だけだろうか(^^)。

◆第二話「PTA臨時総会」
 地味だけれどジワジワくるこの重苦しさは何なんだろう。前回の蒼井優もそうだったけれどロボット的な小池栄子。麻子による一種の呪いをかけられた描写だと思うがこのトーンが息苦しい。そして今回も体育館描写、その映像が興味深い。

◆第三話「くまの兄妹」
 安藤サクラ、凄かった(実は出演作初見w)。
 そして今回も黒沢清の光の演出による、呪いに落ちたような日常空間。ただ今回、前二話に比べると話の屈折率が低い。安藤の演技に黒沢も負ってる感じで、もっと闇への偏光を見せて欲しかった(^^;)。

 凄まじく呪いがかかってる。安藤サクラがこちらへ走ってくるシーンは画面から逃げ出したくなるくらい何かが籠っている。こうした映像の空気感を撮らせたら黒沢清って世界一の監督かもw

 1時間という枠が描写的に厳しかったかも。もっと兄 加瀬亮の異常性を描いて、妹 安藤サクラの呪いをかけられた上での正常性を強調するくらいでも良かったのでは。加瀬の描写にあと10分ほしいw。

 一番印象的だった話なので、少し点が辛くなっているw。

◆第4話「とつきとおか」
 麻子の「呪い」が直接的に悲劇を生むのではなく、空いた空洞がねじ曲がって作り出す恐ろしい憎悪による悲劇。この泥泥はたまりません(げっ)。あざといが、観てて胃がキリキリしてくる。
 池脇千鶴の普通だけれど、大きく狂っている言葉が鬼気迫る。

◆最終話「償い」
 静かだけれど狂ってて凄まじい演出。破天荒なストーリーを、演出のタッチでここまで見せるのが凄い。光と小物の使い方、人格の論理破綻描写、タイトルが重く伸し掛るラスト。

 それにしても小泉今日子の"老い"をアップの連続で見事に映画のイメージに、冷酷に利用している。あの顔に刻まれた何ものかが映像として物語をあざとい補強する。

 そしてあの男優の役柄、虚無と長く付き合った人間を、的確に演じている。なんだろう。視線と、歩行と走行の少しだけの標準から のズレ…。演じる時の俳優の心の持って行き方を想像する。たぶん自分の中の虚無をマックスに振りきった状態で歩行してるんだろうな。

 それにしてもWOWOW、いいドラマを企画してますね。15日間無料視聴で見せていただいて申し訳ないですw。

◆関連リンク
小池栄子&安藤サクラ&池脇千鶴 3人が語り交わす
 黒沢清監督、女優陣に人気ですねw。
黒沢清監督「贖罪」インタビュー

"いくつか映画の企画が頓挫した頃WOWOWから打診…少女の遺体が転がっている場面など「映画でも難しいかも」と思った撮影も「大丈夫です」と言われた。規制なく表現できることに驚いた"

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2012.02.23

■情報 CDブック『春の先の春へ 震災への鎮魂歌/古川日出男、宮澤賢治「春と修羅」をよむ』


『春の先の春へ 震災への鎮魂歌/古川日出男、宮澤賢治「春と修羅」をよむ』
(左右社)

" 永訣の朝、無声慟哭、春と修羅…。宮澤賢治と古川日出男の声/言葉で贈る、 震災後の光を探り願うCDブック。
 小池昌代、管啓次郎のエッセイと解説付。

「その三月に震災は起き、僕はひと月かふた月か、さまざまな文章が読めずにいました。しかし、それでも数人の文学者の、わずかな数の本は読めた。そうした本のことを考えつづけています。そこには宮澤賢治がいました」(古川日出男)"

 古川日出男の、もちろん小説のファンなのだけれど、それに勝るとも劣らないくらいこの作家の朗読が好きだw。
 なのに、年末に出版されたのを知らなかった(^^;)CDブックを今頃、御紹介。

 上の動画は制作時のメイキング。朗読も一部、聴ける。やはりいいです。

◆関連リンク
古川日出男×黒田育世×松本じろ×小島ケイタニーラブ「東へ北へ」 - YouTube
古川日出男×黒田育世×松本じろ「東へ北へ」20110709@SARAVAH東京 - YouTube

