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2013年4月

2013.04.29

■動画 アニメミライ2013 吉成曜監督『リトル ウィッチ アカデミア : Little witch academia』


公式 「リトルウィッチアカデミア」
  Little Witch Academia - YouTube

アニメミライ[ animemirai ]

"作画チーム

  • 担当制作:堤 尚子
  • キャラクターデザイン:吉成 曜
  • 作画監督:吉成 曜
  • 中堅原画:芳垣 祐介 / 堀 剛史 / 米山 舞
  • 若手原画:金子 雄人 / 坂本 勝 / 三宮 昌太 / 田頭 悠郎 / 半田 修平"

 現代の名アニメーターの一人である、吉成 曜が監督した26分の短篇アニメ全篇がYoutubeで観られる。
 魔法学校の魔女のたまご達の冒険を描いた作品。小品だが躍動感溢れる高密度の映像を見せてくれる。物語もコンパクトに纏めているが世界観の広がりがあり、なかなか楽しめる。
 アニメーションについては、息を飲む様な動きのシーンが多数あり、作画アニメとして充実度120%(^^)。
 初監督作にしてこれだけの作品、今後、長篇監督作等も期待したい。

 今回、アニメミライの企画ということで、上記の様に新人アニメーターが活躍されている。こういう動画を思う存分に動かせる、腕試しの機会があることは、素晴らしいと思う。

 ということで、YoutubeのPCの画面で物足りない皆さんは、この5月に以下のイベントとテレビ放映にて大画面で観られるチャンスがあるので、是非!

TRIGGER Inc. | News | 「リトルウィッチアカデミア」マチ★アソビにて上映!

"「リトルウィッチアカデミア」が徳島で行われる「マチ★アソビ」vol.10にて上映されます!
5月4日(土)11時半から上映開始、本編終了後には吉成監督の舞台挨拶が行われます。
その後、13時から「TRIGGER+アニメミライ」トークショー。 TRIGGERからは大塚雅彦、舛本和也と吉成監督が参加します。"

TRIGGER Inc. | News | 岡山の劇場にて「リトルウィッチアカデミア」が上映

"GW中に岡山のジョリー東宝にて「リトルウィッチアカデミア」を含むアニメミライ4作品が上映されます。
上映館:ジョリー東宝(岡山市)
期 間:5月4日(土)~5月17日(金)"

アニメミライ 2013 リトル ウィッチ アカデミア
 |ANIMAX アニメ見るならアニマックス

"放送スケジュール
2013/5/7(火)    朝6:00〜
2013/5/11(土)    深夜0:00〜"

◆関連リンク
trigger st - YouTube
 新しいアニメスタジオ TRIGGER : トリガーのYoutube頁。
 『リトル ウィッチ アカデミア』の予告動画等、いくつかの映像が楽しめる。
アニメミライ[ animemirai ]Blu-ray Disc

"価 格:\3,800(税込・予価)
備 考:Blu-ray Disc、約104分、B5版パンフレット付
1.通信販売  申込受付:2013年5月11日(土)0時ころ~17日(金)24時
申込みフォーム(※5月11日0時ころにURLをオープン)
購入案内:5月20日(月)昼ころ
支払期間:5月21日(火)~5月27日(月)15時
販売数量:100部"

 リンク先はアニメミライの公式HP。案内が明確に書いていないが作品のブルーレイディスク販売の案内のようであるが…よくわからないので、希望される方はよく御確認下さい。
「アニメスタイル003」情報/「特集 吉成曜」インタビューは2万4千文字! TV『エヴァ』最終回のペーパーアニメも: 編集長メモ

" 「アニメスタイル003」の「特集 吉成曜」は全26ページの大ボリューム(そのうち12ページが4色カラー)。インタビューは2万4千文字で、アニメーターになるまでの経緯から仕事につい ての考え方、監督作品『リトル ウィッチ アカデミア』のことまで、たっぷりとうかがいました。"

 BitingAngleさんに教えて頂きました
『アニメスタイル003』「特集 吉成曜」

・当Blog記事
 ■OTONARI KOBO:おとなり工房「手塚キャラ動かしてみました」
 吉成 曜氏が私的に作成したと言われる手塚キャラの魅力を存分に描き出した傑作映像(リンクあり)。

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2013.04.26

■情報 『ヤノベケンジ作品集 YANOBE KENJI 1969-2005』 & あいちトリエンナーレスクール「サン・チャイルドの誕生、そして結婚式」

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『新装版 ヤノベケンジ作品集 YANOBE KENJI 1969-2005』 青幻舎 公式HP

"待望の新装復刻版! オリジナリティあふれる機械彫刻作品に現代社会を鋭く反映し、熱い注目を集めてきたヤノベケンジ。 現代におけるサヴァイヴァル、リヴァイヴァルをテーマに次々と作品を制作してきた。 デビューから2005年まで、ヤノベ・ワールドの根幹を知る、記念碑的作品集。
構成:豊永政史 デザイン:Photo Graphic *TOYONAGA

自作の放射線感知服を着てチェルノブイリなどを訪問し大きな波紋を投げかけた「アトムスーツ・プロジェクト」(1997~)、
核戦争の脅威を、トリックスター「トらやん」が登場して訴える子供用シアター型核シェルター「森の映画館」(2003)など話題作多数。

*本書は2005年に刊行したDVD/ケース付きの『KENJI YANOBE 1969-2005』(本体3,800円)を、
作品集の部分のみを新装判として復刊するものです"

 ヤノベケンジの作品集が復刊された。
 ヤノベケンジ作品集『ヤノベケンジ1969‐2005』(PDF)という電子書籍版も出ていたが、美術作品は、大判の書籍でこそ映えるので、書籍の復刊を待ち望んでいたファンも多いと思う。
 僕は以前の版を持っているので、今回買い直すことはないのだけれど、表紙が黒で渋くまとまっているので、こちらも欲しくなってしまいます(^^;)。
 実物はまだ観ていないのだけれど、手に取ってみたいものです。

ニュース | あいちトリエンナーレ スクール 2013

"【第1回】テーマ:「サン・チャイルドの誕生、そして結婚式」
日 時:平成25年5月11日(土)午後2時から午後3時30分まで
会 場:愛知芸術文化センター12階アートスペースA
ゲスト:ヤノベケンジ
定 員:200名

※申込不要。参加費無料。当日は各開始時刻の30分前から受付を開始します。なお、受付は先着順で行いますので、定員に達した場合は入場をお断りすることがあります。"

 ゴールデンウィーク明けに、名古屋でヤノベケンジの講演会が開催される!!
 今回のサン・チャイルドのいる結婚式場という、巨大作品を作り続けてきたヤノベ氏がついに建築の領域へ踏み出す様な予感もあり、熊本の構想も含めて語られると推測されるので、参加が楽しみ(^^)。

◆関連リンク
 togetterで、更新を細々と続けているヤノベ関連ツィートのまとめを最後に紹介します。皆さんが撮られたたくさんの写真が見ものです。
ヤノベケンジさん「瀬戸内芸術祭2013」小豆島会場 作品制作ドキュメント - Togetter

"ビートたけし×ヤノベケンジ×ULTRA FACTORY「ANGER from the Bottom」「ジャンボトらやん」「Star Anger」!
 3月20日に開幕する瀬戸内国際芸術祭2013・小豆島会場にヤノベケンジ作品が大集結!"

ヤノベケンジ@愛知トリエンナーレ2013 - Togetter.

"「サン・チャイルド」のいる「太陽の神殿」で結婚式を挙げられるアート作品とのことです。"

『新装版 ヤノベケンジ作品集 YANOBE KENJI 1969-2005』

当Blog関連記事
レポート KENJI YANOBE 1969-2005 ヤノベケンジ作品集出版記念イベント@豊田市美術館
情報 あいちトリエンナーレ2013 PV ヤノベケンジインタビュー

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2013.04.24

■予告篇 ブランドン・クローネンバーグ監督『アンチヴァイラル』Antiviral


Antiviral - Official Trailer - YouTube

"After becoming infected with the virus that killed superstar Hannah Geist, Syd March must unravel the mystery surrounding her death to save his own life.

