« ■情報 IMEC、コンタクトレンズ内蔵型 液晶ディスプレイ | トップページ | ■動画 ARTUR FILIPOWICZ監督・脚本・編集 "Katharsis - Beksinski art movie" ズジスワフ・ベクシンスキーのアートを映像化 »

2013.02.25

■感想 朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』 & 吉田大八監督の映画

吉田大八監督『桐島、部活やめるってよ』
 昨年、評判だった『桐島、部活やめるってよ』をDVDにて初見。
 噂にたがわず傑作(今頃ですが…w)。
 やはり巷間言われている様に、学校の閉鎖世界の空気感の描写が圧倒的。同じクラスにある見えない壁とその越境の微妙なバランス。
 そしてその越境のタイミングで描かれる8mm『生徒会・オブ・ザ・デッド』は圧巻。でも桐島って?

 当然のごとく中心の不在ということで『ゴドーを待ちながら』は思い出す訳だが、それを元にした鴻上尚史『朝日のような夕日をつれて』しか観ていない僕には語る資格はない…w。
 ただ桐島の存在も映画の中の生徒たちにとっては「ゴドー」なんだけど、それだけでない幅が存在していて、それが映画に広がりを持たせている。

朝井 リョウ『島、部活やめるってよ』

 映画から続けて朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』読了。
 この文庫の解説で、映画版を監督した吉田大八が書いている様に、「ひかり」の描写が小説独特の心理描写と相まって傑作になっている。
 ただ映画の方が内面を一人称の言葉で描いてない分、膨らみがあるように感じた。映像の心象描写は観る者に幅を与え、想像を拡張する。

 小説で描かれた「ひかり」は、映画版ではもっと苦いリアルな現実として描写されている。
 これは好き嫌いで評価が分かれる所だろう。
 またふたつを比べると、女子の心理描写は映画版が優れているように思う。
 これによって越境する「ひかり」の描写が、映画においてより前向きになっている故だろう。
 比較して書いたが、この二作の共鳴がとても心地いい。

 映画が凄いのは特に女子の会話で宏樹と付き合っている沙奈に顕著な様に、コミュニケーションの表層にしか自我が駆動していな い一種ゾンビの様な人物造形を、かすみと対照的に描き意識的にやっている点。小説版も客観視点でそんな描写はしているが映像の現実感が生々しい。

 小説版を読むことで奥行きが与えられて興味深かったのは、バトミントン部の実果の異様な家庭環境描写と、前田とかすみの中学時代の映画話。特に後者は映画 ファン(特に岩井俊二とか犬童一心とか日本映画ファン)にはホロ苦く、とても良いんだがw、映画はそこを省略し想像させることで広がりを獲得している。

 一般的に小説の映画化はイメージを固定化すると言われるけれど、外界の光景描写は固定されるけれど、考えてみれば心理描写は小説の方がまんま描かれ固定化する(ことが多い)。映画は限られたセリフと映像の心象描写で、人物の内面は観客の想像と読解力に委ねられる傾向。桐島はその相乗効果がある。

『桐島』と『野ぶた』

 またクラス内階層描写(スクールカーストという言葉は嫌い…)から『野ぶた。をプロデュース』を思い出すのだけれど(特に秀逸だったテレビドラマ版)、『桐島、部活やめるってよ』のコミュニケーション断絶の冷徹描写は現在のリアルな実態を反映しているのかそれとも作者の個性か。
 僕は後者の木皿泉の秀逸な脚本が大好きだった。TVドラマ『野ぶた。をプロデュース』は、草野彰という元々越境する副主人公の存在が大きかったのだと思う。『桐島』と同じ高校のクラス内階層を描いた『野ぶた』が息苦しさとともに風通しが良かったのは、まさにこの原作には存在しなかった彰を登場させた故だと思う。まさに木皿泉の成果。
 『桐島』で言うとゾンビのような存在が、この彰であり、狂言回し的にドラマをドライブし、傑作だった第9話を形成した。あの話があることで、僕は敢えて言うと『桐島』より『野ぶた』派なのである(^^)。(当Blog記事 白岩玄 木皿泉 『野ブタ。をプロデュース』第9話「別れの予感」感想)

 あと完全に蛇足だけど、朝井リョウの小説は岐阜出身だけに高校生たちの会話が東濃弁(シネマハスラーで宇多丸氏が関西弁と言ってたが、東濃の西の方の言葉w)。

 僕はすっかり馴染んで読んでいたけど中央の人達にはローカル感漂うんでしょうね(^^;)。で、ネイティブから言わせてもらうとw、このタイトル『桐島、部活やめるってよ』は標準語、本当は『桐島、部活やめるんやと』という表記がしっくり来るw。

◆関連リンク
『桐島、部活やめるってよ』はベケット作『ゴドーを待ちながら』だった (2012.8.23) - Togetter

ここにある中森明夫氏の解釈は破壊力ありますねw。これ、読んじゃうと、解釈が固定されそうな程、面白い。でも「青春映画」をキーに語っているけど、もっと広がりがある感じはする…。
・鴻上尚史氏の『桐島、部活やめるってよ』評をネットで探した。
 Twitter / KOKAMIShoji

"週刊「SPA!」の原稿、終了。「桐島、部活やめるってよ」について書く。リアルとファンタジーについて。"

 "リアルとファンタジーについて"…何となく想像はつくけれど、この原稿、読んでみたい。この映画にその二層が横たわってるのは8mmシーンだけでなく印象的なんだが…。まさにゴドーを巡る鴻上尚史のテーマとも呼応している言葉。
町山・宇多丸・博士他サブカルトップチームたちの「桐島、」感想まとめ

|

« ■情報 IMEC、コンタクトレンズ内蔵型 液晶ディスプレイ | トップページ | ■動画 ARTUR FILIPOWICZ監督・脚本・編集 "Katharsis - Beksinski art movie" ズジスワフ・ベクシンスキーのアートを映像化 »

コメント

>>正しくは美濃の西です

 あ、たしかに(^^;)。ありがとうございます。
 地元が東濃なのでここを中心に考えてしまってましたw。修正します。

投稿: BP( さんへ) | 2013.05.19 07:32

ネイティブから言わせて頂くと、東濃の西ってwww
そんなもんあらへん
正しくは美濃の西です
関西弁と間違えられやすいいのは隣が滋賀県だからですよ
東濃の隣は長野県やで、言葉が違うんやよ

投稿: | 2013.05.09 23:47

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/24373/56777692

この記事へのトラックバック一覧です: ■感想 朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』 & 吉田大八監督の映画:

« ■情報 IMEC、コンタクトレンズ内蔵型 液晶ディスプレイ | トップページ | ■動画 ARTUR FILIPOWICZ監督・脚本・編集 "Katharsis - Beksinski art movie" ズジスワフ・ベクシンスキーのアートを映像化 »