"撮影・編集 河合宏樹 古川日出男
朗読 『東へ北へ』 2011年7月 9日 (土)
 小説家 古川日出男 の朗読は新しい文学の形態として、我々に電気ショックをあたえてきた
 こんな朗読を今まで聞いたことがあるだろうか?! 彼の絶叫に、言葉の奔流に、文学とは読むのみにあらず。言葉にもみくちゃにされるという体験をするのである。
 黒田育世のダンスはその感性、自由さにかけて、今の日本のトップを走る。この2人の共演に、ミュージシャンたちが参加。
(朗読)古川日出男   (音楽)小島ケイタニーラブ
(ダンス)黒田育世       松本じろ"

 ロックンロールな東北の物語を聴け!! って勢いです。
 『アラビアの夜の種族』を読んだ頃、古川日出男が芝居をやっていたと知って、どんな舞台だったか凄く観たかった。しかし今、この動画がある…。
CDブック『春の先の春へ 震災への鎮魂歌/古川日出男、宮澤賢治「春と修羅」をよむ』(Amazon)
古川日出男 当Blog記事 Google 検索

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2012.02.22

■感想 ヤノベケンジ新刊『SUN CHILD』サン・チャイルド

Sun_child

ヤノベケンジ『SUN CHILD』 - BLD GALLERY  | 銀座ビーエルディーギャラリー
 ヤノベケンジ新刊『SUN CHILD』入手。
 サン・チャイルドの勇姿が存分に見られるのは勿論、「太陽の子 太郎の子」展@岡本太郎記念館に行かないと見られなかった「太郎の島/サン・チャイルド島」のドローイング2枚と模型写真2枚が掲載されているのが嬉しい。
 この壮大な建造物アート、実現して欲しい!

 そして、サン・チャイルドの今後の展示予定、3/11茨木駅前、3/12モスクワと記載されている。
 モスクワの展示の詳細はわからないけれど、チェルノブイリに対応した展示なのだろう。ある意味、チェルノブイリに起源を持つ太陽の子が里帰り…子供達が喜ぶと良いなー。

◆関連リンク
YANOBE KENJI ART WORKS /// ヤノベケンジ アートワークス

"2/26 特別イベント・ギャラリートーク @岡本太郎記念館"

映画『プリピャチ』公式サイト(UPLINK)

"『プリピャチで感じた行き場のない怒り』 ヤノベケンジ
私がプリピャチの街に実際に入ったのが1997年なので、ほぼこの映画撮影と時期だ。当時出会った老人も出演していたので再体験するように記憶がよみがえ る。映画のように、会う老人全てが気さくでとびきり優しく、遠い国からの訪問者を喜んで歓迎してくれた。わが身の不幸をぶちまける事無く黙々と日常を過ご す姿にその時はまだ笑顔で返せていた。しかしゾーン内に住む3歳の坊やに出会ったときはさすがに私の心の中は行き場の無い怒りに震えた。「人類はなんて愚 かなものに手を出してしまったのか…」。その怒りのエネルギーが今でも作品を作り続ける原動力となっている。この映画は見る人の多くにそういう体験を与え てくれるのだと思う。"

 あのヤノベケンジのチェルノブイリ訪問写真で、観覧車のあった街 プリピャチについてのドキュメント映画。
ヤノベケンジ『SUN CHILD』
 ヤノベケンジ新刊『SUN CHILD』、Amazonに出ました。
 僕はBLD GALLERYのショップから買ったんですが、振込料と送料が随分とかかりました…。
sun child 当Blog関連記事 検索
 ヤノベ氏の記者会見3Dビデオとか。

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2012.02.21

■新刊情報 上田 早夕里『ブラック・アゲート』

 上田 早夕里さんの新刊『ブラック・アゲート』が出た。
 まだ読んでいないので、まずは関連リンク集です。

 バイオ・サスペンスって、一番近い地球破滅だと感じているのでワクワク。

上田 早夕里『ブラック・アゲート』Black Agate
光文社公式

" 日本各地で猛威を振るう未知種のアゲート蜂。
 人間に寄生し、羽化する際に命を奪うことで人々に恐れられていた。 瀬戸内海の小島でもアゲート蜂が発見され、病院で働く事務長の暁生は、娘・陽菜の体内にこの寄生蜂の幼虫が棲息していることを知る。 幼虫を確実に殺す薬はない。
 未認可の新薬を扱っている本土の病院を教えられた暁生は、娘とともに新薬を求めて島を出ようとするが、目の前に大きな壁が立ちはだかる……。
 暁生親子の運命はいかに?
 日本SF大賞受賞作家による近未来バイオ・サスペンス!