Director: Brandon Cronenberg
Writer: Brandon Cronenberg
Stars: Caleb Landry Jones, Sarah Gadon and Malcolm McDowell"

映画『アンチヴァイラル』公式サイト
 予告篇がスタイリッシュで不気味(^^;)。

 デイヴィッド・クローネンバーグ監督の息子、ブランドンの初監督作が日本でも公開される。出演に『時計仕掛けのオレンジ』のマルコム・マクダウェルがいて、いい味を出している。

 予告篇からは、肉体変容映像で父デイヴィッドの影響を想像しないわけにはいかない。それにしても、今、宣伝コピーに「近未来サイバーパンクスリラー」とは古めかしいイメージにはならないだろうかw。僕らの世代には「サイバーパンク」って未だに新しいイメージがあるのだけれど、最近の若者にとってはどんな語感になるのだろうかw。

 先日紹介したもうひとりのカルトデイヴィッド監督リンチの息子とか、シュヴァンクマイエルの息子とか、カルト映画の監督の子息の監督率はかなり高いようです(^^)。映像から強烈な刷り込みを受けるのだろうか。

◆当Blog関連リンク
映像 ライリー・リンチ監督 "Four and a Half Days by Riley Lynch" (2012) Riley Lynch
ヴァーツラフ・シュヴァンクマイエル site:bp.cocolog-nifty.com - Google 検索

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2013.04.23

■新刊情報 『復活するは我にあり』『寺田克也ココ10年 KATSUYA TERADA 10 TEN - 10 Years Retrospective -』『怪奇三昧 英国恐怖小説の世界』

山田 正紀『復活するはわれにあり』

"余命を宣告された、車椅子のワンマン経営者・権藤。 ジエイゾと名乗る者に拉致され、男が所有する大型船「南シナ海号」に乗船することになった。 船はハイジャックされ、権藤は人質となってしまう。 犯人の背後に蠢く得体の知れない陰謀を感じつつ、超ハイテク車椅子(サイボイド)と共に果敢に立ち向かう。 海上を舞台とした、著者久々の冒険小説!"

「復活するは我にあり」イラスト
 (小説推理 (第1回~第6回)連載時の山下セイジ/山下成司の挿絵)
 連載中の山下セイジ氏のイラストが御本人のHPに掲載されている。重厚な黒いイラストwがとても良い!
 でもまさか「復活」にはこんな意味があるとは(^^;)!(閲覧注意)。

Twitter / anaryusisu

"新刊が出ます。「復活するは我にあり」です。何と20数年ぶりの冒険小説です。復活するのは主人公であると同時に、私自身が冒険小説に復活するという意味も込めたつもりです。面白くしたい一念でがんばりました"

"『アグニを盗め』から始まった超冒険小説の復活でしょうか!"(BP)

"じつは超冒険小説というのは当時の編集さんが考えたネーミングで私は関与していないのです。素敵なネーミングではあるんですが。"

 山田正紀さんのつぶやきにリプライしたら、「超冒険小説」についてコメントいただけました(^^;)。
 従来のヒーロー像からかけ離れた主人公たちが知恵で状況を突破する「超冒険小説」のシリーズが大好きだったので、この名前は今回も使って欲しかった気がします。GWの読書はラファティ『第四の館』と「超冒険小説」の新作!

『寺田克也ココ10年 KATSUYA TERADA 10 TEN - 10 Years Retrospective -』

" テラカツ10年分の仕事を総覧できる豪華図録! 世界的人気を博すイラストレーター・寺田克也。 カラーイラスト・設定画など約300点を展示する「寺田克也ココ10年展」が京都マンガミュージアムにて3/16~6/30まで開催されます。 展示全作品に併せて展示公開されないお宝作品も収録。 収録作品のすべてに寺田本人のコメントが付きます!
内容
 猿、ドラゴン、ロボット、妖怪、自動車、女の子、吸血鬼、大人っぽいおもちゃ、親父さん、美少年、ヒーローその他あらゆるものを描いてきた寺田克也のココ 10年分1000点を超える作品を収録。マンガ、イラスト、キャラクターデザインほか、寺田克也の仕事を総覧できる貴重な図録。"

 寺田克也 ココ10年展 | 京都国際マンガミュージアム - えむえむも観に行きたいものです。
 開催は2013年 3月16日(土)~6月30日(日)。

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南條 竹則『怪奇三昧 英国恐怖小説の世界』

" 読書のなかでも、「恐怖と戦慄」を味わう愉しさはまた格別である。怪談、怖い話を愛する著者が、20世紀初頭、英国怪奇小説の黄金時代を築いたアーサー・マッケン、アルジャノン・ブラックウッド、ダンセイニ卿、M・R・ジェイムズら巨匠たちの数奇な人生と、「恐怖」の真髄を語り尽くす。
 名著『恐怖の黄金時代』に新たに書き下ろし、翻訳を大幅に加えた増補改訂完全版。英国怪奇小説を終生愛してやまなかった伝説の幻想作家H・P・ラヴクラフトの名篇「名状しがたきもの」「夢魔十夜」「忘却の国から」等の新たな翻訳も収録。怪奇小説好きはもちろん、ホラー映画&漫画ファンも必読のブックガイドである。カバーイラストは、荒木飛呂彦氏描き下ろし!"

 恐怖小説はどうしてこんなに女王陛下の国に合うのでしょう(^^;)。

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2013.04.22

■動画 クリスピン・グローヴァー「ビッグ・スライドショウ」Crispin Hellion Glover "Big Slideshow"


Crispin Glover - What It Is, and How It is Done. - YouTube

"Crispin Glover does his best to explain It. An excerpt from Crispin Glover's Big Slide Show."

 かつてカナザワ映画祭で一度だけ日本で実演された、クリスピン・グローヴァーのカルトパフォーマンス "ビッグ・スライドショウ"、この一部が動画として公開されていたので御紹介。

 2008年カナザワ映画祭のクリスピン・グローヴァーの「ビッグ・スライドショウ」については以下に詳細があるので、参考にして頂きたい。
 まさに動画で紹介されているクリスピンの短篇小説「What It Is, and How It Is Done.」は、カナザワでも "ビッグ・スライドショウ" として演じられていたんですね!
 英語がよくわからないのだけれどw、独特のシニカルでストレンジな魅力の一端は伝わってきますね(^^;)。

Simply Dead クリスピン・グローヴァーの「ビッグ・スライドショウ」in カナザワ映画祭

" クリスピン氏が自らのライフワークとして行っているのが、「ビッグ・スライドショウ」と銘打たれた巡業興行だ。それはスライド映写、映画上映、Q&A、サイン会という四部構成で行われる。

 スライドショウは、最後の1冊「What It Is, and How It Is Done.」をもって幕となる。これはクリスピン氏のオリジナル短編であり、トリを飾るにふさわしい、非常に端正にまとまったユーモラスで美しい一篇だった。

 クリスピン氏がこうした巡業興行のかたちで上映活動を続けているのは、「実演(ヴォードヴィル)+映画」という、映画黎明期にあった興行形態を再現する という意図と、実際このやり方のほうが実入りがいい、という理由からだそうだ。(略)観たいお客さんだけが観に来る環境を作り、ある独特の雰囲気の中で1本のフィルムを大切に観てもらったほうが、作り手としてもストレスが少ないだろう。

“It三部作”の第1弾『What Is It ?』(2005)、そして2日目は第2弾『It Is Fine ! Everything Is Fine.』(2007)。 映画の感想については、またの機会に……とても一言では語れない内容だからだ。『What Is It?』はまさに「なんだこれは?」と観た者を唖然とさせる空前絶後のアートフィルムだったし、『It Is Fine ! Everything Is Fine.』に至っては、その場にいた観客全員の魂を揺さぶる未曾有の大傑作だった。"

