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2013.03.13

■感想 フィリップ・K・ディック/佐藤龍雄訳『空間亀裂』: The Crack in Space

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空間亀裂 - フィリップ・K・ディック/佐藤龍雄 訳|東京創元社

"時間理論を応用してつくられた超高速移動機の内部に亀裂が発見された。そこからは別の時間、別の世界が覗き見られるという……。ときに西暦2080年、世界は人口爆発に苦しめられていた。避妊薬は無料となり、売春も法的に認可されている。史上初の黒人大統領候補ブリスキンは、かつて夢見られ今は放棄された惑星殖民計画の再開を宣言するが……。ディック中期の長編、本邦初訳!"

 P.K.ディックの初訳出長篇『空間亀裂』読了。
 修理工場で見つかる超高速移動機のひび割れ。ピンク色の娼館衛星<きんのとびら>とそこに君臨する異形の者ジョージ・ウォルト。そして空間の裂け目に現れる異世界…。
 …まるで吾妻ひでおの漫画のようだ(^^)。表紙は彼しかいない!

 ということで、物語からイメージした表紙に合うものがあるかと画像検索。
 冒頭に引用したディック『空間亀裂』の各国表紙は、Chris Mooreの描いた引用画像の左上、最初の一枚が最高(^^)(Chris Mooreのページ 上から3枚目)。
 ピンクが際立つ娼館衛星のわい雑さを見よw! 娼館衛星は、"女の胸のふくらみ形のパーキングスペース"(p181)を持っているという何ともキッチュなバカバカしくもディックっぽい設定。

 Chris Mooreのページにある "This one is crazy wild in theme and color! " の惹句がぴったりだ(^^)。

 そして、猥雑さは物語にも言える。
 ジム・ブリスキン大統領候補の選挙運動を通して、真剣に真面目に人口問題と人種問題について書くディックの筆致。
 小さな街の超高速移動機の修理工場で見つかる罅割れ。その亀裂の謎が物語のリーダビリティを高める。

 そして描かれる市井の人々。浮気と離婚と中絶と…政治の捉え方含めて、まるでワイドショーを見ているようだ。
 戯画化された人々と、描かれる異文化の描写の融合具合が何とも心地いいスキゾパラノなディック空間。

 花を添えるガジェット群も、レイザーピストルとか映話とか言語解析機、空飛ぶタクシー・ジェットキャブ…。こうしたディック未来世界の定番が懐かしくも血が騒ぐ(^^)。

 ビル・スミスによって語られる異文化(p222)

"金属は忌まわしいものです。地の底で死者とともにあるものだから、地の底は<過去>に属する世界であり、すべての<時>が止まっている世界です"

 罅割れの向こうの異世界描写にはワクワクした。ここは全部が書かれてないので想像力をいたく刺激して、読後もいろいろとあの文化の成り立ちについて想ってしまう。

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 ということで、そんなディック空間を飾る未来的音楽を最後に紹介して、この感想を閉じたいと思う。

 作中の探偵が聴く「20世紀中葉の偉大な作曲家ハリー・パーチ 霧箱演奏曲」。
 創作楽器"Cloud Chamber Bowls"の画像(右はその一枚)。演奏の不思議な音はここ

◆関連リンク
フィリップ・K・ディック/佐藤龍雄訳『空間亀裂』
牧眞司「むやみなアイデア、やりすぎのチープ、めくるめく混乱」
 (2013年2月刊『空間亀裂』解説[全文])

Nolax - The Crack In Space - YouTube
 ディックとは関係ないようだけれど、同タイトルのテクノサウンド。
Book Recommendation: The Crack in Space by Philip K. Dick - YouTube
 "The David Pakman Show"というテレビ(ネット?)番組で、ディック『空間亀裂』が紹介されている動画(2012年)。

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