「怖いうえに面白い!  マイクル・クライトンに匹敵する迫真の理系冒険活劇」 香山 二三郎(コラムニスト)"

Nomadic Note 2 『ブラック・アゲート』(光文社)が発売されました(上田 早夕里さん公式Blog)

" なお、この発売に併せて、2月22日発売の「小説宝石」3月号に、本作執筆に関するエッセイが掲載されます。その中でも触れていますが、本作の執筆動機には、短篇作品「くさびらの道」が少し関係しています。"

上田早夕里(@Ued_S)Twilog /「くさびらの道」

"ちなみに、光文社の編集部では「くさびらの道」が一番人気なので、あんな感じの長編(生物パニック系とでも言えばいいのか?)が書けないか……という話は出ている。ただし、こちらは書いたとしてもミステリ寄りの作品になるような気が。"

 2010年4月のツイートなので、最終的にどんな作品になっているか、期待です。

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2012.02.19

■感想 ラース・フォン・トリアー監督『メランコリア』 678の謎 本格破滅SFとしての読解

Melancholia「メランコリア」公式サイト.12.2/17ロードショー
 ラース・フォン・トリアー『メランコリア』、最近のトリアー作品に比べると、ずいぶんストレートなSFという印象。トリアーの捻れた屈折パワーは今回観客ではなく地球の破滅に向けられているw。

 そして、世界でも珍しい"大人の"本格破滅SF。
 ハリウッドのSF映画は、本当にSFなのか? と疑問を持つ向きにもこれは御薦めできるw。スペオペや冒険ものSFでなく、正統派な(?)"大人の"SF小説の肌触りを持った映画というのは驚くほど少ない。僕が観た作品では、アンドレ・タルコフスキー『ストーカー』とあと数本じゃなかろうか…。

 この映画は、その数少ない一本に数えられるかもしれない。
 SFで言えば、J・G・バラードかトマス・M・ディッシュといったニューウェーブの作家を思い出す。(と両作家を数作づつしか読んでない僕が書くのも僭越なのだけれど…w)
 
 冒頭のアートフィルムな8分間のスロー映像に続く、ペシミスティックで憂鬱な物語。ストーリーの骨格よりも、映像の組立と、細部の描写が鈍く光るSF作品である。


★ネタばれ注意★★★★




■本格SFとしての『メランコリア』

 トリアー監督の憂鬱は、今回地球のみならず宇宙の生命を根絶やしにした、まさにwww(What a Wonderful World)な映画(逆説的にね(^^))。
 「678個」に秘められた主人公ジャスティンの能力がSFとしてのキーポイントかと…。

 この結婚式冒頭に置かれ、途中姉のクレアのみしかその答えを聞いていない「678個」という解答について、知らないはずの
ジャスティンが何故知っているのか。
 ここまでの流れで、
ジャスティンをイカれてると考えて出鱈目な発言と考えてしまうと、何故彼女が「678個」を知っているのか、というのは大きな謎となる。

 
そこでこの映画のSFとしての前提条件を、ジャスティン能力は真実だ、世界の真実の未来を観ることができる、と仮定してみると面白い。

 なぜなら、彼女が同時に語る「この宇宙で、
地球だけが知的生命を発生させた「邪悪」な惑星である」という発言がSFの仮定として真実ということになるからだ。ここでSFのパースペクティブが大きく開かれる。

 宇宙にただひとつの知的生命の住む邪悪な惑星 地球。
 それが宇宙の自然のメカニズムの中で、たまたま滅んでいくシーンを冷徹に(宇宙にとっては何事でもない)ドキュメントとして描く惑星衝突の映像。