 それにしても観たいのは、この見事な紹介記事の最後にある、クリスピン・グローヴァーの監督作 “It三部作” である。これはまさに壮絶なカルトムービーである。
 ネットで探しても、クリスピンの方針で監督が巡業を直接実施する形態を取っているため、勿論観ることは出来ない。それでも観たいのが、当blogの読者と私(^^;)なのだけれど、冒頭の動画と、下記の様なネット公開されている映像から、空想するしかないw。

Crispin Glover "Clowny Clown Clown" - YouTube
 これもクリスピン・グローヴァーのビッグ・スライドショウに通じる一本(かな?w)。この奇妙な感覚はクセになりそうですw。

◆関連リンク
slideshow(公式サイト)アメリカでは、今も各地で上演されている様です。
 アメリカ在住の方は是非。時々、海外への巡業情報も掲載されています。
クリスピン・グローヴァー - Wikipedia

当Blog関連記事
デヴィッド・ブラザーズ,クリスピン・グローヴァー監督  スティーブン・C・スチュワート脚本主演  『It is Fine. Everything is Fine!』

" 特殊な興行形態であるため、日本で観たことのある観客は、カナザワ映画祭2008の会場にいたわずか百数十名のみ。そして今後、DVD等の発売の可能性はなく、日本での公開が再びあるか、まったくわからない。まさに幻のカルト映画の誕生である。"

 こちらに“Itトリロジー”の一本、『It Is Fine ! Everything Is Fine.』の予告篇リンク等、紹介があります。

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2013.04.19

■感想 村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

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村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(Amazon)
文藝春秋 特設サイト - 本の話WEB

 村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』主要な舞台の一つ名古屋で読了w。

"生まれ落ちてから、基本的には一歩もその街を出ていない。学校 もずっと名古屋、職場も名古屋。なんだかコナン・ドイルの『失われた世界』みたい。ねえ、名古屋ってそんなに居心地の良いところなの?"

 という文章に行き当たり、思わず爆笑w。
 何と名古屋はロスト・ワールドだったのか!?
 (ちょっと小さい声で…)実は名古屋人には常識ですが、東京や全国の人には内緒、日本の『失われた世界』名古屋の東山動物園には恐竜がいます(うそ(^^;))

 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』真面目な読後感は、村上長篇の中では、少し『ノルウェイの森』系列かもしれない。
 主人公の"色彩"は、まさしく『ノルウェイの森』の主人公"ワタナベトオル"の感性に近似。"キズキ"と"直子"と"僕"の高校時代が再話され、そこを起点に物語は北の湖の地にまで広がる…。

 今回、奇想小説風味は少ぉ〜しだけあるけれど、ほとんどリアリズムです。僕は"ワタナベトオル"的感性にぼやぁ〜と漂いながら読みやすい文体を追っていくのも嫌いでないので、なかなか快適な読書時間を持てました。
 出版から数時間でツイッターで呟かれた、大森望氏の最速レビューの不評を読んで期待してなかったのが良かったかもw。

Twitter / nzm

"『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』読了。途中までは面白くなりそうだったんだけど……。ああもう、うっとうっしいったら!"

ハルキ祭りの夜は更けて──『多崎つくる』発売カウントダウン・レポート - 大森望|WEB本の雑誌.

"80年代歌謡曲の有線放送をBGMに二色丼(ネギトロと中トロ)を食べつつ続きを読むも、「それだけひっぱっといて真相がそれかよ!」と脱力し、後半どんどんスピードが落ちてゆく。  残り100ページで店を出て、日比谷線恵比寿駅ホームのベンチ、始発電車の車内、東西線茅場町駅のベンチ、車内と読みつづけ、西葛西駅のホームで午前6時に読了。楽しいハルキ祭りの夜でした。これで小説がもうちょっと面白かったら完璧だったな。"

 うちの町の書店で『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』今朝10冊ほど在庫有。本当はほぼ同時に出た海猫沢めろんさん『全滅脳フュー チャー!!!』を先に読もうと思っていたのに何故か売ってない!もしかしてうちの町は春樹より『全滅脳フューチャー!!!』が先に売り切れる街なのか(^^;)!??
 先日記事にしたように、『全滅脳フュー チャー!!!』傑作だったので、この順番で読んで正解だったかも。

 で、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を今日買ったのは読みたかったこともあるけれど、食卓に置かれた僕の本を指さして、朝のニュースを見ながら妻の放った一言が効きましたw。
 「そんな誰も家族が読まない様な変な本(ラファティ『蛇の卵』)より娘も読むかもしれない村上春樹を買わないの!?」w
 (僕の村上春樹でまずは少しの奇想に洗脳して、家族にラファティを読ませる計画は、こうして発動したのでしたw。きっとだめだろうな〜)

 以前、『1Q84 BOOK1 BOOK2』について感想を記事にした時に書いた、"自由意志と自然体の相克"みたいな問題は、今回、まったく進化されていない。
 少しだけそんな側面も期待していたのだけれど、それは次の本格的長篇まで持ち越しでしょうか。

 最期に名古屋と並んで、本書の基調を構成する、ピアニストのラザール・ベルマンの演奏するフランツ・リスト『巡礼の年』「Le Mal du Pays」について。

Liszt Le Mal du Pays - YouTube
 例えばリストの曲については、ここで聴けます。が、ラザール・ベルマンのピアノによるものはありません。

村上さん新作で「巡礼の年」CD再生産 - 音楽ニュース : nikkansports.com.

廃盤となっていたベルマン演奏のCD「巡礼の年」を5月15日に再発売。生産中止となっていたブレンデルのCDも再生産し、4月27日ごろに店頭に並ぶという。

 ということで、『多崎つくる』人気のおかげで、ちゃっかりCD再発売の様です(^^;)。ロシアのピアニストの曲想がどんなものか、一度聴いてみたいものです。

◆関連リンク
時事ドットコム:村上春樹氏 公開インタビュー(13.5/6)

"木元沙羅は僕を導いてくれた不思議な存在だった。今回は生身の人間に対する興味がすごく出てきて、登場人物のことを考えているうちに(登場人物が)勝手に動き出した。この作品を書いて、頭と意識が別々に動く体験を初めてした。僕にとっては新しい文学的試みだった。3~4年前なら書けなかったかもしれない。
 この作品は、(登場人物の会話を多用した)対話小説という気がする。僕は会話を書くことに苦労したことは一度もない。会話でつないでいくストーリーはわりと好き。難しいのは、会話が重なっていくうちに体温が変化している感じを出さないといけないところです。
 今までの小説では1対1の人間関係を描いてきたけれど、今回は5人という大きなユニット(の関係)だった。「1Q84」という3人称の小説を書いた後だったので、それとはまた違う形で(3人称の物語を)書きたいという気持ちが出てきたのでしょう。"

【村上春樹さん公開インタビュー発言要旨】魂のネットワークのようなものをつくりたい : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)(13.5/6)

" (徐々に)魂のネットワークのようなものをつくりたい気持ちが出てきた。みんな自分が主人公の複雑な物語を、魂の中に持っている。それを本当の物語にするには、相対化する必要がある。小説家がやるのは、そのモデルを提供することだ。
 〈新作「色彩を持たない 多崎 (たざき) つくると、彼の巡礼の年」について〉
 「ノルウェイの森」のときは純粋なリアリズム小説を書こうと思った。(新作は)僕の感覚としては、頭と意識が別々に動いている話。今回は前作「1Q84」に比べて、文学的後退だと思う人がいるかもしれないが、僕にとっては新しい試みだ。
 (多崎の恋人の) 沙羅 (さら) さんが、つくるくんに名古屋に行きなさいと言うが、同じように僕に書きなさいと言う。彼女が僕も導いている。導かれ何かを体験することで、より自分が強く大きくなっていく感覚がある。
 今回は生身の人間に対する興味がすごく出てきて、ずっと考えているうちに、(登場人物たちが)勝手に動きだしていった。人間と人間のつながりに、強い関心と共感を持つようになった。"

 この村上インタビューで語られている"頭と意識が別々に動いている"というのが、実は『1Q84 BOOK1 BOOK2』で描かれた"自由意志と自然体の相克"に繋がっているのかもしれない。大変興味深い発言だったので、追記しました(5/7追記)。

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2013.04.17

■動画 "竹谷隆之 造型ドキュメント映像" & 情報 "竹谷隆之の仕事展"


竹谷隆之 造型ドキュメント映像 - YouTube

 これはとても貴重な、優れたドキュメント映像である。
 造形師 竹谷隆之氏の仕事をとらえた、43時間でひとつの作品が出来上がる過程の動画。
 ラフスケッチから始まって、ひとつのフィギュアの工程を竹谷氏の仕事場の映像で紹介する33分のドキュメント、見ごたえ充分。

 具体的には、作品名 "珍しい獲物" という、イヌイットが墜落したUFOのエイリアンを捕獲したシーンの造形物の制作映像。
 職人の手の中で頭の中のイメージがグイグイと造形作品として現実化していく工程が凄い。まさに一分の狂いもなく、イメージが手の中で、物体化する快感がこの映像にある。

 そしてナレーションと映像が、昭和の時代のNHKのドキュメントのようで、そこもなんだかベストマッチ(^^;)。

 以下の展示会のプロモーション用に作られたもののようであるが、ドキュメントには、再刊された作品集『漁師の角度』についても、少し触れられていて興味深い。

公式サイト "竹谷隆之の仕事展"

"百聞は一見に如かず。竹谷隆之 が 創り出す造形世界。       
その圧倒的な存在感は、二次元の画像から感じ取ることは不可能。
展示作品数 約80点
この機会にホンモノの立体物だけが発する“  気  ”  をダイレクトに御体験下さい!

開催期間: 13.6/1(土)〜7/1(月)
開催時間: 午前10時30分~午後8時( 最終入場午後7時30分 )
会 場 : アーツ千代田 3331 1階メインギャラリー(秋葉原)
休場日: 毎週火曜日"

 ということで、その造形物のまさに原型80点にふれられる絶好の展示が開催されるとのこと。造形物の360度の細部を確認できる貴重な機会なので、御近くの方は是非、その様子を御教示下さい。(例によって、私はこのタイミングで本業出張でも入らない限り、遠いので行くのは無理です(涙))

竹谷 隆之『漁師の角度 完全増補改訂版』(Amazon)

"立体造形師として長きに渡り活躍をし、近年では海洋堂の人気シリーズ「リボルテックタケヤ」を手がけたことでも知られる竹谷隆之氏が1999年に出版したオリジナル造形集『漁師の角度』を新規製作の造形物を加え、全面的な改稿をへて、新たに刊行します。 反重力エンジン搭載の漁船「第八十八恵比須丸」に乗って漁に出るガンコ漁師「カネヒサ爺さん」、彼の飼う犬であきらかに人語を解する「新田」、何でも屋 「蝦名商店」を経営し、キーボード付き音声発生装置で会話する猿・蝦名。山奥からやってきて人々の命を奪う山犬「キムンセタ」等、竹谷氏の悪魔的想像力か ら生み出された、ユニークな人々、メカ、生き物等がいきいきと立体造形物と文章で表現されています"

 Amazonのサイトにある、絵とキャプションがいいですね!
 特に、"恵比須丸:カネヒサ爺さんの操る漁船。重力制御エンジン搭載で空を飛び獲物を仕留める。壊れるたびに青木が修理する"。
 文章と造形に込められた物語にワクワクします(^^)。

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2013.04.15

■感想 海猫沢めろん『全滅脳フューチャー!!!』

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全滅脳フューチャー!!! (太田出版)

" オタクにしてホスト、そして・・・ぼくが人類を全滅させる!?
 著者の特異な経歴が「本人」連載時から話題を集めた青春小説、カバー作品制作に気鋭のアート集団Chim↑Pomを迎えてついに完結!
 実話をもとに描かれる、神なき時代を生き抜くための「新しい希望」!!極限の問題作!!!

 九十年代、どこにでもあるような地方都市「H市」。
 主人公の「ぼく」は十八歳、美少女アニメとゲームとマンガがちょっと好きな程度の、いたって普通の工場作業員だ。夏のある日、なんとなくトラックで職人を轢き殺そうとしたのがきっかけで、仕事をクビになってしまった。
 お別れ会と称して親方に連れて行かれたのは、どこにでもあるような安いスナック。そこで出会ったある女性の紹介で、新しくオープンするホストクラブで働くことに......。
 だが、そこにいたのはホストとはかけ離れたシャブ中のチンピラ「シンさん」だった。その出会いが、ゆるやかに「ぼく」を変えていく。

第1話「恐怖、溶解人間」
第2話「最強、土下座マシン」
第3話「夏の黒魔術」
第4話「デッドエンド」
第5話「神のゲームとヒューマントラッシュファクトリー in my ぼく」
第6話「ライフ・イズ・アニメーション」
第7話「全滅 NO FUTURE」
最終話「YES FUTURE!」"

 『全滅脳フューチャー! ! ! 』を新しく出た幻冬舎文庫版で読了。
 「文科系トークラジオLife」をずっと聴いているのだけれど、そこでの海猫沢めろんの自身を語る逸話、そして独特のスタンスの言葉に魅かれて、自伝的小説ということでこの4月の文庫版出版を機に、手に取ったのだけれど、その鮮烈な面白さにノックアウトw。(2009年のハードカバー版出版時も手に取ったのだけど、未読のままだった不明を恥じます(^^;;))

 アニメオタクが紛れ込んだ関西のシノギ世界、中島らもを思わせる異様な人々の描写に引込まれつつ、挿入されるクールな視点の融合で醸し出される、紛れもない21世紀傑作小説。

 同時に刊行された村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を前日に読んで、続けて『全滅脳フューチャー! ! ! 』を読んだのだけれど、この二冊は現在36〜37歳の同世代を主人公にした小説。
 前者が昭和から見た21世紀の感性を描いてたのに対して、後者は明らかに平成の感性が描いた21世紀小説。
 何が違うか、もちろん作家の個性の違いが大きいw。
 だが特筆したいのは、後者について、脳内に映像作品を注入し続けて育った世代の感覚描写が凄いのだ。ここをもって21世紀小説と僕が呼びたい理由である。
 映像の世紀であった20世紀の末、映像が溢れかえる世界に生まれ、それを摂取して育った21世紀の大人、それが後者の主人公である。

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 『全滅脳フューチャー! ! ! 』の感覚を完全映画化できる監督がいるとしたら(園子温がもっとオタクならw?)、タランティーノ『パルプ・フィクション』に比肩する"日本の"新世代映画になるだろう。

"私の考える娯楽の本質は、現実逃避だ。日常を忘れてここではないどこかへいくのが、娯楽。ホイジ ンガや、ロジェ・カイヨワなんか読まなくてもわかる。では、自分の住む世界が、アニメだと思えば、幸せに生きることが可能か?そんなわけがない。心を持っ たアニメの主人公など、すぐに気が狂ってしまう。ここは現実以外のどこでもない。"(P278)

 多数挿入されるアニメソングとゲームに耽溺した感覚から発せられる主人公の言葉。自らを地球観測に送り込まれた、完璧に人間に模して作られたロボット(某レプリカントは不完全だった)と定義する感覚と周囲のズレの混沌…。

 映像の世紀が生み出した日本のいびつな2次元世界(クールジャパン?クソ喰らえw!)、これに脳を溶かされた主人公と、ドラッグで脳が蕩けている「シンさん」の凄絶な関西の地方都市での、どこにでもあるかもしれない物語。
 これを本書に引用される数々のアニメやゲーム映像をザッピングして、映画に埋め込んだら…どんな異次元空間がスクリーンに登場するか、是非とも観てみたいものだ。
 そして素晴らしいクライマックス。泣ける最終話「YES FUTURE!」!
 優れた震災映画の側面も(?)持つ、このクライマックスをそのまま映像化したら、きっと世の中では強く否定されるだろう。
 だけれどもここにはある種の僕たちの震災に対するひとつのリアルが間違いなく存在する。この側面の鮮烈な映像化もどこかで観てみたい自分が脳の中に居ますw。
 映像化は無理だとしても、それを脳内スクリーンに投射するための素晴らしい小説がここにあります。めろん先生の混沌に貴方も参戦しませんか(^^;)。

◆関連リンク
全滅脳フューチャー!!!文庫発売 (海猫沢めろん.com)

"無事発売になりました!本日から書店に並んでいると思います。ピンク色の背景と表紙の西島画伯のセラムンっぽいキャラが目印。あらすじがすげえ……(略)

ぼくのことをよろしくお願いします!"