 
本来物質の物理現象だけでは決して起こらない「鬱」という異常な精神の「邪悪」な感情を、綺麗さっぱり宇宙から消し去るのが、この映画でトリアーが企んだことなのではないか。意識という、邪悪な脳活動を持つに至った人類を抹殺する企み。

ラース・フォン・トリアーが宇宙から抹殺する邪悪な意識
 このように読んでくると、前半のジャスティンの異常は、宇宙が知的生命を根絶やしにすることを予見した恐怖が引き起こしたとてつもない憂鬱に起因していると読める。
 そして正常な人々が狂っていく後半。
 正常を取り繕っていた人々が、狂っていくシーンは、知的生命の邪悪さを表現している…と(なかば邪推として)観ていくととってもSFなのだw。

 トリアー作品の系譜から破滅SFを撮るのは異質な気がしてたんだけど、こう考えて物凄〜くトリアーだった。
 まさに鬱状態で世界を観た時の、人間関係の屈折側面を結婚式を舞台に描いた前半。トリアーの人間への絶望/悪意全開…それが破滅を必然として呼び込む後半…。

 まさに監督の絶望が、世界を破滅させるトリアーらしい映画なのである。
 映画のパンフレットに門間雄介氏がトリアーの言葉を紹介している。

"「ある意味、この映画のエンディングはハッピーエンドなんだ」
「すべての苦しみが一瞬にして消え去るなら、私は自分でボタンを押すだろう。もし誰も苦しまないのなら」"

 トリアーはこの憂鬱で邪悪な人類/唯一の知的生物を宇宙から抹殺し、永遠に世界が苦しむことのないハッピーな世界に変えたのだ。まさにwww(What a Wonderful World)なラストシーン!

ということで、いささか上滑りで妄想炸裂な読みにお付き合いいただき、有難うございます…。

◆蛇足

 映画館から車での帰り道、映画の余韻に浸りたかったので、音楽も何も聴きたくないと、いつも流してるカーステレオを切って いたのですが、途中でふとLana Del Rey "Video Game"なら…と思ってかけたら、何故か抜群に雰囲気が合う。
 皆さんもどうぞ。

◆関連リンク
映画/賛否両論の声が続出…トリアー監督自らパニックの『メランコリア』の“衝撃” - cinemacafe.net

"「この映画は、甘いクリームの上にクリームを重ねたような映画だ。女性の映画なのだ」と語るトリアー監督。
「私は今、混乱し、罪悪感を抱いている。自分は一体何をしたのか?」と。
「結局は、弱い歯に亀裂を入れる甘いクリームの中で、まだ骨が残っていることを期待するしかないのだ…今、私は目を閉じ、切実にそう願っている」"

 宇宙から知的生命を抹殺させたことを「甘いクリーム」と表現し、そしてそれを後悔してまた悩むトリアー。鬱の闇は深い。
Melancholia Prologue - YouTube
 これは、実験的で叙情的なこの映画の冒頭シーン8分間をまるごと紹介したもの。映画館で未見の方はクリックしない方が良いです。この冒頭の衝撃は是非劇場で。
ラース・フォン・トリアー 当Blog記事 Google 検索
魔方陣 - Wikipedia

"アルブレヒト・デューラーの銅版画『メランコリア1』"

 この巨大な惑星(?)の描かれた銅版画の魔法陣に「678」という数字が出てくると、もっと面白かったのですが、、、。残念。
"美しく甘美な理想の終末"(『メランコリア』柳下毅一郎氏評)

"「生命は邪悪なものだ」と信じ、そのすべてが滅んでしまえばいいとさえ思う。すると、その願いに応えるかのように、メランコリアがあらわれる。メランコリアとは憂鬱(ゆううつ)症のことである。
 ならば地球に衝突しようとする惑星メランコリアはジャスティンが自分の心から呼びだした想像上の産物なのだろうか?"

 パンフに書かれている何人かの方の評価と近いものを感じます。これがやはり平均的な受け止め方なのでしょうね。678の解釈は、ここでも触れられてはいない…。

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