海猫沢 めろん『全滅脳フューチャー! ! ! (幻冬舎文庫)』

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2013.04.12

■新刊メモ 栗本慎一郎『栗本慎一郎の全世界史 ~経済人類学が導いた生命論としての歴史~』

『栗本慎一郎の全世界史 ~経済人類学が導いた生命論としての歴史~』

" 「パンツをはいたサル」以来、幅広く活躍してきた栗本慎一郎氏がライフワークにしてきた世界史の再構築。栗本氏は本書を事実上の遺作として、本気で世に問う最後の作品として位置づけ、出版する。

 西欧と中国の偏った史観に依拠してきた従来の日本の歴史学を一掃させることで浮かび上がってくる真実の歴史像を、 全ユーラシアの生きた歴史、新しい歴史の教科書として世に問う一冊になる。

 前著「ゆがめられた地球文明の歴史」で展開した歴史論をさらに拡大発展させ、読者の要望の多かった日本史についても幅広く著述している。栗本氏が「意味と生命」以来展開させてきた、独自の生命論についても披瀝。文字通り、集大成となる一冊。"

 栗本慎一郎が集中して研究している歴史の本が、2013年4/13(土)、新たに出版される。
 ずっと読んできた栗本経済人類学の最終の本、ということでとても感慨深い。今回の出版は楽しみであり、ついにこれで終わってしまうのか、という残念な気持ちで一杯である。
 もっとも初期の傑作『ブタペスト物語』で、「これは遺書である。海外出張の直前の「いしょ」がしい時に書いているので「遺書」である」(^^; 苦笑)と書いていた氏なので、今回も実は…と言って、また根源的な探求の旅の記録を引き続き出版してくれることも、どこかで期待し続けたい。
 そんな栗本氏の直接の言葉が以下にあったので、さら長文になるが、引用する。 

20130314140109

読者の皆さん、さようなら。
 - 生命科学情報室

"「あとがき」にある栗本先生の読者の皆さんへのメッセージをお届けしましょう。

"そういうわけで皆さん、現時点での私の歴史についての遺書をお届けしておく。

遺書というのはオーバーで、残し書きという程度であるべきかもしれないが、いずれにしても本という形ではもう終わりだ。

 研究と思索は続けるが、多分、このあとはもう猫について以外は本にはしないだろう。

 私ももう71歳である。研究とインテンシブな思索をさらに10年続けられるとは思いにくい。  だから、歴史の総体についてはこれが最終作である。その意味で読者の皆さんさようなら。

キメクについても聖方位についても、出来れば後進が具体的研究を深めてくれることをちらりとは夢見ているが、これまでもいくつかの夢が夢に終わったことを思えば、ただの夢に終わることを受け入れるのにもやぶさかではない。

 夢の先は墓場で見続けることにしよう。本書について語りたくば、半村良さんやフランシーヌさん、そして坂口安吾さんと語ろう。

 歴史は先人の生命と夢の痕跡をたどることでもある。それを理解すればいつでもどこでも歴史の謎を解くことが非常にたやすくなる。
 本書では何も書かなかったが、たとえアトランティスについてでも同じなのである。(「あとがき」より)"

 果たしてどのようなパンツをはいた猿である人類の新しい過去の姿が開陳されるのか、期待して待ちたいと思う。

 ここで記されていることで、一点気になったことがある。
 半村良、坂口安吾と並び記された"フランシーヌ"って誰だか調べたら、パリの女性でフランシーヌ・ルコントのことだった。
 ♪フランシーヌの場合♪の歌のモデル。
 先日読んだ、佐々木中氏の本を思い出す…。

栗本慎一郎先生が言った、「君は『フランシーヌの場合』という曲を知っているかい?」。。。 - 生命科学情報室

 ♪フランシーヌの場合♪
 僕がこの歌を知ったのは赤塚不二夫の『天才バカボン』のある一話だった。ので、ギャグっぽいイメージでいたのだけれど、1969年のパリで起きた切ない小さな事件の歌だったんですね。
 今日知って天国のフランシーヌさんにすまない気持ちで一杯です…。赤塚不二夫にやられた!

 真面目な話、現在の日本にフランシーヌが居たら、どういう行動をとっていたのか、とても気になる。

◆関連リンク
栗本慎一郎 当Blog関連記事 Google 検索

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2013.04.10

■新刊メモ R・A・ラファティ, 柳下毅一郎訳『第四の館 (未来の文学)』 "Fourth Mansions"

R・A・ラファティ, 柳下毅一郎訳『第四の館 (未来の文学)』

"発売日 2013/04/25
世界最高のSF作家ラファティによる『地球礁』『宇宙舟歌』に並ぶ
初期代表長篇にして最高傑作がついに登場!
さえない新聞記者フォーリーが出会う奇妙な陰謀の数々。
狂気とは何か? 人はいかにして神になるのか?
世界に牙を剥く衝撃のラファティ文学。"

Photo_2

第四の館|国書刊行会

"とってもいい目をしているが、おつむが足りない若き新聞記者フレッド・フォーリー。

彼はテレパシーでつながって人間を越えた存在になろうとする七人組の〈収穫者〉にそそのかされ、さる政界の大物が五百年前に実在した政治家と同一人物ではないかと思いつく。
この記事を調べるうちに、フォーリーはいくつもの超自然的友愛会が世界に陰謀をめぐらしていることを知り、熾烈な争いの中に巻きこまれていく……
世界最高のSF作家、ラファティによる初期傑作長篇がついに登場。善と悪、現実と幻想、正気と狂気が入り乱れ、奇天烈な登場人物が大暴れする唯一無二のラファティ・ワールド! "

 いよいよ昨年から予告されていたラファティ『第四の館』が刊行される。
 このあらすじを読んだだけで、奇想な物語が脳内に展開され、その奇天烈なイメージに脳の皺が四次元的に折り畳まれていく快感が…(^^;)。

 ゴールデンウィークの旅行は、この本でラファティ宇宙行きが決定です!

 僕は先日の『蛇の卵』に続き、未読だった『地球礁』を読んでいるところで、なんと贅沢なことに、この2013年春にラファティの長篇3本を続けて読む脳の快楽に身を委ねる計画です(^^;;)

 ということで、読後の感想リンクを追記。

■感想 R・A・ラファティ, 柳下毅一郎訳『第四の館 (未来の文学)』R.A. Lafferty "Fourth Mansions"

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2013.04.09

■情報 アレックス・コックス監督 『宇宙兵ブルース』映画化企画 "THE GALACTIC HERO" by Alex Cox — Kickstarter

Alex Cox directs BILL THE GALACTIC HERO by Alex Cox — Kickstarter

"BILL, THE GALACTIC HERO is a feature-length science fiction comedy set in the far reaches of our galaxy, as humans wage war against a reptilian alien species, known as Chingers. It is extremely low budget, and relatively high concept. How is a story of space warfare between two high-technology civilizations to be achieved, doing justice to its original, on a super-low budget?"

Twitter / kiichiro

"ハリイ・ハリスンの『宇宙兵ブルース』をアレックス・コックス監督で映画化! 金出してくれる映画会社ないのかねえ"

Twitter / kiichiro

"I just backed Alex Cox directs BILL THE GALACTIC HERO on @Kickstarter http://kck.st/WZEugx "

 柳下毅一郎氏のツィートで知ったアレックス・コックス監督のソーシャルファウンディング キックスタータの映画プロジェクト。

 『レポマン Repo Man 』(1984)や『シド・アンド・ナンシー Sid and Nancy』(1986)のアレックス・コックス監督、最近の動きは知らなかったけれど、こんな形でしか、映画の制作費を集められないとは、なんとも悲しいですね。

 僕はこの二作に溢れる熱気が大好きだったのを久々に想い出しました。
 とにかく『レポマン』はSF映画好きには必見の作品。

 キックスタータの企画は、$100,000目標で現時点(2013.4/7)で$71,459。
 なんとも寂しい数字だけれど、現時点のアレックス・コックス監督のネーム・バリューはこの規模なのだろうか。残念でならない。

Photo

 映画化を狙っている作品は、あのハリイ・ハリスンの『宇宙兵ブルース』!

 右に引用した藤子・F・不二雄氏の表紙の本がとても素晴らしかった。
 藤子・F・不二雄氏のイラストが、あの話にはピッタリのイメージで、氏のSF短篇漫画群の読者になら伝わると思うけれど、シニカルな人間観に裏打ちされてあの藤子SF世界のアンチヒーロー的主人公に共通する影の描写がとてもいい。

 ハリスンなら、他にもハリウッド映画に向いたものがたくさんある。
 『テクニカラー・タイムマシン』『ステンレス・スチール・ラット』シリーズ等々。
 特に後者は、一級の宇宙ヒーローもの映画になること、間違いなし。
 ハリウッドと言わず、どこか日本のアニメ会社が、TVシリーズ化してくれないものだろうか。
 『ルパン3世』のベスト作品(大隈正秋、大塚康生、宮崎駿、高畑勲)にも通じる粋な作品になること、間違いなしと思うけれど、、、。

◆関連リンク
HARRISON & HEINLEIN | alexcoxfilms
 アレックス・コックスがハリイ・ハリスンとはハインラインについて、書いている。
アレックス・コックス - Wikipedia
ハリイ・ハリスン - Wikipedia
ハリイ・ハリスン, 浅倉 久志訳『宇宙兵ブルース』(Amazon)
 マーケットプレイスで古本で入手可能。
ハリイ・ハリスン (Amazon)
 何とハリスンの本は、全て絶版なのですね。新刊は買えませんが、古本で入手可能です。『ステンレス・スティールラット』とか傑作です。

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2013.04.08

■動画 ボストン・ダイナミクス社『ペットマン』放射能防護服 Petman Tests Camo - YouTube


Petman Tests Camo - YouTube

"The PETMAN robot was developed by Boston Dynamics with funding from the DoD CBD program.  It is used  to test the performance of protective clothing designed for hazardous environments."

ペットマンロボットは、DoDの CBD : Chemical and Biological Defense化学生物兵器防護プログラムの資金で開発されている。これは、ハザード環境での防護服の性能をテストするためのものである。

 動きは不気味の谷を超え人間チックだが、放射能防護服を着た姿は、別の彼岸の存在感がある。
 何故、防護服をきているのか?
 これは、上の引用にあるように、もともとこのロボットがDoDによる化学生物兵器防護服のテストプログラムのためのロボットとして開発されていたから、当然のことらしい。(参照 Chemical and Biological Defense (CBD))

NHKスペシャル|ロボット革命人間を超えられるか

"米国防総省では、大規模災害に対応できるヒューマノイドを開発するプロジェクトをスタートさせた。"

 そして加えて、先日のNHKの番組によれば、このボストンダイナミクスは、DARPAの原発事故等の大規模災害対応のロボットプロジェクトにも参加しようとしているとのこと。

Graphic_darpa_robotics_challenge

DARPA Robotics Challenge

"The Department of Defense’s strategic plan calls for the Joint Force to conduct humanitarian, disaster relief and related operations.  The plan identifies requirements to extend aid to victims of natural or man-made disasters and conduct evacuation operations. "

 放射能にまみれた原発プラントのがれきの中をこのロボットが進んでいくのを想像してみる。もともと人間向けに作られた施設であるため、DARPAの企画の通り、二足歩行の優位性もあるかもしれないが、破壊された施設の中を進むのに、この脚がどれだけ役立つかは疑問も多い。
 ただ瓦礫の中では手も使用して四足歩行する手もありますね(^^;)。

 今後のペットマンの展開を見守りたい。

◆関連リンク
ボストンダイナミクス 当Blog関連記事 Google 検索

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2013.04.05

■動画 古川日出男×黒田育世×松本じろ×小島ケイタニーラブ「東へ北へ」 & 古川日出男 新作『南無ロックンロール二十一部経』


古川日出男×黒田育世×松本じろ×小島ケイタニーラブ「東へ北へ」 - YouTube

"撮影・編集 河合宏樹
(朗読)古川日出男 (音楽)小島ケイタニーラブ
(ダンス)黒田育世     松本じろ

2011年7月 9日 (土) 13:00 open 14:00 start
小説家 古川日出男 の朗読は新しい文学の形態として、我々に電気ショックをあたえてきた 

こんな朗読を今まで聞いたことがあるだろうか?! 彼の絶叫に、言葉の奔流に、文学とは読むのみにあらず。言葉にもみくちゃにされるとい­う体験をするのである。"

 古川日出男『聖家族 生まれちゃったんだよ、俺たち。』の朗読パフォーマンス。
 まず古川氏独特の「朗読」。
 通常の作家の朗読を想像すると、大きくイメージが違う。それは、作品の文体と同様に従来の朗読の概念を喰い破るような破壊的創造の賜物である。
 これは氏が演劇をやられていたことが大きく影響しているのは間違いないだろうけれど、それよりも古川日出男の内側では、作品の文体はまさにこのような怒濤の勢いで噴出していることの表出なのだろうと思う。
 また今までの「朗読」よりも、体の動きで表現される割合が大きく、まさに無意識の奔流が古川の体全体からほとばしっている様が凄絶。
 そしてそれを受け止め支えるダンスと音楽の強度。
 このパワフルな舞台! 本当に素晴らしいです。

『南無ロックンロール二十一部経』:古川 日出男|河出書房新社

" あのカルト教団事件と3・11後の世界との断絶。失われたものは何か? 浄土はあるか? 稀代の物語作家が破格のスケールで現代に問う、狂気の聖典。構想執筆10年。デビュー15周年記念作品。"

 そして千枚の大作と言われている新作が、5/17に発売される。
 『ロックンロール七部作』(当Blog感想)とは大きく異なる雰囲気の作品になるのかもしれない。期待である!

◆関連リンク
Kawade Web Magazine|古川日出男 | ロックンロール二十一部作 浄土前夜
 ベースとなったと思われる雑誌「文藝」連載の『ロックンロール二十一部作』の一部がここで読めます。

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2013.04.03

■情報 マンタムさん 個展「 残骸に在るべき怪物 」@パラボリカ・ビス と 初作品集『鳥の王 - Král o ptácích』

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マンタム個展「 残骸に在るべき怪物 」

"part.1●2013年4月10日[水]〜22日[月]
part.2●4月24日[水]〜28日[月]

■月~金/13:00~20:00 土日祝/12:00~19:00
■入場料:500円(開催中の展覧会共通)
■展覧会 会場:parabolica-bis[パラボリカ・ビス]
■東京都台東区柳橋2-18-11 ■TEL: 03-5835-1180 map

「鳥の王」出版記念展示
●晶文社より4月25日発売予定! パラボリカ・ビス先行販売!

Special event-------------------------------------
4月14日[日]

バネセンパイ(松本じろ+SKANK)ライブ
"鳥の王"と"馬の頭骨"によるギターをLayla使ったライブ!
◆午後6時半開場 ◆7時開演 ◆入場料:1000円

4月20日[土]
本原章一・ソロダンス 「モーター・ハミング]
◆音楽:武智圭佑(maguna-tech)
◆美術:マンタム
◆協力 今野裕一

◆午後7時開場 7時半開演 ◆前売・予約:2000円/当日:2500円

マンタムサイン会:発売日より随時開始!
詳細や予約開始情報は マンタム twitter: @mantamu "

 マンタムさんの楽器オブジェ「鳥の王」他の展示会とライブが、4月に開催されるとのことです。
 期待の展示、冒頭に引用したフライヤーがまず素晴らしい!

 そしてなんと、この個展はマンタムさんの初作品集の出版記念も兼ねているとのこと。詳細は以下、御自身のブログで書かれていますが、限定出版だそうです。

「鳥の王」が本になります。|マンタムのブログ

" 私にとって初の作品本となる「鳥の王 - Král o ptácích」が発刊されます。
 2013年4月25日晶文社から発刊の予定で現在日頃からお世話になりっぱなしのステュディオ・パラボリカのミルキィ磯辺様による編集作業が始まっています。
 基本的に直販が中心となる為『がらくたからたから』のように一般の本屋さんに並ぶ事はありません。
 限定1500部のみの出版になります。

 全ての本一冊一冊に私が鍛造したプレートが貼付けられることになっています。(略)一部の本屋さんやお店でのフェアを敢行する予定です。

 もしウチでやっても良いという奇特なお店がありましたら是非声をかけてやって下さい。出来る限りお伺いさせて頂きます。(略)

 作品の展示は鳥の王の関連作品と旧作 新作を合わせての展示になる予定で現在新作の製作に入っています。"

マンタム『鳥の王』【パラボリカ・ビス特別版】予約開始!!:parabolica-bis

"マンタム『鳥の王』 【パラボリカ・ビス特別版】
★通販ご希望の方の商品の発送は、5月中旬過ぎ頃を予定しております。
予約期間:2013年4月10日[水]~4月28日[月]
販売期間: 2013年04月12日22時00分
~ 2013年04月28日22時59分
価格: 3,570円(税込)

★パラボリカ・ビスだけのオリジナル特典★

◇銅板プレートに、ご予約順のナンバーを刻印致します!

◇時計パーツをお一つ、プレートにお付け致します!

◇ご希望がありましたら、プレートにイニシャルもお入れ致します!
(イニシャル希望の方はアルファベット1文字を通信欄に記載ください。)
"

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Twitter / mantamu

"で これがスカンクさんが弾く 鳥の王  なのです。鳥の王は既に2回スカンクさんは演奏していてどちらも大変良かったのです 今回はこの2本のありえないギターのユニットとして演奏してもらうのです。これも現在上野不忍池骨董市で展示中ですw"

 マンタムさんの待望の作品集『鳥の王 - Král o ptácích』がついに発刊される。
 この作品集は、幻想的な氏の短篇小説とオブジェ作品の写真を掲載したものになるのだろうか。Blogに掲載されている短篇群とそれと連係した造形作品のファンには、まさに待ち望んでいた本の出版である。
 限定出版なのは広く読まれるべき作品群だと思うので残念だけれど、鍛造プレート作品が付くということで、これはファンには大変嬉しい。

 ちなみにタイトルになっている「鳥の王」は、以下のブログ作品が現在、公開されている。

鳥の王|マンタムのブログ

"空は見た目は変わらないがそれでもそこに鳥の姿をみることはなくなってしまった。

かつて空を覆い尽くしていた鳥のその殆どが地上に墜ち墜ちた鳥は人によって焼かれて海に流されてしまったからだ。    

 彼は鳥の王だ。

僅かに残された誇り高い空の支配者の末裔だ。

残された僅かな同胞を守り未来に子孫を残すために鳥の中から生み出された王だった。

彼は生まれた時からそのことを理解していてそのために耐え成長した。

既に飛べる空は限られていてそれも風向きなどの条件でめまぐるしく変化した。

その刹那は大丈夫でも飛べない空に少しでも触れるとやがて羽は動かなくなり失速して墜落してしまう。

彼らの薄くて軽い骨格は落下の衝撃に簡単にひしゃげ脳や内臓を大地に撒き散らした。

どうして飛べない空になってしまったのかそれは明確な一つの理由からではなかったが毎日夥しい鳥が空から墜ちて来た。

道路も海も鳥の死骸で埋もれた。"

(リンク先へ続く)

 多くの方に知って欲しく、冒頭部分を引用させて頂いたが、引用写真のギターオブジェ「鳥の王」の昏い煌めきを観ながら、是非、リンク先で全篇を読んでみてほしい。

◆関連リンク
Twitter / mantamu

"あまりに製本に凝りすぎたため期間中には本が間に合わないという恐るべき事実が昨日発覚。今回の展示期間中に予約を受付今回予約分については手打ちプレートに通しNo.とイニシャルを入れる事などを検討中なのです。。"

 残念ながら、展示会場での作品集の発売/入手は難しい状況の様です。

マンタムさん関連当Blog記事 - Google 検索

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2013.04.01

■感想 R.A.ラファティ、井上 央訳『蛇の卵』 Lafferty "Serpent's Egg"

Photo

R.A.ラファティ、井上 央訳『蛇の卵』(SEISHINSHA WEBPAGES)

"人間の男の子:ロード・ランダル、少女の姿をした歩行型人間模倣タイプコンピューター:イニアール、類人猿アクセルザルの少年:アクセル。選ばれた三人が参加する実験とはなんなのか?
 そして世界を支配するカンガルーたちが怖れる「蛇の卵」の正体とは? 想像力の作家ラファティが送る奇想天外な長編、本邦初訳!"

 ラファティ『蛇の卵』クライマックス。
 奇想の乱れ打ちが重層的に積み上げた"海洋超脱の擬似夢状態"に身を委ねていると、やっと織りなすタペストリーの全体像が垣間見れたような…。あと残り30ページで何がどう転倒するのか/しないのか?続きは帰宅電車!

 と朝ツイッターでつぶやいて、3/27の深夜の電車で、読了。以下はその時に読後の勢いでツィートした内容にプラスαで少しだけ文章を付け加えた感想です。

 先に、奇想の絨毯爆撃で描かれたタペストリーと書いたけれど、そのタペストリーは平面ではなく立体物でありとても重層的。これは、たぶんラファティが自分に蓄積された無意識の海から発掘した言葉で組み上げた壮大な物語なのだろう。
 煌めくイメージの断片が巨大な海の構造物と生物進化の伽藍を立体的に築いている。

 さらに無意識から汲み上げた言葉、への冷笑と数々のエピソードのユーモアw。
 そしてそれら汲み上げられたものさえ、海シラミが書き記す真実の言葉が最後に相対化して霧散させ、またイメージは無意識の中へと帰っていく。

 ラファティの広大な無意識の海の真実の姿は、まさにこの『蛇の卵』からもスルリと逃げていってしまっているのだろう。
 我々読者は、そこから"真"の広大なラファティの脳内空間を想像するしかないのだが、壮大な伽藍が解体され、そしてさらにそれが海の中で広大な伽藍として拡大再構築されている様が垣間みられて、その広がりに目眩いがする。

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 コアにある、仕掛けられた殺人ミステリーと「蛇の卵」の謎。
 これは僕の様な"海洋超脱の擬似夢状態"(^^;)的に文字の海に溺れ全体を冷静に見渡せない読者には過酷。
 ただ後者は蛇から禁断の実と知恵を思い浮かべるわけで、自然と進化テーマSFとしての先に述べた壮大な伽藍をイメージして読んでいった。

蛇の卵|世界の竜蛇:フランス|龍学 -dragonology-

"場所:フランス:ブルターニュ
収録されている資料: 『プリニウスの博物誌 III』(雄山閣)
「ヘビの卵について」 タグ:竜蛇の卵/蛇石"

"ブルターニュのドルイドたちが大変興味深いアイテム「蛇の卵」なるものを珍重してきたというのが今回のお話。(略)
 少々長いが該当の項「ヘビの卵について」を引用しておこう。

"ヘビの卵について XXIX, § 52-54
   ひじょうにたくさんのヘビがからみあって、前に述べた交尾をしているとき、彼らの顎から出る唾液と、からだから分泌する泡でそのような丸いものをつくる。それは「かぜたまご」と呼ばれている。ドルイドたちの言うところでは、そのものはヘビがしゅっと息を吹くとき高く吹き上げられるもので、それは地に触れるまでに軍用外套で受け止めなければならない。(略)
 実際、わたしはその卵を見たことがある。それは中位の大きさの丸いリンゴに似ていて、そして軟骨性の茶碗のくぼみのような穴、言ってみれば、タコの触手にあるようなものがいっぱいにある堅い表皮が珍しい。"

 雄山閣『プリニウスの博物誌 III』より引用"

 ネット検索して面白かったのは、このケルト神話のドルイドが珍重する「蛇の卵」。蛇が絡み合って分泌する泡からできるリンゴに似た蛇の石。
 ラファティの物語にケルトと関係する直接の描写はないようだけれど、このイメージが僕には読後しっくり来た。
 進化テーマとして、蛇の卵と禁断の実である林檎が繋がるかな、と。そこにラファティの無意識の伽藍の正体が潜んでいる様な感触。

 しかし、そこから先は、ケルト神話を紐解きつつ、ラファティの紡ぎだした物語と見比べていかないと、何も言えないのだけれど、、、。

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 小説世界には、その伽藍を構成するために、煌めく奇想イメージが詰まっていて、あちこち引用したいところが満載なのである。
 僕は本を読む時に、印象的な言葉のページを、折ってドッグイアーにしてるけれど、この本は折りっぱなし。右の写真でわかるかな(^^)。
 その一部を以下に引用してみる。
 これにより、この文を読んでいる方々にも、ラファティの伽藍の一部を垣間みて頂ければ幸いである。もちろん、気に入ったら、本書を是非手に取って全体像をあなたの無意識にインストールしてほしい(^^;)。

""組み立てメカ横町"を後にして、全員がこよなく愛する"大洋の岸辺"へ足を向けた頃には、すでに黄道光が頭上の空を白くしはじめていた。露の結ぶ時間、塩露の時間だった。
 東の空に最初にその怪異現象をみとめたのはフィルター付きの眼を持ったイニアールだった。それは日の出のほんのわずかの間、ちょうど太陽の行く手を導くように、太陽の後ろに隠れるようにあらわれた。(略)
 "招かれざる者の星座"、カンガルー座の姿が彼らの上にあらわれたのだ。(略)
 カンガルーに狙われたものだけが、この招かれざる星座、幻覚の産物、主観的顕現を空に見るのだと語り伝えられていた。だが、このカンガルーに脅かされていないものなどいただろうか?"(P123)

" 新しい海の中ですべての魚たち、貝殻のものたちに、またとない興奮の時が訪れていた。彼らがみんなにとって、めったにない祝祭の時がやって来たのだ。新しい世界が目の前に開ける心の高まりだ。一週間前には、どこにもこんな海はなかった。魚世界の諸国民は"古き海の世界"はもう住みつくし知りつくしていた。ところが、海をめぐる噂によると、突然新しい未知の海があらわれ、その海を探求にやって来るものを待ち受けているというのだ。"(P218)

 無意識と進化の象徴としての海。
 そのような単調なイメージではなく、本書には海を巡る豊かな奇想が、そのテーマと呼応するかのように多数現出する。
 そうしたものに漂うように物語を読み進めていくと、やがて、まるでラファティの無意識の海にたゆたうようにして、その海中の巨大な伽藍がほのかに認められてくるのだ。

◆他の作家との連環
 ここで、このBlogの読者でラファティの小説世界を未経験な方に、その海へと接続するきっかけになるように、他の作家とラファティの連環について、少しだけ述べて、本稿を閉じることとしたい。

 村上春樹が自身の小説に導入している異質なもの、奇想部分を100倍くらい濃密にして、さらに不思議なキャラクターを登場させるとラファティの小説になる、と考えるのは僕だけだろうかw。
 
  特に村上春樹の奇想な短篇群が好きな方々には、騙されたと思って、一度読んで欲しいのが、この幻惑のねじれたユーモアの作家 ラファティなのである。

 また、本書の読後感から、理想宮を建造したシュヴァルと『非現実の王国で』を著したヘンリー・ダーガーを想い出した。 (『非現実の王国で』未読ですがw)。
 電気技師をしながら45歳で作家デビューして57歳まで兼業だったというラファティ。そして郵便夫と掃除人の二人。まさに独自の脳内文明を描いた三人w。

 僕は、三人の広大な異世界を、読書のイメージ喚起から片鱗をほんの少し想像できるだけですが、それだけでも震えます。

 シュヴァルとダーガーは生前、まさに孤高という言葉がふさわしく、自分の中に閉じたタイプの異才だったわけだけれど、ラファティは作品を発表し、ファンとも顔を合わせていた訳でけして孤高ではない。
 ただ共通するのは、いずれも自分の中に、文体とか作風とか異界を創造しているというレベルではなく、異文化とか異文明の中からこちらの世界に作品を通信して送っているようにみえるところである。

 例えば、村上春樹は、そんな異世界をそのまま描く訳ではない。
 ただその異なる世界が存在している気配を描いているだけである。そのものを描かないことにより読者の想像力に委ねている。

 村上春樹世界にひかれる読者には、ラファティという広大な異界が、そこに広がっていることを伝えたい(^^;)。

◆関連リンク
大野万紀さんの『蛇の卵』評 素晴らしいレビューです。是非リンク先で全文を御読み下さい。

" 1987年のラファティの長編である。傑作。そしてすごく面白いし、読んで楽しい。
 ただし、このお話をこの世の論理で理解しようとしてはいけない。ここでは動物も人間もコンピュータも、みんなおしゃべりで、超知性を持ち、死を も怖れず(というか、死はフェーズの違いにすぎない)、大陸に一夜にして海ができ、透明な海賊船が大暴れし、超古代も超未来も同じタペストリーの中にある、そんなお話なのだ。
 ホラ話というには知性的にすぎるが、頭のいい大嘘つきの物知り爺さんが、みんなを面白がらせようと、爺さんの知識と想像力の限りを尽くして語る 物語なのである。大事なのは世界観や設定ではなく(いや世界観はしっかりとあるのだが)、キャラクターだ。それもライトノベルでいう意味のキャラクターで はなく、神話的、原型的なキャラクターたち。むしろ昔の忍者ものや武芸帖、サイボーグ009なんかまでも思い起こした。(後略)"

Serpent's Egg - R. A. Lafferty - Google Books
 ラファティ『蛇の卵』の原語版、こちらで読めます(一部、欠けている様ですが?)。
ラファティ関連のまとめ4 - Togetter

"ラファティ「蛇の卵」が出版され、「第四の館」もいよいよ出そうになってきましたので、まとめ4に移行します。(2013.3.27〜ですが、「蛇の卵」関連のツイートを遡って補足しています)。"

「RappaTei」さんのまとめ - Togetter
 らっぱ亭(@RappaTei)さんのラファティ関連のまとめです。
R.A.ラファティ、井上 央訳『蛇の卵』(Amazon)

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